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★オンラインゲームゲームレビュー★

爽快アクションと重厚な成長要素を融合
大型アップデート「Act.5」登場で更に楽しく

「アラド戦記」

  • ジャンル:オンラインアクションRPG
  • 開発元:Neople
  • 運営元:NHN Japan
  • 利用料金:基本プレイ無料/アイテム課金
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP/Vista
  • サービス開始日:2006年11月21日



 ここ数年、FPSタイプのオンラインゲームと並んで、横スクロールタイプのオンラインアクションゲームが激戦区となりつつある。無料で気軽に遊べ、プレーヤースキル次第で強者も圧倒できる。これらのオンラインゲームは、オーソドックスなエンカウント式のRPGから、1フレームで勝負を競う対戦格闘ゲームまで、あらゆるゲームジャンルをどん欲に消化し続ける日本市場にもともとマッチしたゲームジャンルだったと言えるだろう。

 今回取り上げる「アラド戦記」も、2007年に急成長を遂げ、一躍日本のオンラインゲームシーンになくてはならない存在となった人気タイトルだ。「スタイリッシュアクションRPG」と銘打ち、爽快なアクションと重厚な成長要素をゲームの基本軸に据えた基本利用料無料のオンラインゲームである。

 韓国のNeopleが開発し、NHN Japan日本国内の正式サービスを行なう本作は、現在では同時ログイン数1万人以上をコンスタントに記録するという大人気コンテンツになっている。直近の3月26日には大規模アップデート「Act.5 鬼の疾走」を実装し、高レベルプレーヤー向けのゲーム内容をますます充実させた。弊誌では本作のオープンβサービス時にファーストインプレッションをお届けしているが、それから数々のアップデートを経て大きく様変わりした「アラド戦記」の現在の姿を本稿で改めてレポートしたい。


■ 横スクロールアクション+オンラインRPGのハイレベルな融合

「アラド戦記」はRPGの構造にアクションゲームのプレイを取り入れたユニークなオンラインゲームだ
 オンラインRPGと言えば、三人称視点からキャラクタをマウスで操作し、スキルアイコンをクリックして戦闘を行なうようなイメージが根強く存在する。しかし、よくよく考えてみれば、オンラインRPGと一口に言ってみても、そのデザインには様々なバリエーションがあり得る。「アラド戦記」はその好例で、RPG的なゲーム構造に横スクロールのアクションゲームの戦闘システムをダイナミックに適用した作品だ。

 本作における操作と戦闘のシステムについては、基本がアクションゲームなので、キャラクタの操作方法はとてもシンプルなものになっている。デフォルトではカーソルキーで上下左右に移動し、Xキーで攻撃、Zキーでスキル発動、Cキーでジャンプというものだ。多種多様なスキルは方向キーによるコマンド入力の組み合わせや、6個まで登録できるショートカットキーに割り当てることができる。各操作キーはゲームコントローラに割り当てることもできるので、適切に設定すれば往年の横スクロールアクションそのものの操作性に落ち着き、非常に快適な操作性を実現可能だ。

横スクロールのアクションシステムはソツなくまとまっており、快適にプレイできる
 戦闘システムの感覚としては、カプコンの「ファイナルファイト」シリーズあたりがゲームファンにとっての公約数的な理解として適切だろう。基本は横スクロールで攻撃も横方向に対して行なうが、縦の移動軸が存在しており、上下に移動して縦軸をずらせば敵の攻撃をかわすことができる。また攻撃は範囲判定が基本なので、複数の敵にまとめて打撃を与え拘束することができ、ザコ敵をグループ単位で一掃してしまったり、複数の技を組み合わせたコンボ攻撃を加えて反撃のヒマを与えずに倒すといったプレイも可能だ。

 このあたりは日本で作られてきたアクションゲームの性質を忠実に踏襲しており、演出やテンポの良さも相まって爽快感たっぷりである。家庭用ゲーム機やアーケードで同種のゲームをプレイしたことがあるユーザーなら、開始30秒で操作方法を飲み込んでしまえることだろう。しかし、これだけなら単なるアクションゲームで終わってしまうところ、本作が異様な輝きを発しているのは、そこにRPG的なゲーム構造を持ち込んで、きわめてバリエーション豊富なゲーム展開を実現している点だ。

