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会場:NHN Japan本社
注目すべきは、NHNの日本法人NHN Japanの売上だ。2006年の70億9,300万円に対し、2007年は93億6,500万円まで売上を伸ばしている。営業利益は前年比88%増の11億1,800万円。同社は日本では未上場であるため、売上の内訳は残念ながら不明だが、この数字は日本のオンラインゲームパブリッシャーとしてはトップクラスに位置する。2007年はオンラインゲーム市場全体の傾向として不作に見舞われ、オンラインゲームパブリッシャーの多くは減益となる見込みだが、その中で32%の成長を記録しているのは立派だ。
NHN Japanは、この年の10月に、代表取締役社長の交代という大きな節目を迎えた。NHN Japan創業者の千良鉉氏が取締役会長に退き、新たに副社長の森川亮氏が2代目の代表取締役社長に就任した。この人事異動は、NHN Japanの2008年のビジネスにおいてどのような意味を持ち、ひるがえってオンラインゲームファンにとってどのような影響をもたらすのか。森川社長にNHN Japanの2008年のビジネスについて話を伺った。
■ 森川氏の経験を活かして成長を遂げたNHN Japan。2007年は集客的に踊り場の年に
森川氏: 2006年からパブリッシング事業を本格的に開始しました。それまでは自社の開発力という面でボードゲームやカジュアルゲームを開発する能力はありましたが、大型のゲームを作る能力はありませんでした。そこでパブリッシングをやることで、お客さんの楽しめるラインナップを増やすことに努めました。やってみますと、大型のゲームを遊ぶお客さんのスタイルとカジュアルゲームを遊ぶお客さんのスタイルが異なることがわかりました。 それ自体はわかってはいたのですが、それらを混ぜた時にコミュニティがどのようになるのかを見てみたかったのです。2007年は、コミュニティを混ぜながら個別に運営をしてビジネスを組み立ててきました。比較的コアな方と、カジュアルな方とではお互いに仲良くないこともありました。結果として「女性は入りにくいな」とか、本格的にやろうとしている人からすると「甘ちゃんが沢山入ってくるとイヤだな」といった状況になり、コミュニティよりもゲームの中に籠もる傾向が出てきましたので、夏ごろに多少わけることにしました。 結果的にそれぞれのお客さんが専門性を感じてくれて、ゲームを遊びながら外のコミュニティでもコミュニケーションをとるような形で活性化してきました。上半期はそうした実験的な試みもあり成長は若干鈍化しました。下半期からは明確にそこを分けました。大型のゲームは大型のゲーム、カジュアルゲームはカジュアルゲームの作り方や運営の仕方をそれぞれ強化していくことで、双方が成長してきました。ドメインが明確になったことと、ドメインごとの方向性が明確になって、より早いスピードで成長しています。 編: 12月に社長に就任されてから、またひとつ仕事のレイヤーが上がりました。社長になって改めてNHNを見渡してみてどのような感想をお持ちになりましたか。 森川氏: 元々私は事業の統括をやっていまして、そこから一度事業の統括を離れて管理部門の統括をしていました。今の会長が本社のグローバルの担当になりましたので、副社長という位置にありながら社長と同じような権限で全社を見ていました。ですからそんなに社内に対する変化はありません。業界もまた変化しており、会社も大きくなっていますので、こうした形で結果的に良かったのではないかと思っています。 編: 森川さんがNHNに入社した頃に比べると会社の規模はひょっとすると10倍くらいになっているのでしょうか。 森川氏: 20倍くらいですね。当時ハンゲームジャパンだったのですが、私が入った頃は30人くらいいまして、渋谷の雑居ビルで運営していました。ネイバージャパンと合併しまして、2003年のうちに100人くらいに膨らみました。恵比寿に移った時は75人ぐらいだったのですが、毎年100人から150人ずつ入ってきています。現在は650人くらいいます。大所帯ですから先を見て組織を作っていかないといけません。 編: 日本テレビやソニーのような日本大手企業を退職されてNHNに入ったのはどういう考えからなのでしょうか? 森川氏: 私は子供の頃から音楽をやっていまして、音楽の道で食べていこうと思っていたのです。大学時代は勉強もせずにバンドに明け暮れていました。そのとき就職活動も少ししかせず、たまたま日本テレビの内定が決まりました(笑)。日本テレビに入ったら音楽活動をしながら音楽の仕事ができればいいなと思っていました。しかし大学はIT系の学科だったものですから、IT系の部署に配属されたのです。勉強もしていなかったし困ったなと(笑)。辞めたいな辞めたいなと思っていたのですが、どうせ入ったのだからとことん勉強してやろうと思い、その分野を勉強しました。 私は元々音楽系の分野が好きなので、今までやってきたことを形にしたいなと思いました。当時インターネットが出始めていたので、経営を勉強して新規事業の部署に移ったのです。世の中を見渡したときに、楽しい事業というものはあるのですが、ある意味作り手側の一方通行なものが多いと感じたのです。テレビにしろ色々なエンターテイメントにしろ。インターネットの時代になればこれが変わるだろうと思いました。新しいオンラインならではのエンターテインメントができるだろうと思ったのです。 日本テレビにいながら色々な事業を立ち上げて、それでも大きな会社であればあるほど難しさに突き当たりました。そこでまずは日本という枠を超えたいなと思ったのです。その時ソニーは絶好調の頃でハードウェアとコンテンツを結びつけて日本を変えるんだという強いビジョンがありました。それに賛同して、コンテンツも技術も勢いもあるのでそこで日本のエンターテインメントを変えられるのではないかという熱い思いを抱いて日本テレビを退職し、ソニーに入社したのです。 