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会場:I'PARK mall
本大会は、1月19日に日本のNHN Japan本社にて開催された「JAPAN Round」に続くもので、後半の4、5、6セットが開催された。日本6対韓国5という日本勝ち越しで望んだ韓国アウェイ戦となったが、個人トーナメント戦、団体戦共にすべて破れ、5戦全敗の最終結果6対10という大差で敗れた。各試合の熱戦の模様については別稿にて詳しくお伝えすることとし、本稿では、本大会の模様と、韓国で半ばブームとなった感がある「アラド戦記」の韓国での状況についてお伝えしたい。なお、開発元NEOPLEへのインタビューも行なったので楽しみにお待ちいただきたい。
■ 1,000人を超える来場者。超アウェイの環境下で戦った日本代表
日本ではオンライン予選のみで日本代表が選出され、「JAPAN Round」も一般非公開で行なわれたのに対し、韓国ではオンラインのリーグ予選でふるいに掛けたあと、改めて韓国代表を選出するトーナメント大会を大々的に行なっている。この韓国予選大会は、2007年12月30日に韓国ソウルのCOEXで開催された「Dungeon & Fighter」のオフラインイベント「Dungeon & Fighter Festival」のメインイベントとして開催されており、数千人に上る観客の前で韓国代表が選出された。ちなみに同イベントの来場者数は3万人。単一メーカーの単一タイトルのオフラインイベントとしては日本ではちょっと考えられない規模だ。 こうしたことから、「KOREA Round」も「アラド戦記」のオフラインイベントのひとつとして、多くの観衆が見守る中で開催された。会場には300人前後のキャパシティに対し、延べ1,000人以上が詰めかけ、入場と同時に満席状態となった。客層はやはり男性が中心だが、年齢層は驚くほど若い。小学生低学年から始まり、中高生あたりがボリュームゾーン。20代も多いが、30代は子供の保護者以外はほとんどいないといった印象だ。 日本では100名を超える規模のゲーム大会は予算の都合でなかなか開催できないが、韓国では会場候補がふんだんにあり、かつTVスタジオなら放送権料も見込めるため、あっさり実施できてしまうという背景がある。その反面、入場も無料ながら、ファンサービスといった観点が薄いため、溢れたユーザーに対するケアは一切ない。この辺は文化の違いを感じるところだ。 今大会は時期的に旧正月直前ということもあり、正月にちなみ日本代表は和服、韓国代表は韓服(ハンボック)の衣装で登場。今回マネージャーを務めた日韓のミスたちも和服とチマチョゴリの正月衣装で、場を盛り上げてくれた。
会場デザインは、ステージ中央から10メートルほどせり出した特設コーナーに向かい合うように3台ずつPCが並べられ、日本と韓国がお互い対峙する格好で対戦が行なわれた。ステージには左右に席が設けられ、出場しない選手たちの待機場所となった。周りには観衆がギッシリひしめいており、わざわざ日本からやってきた日本選手がどれほどの腕前なのかと好機の目を注いでいる。超アウェイの環境だ。日本選手もここまでの状況とは予測できなかったのではないか。
■ ゲームパッド対応で大会の進行が冗長化。パッド対応が要検討課題か
ゲーム大会が日々開催されている韓国の大会であるため、試合開始後はスムーズに行くかと思われたが、毎回マシン設定に時間を取られ、各駅停車のような緩慢さで進行した。直接の原因となったのは、日本選手のほとんどが使用しているゲームパッドまわりの調整で、韓国ユーザーは使用しないため、これが思わぬ落とし穴となったようだ。試合直前になって、ゲームパッドをOSに認識させ、その後、選手ごとにキーをカスタマイズしていく。これに10分から20分前後時間を取られてしまっていた。 ただ、この問題に関しては「JAPAN Round」でも発生しており、この部分を「KOREA Round」でどう解決するかについては対策を練る時間は十分すぎるほどにあった。NHN Japanが主催に名を連ねた大会で、なぜ何ら対策を施さないまま「KOREA Round」本番を迎えてしまったのか。ここが不可解で仕方がない。NHN Japanでは本大会を契機に、今後も大会の開催を企画していくとしているが、何より先に解決すべき問題だろう。 もっとも、このゲームパッドの問題については、開発元のNEOPLE側にも責任の一端がある。アプリケーション側で正式対応しているわけではなく、日本側の要望に対して場当たり的に対応し、単にゲームパッドにキー割り当てできるだけという外部ツール扱いなので、認識しなかったり、キーが効かないなどのトラブルが発生しやすい。本大会では自前のゲームパッドを持ち込めるというレギュレーションだったため、互換性問題でトラブルに拍車を掛けた印象もある。大会では公式ゲームパッドを用意するか、ゲームパッド不可にするか。統一的なレギュレーションの設定が望まれるところだ。