ノックバック、浮かせ、範囲攻撃を駆使したコンボ攻撃など、アクションゲームとしての基本はしっかり抑えた作りである。これにRPG的成長要素が加わり、変化に富んだアクションのプレイを楽しめる


・キャラクタ、スキル、アイテム、クエスト……豊富なゲーム要素がプレイ意欲をかきたてる

各クラス入り乱れてのパーティプレイ。筆者は後衛の「ガンナー」をプレイした
 「アラド戦記」の戦闘はアクションゲームだが、全体の構造はオンラインRPGそのものだ。まず、プレーヤーキャラクタには5種類の基本クラスがあり、プレーヤーはそのうち1つを選択してキャラクタを作成、レベル1からプレイを開始していく。その内訳は、近接攻撃に優れた「鬼剣士」、素早い立ち回りがウリの「格闘家」、遠距離攻撃が得意な「ガンナー」、トリッキーな魔術を駆使する「メイジ」、パワーと回復力に優れた「プリースト」、となっており、各クラスは一定レベルに達すると各4種類の上級職に転職することができ、さらに個性が分かれていくという構造だ。

 当然ながら、各クラスや職業には固有のスキルや装備が用意されている。キャラクタの成長の基本は戦闘を行なって経験値を稼ぎ、レベルを上げていくことだ。そのさい「SP(スキルポイント)」と呼ばれるポイントが蓄積されていき、町のNPCから新たなスキルを学習することが可能になる。各スキルは全て戦闘システムにおけるアクションに反映されており、単体で強力なものから、特定の位置関係や状況で使いやすいもの、コンボ攻撃のつなぎやフィニッシュに使えるものなど多種多様だ。これが各プレーヤーの個性をひきだすポイントのひとつになっているのだ。

 まず、ゲーム開始時のキャラクタは2個のスキルしか保有しておらず、戦闘の内容も基本攻撃をベースにした単純な内容だ。そこからレベルを上げスキルを獲得していくことで戦闘方法も複雑になり、それにあわせたプレイスタイルの確立が必要になってくる。複数のスキルを組み合わせて戦うことで効率が上がることもあり、プレーヤー自身が操作をマスターしていくという楽しみも同時に味わえる。プレイ開始後数時間で到達できるレベル10程度になればスキル数は10個近くにもなり、スキルを獲得するための「SP」も不足し始めるため、次第にプレーヤー毎の個性が出てくるという案配である。

プレーヤークラスは「鬼剣士」、「格闘家」、「ガンナー」、「メイジ」、「プリースト」の5種類が用意されており、レベル18になるとさらに4つの上位職へ分化していく。アクションゲームとしてのバリエーションは豊かだ

ダンジョンクリア後はアイテム抽選がある。運がよければレアアイテムをゲット
 RPG的な構造を支えるものとして多種多様な装備アイテムの存在も大きい。本作のキャラクタには、基本装備部位として頭、肩、胴体、腰、脚、足の6種類と、アクセサリ装備部位として首、腕、指の3種、そして武器がある。アイテムの表現は「DIABLO」に近いフォーマットで、「粗末な」、「豪華な」といったプレフィクスにアイテム名が続き、末尾に「+1」~「+15」の強化表現が続くというものだ。アイテムの等級には「通常」、「マジック」、「レア」、「ユニーク」、「エピック」などの種類があり、当然ながら上位のものほど入手が困難だ。

 通常のアイテム入手手段は、戦闘時のドロップ、ショップ販売、クエスト報酬といった形だ。通常プレイしている感覚では「レア」以上のアイテムは滅多に出ず、普通は店売りやドロップで入手した「マジック」等級のアイテムで身を固めることになるだろう。特に本作では武器アイテムは各クラス専用にデザインされており、防具も重量別に「布」、「皮」、「軽甲」、「重甲」という各種類が各クラスに対応したボーナスを発揮する仕様のため、自分では使えない装備を手に入れることが非常に多い。自分では使えない「ユニーク」等級のアイテムを拾うことがあれば、他のプレーヤーへのトレードに出すことも検討してみよう。