実際ソニーに入ってみると、ハードウェア寄りな認識も根強く、日々戦いがありました(笑)。それで若干疲れまして、困っているときにブロードバンドの会社を作って、それまでのソニーの強みに依存しないものをやるという誘いを受けました。当時は企画段階だったのですが、ソニーとトヨタと東急という強いパートナーに恵まれていたので、そこで自ら志願して事業モデルの立ち上げから統括までやりました。 3年ほどドブ板営業をやりながらビジネスを成長させました。当時ジョイントベンチャーだったので、社名にソニーとつけられませんでしたが、1からビジネスを立ち上げて、僕が入ったときは10人くらいから150人くらいに成長したのです。それがすごく良いきっかけになりました。ある程度自信がついたのです。ただ、それがネットに映像配信するという事業だったのですね。 編: 早すぎましたか? 森川氏: ええ。なにせ会社を作ったときにブロードバンドが普及している世帯が20万世帯だったのです。とにかく最初にやって成功してやろうとかなりつぎ込んだのですが、道半ばで……ですね。私が辞める時にはまだ元気だったのですが、やるのであればもう少し自由にできる環境のほうが良いなと思ったのです。ジョイントベンチャーだと大手の株主さんがいて、コンテンツ面でも色々しがらみがありました。もっと自由にやりたかったのです。 日本テレビでも映像配信の事業をやりましたが、映像配信はネットで流すという意味においてさほど強みが出ないなと思ったのです。著作権の問題や肖像権の問題があるのと、ニコニコ動画のように映像を流したときに映像に対して茶々を入れたり突っ込むことはできると思うのですよ。しかし大本の映像に直接参加することは難しいわけです。ニコニコ動画さんもあくまで映像が主役ですよね。 それに対してオンラインゲームは、客さんが入り込んでその中のコンテンツになりうるものだと思ったのです。当時、韓国ではブロードバンドが進んでいて、オンラインエンターテインメントというものが形になってきていることに注目しました。そういう分野で働きたいなと思ったときに今の会長と会って移ることになったのです。 編: 当時やりたかったことと、今やっていることはそんなに変化はなさそうですね。 森川氏: オンラインのエンターテインメントを1つの産業にしたいという思いがありますよね。今はオンラインゲームと俗に呼ばれていますけれども、本当はゲームと呼ぶ必要はなくて、インタラクションして楽しいものがあればお客さんが集まってくる。ひとくくりにそういう産業ですと言えるようなものができればいいなと思うのです。 編: 以前やられていたのはコンテンツの配信サービスですよね。今やられているのは無形のサービスそのものです。その点では確かに質的な変化があると思うのですが、これはご自身でどのように変化していったのでしょうか? 森川氏: 当時テレビ局にいたので、否定しながらも映像コンテンツの強みというものが体に染み付いていたのです。ソニーに移って映像配信をしたときもまずは有名な番組を持ってきて流そうということからはじめましたが、難しかった。当然ながらテレビで見れば無料ですし、綺麗です。強いて言えばいつでも見られるという環境はあるものの、ネットで映像を見ることはライフサイクルにも根付いていないですし、本質的に価値が落ちてしまうわけです。 それですごく悩みました。そこで考えたのは、他で見られないものを流すしかないなということが1つと、インターネットなので映像を使って何らかのコミュニケーションがなければつまらないだろうということでした。映像を見ながらチャットができるシステムや、映像をリコメンドしながら盛り上がるコミュニティとか、当時細々とチャレンジしていました。 編: 今のニコニコ動画が提供しているようなサービスを既に2000年頃にやられていたわけですか。 森川氏: まあ、あれに近い、画面の上をテキストが流れるという形ではなくて、下でチャットをするという仕組みでした。例えば野球を見ながらチャットする仕組みをプロ野球の球団と組んでやっていました。当時私はPCを担いで毎日球場に行ってオペレーションをしていました。 編: ニコニコ動画が出てきたときはどのように感じましたか。 森川氏: 正直嬉しかったですね。映像をネットで配信する文化が根付いてきたのかなと思い嬉しくなりました。ただ、ビジネス的にはまだ道半ばではないでしょうか。映像もそうですが、ネットで楽しむものがライフサイクルとして定着しないと既存の業界は変わらない。ニコニコ動画みたいなものが出ることによってようやく世間に認識されたのかなと思います。
■ 「面白いということを提供側が言うべきではない」。森川氏独自の経営哲学
森川氏: ソニーに移ると当然コンテンツは作っていますが、パッケージ中心ですよね。映画会社の思いやレコード会社の想いはすごく通じるのですよね。一方でテレビはある意味で軽薄な文化がありますよね。よくよく考えると、マーケットインかプロダクトアウトの違いではないかと思うのです。パッケージというものは思いがあって作りこんで出す。一方でテレビやオンラインゲームはお客さんが集まってそれらを吸い上げてコンテンツを作るという違いがあるなと思いました。 映像分野ではそういう形ですし、音楽はたとえがちょっと難しいですが、強いて言えばCDとライブの違いみたいなものかもしれないですね。ゲームでいえば、自分がビジネスとしてやってみて、コンソールの方とお話しする中で決定的にここは違うなと思いましたね。 編: NHN Japanは既存のゲーム会社とはかなり組織形態が異なるように思いますが、社内の仕組みは、実は日本テレビを参考にされていたりするのですか? 森川氏: どうなんでしょうね(笑)。ハンゲームジャパンに入社当時はテレビに近いビジネスだろうと考えていました。何が大事かといえば、当然コンテンツ力を高めることも大事ですが、お客さんの反応を見てどれだけ早いスピードでサービスに活かせるかが大事だと思ったのです。