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会場:NHN本社
NHN Japanの代表取締役社長を兼務する千良鉉氏と、韓国で会うのは初めて。日本では発表会等で頻繁に姿を現わしているが、実際には1週間置きに日本と韓国を往復する生活を送っており、取材当日も翌日9日には日本に帰国するという話だった。千氏は、髪を短く刈り込み、顎髭を伸ばし、また一段と精悍さを増した印象だった。 千氏とのインタビューは、2月に日本で行なって以来となるが、今回はNHN CGOとして、主にNHNのグローバル展開について話を伺った。既報のように「G★」ではNEXONが北米市場への本格展開を発表して大きな話題を集めた。その一方で、韓国最大手インターネット企業のゲームコンテンツ部門は、どのような戦略で世界市場に挑戦していくのか。 また、今年東京ゲームショウに初出展を果たしたNHN Japanの今後の展開についても話を伺っている。キーワードはゲーム開発強化とマルチサイト戦略。来年もさまざまな動きで日本のオンラインゲームファンを楽しませてくれそうである。
■ NHN本社の印象、「NAVER」の日本再展開はあるか?
千氏: 私の席にあるパソコンは、OSの言語がすべて違います。日本、中国、韓国、アメリカとあります。ここでは主にグローバルの仕事をしています。各国の報告や決済、サービスの進捗状況やリソースの管理などです。 NHNのCGOに就任してから1年が経ち、韓国のメーカーとして韓国のビジネスも理解しなければならないということで、この部屋を拠点に、1週間おきに日本と韓国を行ったり来たりしています。韓国のゲームも私が見ています。リソースを同じように使うこともありますので。 編: NHN本社に初めて訪問しての第1印象としては、「NAVER」の存在感の大きさです。日本では現在運営を中断していますが、この「NAVER」についてはどのように御覧になっていますか。 千氏: NAVERは検索ポータル部門で、私の管轄外のビジネスになるので、コメントするのは難しいですが、韓国では60%のシェアを持っています。一種のメディアのような機能もあります。日本の「Yahoo! Japan」が持っているメディアの機能よりは「Naver」が持っている機能のほうが、国民全体に与える影響力は大きいと感じています。ゆえに韓国では「NAVER」の方が目立つかもしれません。検索ビジネスは、集客力と検索エンジンといったサービスが重要なので、現地で深く掘り下げたビジネスが必要だと思います。 日本と韓国は、韓国とアメリカに比べて地理的な距離も近く、国民の興味がそれほどかけ離れてもいません。ニーズに合わせた細かい検索結果を提供することによってサービスの差別化は図っており、韓国でそうしたサービスがきめ細かくできているのが強みです。 ただ、「NAVER」はあくまで韓国向けのサービスなので、同じサービスをグローバルに展開するのは無理があると思います。日本においては、日本にあったサービスを作らないと競争には勝てません。お客さんにとっては検索手段がロボットなのか、人の力によるものなのかまったく関係がありません。いい結果が出るかどうかが一番重要なところだと思います。 編: 日本で一時展開していた「NAVER」を中断したのは、千社長の決断なのですか? 千氏: 私だけの判断ではなくて、経営陣のグローバル戦略の中で決定されたことです。日本の「NAVER」は、ソリューションの販売でした。大手のポータルサイトにメール機能やコミュニティ機能を提供していたのですが、そこから直接BtoCのビジネスをしようとHangameJapanと合併した上で展開を行ないました。 しかし、まだ準備が足りないという結論に達し、中断することにしました。検索エンジンは技術的な側面が強いのですが、日本では特化した技術者がそれほど多くありません。日本でそうした人材を探すのも大変ですし、本国から人を送り込むと今度は本国が手薄になってしまいます。 編: 準備が整ったとなれば再展開はありえるのでしょうか?