 戦闘システムがアクションゲームであることで、装備が単純な性能の善し悪しで語れないことも本作の大きな特徴だ。装備はキャラクタの防御力や攻撃力に関係するだけでなく、強力な装備はスキルの発動速度や攻撃速度を高める効果を持つという形で、全てがアクションの内容に影響してくる。立ち回りで稼ぐプレーヤーなら移動速度のプラス補正を重視するだろうし、それを無視して単発の攻撃力に特化するプレイスタイルも当然ある。所有しているスキルとの組み合わせも重要だ。このように「アラド戦記」は、アクションゲームの特性とRPG的な構造をうまくおもしろさに繋げている点が非常にユニークである。

装備パラメータは最終的に「物理攻撃力」、「魔法攻撃力」、「物理防御力」、「魔法防御力」の4パラメータに反映されるものの、アクションゲームとしての特性から、攻撃や移動の速度に関するパラメータも非常に重要な位置づけだ

もちろん装備の悪さはプレイスキルで補うことができるのがアクションゲームの良い点だ。操作を磨くことでプレイ効率も上昇することがわかりやすいため、やりこみに拍車がかかる


■ 充実のクエスト、上位職でのプレイスタイル変化など、完成度の高いRPG要素

町はMMOロビーとして機能し、ここで買い物をしたり、クエストを受けたり、パーティを結成するなどを行なう
 「アラド戦記」が単なるアクションゲームであれば、よくあるカジュアルゲームの群れの中に埋没してしまい、現在のような人気はなかったかもしれない。本作の人気の秘密のひとつは爽快なアクションと融合する「飽きにくさ」にあり、それを強力に後押ししているのはテンポ良く進められるダンジョン攻略と、クエストや転職といった長期的なプレイ構造だ。

 本作はオンラインゲームとしてのシステムとしてはMMOロビー+MOダンジョンという構成をとっており、プレーヤーがゲームにログインするとまずMMOロビーを兼ねる町のゾーンからスタートする。町は数分で全域を歩き回れるほど小規模なもので、ゲーム中に登場する全てのNPCにすぐアクセスすることが可能だ。プレーヤーはここでNPCからクエストを請け負ったり、他のプレーヤーとパーティを組んでダンジョン攻略に向かっていく。

 町が狭く、NPCの数も少ないため、クエストは少ないのでは? と考えてしまいがちだが、実際はそんなことはなく、各クラス、各レベル帯ごとに、普通にプレイしていては消化しきれないほどのクエストが用意されている。「エルブンガード」と呼ばれる町でレベル1からレベル4程度までのチュートリアル的なクエストを消化したら、中心の町「ヘンドマイア」と「ウェストコースト」へ入場できるようになる。ここにはゲーム中のほとんどのNPCが集中しており、各クラス専用のクエストを与えてくれるほか、通常クエスト、エピッククエストと呼ばれる長大なストーリークエストを楽しめる。

ダンジョン地域はレベル帯に応じて7箇所ほど用意されている。町を通じてすぐに行き来できるのでテンポ良くプレイできる
 上位職への転職を果たすレベル18~レベル20あたりまでは、町「ヘンドンマイア」とダンジョンゾーン「グランプロリス」での冒険が中心だ。この「グランプロリス」にはレベル帯ごとに8つのダンジョンがあり、簡単に計算しておよそ2レベルで1個のダンジョンという数になっている。このレベル帯では1時間プレイする間にレベルが3つも4つも上がっていくため、ゲーム展開は非常にめまぐるしい。

 さらに各ダンジョンに関連づけられているクエストが各10個以上はあり、クエストを請け負えるのは同時に3個まで、という制限もあって、律儀に全部消化していれば先にレベルが上がってしまうので悩ましいほどだ。大抵はクエスト報酬狙いで特定のクエストをこなしていくことになるが、後述する「疲労度」パラメーターにより1日のダンジョン攻略数が制限されているため、ダンジョンに入る前に攻略するクエストを厳選する、いわば「クエスト管理」のようなゲーム性が発生しており、悩ましくも面白い。