結果としてどれだけ裾野を広げられるのか、メディアとして色々な価値観を高めながら動かしていくことが大事だなと思いました。そこが成長にいきたと考えています。 編: G★での発言でもうひとつ「極端な話ゲームは面白くなくてもいい。ゲームを通じて人と人とを繋ぐのが大事」という印象的な発言がありました。この真意を聞かせてください。 森川氏: 面白いということを提供側が言ってはまずいと思うのです。お客さんが決めることであって、我々が言うことではないのです。それが深い意味なのですが、言い過ぎると色々問題が出てくるのでやめます(笑)。基本的にはお客さんが面白いと思うものをやればいい。そのためには想いが強すぎて、あまりルールを厳しくしたり、この段取りでやってくれないと遊べないというのではなく、お客さんの遊び方をうまく受け止めながら新しい形にしていくのが重要だと思っています。そうでなければ長く成長もできないし、広がりもないと思います。 編: しかし、日本のゲーム業界はどちらかというと感情が先行しがちですよね。例えば、ゲームクリエイターがマイクを握って「渾身の想いで作りました、絶対に面白いので遊んでください!!」という風景が一般的です。森川さんはそうした慣習に異を唱えたいと? 森川氏: それはそれで確かに素晴らしい文化ですし、色々な国の方とお話しすると、そこが日本の強みでもあります。実際、海外の方から、モノを作るときにお金よりも文化や魂を語る国民はあまりいないのではないかとお褒めの言葉をいただくのですが、一方でオンラインゲームを作るときにそれがお客さんにとってどれだけハッピーになれるのかと考えるとあんまり強すぎると良くないと思うのですね。その想いを束ねながらいかにマネージメントするのかが重要だと思います。 当然弊社にもこれまでにゲームを作っていた方やゲームに対する想いの強い方もいます。一方で、お客さんに対して上質なサービスを提供したいというホテルマンみたいな方もいます。その両者をいかにぶつけて最終的にユーザーさんから良いと思われるものを提供し続けるかということが一番マネージメントの難しいところかなと思います。 編: 森川さんのゲーム経験はどういったものをお持ちですか。これまでのキャリアを拝見する限りゲームとは縁がなさそうですが。 森川氏: 嫌いというと怒られてしまいますが、ハマるほどではないです。正直ゲームに関してあまり詳しくありません。もちろんビジネスとして勉強のために売れているゲームを買って週末勉強したりしています。一応すべての機種を買って最近Wii-Fitを子供とやったりしていますけれども。逆にハマらない分、客観的に見られます。最近はフォーマットの時代だったと思うのです。ただ、これからはもう少しお客さん寄りのコンテンツの時代になるのではないかと思うのです。 編: ちなみに最近遊んだ中で面白いと思ったものと、その理由を教えてください。 森川氏: 最近では「モンスターハンター フロンティア オンライン」ですね。MMOではありませんが、一緒にパーティーを組みながらああいうリアリティのあるモンスターを倒す臨場感は今までにないオンラインの価値だなと思いました。もちろんスタンドアロンでも楽しいですし、オンライン向けに設定されているなと思いました。 編: NHNさんのメインビジネスである韓国産のMMORPGについてはどのような印象をお持ちですか? 森川氏: 最近では弊社でサービスしている「アラド戦記」をやりこみましたが、言葉を選ばずに言うと、韓国のクリエイターというのはものすごくビジネスを意識してゲームを作っていますね。過去の成功や色々なビジネスの成功例から色々なエッセンスを取り入れながらうまく作っていると思います。だからすぐビジネスになりやすいものが多い。その分似たようなものが多いというのがマイナスポイントです。 編: 2007年12月の時点ではハンゲームさんは2,457万人の登録IDと14万人弱の同時接続という実績を残しています。この数字をどのように見ますか。 森川氏: 集客という面では踊り場にきたのかなと思います。なぜなら登録する会員も増えているのですが、やめてしまう方も多かったというのが2007年でした。前半に先ほどお話したように、居場所を作って上げられなかった。田舎ってお隣同士で凄く仲が良いですよね。すれ違って挨拶するですとか。これが都会になるとすごく寂しくなるのです。こんなに人がいっぱいいるのに友達ができない。すぐ寂しくなる。入ってきてもすぐにやめてしまう人が多いのです。ちょっと不快な体験にあったり、嫌な目にあったりするとそれっきり来なくなりますよね。それに我々は気づかなかったのです。 人がいっぱいいるのだから楽しいでしょ、暖かいでしょと思っていたのですが、実は違って、そこはもっと深く入り込んでその人たちの幸せを考えてあげなければならなかった。それがようやく気がついた反省点です。今年は入ってすぐに友達ができるとか、傷つかずに楽しい経験ができるとか、新しい人が馴染む環境づくりをサービス的、システム的にやろうと思っています。 編: 言い換えればハンゲームはいつの間にか東京みたいな存在になっていたと? 森川氏: そうですね。コミュニティのマネージメントは国や地域のマネージメントに近いのです。まずは夢がなければならないし、それを支えるためには税金や治安や教育の問題がありますよね。そこで暮らす温かみや夢がないと、いくら無料でも人が寄り付かない。色々な価値観のバランスがあって、そのバランスが大事だなとすごく感じます。 編: 私はアジアを定期的に回っています。アジアと日本のオンラインゲーム市場はさまざまな点で違いがありますが、大きなものとして日本はMMORPGが人気で、カジュアルゲームがなかなか根付きにくいことが挙げられます。最初は勢いが良くてもなかなか持続しない。なかなか3年4年の事業として成立しにくい。これはなぜだと思いますか? 森川氏: 日本人の気質だと思うのです。RPGって結局コツコツやればいつかは成功するじゃないですか。つまりある意味でリスクが低いのです。