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DEA、特別講演「ドラゴンクエストVIIIへの道」開催 |
会場:文化学園講義室
株式会社スクウェア・エニックスをはじめとした、多数のゲームやIT関連企業が出資するゲームクリエイターの養成学校、デジタルエンタテインメントアカデミーは1月10日、文化学園講義室において「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」をテーマとした「ドラゴンクエストVIIIへの道」を開催した。講演には「ドラクエシリーズ」の生みの親である堀井雄二氏と制作を行なったレベルファイブの日野晃博代表取締役社長が出席。プロトタイプの制作から今後のドラクエに付いてまで対談が行なわれた。
対談については、2004年4月に同校の入学式ですでに行なわれていたが、今回はソフト発売後ということで、「前回とは違った視点で新たな感銘を受けるだろう(平野雅一郎学長)」と企画された。
講演に先立ち行なわれたスクウェア・エニックスの執行役員である富山竜男氏、開発執行役員の齊藤陽介氏、人事部採用担当マネージャー飯田克信氏の挨拶が行なわれた。また、スクウェア・エニックスで現在開発に従事しているDEA卒業生9名とレベルファイブで「ドラゴンクエストVIII」の制作にも関わった卒業生1名へのインタビューも実施。レベルファイブに就職した卒業生は「『ドラゴンクエストVIII』が発売されソフトがユーザーの手に渡り、感想を聞いて、やりがいを実感した」とコメントした。
■ レベルファイブが制作会社に決定するまで
後半行なわれた講演では、まず最初にレベルファイブが制作会社として決定した経緯からスタート。スクウェア・エニックスは開発をスタートするにあたって数社に打診。その中でレベルファイブにもプロトタイプの制作をお願いしたという。その時は年末でさらに他のソフトの制作がちょうど佳境を迎えていた時期だったが、日野氏はスタッフを説得し休暇をつぶして制作を行なったのだという。
堀井氏はこのプロトタイプを見て「本当にすごいと思った。鳥山明さんの絵がそのまま動いていた」と衝撃を受けたという。「ドラゴンクエスト」の制作スタートにあたって毎回次はどういう遊び、おもしろさを提供するかを毎回考えるのだという。たとえば「V」では親子3代の物語であったり、「VII」ではマップであったりするわけだが、「VIII」では3Dがキーワードになっていたようで堀井氏曰く「(プロトタイプを見て)いける! と思った」という。
堀井氏は「ファミコンで当時出ていた『マリオゴルフ』みたいな感じでRPGができればと考えていた」とファミコン時代にも3Dを採用する企画はあったのだという。当時はハードウェア的にも実現は難しく断念。今回、完全3D化が実現した。堀井氏は「3Dになってフィールドが広がりグラフィックスが変わったのに対して、逆にストーリーはオーソドックスにした」という。これはグラフィックスが変わり冒険感が出て色々なところに行けるので、ストーリーを複雑にすると迷ってしまうためだという。こういったことからストーリーはドルマゲスを追跡するシンプルなものとなった。またシナリオの全体像の制作にあたって「ドラゴンクエストVIII」ではラスボスの設定から入ったという。堀井氏は「制作方法は毎回違うが今回はラスボスから入った。最後のボスは何をしようとしているのか、ただ悪いヤツではなくて……」と説明した。
一方、日野氏は制作にあたって「ドラゴンクエストVIII」の制作にあたって「今回はレベルファイブの作品を作るのではなく、あくまでも堀井雄二さんの作品。堀井さんの作品を作るにあたって我々の得意とする技術を最大限につかうことで、堀井さんのアイディアが広がればと思った」という。日野氏とスタッフはすべての「ドラクエシリーズ」を遊び研究しつくし、たとえば戦闘時における効果音についても、魔法がかかりヒットし音がするまでの時間をストップウォッチを使いこれまでのシリーズと比べるなど徹底したという。もちろん最終的には堀井氏が調整を行ない「10%早く」や「遅く」といった細かいテンポの調整が行なわれている。
■ 「ドラクエ」を3Dで作る難しさ
堀井氏は「ドラゴンクエストVIII」で3Dを採用したことでの苦労について「2Dの時は容量の関係で言葉だけで“きみょうなおどりをおどった”と言わざるを得なかった。でもその“おどり”はニュアンスだけでその内容は考えてないんです。でも今回3Dにするにあたってすべてのモーションを付けなければならなくなった。そういった点でも大変」だったとか。日野氏は最初は無理だと思ったと言うが、途中からこのモーションを全て見るのが楽しいことだと感じ始め、時間のない中制作を続けていったという。
さらに前述の通り、3Dグラフィックスで制作すると堀井氏の想像以上にフィールドが広くなってしまった。このことからダンジョンなどは削ったのだという。たとえば最初のダンジョンもさらに2層ほどあったのだが、迷ってしまうことから削ったのだという。堀井氏は「ひとつの通路を進んでいって戻ってくると、3Dだと行きに見た風景と変わっていて、どちらの方向に行けばいいかわからなくなるから迷う。ダンジョンの通路をつぶしていけないんですよ」とレベル設定の難しさを実感したという。
グラフィックスエンジンはプロトタイプの時に比べ製品版では劇的に進化。鳥山明氏のグラフィックを再現するためにスタッフは「ドラゴンボール」のアニメを研究し尽くしたという。日野氏は「トゥーンシェードは対戦格闘などではよくあるが、、RPGなどたくさんのキャラクタが出てくると動作が重くなってしまう。そういった点をクリアしたエンジンを作れたのはよかった」とコメント。
モーションもドラクエらしさを研究し尽くした結果なのだと言うが「よく使う技ほどモーションは短く、面白くしている。これはテンポをよくするため」だという。この点について堀井氏は「『ドラゴンクエスト』はのんびりプレイしたいと思っているが、それはあくまでも自分のテンポでということ。プレイする時間はユーザーのモノで、待たしてはいけない」とゲームを制作する上での信条を語った。
■ 「ドラクエ」次回作も3Dで
また、堀井氏は今後についてふれ「ゲームが斜陽だと言われているが、定着しただけ。昔マンガが『大学生が読むようになった』と騒がれたことがあったが、それと同じ。(ファミコンなどで)ゲームを始めた人が60歳になって盆栽を始めるようになるとは思えない。やっぱりゲームをやっているだろう。『ドラゴンクエストVIII』にしても子供より親がはじめに買ってプレイをしている」と現状を説明し、「もう一回3Dでやってみたい。『ドラゴンクエストVIII』がスタート地点となって色々とやれると思うので」と次回作が3Dで制作されることを示した。ではその先についてはというと「その次はずっと先なのでわからない」とコメントした。
講演の最後に堀井氏は「アイディアが頭の中にあるときは、誰でも傑作。そのアイディアを出す技術 (人の説明する技術) やセンスを磨いてください」と、ゲーム制作者を目指す聴講生に向けてエールを贈り幕を閉じた。
(2005年1月11日)
[Reported by 船津稔]
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