 いずれにしても、クエスト報酬で得られる装備やパラメータ上昇アイテムを目的にプレイしているだけでもグングンとレベルが上がっていき、新たなスキルを獲得したり、新たな武器を得てプレイスタイルが変化するだけでなく、攻略対象のダンジョンも次々に変わっていくため、とにかく気がつけば時間を忘れてプレイしてしまっている、ということになる。この点非常にテンポがよく、レベル18で上級職に転職するまではあっという間に過ぎ去っていくのだ。

レベル20までの主舞台となる「グランプロリス」のダンジョン。敵はゴブリンやゾンビなどが中心だ。いやらしい動きはそれほどしてこないため、基本テクニックをここで磨いておきたい


・上級職に転職してからが本番。プレイスタイルを確立するステージへ

「ガンナー」対応のNPCである「キリ」から上位職への転職クエストを受けた。テクニックが必要な条件を課される
 序盤のめまぐるしいシナリオ展開を経てレベル18に到達すると、いよいよ上級職への転職が可能になる。上級職は各クラスごとに4種類用意されており、各クラスに対応する特定のNPCから転職クエストを請け負うことによって転職を行なうことになる。このあたりから強く意識し始めるのが、ダンジョン攻略時にカウントされるスコア、「スタイル」と「テクニック」だ。

 本作のクエストの達成条件には、「ダンジョンをスタイル80%以上でクリアする」や、「評価S以上でクリアする」といった内容が多く存在している。これは何かというと、プレイの内容を評価するスコアなのだ。このスコアは「スタイル」と「テクニック」の2種類があり、ひとつのダンジョンをクリアしたとき、これらのスコアと被ダメージ回数が累計されて最終的な評価がF、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの9段階で下される。評価が高いほどクリア後に得られる経験値にボーナスがあり、また、高い評価でクリアすれば同じダンジョンの上位版「エキスパートロード」、「マスターロード」、「キングスロード」へのアクセス権が得られるようになるというシステムだ。

大量コンボで「スタイル」を稼ぐ。また被ダメージを減らすことも高評価には重要だ
 「スタイル」スコアは、基本的にはコンボ攻撃を評価するものだ。5回以上の連続コンボを決める、空中に浮かせた敵に攻撃を当てる、といった条件を満たすことでスコアが高まっていく。一方の「テクニック」はダメージ量やタイミングを評価するもので、敵を背後から攻撃する「バックアタック」や、敵のヒットポイントの3割を超える攻撃力でとどめを刺すといった条件でスコアになる。「キングスロード」への入場許可を得るためにはS以上の評価を取る必要があるが、そのためには「スタイル」、「テクニック」ともに高水準のプレイをすることが必要だ。

 上位職への転職クエストでこういった条件を満たしていくことにより、それまでプレイしてきたキャラクタの特性や使用スキルの活用方法を学ぶことになり、プレーヤー毎のアクションスタイルも確立されていく。スキル毎の使用頻度の違いも出てくるため、上位職に転職完了するころには、どのようなスキル構成が望ましいかという各個人の方針が固まっているはずだ。筆者は「ガンナー」クラスから「レンジャー」に転職するという段階を経たとき、空中コンボの必要性に気づき、スキル構成を大幅に見直した。操作面でも新たな練習を積み、好スコアをコンスタントに出せるようになった。「アラド戦記」が面白くなるのはここからである。

「スタイル」や「テクニック」は職種によって出しやすさが異なるが、筆者のプレイした「ガンナー」系は「スタイル」を稼ぎやすいようだ。S評価以上をコンスタントに出せるようになるころには、自分なりのアクションスタイルが確立されていることだろう


・謎のパラメータ「疲労度」が果たす決定的役割

画面中央下にある扇型のゲージが「疲労度」だ。最大値は156で、ダンジョンを1部屋クリアするごとに減算され、0になるとダンジョンに入れず、毎朝6時にリセットされる
 「アラド戦記」をプレイを続けていると、ある時期から気がつき、越えられない壁として大きく立ちふさがってくるのが「疲労度」システムである。これは各キャラクタが持つ特殊なパラメータで、1日に1回、午前6時に全快するという性質を持っている。「疲労度」が意味するのは、「1日毎のダンジョン攻略可能回数」だ。「疲労度」は全快時で156ポイント与えられ、ダンジョンに入り1部屋攻略するたびに1ポイントずつ減少していき、0ポイントになるとダンジョンへの入場そのものが不可能になるというものだ。