千氏: 準備はしていますが、サービスの再開時期については、まだわかりません。なんとも申し上げられないですね。 ■ NHN CGOの基本戦略、各国の状況について
千氏: グローバルなお客様に合ったサービスを行なっていくことが基本戦略になります。グローバルではお客様の状況も違いますが、これをどれほど理解してサービスするか。ゲームポータルでグローバルにヒットするものもありますが、やはりその国にあったコンテンツを提供していくことが好ましい。それはプラットフォームであったり、サービス形態であったり、ウェブの技術であったり、それらを十分理解した上で展開することが必要です。大枠では、ゲームポータルとゲームコンテンツの2つですが、コンテンツビジネスにおいてはパブリッシングと開発が2つの大きい側面になると思います。 編: 弊誌はゲームメディアですが、広い意味でのデジタルエンターテインメントを扱っています。千さんは、デジタルエンターテインメントに対してどのようなとらえ方をしていますか? 千氏: 難しい質問ですね。我々がどう捉えているかよりも、人々がインターネットでいかに有意義な時間を過ごすかが重要だと考えています。我々の中にインターネットが定着しましたが、1日は24時間と限られています。今後、人々はもっと価値あるものに対して時間を費やしていくことになると考えています。 例えば「Youtube」のような動画サイトに人気が集まって、それをgoogleが買収しました。その一番の問題は著作権です。人々が自分たちで作ったオリジナルのものは全体から見て多くはありません。違法なものが集まる中で、もしビジネスモデル化したとしても、必ず問題になるわけです。映画を流したところで、著作権がらみの問題で、シンディケーションがうまく取れるかという問題もあります。また、サーバーの費用をどうするのかという問題もある。そうなると問題を解決する時間が必要になります。これは我々から見て賢いビジネスとは言えません。 だからといって、コンテンツビジネスの未来が暗いのかといえばそうではありません。その今一番ホットなのがゲームだと思います。これも大きな意味でエンターテインメントの一部であると考えます。形は変わっていきます。例えば、ユーザーコンテンツは、クリエイティブな行為ですが、ユーザーコンテンツだけでしっかりしたコンテンツサービスが提供できるかといえば、ゲームにおいてそれは違うと思います。 なぜなら個人のユーザーがいくらいいものを作ったとしても、優秀な集団が作ったものには劣ると思うからです。「Web 2.0」の概念からのツールをあげて提供してもらうだけでは無理だと思います。仮にできたとしても集客からビジネスモデルはBtoBのビジネスモデルとは違うと思います。 編: 千さんのコンテンツビジネスに対する考え方は理解できましたが、CGOとしての動きがいまひとつわかりません。具体的にどのような取り組みを行なっているのでしょうか? 千氏: 非常にシンプルです。ゲームポータルサイトとコンテンツビジネスをグローバル展開していくことを担当しています。ゲームポータルの名前は、「Hangame」だけではありません。中国では「Ourgame」ですし、アメリカは「ijji(イージー) game」です。 基本戦略としては大きなゲーム市場に拠点を作り、その後はコンテンツビジネスで勝負をかける。実際にグローバル的にもオンラインゲームをちゃんと作れる国は韓国や日本やヨーロッパ、米国くらいです。そこの展開から、開発・人材・ソースなどそうしたものがグローバル化していくのが望ましい方向だと思います。 編: それではまず、米国についてですが、現在米国ではどのようなビジネスを展開されているのでしょうか。 千氏: 米国はカードゲームからスタートしたゲームポータル「ijji(イージー)」をβテスト中です。北米では、一番大きいゲームポータルサイトがYahoo!、次がEAが買収した「pogo.com」その次がMSNになります。日本では主にポータルサイトの一部として集客用に利用していますが、ちょうどYahoo! Japanが「Yahoo!ゲーム」をやっている感覚ですね。しかし、米国では独立したゲームポータルとして運営しています。形としてはカードボードゲームだけでなく、カジュアルゲームも入れて展開しています。 編: カジュアルゲームはどこで開発しているのですか? 千氏: 今は韓国のものが主ですが、一部米国のものもパブリッシング契約を結んで提供しているものあります。 編: ユーザー数はどれぐらいでしょうか? 千氏: アメリカは2006年7月にβテストが始まったばかりですので、現在同時接続者数で6,000人ほどです。正式サービスは来年になるかと思います。まだあと1年くらいは状況を見守る必要があると思います。 