対戦ゲームは勝ち負けの世界なので競争なのです。常に自分を磨いて、戦い続けなければならないのですが、比較的傷つきやすい人が多い国ですと、負けると落ち込んでしまうわけです。特に段々濃くなってくると瞬殺みたいになるじゃないですか。それが個人の体験ですと非常にインパクトのあるものになる。単純に戦って勝つことは楽しいですよね、というバランスでいきますと大抵失敗してしまいます。最初に勝つことが大きな経験だと思うのです。勝たせてあげるためにはどうしたらよいのか。負けたときにその人を支えてあげる環境をどうやって作るかとか。コミュニティが集まる部屋のバランスとか全体を作ることがすごく必要だと思います。 編: また、海外と日本で、産業構造的に大きく違うのは、アーケードゲーム市場があるかないかです。日本のゲームセンターは、「ストリートファイター」や「バーチャファイター」から始まって、現在も「機動戦士ガンダム 戦場の絆」、「三国志大戦」シリーズなどなど、対戦タイプのゲームの人気が高い。そこにいるのは毎日のように通って1日万単位遣い込んでますという猛者ばかりです。アジアではそれがほとんどない。ですから、日本では熱い対戦を望む層はアーケードに流れ、比較的大人しい層がオンラインに流れているのではないかと見ています。 森川氏: いくつかの見方はあると思います。グローバルのワークショップで各国の代表が集まったときに、1人用ゲームのマーケットの話をしたのです。傷つきやすいタイプというのはどちらかというと1人用ゲームにいくケースが多いという話をしたところ、アメリカもそういう状況が見受けられたと。日本やアメリカでは1人用ゲームのほうが受け入れられるのではないかという仮定がそこでできたのです。 実際はわからないですが、その中でも女性や今までゲームをやらなかった人にそういう傾向がみられるようでした。弊社の社内データでも女性は圧倒的に対戦が嫌いで、コツコツ1人でやって終わる場合が多いのです。対戦に関しては勝ち負けがあったときお互いを褒めるのかけなすのかも重要だと思いました。オンラインの場合はけなしあって終わることが多い。お互いが見えないということが大いにあるのかもしれません。それが自慢になるのかといえばそうでもない。そのバランスが変わればオンラインの対戦でももう少しポジティブに受け入れられるのではないかという可能性を感じます。
■ チャネリングビジネスに固執せず。今後は世界から人材を登用
森川氏: (笑)。私たちはチャネリングに満足しているわけではなく、コンソールのプラットフォームと同じような考え方です。一時期のプレイステーションのようなものだと思っています。多分新しい価値が出てくればそこにお客さんが集まると思うのです。我々は逆に今のチャネリングという形態にこだわりすぎると続かないと思うのです。オンラインなので、1度出しているプラットフォームでも柔軟に変えられますからね。 今「PURPLE」(編注:NHNグループの運営プラットフォーム)を使い始めていますが、それは最終的にはAPIとなって開発会社さんが自由に使って自社サイトでゲームサービスができるようになれば良いと思うのです。プラットフォームがアップデートしていきますので、開発会社さんはゲーム開発に専念できて、どんどん新しい次元のゲームができるようになるわけです。そうすると永遠に成長し続けられますよね。今は入り口というか単純につないだだけです。これからは開発会社さんが自由にパブリッシングできるような時代が来るのではないでしょうか。 編: そのシナリオが展開されると、ハンゲームをコアに、ゲーム開発会社各社にノードが伸びていっていよいよ不動のものになります。それがNHNさんの狙いということになりますか? 森川氏: 不動の地位を狙っているのではなくて、業界が大きくなることが大事だと思うのです。そのためには開発会社が元気にならないとモノが生まれないので業界が大きくならないのです。開発会社さんが直接良いものを出してビジネスになる環境を作らない限りそんなに大きくはならないと思います。我々はそこにお手伝いをしたいということですね。 編: 質問を変えますが、ハンゲームの強さの理由とは何だと考えていますか? 一番最初にゲームポータルビジネスを始めたからなのか。それとも何か他に決定的な要因があったなのか。そのあたりはいかがでしょう? 森川氏: ポータルって何だろうと。色々な方とお話をします。コンテンツがいっぱいあるのがポータルだとか、お客さんがいっぱいいるのがポータルだと勘違いされる方が多いと思うのですが、そうではない。最初はただのサイトなのです。そこからポータルと呼ばれるところまで成長させるにはどのようにしたら良いかということが非常に重要だと思うのです。 まずお客様とコンテンツを提供している人たちの価値をまずどのように作ってWin-Winの関係にしていくかということが重要です。また、長く付き合っていればメリットがあるような価値をどのように作っていけるかということもあると思います。お客さんもコンテンツも自然に増えていくという形になります。そうなったらバランスや価値の作り方が変わってくるわけです。 人が集まれば田舎から都会に変えていかなければならないし、ゲームの中身も変えなければならないかもしれない。APIをもっと追加しなければならないかもしれない。ステージによってもその姿形がどんどん変わっていくのに、単純にコンテンツを集めればOKだと思っている会社だと逆に難しいと思います。そういうサービスを行なっている会社さんもいますが、「大丈夫なのかな?」と思ってしまいますね。 編: 千(良鉉取締役会長)さんが、以前、インターネットライフのロイヤリティの向上が一番大事だとおっしゃっていましたがまさにその考え方ですね。 森川氏: はい。ですから、最近では国の政策や法律とかすごく気になるのです。ここにいる我々が日本に住んでいて、日本で生まれたからたまたま日本に住んでいるわけです。