 1個のダンジョンは10~20ほどの部屋で構成されているため、1ダンジョンをくまなく攻略する方法をとれば10回ほどで打ち止めだ。ボスのいる部屋に直行してクリアを優先すれば5~10部屋ほどで攻略を完了できるため、1日最大で20回ほどダンジョン攻略ができる計算になる。このため1日あたりの獲得経験値が最大になるのは、自分のレベルより高めのダンジョンを、ボス直行で攻略し続ける、という方法になる。

 この「疲労度」パラメータが本作において結果的にどういう役割を果たしているかというと、ダンジョン攻略やクエスト消化、経験値稼ぎ、アイテム収集などに費やす時間を実質的に制限することで、プレーヤーの興味をゲーム中の別の側面に向けさせるという効果である。

 「アラド戦記」はゲーム構造的にはRPGであり、プレーヤーは、自分のキャラクタを成長させたい、新たなダンジョンに進みたいという動機付けでプレイを続ける。その究極的な方法はダンジョン攻略をして経験値を稼ぎ、レベルを上げるということになるのだが、「疲労度」によりそれが制限されることにより、余った時間を装備の見直しや対人戦に手段を求め、対人要素が眼中に入ることで比較優位を気にし始めるのである。結果的にプレーヤー間トレードや、そこからつながる課金アイテムへの興味が沸いてくるのだ。基本無料のゲームは最後まで無料でやりつくす志向の筆者も、これにはやられた。


■ 対人戦では是非使いたいアバターアイテムや上位レア装備
 プレーヤー間トレードが支える強力な経済システムを見た

対人戦ロビーは適当な部屋を選んで参加する、もしくは自分で部屋を立てる方式。手軽に参加できる
 さて、「疲労度」が0ポイントとなってダンジョン攻略ができなくなった場合、プレーヤーがやれることはMMOロビーである町からアクセスできる種類のアクションである。その大きな柱は、対人戦と装備の見直しの2つだ。対人戦はゲーム画面右上にある「決闘場」アイコンをクリックすることでいつでもアクセスできるもので、「疲労度」とは関係なく無制限にプレイできる。装備の見直しについては、NPCショップ巡りはすぐに終わってしまうので、今持っている装備を強化するか、プレーヤーが露店を開いて販売している上級アイテムを購入するか、課金アイテムに頼るかという3択になる。

 まずは楽しい対人戦からご紹介しよう。本作の対人戦は「決闘場」ロビーにて、2~8人で組まれるゲームセッションを選択して参加する形態をとっている。対戦ロビーはプレーヤーの対人戦ランク(10級~1段、1段~10段、至尊1段~至尊10段)に応じて3種類に区分けされており、初めて参加する場合は10級から1段までの初級ロビーに参加する方式だ。対人戦での勝利を得ることで「勝ち点」を獲得、これが経験値のような形で作用して対人戦ランクが向上していく仕組みである。

 対人戦ルールは1対1の個人戦と、最大4人対4人で戦うチーム戦、個人戦を複数回繰り返すトーナメントの3種類だ。実際に最も良くプレイされているのはチーム戦で、この方式では1回の勝ち負けが最も速く決まるため人気が高いようだ。対人戦は相手が人間ということで、モンスター相手の狩りプレイとは比較にならないほどスピーディだ。常時ダッシュで移動することは当たり前で、互いに攻撃をかわすために縦軸の移動を織り交ぜつつ、コンボ攻撃を狙って各種スキルを織り交ぜた攻防が展開する。多人数対戦では「ガンナー」系職業の遠距離火力がバクチ的に働き、画面外から大量の弾幕を送り込んで敵グループにまとめて大ダメージを狙えるなど、やや大味ながらもクラス毎の特性が顕著に出て面白い。

