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デジタルエンタテインメントアカデミーの入学式で日野晃博氏が講演 |
特別講演を行なったレベルファイブ代表取締役の日野晃博氏 |
この日は入学式に引き続いて、株式会社レベルファイブの代表取締役社長である日野晃博氏による特別講演会も行なわれた。これから2年制(全日)、3年制(午前のみ)それぞれのコースでクリエーターを目指す新入学生たちは、明日からの授業開始をまえに、あらためて気持ちを引き締めていた。
日野氏の特別講演は「ゲーム制作のこれから」と題したもの。あらためて紹介するまでもないが、同氏が代表取締役を務めるレベルファイブは'98年に設立され、プレイステーション 2用RPG「ダーククラウド」、「ダーククロニコル」などの代表作を持つゲーム制作会社。現在は、PS2用「ドラゴンクエストVIII」、そしてXbox用MMORPG「トゥルーファンタジー ライブオンライン」を並行して制作している。
特別講演の終盤では、「ドラゴンクエストVIII」を制作中の堀井雄二氏も登壇。日野氏とともに未来のクリエイターたちにエールを送った |
列席した新入生は2~3年後の卒業となり、そのころにはゲームコンソール機の世代交代が行なわれている可能性もある。こうした次世代のゲーム制作において、同氏は3つのポイントを指摘した。ひとつはハードウェアスペックの向上による映像表現の変化、ふたつめがネットワーク対応となる。これらふたつは言うなれば現状の延長線上に位置するものであるが、もうひとつ重要なキーポイントとなるのが非プレイアブルなキャラクターのAI化と同氏は考えているという。
また最近は、「仮面ライダー555」のDVD鑑賞にわずかな余暇を費やしてハマっていることに触れ、自らを含む視聴者の“モチベーション”をいかに維持し続けられるかという部分において、同作が特に優れたコンテンツであると説明。これをゲームの制作にもあてはめ、プレーヤーのモチベーションをラストシーンまで維持させるのもクリエイターの使命だと説明した。そのうえで、作品作りに対する自らのポリシーというべきものを確立していってほしいと訴えた。
ちなみに現在、レベルファイブではデジタルエンターテインメントアカデミーの出身者が3名働いており、うちひとりは「ドラゴンクエストVIII」の開発チームに所属していることを紹介し、新入生の意欲をひきたてた。しかし開発現場では、学校で学んだことが満足にできればそれで十分なのではなく、それが最低の条件であるという厳しい考え方もみせた。現在100名ほどのスタッフで構成されるレベルファイブだが、同氏の面接数はその2~3倍にも及ぶものになっているという。学んだこと以上の力を出せる、言うなれば“野生のクリエイター”こそが求められる人材、と学生達の奮起を促した。
講演の終盤では、現在「ドラゴンクエストVIII」を日野氏とともに制作し、デジタルエンターテインメントアカデミーの取締役として特別講師も務める堀井雄二氏が登壇。日野氏とトークを繰り広げた。ガンダムを見て育ったいわゆるガンダム世代が、現在のガンダム関連タイトルのクリエイターとなっているように、「ドラゴンクエストIII」でゲームクリエイターを志した日野氏が、現在「ドラゴンクエストVIII」を堀井氏とコラボレートしている。
特に堀井氏が作品に求めているのは、ユーザーに対するフレンドリーさ、言い換えれば行動に対するシンプルさだという。例としてあげたのは、非プレイアブルなキャラクタに問いかけて情報を得る際など、繰り返し繰り返し聞いて何度聞いたらいいかわからないのはユーザーにとって苦痛でしかない。数回で同じ答えが返るようになったら、もう聞く必要がないということをユーザーに容易にわからせるような工夫が必要だと説明した。
また、レベルファイブ側の新しいアイディアも、場合によってはあっさりボツになってしまうこともあるという。特に高い技術が駆使されたものは、その技術におぼれやすく、ゲームとしての楽しさやフレンドリーさが十分に考え尽くされていないことが多いという。しかし、現在さまざまな形で公開されている「ドラゴンクエストVIII」の最新映像のように、3D環境で表現される新しいドラゴンクエストの世界は、初代「ドラゴンクエスト」の制作時から夢見てきたことだとして、作品の高密度化に寄せる情熱もかいま見せていた。
日野氏と堀井氏は最後に、「この学校は厳しい学校です。場合によっては半数ぐらいしか最後まで残らないことだってある。頑張って卒業した暁には、次世代機のゲームを一緒に制作しましょう」と未来のゲームクリエイター達にエールを送った。
(2004年4月8日)
[Reported by 矢作晃]
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