生まれたときに国が選べるとしたら果たして日本という国を選ぶのでしょうか? オンラインのお客さんというのは生まれたときから住民ではなく、自分で住みかを選べるのです。そうするとその国を選びたいと思う何かが必要なわけです。それらを作らない限り永遠に栄えていくことは難しいと思うのです。規制緩和や教育の仕組みなど環境を作っていくことが重要だと感じます。 編: ハンゲームを国になぞらえるのは非常に面白い考え方だと思います。千会長のお話を続けますと、その一方で、千さんは日本から世界へのコンテンツ発信に非常にこだわっていた印象が強い。日本にはいっぱい宝の山が眠っている。なんで誰も使わないのかわからないが、だったら自分が使いたいと。千さんは韓国人なのに日本人以上に日本の持つコンテンツの価値をよく理解されていて、しかもそれを実行に移されて成功されました。この点について今後はどうなっていくと考えていいのでしょうか? 森川氏: 会長は日本人ではないからこそ、日本が良く見えるということもあります。また、日本を愛しすぎているところもあると思います。私自身は日本の良いところも悪いところも含めて各国の強みを取り入れて新しいステージを作っていかなければないと思います。お仕着せではなく最終的にオンラインのエンターテインメントがどうあるべきかというのは日本人が作る必要はない。技術であれば韓国、人は中国とか。そうしたものを取り入れてエンターテインメントの最終形というものを作るのが一番重要だと思います。開発者とアーティストとデザイナーと企画者が一緒にそろって徹底的にお客さんの声を聞いて具現化するのが重要だと思っているのです。今ではそれがあまりどの会社さんでもできていなかったので、今年からチャレンジしたいと思います。 編: 世界への発信はやっていくけれども、作り手の国籍にはこだわらないし、日本発のコンテンツかどうかもこだわらないと? 森川氏: そのとおりです。 編: それではコンテンツ作成の部分に関しては日本以外のどこが有望だと考えていますか? 森川氏: それを真面目に考えている会社は実はあまりないというのが個人的な感覚です。我々が最初に示さなければならないので、まずは弊社で作らなければならないと思うのです。日本人ではなくても色々なところから集まって作ればよいのではないかという考えです。今はどちらかといえば3Dの空間で街を作ったりといった箱の話をしていますが、あまり本質的な話ではないと思うのです。もう少しお客さんの気持ちですとか深いものを考えて作っていかなければならない。 編: 言うのは簡単ですが行なうのはとても難しいですよね。たとえば、文化の違いは色々な意味で障壁となりえますよね。 森川氏: 先述のグローバルワークショップの際に、中国とアメリカの方は実は韓国のオンラインゲームよりも日本のオンラインゲームのほうが良いのではないかという発言が出たのです。みんな結構びっくりしたのですが、中国もアメリカもほとんどの人が低スペックのPCで繋げていて、回線速度もそんなに速くないのです。ですからマスを狙うとしたら、2Dのスペックの低い簡単に遊べるゲームのほうが向いているのではないかと。 どちらかというと我々はそういうところを強化してコミュニティ色を強めて、もっともっとライフスタイルの中に入れるものを作りたいのです。もちろん日本のお客さんを満足させることは重要なのですが、結果として他の国でも受け入れられる可能性が高いのではないかと思います。そこはパイの設定の仕方だと思うのです。コアなところをつかもうとするとそこに集中するので、他にもっていくと結構難しい。他のニッチなところと組み合わせてグローバル展開するしかない。マスを狙おうとするとその時点である程度普遍的なものができあがるのではないかと個人的には思っています。 編: 例をあげますとコーエーさんがシンガポールでKoei Entertainment Singaporeという子会社で、まさにアジアのオリエンタルな環境で「三國志 Online」を作っています。今後そういった環境を作っていきたいと? 森川氏: そうですね。 編: 実際そういった取り組みは社内で行なっているのでしょうか。 森川氏: 実際デザインに関して中国にオフィスを作り現地でオペレーションを行なっています。それとCSの一部ですね。 編: 中国でデザインを行なっているのは、コスト以外の狙いがあるのですか? 森川氏: コストもありますし、スピードの問題もありますし、いろいろな要因があります。最終的には今年か来年には採用をグローバルにやりたいなと思っています。例えばスタンフォードだとか中国の清華大学ですとかインドのITTとかそういうところから直接採用して、我々の会社がある意味モノを作るのに最適であるという環境を提供することで、みんなが競争して成長していけるのではないかと考えています。 もちろん文化も大事なのですが、お客さんが喜ぶものに集中することが大事だと思うのです。私はこういう生き方ですとか、これが好きですというのはお客さんが言うのは自由なのですが、作る人が言ってはダメだと思うのです。そういった違いは日本人同士の中にもありますし、国や文化の違いといってごまかすことは日本人の将来にとっても良くないと思うのです。
■ 目標は日本最良のインターネット企業。韓国本社とはパートナー的な関係