編: 中国についてはいかがでしょうか。 千氏: 中国ではすでに正式サービスを展開していまして、ようやく今年黒字転換しました。パブリッシングゲームを強化しているところです。今後かなりいい形で伸びるのではないかと思います。 編: ユーザー数はどのぐらいでしょう? かなり多そうですが。 千氏: はい。ユーザーはもの凄くたくさんいます(笑)。加入者が1億2,000万人くらいで、現在のリアルタイムの同時アクセスが62万人くらいです。前は70万人くらいだったのですが、不正行為を行なっていたロイヤリティが高いユーザーを整理しました。今は60万人くらいで落ち着いています。 編: 中国ではどのような方針で、パブリッシングを行なうゲームを選定していますか? 千氏: 中国は歴史を題材にしたタイトルが、グラフィックス面やシステム面で劣っていても、シナリオに対する人気に支えられて人気があります。初めは韓国のタイトルや、日本だと「クロスゲート」などが人気があったのですが、徐々に中国の会社が作ったタイトルが売れているような感じです。あとは「World of Warcraft」のような欧米タイトルも人気があります。 編: その中でNHNではどのような戦略で中国展開を行なっていくのですか? 千氏: 中国は海外企業が独自に参入することはできませんので、合弁会社を設立し、その株式の51%を持っています。基本戦略としては、さまざまなオンラインゲームを配信してユーザーを定着させて、次の段階で中国のユーザーに一番適したサービスを行う形になります。 韓国や日本で培ったゲームのシステムであったり、サーバーのシステムであったり、そうしたものをどんどん注ぎ込むことによって競争力を高めていきたいです。日本からでも、日本のビジネスモデルやマーケティングモデルは中国で活用されて、すごくいい形になっていると思います。また、アバター展開も検討しています。 編: 現状ですとどういったコンテンツを展開しているのでしょうか。 千氏: 元々「Ourgame」にあったものをアレンジしたものもありますし、技術的なレベルを向上させたものもあります。マージャンやカードボードゲームやRPGゲームの現地タイトルが主流です。今後はパブリッシングゲームが増えていくと思います。半々くらいまでにはなると思います。 編: パブリッシングゲームはどういったものを考えていますか。 千氏: 今は韓国産のカジュアルゲームです。今後は日本からのものも考えています。 編: 例えばどういったものでしょうか。 千氏: 例えば、パズルゲームやスポーツゲームです。我々は「ファミスタオンライン」のようなタイトルを今後も作っていくつもりです。機会があればそれらをグローバル展開していきたいと考えています。 編: 現在すでに日本展開している「ファミスタオンライン」を展開されていますが、それを中国に展開されることもありうるのでしょうか。 千氏: ありうると思いますが、それはバンダイナムコゲームズさんとの話し合いが必要なので、現時点で確かなことは申し上げられません。 編: ただ、グローバル展開の理想型としては、「ファミスタ」のような日本有力タイトルの中国展開という形だと考えていいですよね? 千氏: はい。しかし、「ファミスタオンライン」の場合は特殊で、日本では20年前の懐かしいゲームといった側面があり、30台の往年のファンと、その子供の間で人気を集めていますが、中国で同じことを期待するのは無理です。しかし、「ファミスタ」のような家庭用のゲームを掘り起こすのは中国や韓国でも意味があると思います。色々な人が日本の「ファミスタ」などをプレイして、ゲームを作りたいと思ったことがあるはずです。 編: 中国国内で独自に開発力を育てるよりは、日本や韓国といった既に力のあるところからコンテンツを持ってくる戦略を取ると考えていいのでしょうか? 千氏: いえ、現地開発はもちろんやります。新しいコンテンツを提供していかないと刺激になりません。一方でパブリッシングビジネスも進行しなければなりません。新しいものをどんどん入れながら、開発自体も増やしていきたい。これからは中国からのタイトルが増えてくるでしょう。今は韓国・日本だけですが、韓国・日本・アメリカ・中国の各地で開発体制が整うところまでできればいいなと考えています。 編: その際に買収戦略は考えていらっしゃらないのでしょうか。 千氏: もちろんありうると思います。M&A戦略に関しては、コアビジネスを増やしていくためにも最も重要な戦略であると考えています。ビジョンが合わなかったり、コアが合わなかったりでは意味がありません。会社のボリュームだけを考えた、ファイナンス的なM&Aはいくらでもあると思いますが、そうしたものに興味はありません。 編: 中国では自国の産業保護を国策として掲げ、結果として海外からの進出は厳しい状況が続いていますが、それにはどう対処されるのでしょうか。