 ちなみに対人戦では、キャラクタのレベルに応じる倍率でパラメータ補正がかかるため、一応はレベル差に関係なく平等に近い条件で戦えるようになっているが、所有スキルはそのままであるため、やはり高レベルキャラクタが有利だ。しかし、レア装備などが持つ追加パラメータも同じ倍率で拡大されるため、低レベルキャラクタがユニーク級の装備で全身を固めた場合、追加パラメータの部分が結果的に大きな値になることにより、一般的な高レベルキャラクタよりも強くなったりするようだ。テクニックが同じなら装備の性能次第ということで、戦績を追求したくなれば強力な装備を揃えたくなるのは自然なことだ。

8人対戦は相互に入り乱れてのなかなかカオスな状況が楽しめる。相手の不意を付いて裏をとり、連続攻撃を決めて大ダメージを狙うのが楽しい。「ガンナー」をプレイする筆者は、上級職に転職する前でも結構善戦できた


・課金アイテムの雄“アバター装備”と、上級レア装備のトレード市場

アバター装備を入手できる「ミスティックポット」。デザインはルーレット式にランダムで選ばれるというのがキモである
 レベルを上げずにキャラクタを強くしたいのなら、装備を良くするしかない。そのひとつの方法は、アバター装備を利用することだ。アバター装備は通常装備とは異なるレイヤーにあるもので、通常装備に「上書き」する形で身につけることができ、それがキャラクタグラフィックスに反映されるというものだ。このアバター装備には、帽子、頭、顔、胸、胴体、肌、腰、脚、靴の9スロットがあり、それぞれの部位にパラメータ上昇や速度向上などのボーナスが付く。通常アイテムと同じく等級があり、ノーマル、上級、レアという区分で、上位のものほどボーナスが強力になる。そして全ては課金アイテムだ。

 アバター装備を入手するには、町の中心にある「ミスティックポット」という販売機をクリック。部位ごとに用意されている「ミスティックポット」はルーレット式の販売機で、「ミスティックコイン」1枚と引き替えに1回使用することができ、ランダムで1個のアバター装備を入手できる。通常が出るか、上級かレアか、またどのデザインが出るかは11種からのランダムで、選んで購入することはできない。ちなみに「ミスティックコイン」は単体で250円、50枚セットで7,200円となっている。少々高い気がしないでもないが、アバター装備によって得られるパラメータ上昇効果を考えればついつい手を出したくなってしまうものなのだ。

 本作のデザインには、アバター装備を大量に購入したくなる誘因が多く仕組まれている。まず11種からのランダムであり、デザインを選べず、部位ごとにデザインを揃えたければ5倍買う必要があること。次に、上位アバター装備を全身に装備すれば、セット効果として追加のパラメータボーナスがあるということ。さらに、レアアバターのセット装備にはそれ以上のボーナスがあるということだ。

 さらに、数をこなせば沢山手に入るアバター装備は、課金アイテムとして購入できる「ミスティックキュー(5個セット150円)」を使い、5個を合成して1個の上級アバター装備を生成できる仕組みになっている。デザインを選ばずランダム生成すればレア等級のアバター装備を手に入れるチャンスもある。この仕組みで大量のアバター装備が“溶けて”いくのだ。先ほどデザインを揃えるために5倍は買う必要がある、と書いたのは、この合成プロセスを前提にしているためだ。ちなみにレア等級はミスティックポットでの出現確率1%とも言われており、1回150円とすればおよそ15,000円の価値があるということになる。力技で全部位そろえようとすれば10万円を越える計算だ。まさに壮絶である。

「競売場」チャンネルで露天売りをするプレーヤー達。画面を埋め尽くす勢いで、良い場所の取り合い競争は熾烈だ
 しかし多少の救いは、アバター装備のプレーヤー間のトレードが可能になっている点だ。ランダム出現ゆえに不要となったアバター装備は、上級であれば1個ゲーム内マネーでおよそ100万ほどで取引されている。これを活用すれば、デザインの揃わない部位を放出し、ゲーム内マネーに変換して、別のトレーダーから適切なデザインの部位を購入することで、現金の支出を抑えることができる。レア等級のものも取引されており、相場は不安定なようで確認した範囲では1個500万から1,500万ゲーム内マネー程度。ゲーム内の店売りのアイテムはどんなに高価でも10万を上回らない程度であり、これがどれほど凄まじい金額であるかはご想像にお任せしたい。