森川氏: はい。社内では日本最良のインターネット企業を目指すというビジョンを掲げています。最良というのは数や量を求めていくのではなく、クオリティを高めることを意味しています。優秀な人が集まるですとか、技術力が高いとか、サービスレベルが高いですとか、そういったところを突き詰めると結果としてお客様もコンテンツも人も集まると。そういう会社にしたいと思っています。ただあまり人は増やしたくないのです。逆に優秀な人がちょっとずつ入ってきたり、中で人が成長したりしてよいものが出せれば良いなと思います。 編: 海外に子会社を作っていくような展開ではなく、あくまで日本からということになるのでしょうか。 森川氏: 将来的には海外とも連携しますけれども、マネージメントのスタイルはまた変わると思うのです。日本は日本、中国は中国ということになると、そこにいる人たちの成長もすごく心配なところがあって、まず1箇所で色々な人が喧々諤々の議論をしてお互い高めながら本当に世界で一番良いものを作るというのがすごく大事だなと実感しているのです。なんとなく日本の会社はグローバル展開していても日本人で固めて何か日本のやり方を押し付けるようなやり方があると思うのです。もちろん良いものもできるのが、日本人のいいところですね。しかしそれでは国際競争力という点で心配なところがあります。 日本のゲームメーカーさんがグローバル展開しているところはありますが、やはり働いているのは日本人の方が中心です。段々思考も日本人的な思考になってきて、段々濃くなってきてしまう。任天堂さんみたいに新しいものを出していく会社もありますけれども、もっともっと色々な国の人が入ってきて話し合いながらお客さんの一番求めるものを出すことが重要だと思っています。 編: しかし、これまでのお話の中で韓国本社の名前が一度も出てきませんね。ここがNHN Japanさんの良くわからないところですが、日本の裁量がとてつもなく大きい。他のメーカーさんの場合ですと、韓国の日本子会社は単なる出先機関でサラリーマン的にとりあえずやってますみたいなところもあれば、NHNさんのように、まるで韓国が無いかのように大きな存在感を示されているところもありますよね。 森川氏: 韓国のNHNはすごく優れた会社なのです。常に競争しながら成長しているのです。競争というものは良いものを認める文化があるということなのです。我々と本社の関係も、悪いところがあれば反省するし、良いところがあれば受け入れる、コラボレーションの形なのです。もちろん、株式上は上下関係がありますが、基本的にはお互いが良いところを認めながら、お互い成長していく形です。関係がないわけではなく、より関係が強いのです。 編: 普通親子会社は従属関係になりますが、いわばパートナーのようですね。韓国本社から戦略的指示は来ないのですか? 森川氏: むしろ日本の戦略推進を助けてもらっていることはあります。エンジニアが足りないというと開発協力をしてもらったり、そのビジネスの詳しい人に来てもらってある程度立ち上がったら帰ると。助け合うような関係です。 編: グローバルに関して質問ですが、台湾や中国を見ますとNHNの影響力が非常に小さい。韓国メーカーではNEXONさんが大きな存在感を示しています。これは何故なんでしょうか? 森川氏: サービスモデルの違いだと思います。我々の場合は最初からマスをターゲットにして、じわじわとシェアを上げていきながらロイヤリティを高めていくのですが、普通のコンテンツの会社だと、コンテンツを投入して面白いかつまらないかですので大きな違いなのです。マスとしてやる意味があるのかとか、そこに競争力があるかとか、誰がやるかとかそのあたりだと思うのです。 編: コンシューマゲーム市場についてお伺いします。自社での展開についてどのように考えていますか? 森川氏: NHN Japanでは当分ないと思います。 編: 各プラットフォームごとにそれぞれオンラインサービスをやられています。部分的にはハンゲームさんに近いコミュニティサービスを行なっているところもあります。各社の取り組みをどのようにごらんになっていますか? 森川氏: とてもよくできているなと思います。作られていることがすごく大事だという価値観の中で作られていると思います。もちろん作られていることは大事なのですけど、そこからどういう風にサービスをして価値を高めていくかにはまだちょっと文化的な違いはあるのかなと思います。うまくいえませんが。プロダクトアウト的な思考からモノができているというアプローチですね。 編: やはり森川さんから見てもったいないなと思うところもあると。 森川氏: ありますね。あまり言ってしまうとあれですが。 編: 以前、ハンゲームさんは、Yahoo!さんやgooさんをパートナーにBtoBのビジネスを提供している時代がありました。Playstation NetworkやXbox LiveなどにNHNのノウハウやテクノロジーをライセンスすることは今後ありえるものなのでしょうか。 森川氏: 無くはないと思います。お客さんの声が大きくなってここでもやって欲しいという声が強くなれば、チャレンジすることはあると思いますね。今はあまりお客さんの声は大きくはないのかなと思っていますが。 編: 実際コンシューマのオンラインサービスを利用されているユーザーとハンゲームユーザーさんは、どの程度被っていると考えていますか? 森川氏: 数十%はあると思います。色々なデータがありますが。テレビでゲームをやることと、PCでゲームをやることの違いだと思うのです。テレビの場合って1人暮らしの場合は別ですが、他の人から見られることを前提に遊ぶものではないですか。一方オンラインゲームをやっている姿を他の人から見られて気持ち良いか気持ち良くないかということが1つあると思います。後はキーボードを使ってコミュニケーションをとりますが、やりやすいのかやりにいくいのか。 コンソールでオンラインゲームをやると、なんとなく違和感を覚えることがあります。ネットで映像を見るときの違和感とはまた逆の感覚だと思うのです。いつかは無くなるのだと思うのですが、今はまだ抜けないのではないかと思います。コンソールのインターフェイスにまだ改良の余地があるのかもしれませんし、もう少しそれにあったコンテンツが出てくるのに時間がかかるかもしれない。それはわからないです。
■ 今後はコミュニティのためにポータルを分割。モバイル展開は時期未定