千氏: それはNHNだけではなく、色々な会社が苦しんでいることだと思います。それでも中国に進出しようとするのは、やはり中国の未来に価値があるからだと思います。苦しいところですし、法律的にもシビアです。日本や韓国では考えられないような規制もあります。我々が必要で進出したわけですから、それは乗り越えなければいけない。最終的にはお客さんが良いものを選んでくれると思います。
■ 「韓国だけ、日本だけの市場単体にはあまり興味がない」
千氏: そうですね(笑)。実は差があまりないのです。どういう側面から見るかによって1番は変わってきますので、1番がいくつも生まれる結果になってしまっています。たとえば、検索ポータルでは明確に「NAVER」がナンバーワンですが、ゲームポータルではそう言い切れるだけの明確な差があるわけではないのです。 具体的に言うと、新しいコンテンツを入れるたびに簡単にトップの座が入れ替わったりします。日本に比べユーザーの移動が激しいのです。月ごとにナンバーワンが変わることもありますので、どれも正しい話であります。シェアでいうと、ゲームポータルでは「Hangame」、「pmang」、「CJ Internet」が30%ずつ分け合っている状況です。お客さんにとっては「NAVER」がNHNかどうかは関係なく、検索は「NAVER」でも、ゲームは「Hangame」というわけではなく、「pmang」や「CJ Internet」と言う風に使い分けているようです。 編: となると韓国での重要な任務は、Hangameを明確にトップの座に押し上げることだと? 千氏: いえ、実を言うと、私は韓国の市場単体にはそれほど興味は無いのです(笑)。もちろん日本だけの市場にも興味はありません。グローバルな視点から見ると、世界にはもっともっと多くの市場があり、そこにいるお客さんにはもっといいコンテンツを楽しむ権利があると思っています。 もちろん、国内で1位になることがグローバルに影響を与えるのもありえると思っています。宮崎さんのアニメが日本を中心にして作ったものですが、世界で多くの人に影響を与えました。コンテンツとはそういうものだと思います。私は子供の頃にアトムを見て育ち、良い思い出になっています。これはこれで大事だと思います。ですから、足固めを十分にした上でという話になりますが、ただ、それにこだわりすぎて、国内に留まるつもりはありません。 編: それでは、韓国ではどういったプロジェクトを進めているのでしょうか? 千氏: もはや韓国ではポータルサイトが集客力を持つ時代は終わり、コンテンツが集客力を持つ段階まで来ました。あるコンテンツがヒットすればそこに人がバーっと集まる感じで、次のコンテンツを探して常にお客さんが動いている状態です。韓国のお客さんがコンテンツに対して興味をもつ期間が短いということは、大きなリスクですが、企業としてはすごく鍛えられているといえます。 そのトレンドを理解した上で、次に支持されるものを作っていくことが重要です。RPGの次にFPSが来るかどうか、そのFPSがグローバルなモデルになるかどうか。そうした動きを短期間で全部経験できたのは幸運なことだと思います。 韓国市場で1位になって、メジャーとして認めてもらうことは、逆に言えば良質なノウハウが溜まることを意味しますので、グローバル展開としてはものすごく力になります。自社開発のゲームだけでなく、パブリッシングゲーム、扱うゲームもさまざまなジャンルをカバーしていかなければなりません。カジュアルやスポーツゲームなどをどんどん提供することによって、ノウハウやマーケットのエリアを増やしていくことが基本戦略です。 編: 日本はまだゲームポータルで集客する段階だと捉えていいのでしょうか? 千氏: そうですね。しかし、日本では、オンラインゲームのゲーマーがまだまだ少ないです。それを増やしていく戦略がまずは必要だと思います。そのために今「アソブログ」だったり、新しいマルチサイトの展開を考えています。 編: コンテンツビジネスにおいて重要なカギを握る、コンテンツ開発についてはどのような考えをお持ちでしょうか? 千氏: まさにその部分をグローバルにしていくのが私の役目です。基本戦略としては、ゲーム開発に関しては各国で行ないつつ、サーバー周りやセキュリティ周りは共通システムを投入する。 そのためには、テクノロジー的な部分はもっともっと共通化が必要だと考えています。たとえばサーバー開発プラットフォーム、ゲーム開発プラットフォーム、パブリッシング開発プラットフォーム、サービスレベルのプラットフォームと大きく分けて4つを共通化する必要があるでしょう。 これは1つの会社が構築するには大変な作業になります。これは日本と韓国と中国関係無く、共通してやっていく必要があります。こうしたソーシング戦略を通して、各国でコンテンツのディストリビュートを行なっていきます。最後にコンテンツ化の共有です。これはグローバル的にも重要だと思います。