 というわけで、ゲーム内のマネーサプライ量を心配したくなるアバター装備のプレーヤー間取引ではあるが、これが一般装備の上級レアアイテムの取引にも影響しているらしく、ユニーク級のアイテムや、+10以上の高度なエンチャントが施されたアイテムは数百万から数千万以上という凄まじい価格で取引されている。このレベルのゲーム内マネーは、一般のプレーヤーは普通のプレイで稼ぐことは難しく、アバターアイテムを売りさばく他に入手手段がなさそうである。こう見るとアバターアイテムは事実上、リアルマネーをゲーム内マネーに返還するRMT(リアルマネートレード)のような手段となっており、自由市場で形成された相場ながらやや違和感を感じた部分もあった。

現時点における課金アイテムの内訳。「ミスティックキュー」がらみのものから、装備をランダムで強化するもの、冒険の助けになるものなどがある


・「アラド戦記」の課金アイテムの洗練されたスタイルに学ぶ

 とはいえ、運営側が用意している課金アイテムは、アバターアイテムを除けば非常に冷静なものだ。その内容は、ダンジョン内で死亡した場合の即時コンティニューを可能にする「コンティニューコイン(10個300円など)」、アイテムのレベルをランダムで付け替える「業師の箱(10個980円など)」や、ゲーム内では入手しづらく設定されている回復アイテムの類だ。

 この課金アイテムのラインナップには他のゲームで見られるような「経験値アップ」、「キャラ性能アップ」のようなあからさまな課金アイテムは存在せず、代わりに、「疲労度」のシステムと対で機能して結果的に同じ結果(プレイ単位の効率を上げる)をもたらす婉曲表現のようなアイテムが主である。このやりかたは非常にうまい。顧客に対してなるべく嫌な気分にさせず、気持ちよくお金(ハンコイン)を使ってもらおうという工夫が感じられる。

 その真骨頂は、Lv20前後でインベントリが一杯になるというゲーム展開上の設定と、その退避場所になる「金庫」の拡張オプション(第1段階50円)であろう。これを使わなければ事実上アイテムを捨てながらのプレイとなるため、それを回避するために50円なら払ってみようかという気分になる。これは課金アイテムに手を出す入り口として絶妙だ。実際には50円で金庫8スロットが16スロットになるという些細なもので、次は100円払って24スロットに、次は200円払って……という風にアップグレードしていくのだが、課金アイテムに手を出すまいとする一般のプレーヤー心理は、こうした小さなひび割れから決壊(!?)を起こすものだ。

 こういった戦略は本作で非常に巧く機能しており、高い客単価を獲得しているようだ。結果的に頻繁な大規模アップデートが行なわれ、ゲーム本体の強化がハイピッチで進んでいる。こうした形でメーカーと顧客のWin-Win関係が築かれているのならば、本作のビジネスモデルは理想的な状態にあるといってもいいだろう。1プレーヤーとしては、特に大量の消費を誘発してしまうアバターアイテムとは賢く付き合っていきたいところだが、ゲームそのものの出来は非常によく、楽しんだ分の対価としての課金アイテム購入は妥当なところだろう。課金、ゲーム内容の両面において、「アラド戦記」が今後さらに洗練されていくかどうか、注目していきたい。

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□NHN Japanのホームページ
http://www.nhncorp.jp/
□「アラド戦記」のページ
http://www.arad.jp/
□関連情報
【2月5日】韓国NEOPLE理事兼「アラド戦記」ディレクターKim Yun Jong氏インタビュー
日韓戦の手応えと2008年のアップデート計画を聞く。日本未発表SSも掲載!!
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【2月4日】「アラド戦記」日韓決闘大会レポート
驚くべき気合いで戦いに挑む韓国選手、日本選手はいかに立ち向かったか
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両国トッププレーヤーが激突、実力伯仲のまま決戦の地、韓国へ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080121/ard.htm

(2008年4月11日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



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