森川氏: 我々がターゲットとしているドメインとしてはカジュアルゲームアンドコミュニティというところです。ここはゲームを増やしていく道と新しい道を追加しようと思っています。それは新しいコミュニティとアバターが融合したゲームなどです。アバターもまた次のアバターを作ろうと思っていますし、コミュニティも都会的な寂しさから切り離された暖かいものを作ろうと思っています。 そして次の成長エンジンを作ろうと思っています。大型のゲームは単純に増やすということではなく、ゲームを遊ぶことによってより価値が高まるようなコンテンツですね。ひとつ考えているのはお客さんが自分を発信できるようなツールです。ノウハウや画像映像を発信して、自慢できるものに繋がるようなものです。 あとは複数のゲームを遊ぶことでより価値が高まる機能も盛り込もうと考えています。また、ハンゲームをご卒業したちょっと年齢の上の方向けのサービスも強化して、新たなドメインにしたいです。その次にモバイルのビジネスですね。ハンゲームのカジュアル的なものからスタートして、3つのドメインが3つとも提供できる環境を作りたいと思っています。上半期から随時提供していこうと考えています。 編: まず、カジュアルゲームとコミュニティサービスについてですが、G★の際に「ハンゲーム2.0」と呼称されました。とてもインパクトのあるキャッチフレーズですが、もう少し具体的に教えてください。 森川氏: あまり具体的なことはお話できないのですが、今はサイトがあってアバターがあり、ゲームがあり、コミュニティがあります。しかしただ単にあるだけなのです。もう少しこれらを融合させたアイデアなのですが、今たまたまWebのJavaとかHTMLとかでできているものと、C言語を母体にしたプログラムと呼ばれるものが融合していないですよね。それらを融合させた使い勝手だったりサービスモデルだったりというのを考えています。お客さんが気づかないうちに相互に行き来できるようなコンテンツです。 編: 現在、ソフトウェア業界では、Webアプリケーションが静かなトレンドですが、まさにそういった発想でしょうか。 森川氏: たまたまCでアプリケーションを作る文化と、Webでアプリケーションを作る文化が異なるだけで、お客さんとしてはこだわる必要はまったくないわけです。サイトに来て、そのゲームに行ったり、掲示板を見て書き込むという流れが自然になればよいと思うのです。技術は当然別々なのですが、その違いを意識させないビジネスモデルやサービスモデルや流れを作りたいなと。 編: 言い換えると任天堂さんのWiiにMiiというキャラクタがいます。Miiはゲームの中でも登場したりしますが、ああいったシームレスさを出していきたいと。 森川氏: そうですね。コミュニティについてもそうです。 編: ハンゲームを卒業された方に対するサービスとは何でしょうか? 森川氏: より年齢層が高めの方に向けたサービスを考えています。もっとも、そういう方々が果たしてコミュニティを求めるのかということもありますし、そういう方々の求めるコミュニティも考えなければならないなと。まずは場所を作ってその方々のライフスタイルを自分たちの間で考えて提案をしようと思っています。それは下半期に向けて準備しています。 編: 以前、千さんが年齢別のサービスがあってしかるべきとおっしゃっていましたが、その延長線上のサービスですか。 森川氏: あれから色々苦労したことがありましたが、要するにライフスタイルの違いではないかと思っています。年齢が違えばライフスタイルも異なりますけれども、例えばコアなゲーマーというのは年齢に関わらずがっちりしたものがあります。もちろん年齢の切り口もあれば性別もあるでしょうし、ゲームの質もあると思います。大きなくくりから場所を作っていって、その中に小さいものをつくっていくこともあるかもしれませんね。 編: ライフスタイルとは非常に抽象的な概念ですね。どういうレイヤーで区切るのでしょうか。 森川氏: 去年数多くのゲームをやって、その相関を調べたのです。すると、このゲームをやるとこのゲームもやるというくくりがでてきたのです。くくりの中でおそらくある価値観やライフスタイルがあるだろうと。その人の行動を分析してみるとこの人はこういうコミュニティを使っているな、こういう行動をしているなということが見えてきたのです。そこの方向けにより便利な専門性のあるサービスを作ろうということです。 編: いわゆるコアゲーマー向け、カジュアルゲーマー向け、ゲームやらない人向けのような専門性の切り分け方なのでしょうか。 森川氏: そんなような感じですね。まずは3つを考えています。カジュアルゲームと、コアなゲームと、大人のゲームと。これはまたモバイルでも使えるものだと考えています。 場合によっては別のサイトとして切り分ける選択もあると思っています。なぜなら、だんだん市場が大きくなってくると徐々に専門性が求められてきますよね。音楽でも最初は色々なジャンルの音楽があったとしてもジャズ専門のショップができたり、それだけを好きな人が集まったりと、ゲームの分野もだんだんそうなってくると思うのです。特化した場所を作って深く盛り上げていこうと考えています。 編: 私自身は昨年の時点で、森川さんのおっしゃるハンゲーム1.0、1.5の切り分けが終了したと判断していたのですが、まだ終わってないわけですか。 森川氏: まさにこれからですね。見た目が切り替わっているだけなのです。本当に大事な遊び方や価値の作り方をこれから本格的に作っていくのです。 編: ハンゲームのコアなゲームも別のサイトに移行すると? 森川氏: 最終的にそれがお客さんにとってベストであれば、そうしてもいいと思っています。ただし切り分けるだけだと意味がないので、ならではというものを作りそこだけで遊ぶ価値があるものにすることで新たなブランドになり、サービス形態として切り分けていきたいと思います。 編: 昨年後半から少しずつお話が出ているモバイル事業についてですが、現在どの程度できているのでしょうか。 森川氏: まだお話しできることはありませんね。まぁ、がんばっています(笑)。 編: NHN Japanさんのわかりやすいモバイルサービスですと、携帯版「ハンゲーム」ということになると思います。