■ マルチプラットフォーム展開は当面はなし。当面はWindowsとIEのみにサービスを提供
千氏: 我々はインターネットインフラをベースにしたオンラインゲームメーカーなので、大前提として誰でも繋がる環境でサービスを提供する事が大事だと思います。私が見る限り、PS3とWiiのユーザーはそれぞれ同じサーバーでプレイすることはできません。基本的には別のものだと思います。しかし、オンライン機能を備えていて容易にPCと繋がる環境があるのであれば、それは重要なものではあります。ただ、いずれにしても基本的にコンソールのゲームを作って、コンソール市場に直接参入することは考えていません。 編: インターネットというくくりでいえば、次世代機と呼ばれるゲームコンソールは、すべて標準でブラウザ機能を備えています。ですから、今後ゲームメーカーは、PS3などの次世代コンソールから見られることを意識したホームページ作りを行なっていく必要がある、というような話も聞かれます。しかし、オンラインゲームを扱っているオンラインゲームメーカーさんはその点は無頓着だという印象を受けます。 つまり、今後、インターネットに接続する方法がPCに限定されず、PS3だったり、Wiiだったり、DSだったりという時代が、2007年や2008年の日本や欧米で来るかもしれません。ゲームファンにとって、インターネットにアクセスする際、どの端末を利用するかは問題ではないですから。 千氏: ただし、ゲームをやるときにPS 2とPCが繋がるようにはできるのでしょうか? 編: それはパブリッシャー側の裁量でどうとでもなります。 千氏: WiiのユーザーやPSのユーザーが同時に同じサーバーで遊べるのであれば、PCとみなしていいと思っています。しかし、違う視点から見ればPSユーザーはPSユーザーだけがつながる。そこが限界です。PCはPCでつながり別な領域になります。境界と境界の問題です。 編: その垣根を取り払おうとして積極的に動いているのがマイクロソフトです。それぞれの相互接続を実現しようとしています。 千氏: 我々がXbox 360をゲームに特化したPCとしてみれば、そこにコンテンツを提供することはできるでしょう。PCとつながるのであれば参入するべきだと思います。Xbox 360が、インターネットに接続できて、グラフィックも優れているものであれば、それはオンラインなのでサーバーを経由していることですので、今までと同じくPCのビジネスとして見ていけばいいと思います。 ただ、XboxのユーザーとPSのユーザーが繋がるかどうかはわからない。企業の関係でできないかもしれない。インターネットビジネスはいろいろなコンテンツができているわけですが、これが限定された枠内だけで終わってしまうのであれば、さまざまなビジネスは生まれないと思います。全部オープンになるなら、状況は変わってくると思います。 編: コンソール機のインターネット接続機能がオープンなものであるという見定めが付いたら、NHNとして今後参入することもやぶさかではないと? 千氏: 我々としてはインターネットありきだと思います。その中で検索があったりゲームがあったりするわけで、誰とも自由に繋がるような形で無い限り展開は難しい。もし、市場が極端になって、人々がPCではなくPS3やWiiしかやらないのであれば、我々のビジネス形態も変わると思います。まったく新しい世界に入るか別のものをやるかです。 編: 現時点としては、実質的にWindowsあるいはインターネットエクスプローラーに向けたサービスとコンテンツのみを提供していくことになるのでしょうか。 千氏: そうです。なぜならPCユーザーは今後増えていくと思いますし、逆にいなくなることはないと思います。PCをやっている人々がゲームをやるなどニーズはあると思います。ハードウェアの問題は難しいのですが、我々はハードウェアを作るところではないのでなんとも言いがたいです。基本的にインターネットビジネスはオープンな環境でやったほうが可能性は広がると考えています。
■ 日本はマルチサイト戦略を推進、開発力も強化