余談だが、韓国代表は、ゲームパッドではなく、キーボードを持ち込んでいた。韓国代表は全選手がキーボード操作で、10の指をフル活用してキャラクタ操作を行なう。特に右手側のカーソルキーは、上下左右のキーをほぼ同時に叩くような状態なので、ストロークが浅く、なおかつ同時押下数の許容限界の高いキーボードが必要となるのだろう。 ■ 韓国トップクラスの人気を誇る「アラド戦記」。敗因は母数の差か
「日韓決闘大会」の結末は下馬評通りとなったといえばそれまでだが、実際その観が強い。「JAPAN Round」では、日本のバージョンに落とした状態、つまり韓国側から見ると半年前のゲームバランスで戦ったため、あからさまに韓国選手にとまどいが感じられた。個人戦においては得意のコンボ攻撃が決めきれず、団体戦ではチームプレイがまったくなってなかった。その状態で日本6:韓国5というのはむしろ上々の成績で、2週間後に開催されたKOREA Roundでは、事前に合宿を行なって日本のバランスに慣れ、ウィークポイントだった団体戦も合宿にて克服し、キッチリリベンジした。さすがはE-Sports大国の韓国の代表だと感じられた。 ただ、本大会で重要視したいのは「日本が負けたこと」ではなく、「韓国が強かったこと」だ。これまで数々のPCプラットフォームにおける日韓戦を見てきたが、韓国人だから常に強いわけではない。「Starcraft」、「Warcraft」といったリアルタイムストラテジーは完全に韓国の牙城だが、FPSや対戦格闘ゲームは手に汗握る良い試合をする。MMORPGに至っては、むしろ日本の牙城という印象が強い。 強さの基準となるのは純粋にユーザーの母数で、母数が多ければ多いほど強く、少なければ弱い。つまり、韓国の強さは、現地で本当に韓国で人気が高いタイトルであることを意味する。日本のユーザー数は、未発表ながら登録ベースで70~80万と予測されるが、一方韓国は500万を上回る。同時接続者数では、1万5,000対15万と10倍の開きがある。 15万という数字は、韓国でも極めて大きく、オンラインFPS「Sudden Attack」、オンラインアクション「Dungeon & Fighter」、MMORPG「World of Warcraft」で3強を形成している。「Dungeon & Fighter」は言わばカジュアルオンラインゲームの筆頭格で、基本的なゲームデザインは、「ファイナルファイト」、「キャプテンコマンドー」、「バトルサーキット」、「ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ」といったベルトスクロールアクションのオンライン版という印象を受けるが、韓国ユーザーの遊び方は対戦格闘ゲームに近い。日本産のゲームをモチーフにした韓国産の対戦格闘ゲームという定義がもっとも適しているかも知れない。 こうした遊び方は低年齢層まで徹底していて、彼らは学校帰りに、インスタントのカップ麺(「アラド戦記」とタイアップしており、シリアルコードを入力するとゲーム内アイテムや称号が獲得できる)で腹ごしらえをし、ネットカフェで1~2時間遊んでいくという。ダンジョン探索なら1~2時間は短いが、決闘ならそれなりに手応えのある内容が楽しめる。本大会は20歳以下は残念ながら参加できないが、こうした土壌が豊かなユーザー層を育てているのではないかと感じられた。 その他の敗因としては、前述したように韓国でゲーム大会も頻繁に開かれているため、オフライン大会の雰囲気に慣れているところだ。実際、韓国代表選手は大会の常連ばかりが集まってた。満場のユーザーがいる中での大会経験は何にも代え難い経験となる。 また、サービス開始時期が韓国が1年あまり早かったのも大きい。日本サービスもすでに1年2カ月あまりが経過しているため、標準的なゲームプレイに差はないが、極めて低いドロップ率のレアアイテムの所有率に差が付いていた。特に属性防御系やHPをブーストするアバターの所有率に明確な差があり、日本代表がいくらコンボを決めてもなかなか相手のHPを削れないという状況が目立った。 もうひとつは、韓国選手はキーボードでプレイしているところだ。日本人の感覚から言って「アラド戦記」はゲームパッドのほうがプレイしやすいのは確かだが、韓国選手の次元の違う動きを見てると、ポテンシャルとしてはゲームパッドよりキーボードのほうが高いように思えた。特に顕著に差が出ていたのが上下軸への高速移動だ。分身するような挙動で左右へ小刻みにダッシュを繰り返し、通常操作ではありえないスピードで上下移動を行なう。この操作は、ゲームパッドよりキーボードのほうが構造上有利で、極めるならキーボードと言えそうだ。
「アラド戦記 2007-2008 日韓決闘大会」は、“2007-2008”とあることからもわかるように、今後定期的に開催されることが予定されている。同時に日本独自のイベントも企画が進められており、今後日本でも大会イベントを通して「アラド戦記」が盛り上がる可能性はある。懸念事項としては前述したように、大会進行やルールまわりの練り直しが必須だということであり、それらを乗り越えた上で、次回のKOREA Roundでの捲土重来を期待したいところだ。
□NHN Japanのホームページ (2008年2月4日) [Reported by 中村聖司]
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