現代では、携帯電話でコミュニティに参加するというのはすでに普遍的な存在価値を持っていて、ハンゲームがモバイルで提供されたらやりたいと思う人は多いと思います。 森川氏: 社内にプレッシャーをかけるとまずいので(笑)、もう少ししたらお話できると思います。 編: 昨年、ニコニコ動画をはじめ、新しいコミュニティサービスが色々出てきました。ハンゲームで、アバターを着てチャットしながらゲームをすれば楽しいという時代は終わって、横断的に複数のコミュニティに参加しながら楽しむようなそんな時代になったのではないかと見ています。インターネット上のコミュニティサービスは今後どのようになると思いますか? 森川氏: もっと専門的なコミュニティができてくると思うのです。街とか国もそうだと思うのですが、段々適した街ができてきて、そこに集まってきて楽しいと思うのです。我々としてはよりゲームを遊ぶにふさわしいコミュニティをそれぞれのライフスタイルに合わせて作っていきます。もう少し幅広い意味でのコミュニティでは「Cururu」というものがありますし、それも次の進化があると思います。 あとはビジネス的にはコミュニティでどう儲けるのかに皆さん腐心されていると思います。コミュニティを集客のエンジンとして最終的にコマースに結びつけるですとか色々あると思うのですが、我々はコンテンツの価値を高めるものがありながら、最終的にみんながコンテンツを出すようにしたい。そこでコンテンツの市場が大きくなるし、お客さんもハッピーになる。そういったものができないかなと思います。それからAPIを開発者さんに提供するのと同じように、お客さんに提供するのもありかもしれない。それがゲーム以外に音楽や映像になるかもしれない。それがベースにビジネスになるようなプラットフォームを作ることが重要だなと思います。
■ 検索事業は検索とサービスで勝負。インターネット企業としての価値を追求
森川氏: いえ、ハンゲームはエンターテイメントの方向が中心だと思います。仮想の空間を楽しむような夢を与えるような場なので、そこに経済ニュースなどが出ると興ざめしますし、お客さんもあまり興味ないと思います。そこはそこで作りながら、一方でリアリティのある部分では「Cururu」がありますし、検索もやっていきますので。そういったところで役に立つことをやっていきたいです。 編: そういう意味では検索サービスの復活は、興味深い取り組みですよね。 森川氏: 検索に関してはまだお話できる状況ではありません。がんばってやっているところです。基本的には韓国を中心に開発を行なっていて、日韓でチームを作って一緒に融合しながらやっています。NHNグループ戦略としての日本進出という形なのです。年末にはネイバージャパンという会社を立ち上げました。日本の100%子会社ですので、NHN Japanもグループとして日本のサービスを支えていく形になります。 編: 検索サービスとしては世界的なシェアではGoogleが圧倒的です。今回の検索サービスはどのあたりの位置づけのサービスになるのでしょうか。 森川氏: 日本でYahoo!が強いようにNAVERは韓国で強い。韓国は唯一Googleが苦戦していますよね。韓国でのNAVERのシェアは8割です。圧倒的な地位です。日本でも検索サービスの質そのもので勝負するということです。たとえばネクソンさんとGoogleさんは我々からするとドメインは違いますが立ち居地は同じなのです。グローバルで提供して、それなりの面白いものを提供しようというものです。我々はそこに合わせてゆっくりと作っていくという文化なので、比較的グローバル展開を慎重にやっている分、ちゃんと作っていこうというやり方なのです。 編: 当時のNAVERは、日韓の些細な文化紛争の現場になっていたイメージがあります。エンターテインメントビジネスとしてはとても良くない風景で、撤退されて再進出に際して、その部分はどうなるのでしょう。 森川氏: 恐らく日韓の紛争になっていたのは、NAVERとは別の「enjoy Korea」というサービスだったと思います。あれは翻訳ソフトを使って、掲示板で気軽に意見交換するサービスでした。現在は韓国NHNで運営を行なっていますが、日本側では大々的にはやるつもりはありません。 新しい検索サービスは以前のものではなくて、日本のためにグローバル展開を視野にしたコンセプトでやっていると聞いています。開発中のところなので見ていないところもあるのですが、以前とイメージは変わると思います。海外展開のタイミングは事業ごとに違うと思うのですが、ある程度その国でシェアを取ってからやっていく形だと思います。当時は韓国に成長の余地があったので、韓国に集中投資したほうが良かったという判断があったと思います。現在は韓国でかなりのシェアを取っているので、ようやく時期が来たのだなと思います。 編: NHN Japanさんはどのようなサービスプロバイダとなるのでしょうか。 森川氏: 最良のインターネット企業になりたいと考えていますので、インターネットの分野でそういう会社を目指したいです。最良という意味は数ではなくて質なので、最終的に我々でなければ作れない分野やお客さんが満足しない部分に積極的にチャレンジして市場を拡大していきたいです。オフラインをオンラインにするのではなく、特にインターネットならでの価値があるとか、インターネットサービスの次の提案を行なっていきたいと思っています。 編: 最後にユーザーさんにメッセージをお願いします。 森川氏: 昨年はお客さんにはサービスが足りなかったように思います。結果としてYahoo!さんのWeb of the Year 2007では2位になってしまいました。今年は去年以上に新しい価値を出すものを提供して満足いただけるように精進したいと思っています。楽しみにしていてください。 編: ありがとうございました。
□NHN Japanのホームページ (2008年2月8日) [Reported by 中村聖司]
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