千氏: 基本的にマルチサイト戦略を考えています。ポータルサイトは原則として1つのサイトでたくさん集客したほうがたくさんのシナジーが出せます。しかし、ゲームとなると少し形が違います。年齢によっても好き嫌いが明確に違いますし、ある程度年齢など趣味思考に分ける必要があるでしょう。たとえば、若い世代と、団塊世代が好きなものは違うわけです。マルチサイト戦略で分けながら市場にサービスを行なっていきます。 編: もう少し具体的に教えてください。 千氏: ゲームポータルを世代別に複数立ち上げることです。後はゲーム開発です。今までは自社でやっていたことを既存のゲーム会社さんと共同制作などをやっていきたいです。 編: 今後発表されるタイトルはグローバルを意識したものになるのでしょうか? 千氏: 基本的には考えていますけど、まずは国内が大事だと思います。そのあとグローバルにできればと思います。 編: 今年は「ファミスタオンライン」など、複数のコンテンツが配信されましたが、バンダイナムコさんとの提携は、どのような評価をされていますか? 千氏: 数字はもうちょっと伸びて欲しかったなと思います。ただ、反応はすごく嬉しかったです。今までオンラインゲームという概念がなく、洋食ばかりを「まあまあおいしいな」と思いながら食べてきた中で、久しぶりに味噌汁を飲んで「ああほっとした」というような反応だったと思います。間違っていなかったと思いましたし、20年前のものでしたがそうした味を出していきたいと思いました。 編: 日本国内での開発の方向性についてですが、やはり「ファミスタ」のような懐かし系にこだわるのでしょうか。それとも新しいものを求めるのでしょうか。 千氏: 両方です。「ファミスタ」は親子同士でやってほしかったと思っていましたし、記憶にあるものにプラスαがあればいいなと思いました。決して昔のものばかりではなくて最新のものでも、最近の子供たちが好きそうなものを出していきたいなと思います。 編: コンテンツは「アラド戦記」や「FreeStyle」といろいろありますが、韓国産タイトルのパブリッシングにはどのような評価をされていますか。 千氏: それらは韓国でもヒット作品で商用化済みのタイトルでした。確実に一定の数が見込める安定性のあるものとして日本に投入しました。もちろん、日本国内のお客さんに通じるかどうかは別の問題です。トライはしましたが、悪くも良くもないという状況です。私は韓国産のゲームで成功したというのは、「ラグナロクオンライン」だけだと考えています。 編: 「スカッとゴルフ パンヤ」等のアイテム課金系タイトルは厳しいと? 千氏: 「パンヤ」は1万くらいですからね。他と比べたらいいですが、市場規模から見たら3万は越えて欲しい。強いて言えば「ラグナロクオンライン」、「Lineage 2」、「Red Stone」、その程度ですね。そのほかは自社タイトルも含めてだいたい5,000人から1万人の間に留まっています。今後出すゲームに関しては2万~3万出るゲームになれば嬉しいなと思います。 編: 目の肥えた日本のユーザーに指示されるような大型タイトルは今後も行ないたいということでしょうか。 千氏: はい。準備はしています。 編: ゲームジャンルはどういったものでしょうか。 千氏: ちょっとまだ今は(笑)。しかし、おっしゃったとおり小さいタイトルではありません。 編: 個人的な印象ですと、「Hangame」のユーザー数も1,000万人を越えていて、同時接続もかなりあり、名実ともに国内最大手のゲームポータルですが、ここ数年で配信したゲームコンテンツとの間で、ユーザーが乖離しているようなイメージがあります。つまり、ゲームコンテンツから入ったユーザーは、「Hangame」のサービスをそれほど使っていないように見えます。 千氏: それは確かにあります。実際データを分析してみますと、アバターをやっているユーザーと、MMORPGのコアユーザーと、カジュアルゲームだけをやっているユーザーでは確かに動向が少しずつ違います。「Hangame」はある意味街みたいなところですので、これはこれでいいと思っています。現時点では、新しいゲームが出るとアバター収益が減るような衝突もないですので。 今後は、いろいろな人が増えていって街が増えて大きくなっていくという捉え方に近いです。結構大きくなったのでこれを分けてマルチサイト戦略にする考え方です。銀座と渋谷を混ぜるとごちゃごちゃになるので、銀座と渋谷に分けるというイメージです。 編: マルチサイト戦略によって、各ポータルで提供されるコンテンツは変わってくるのでしょうか? 千氏: もちろんです。運営の仕方も変わります。囲碁や将棋など今「Hangame」にあるものを取り入れるとすれば、言葉遣いから変えます。ある程度の年齢層も意識しながら運営の仕方も違うと思います。 編: たとえば、サンプルとして団塊世代向けのポータルサイトを挙げられましたが、そのポータルはどういう風景を想像していいのでしょうか? 千氏: 一番大事なのはお客さんのライフスタイルです。次に興味があるところです。中学生も大人のコンテンツに興味があるかもしれないし、逆に大人が小学生のコンテンツに興味を持つかもしれません。分け方も工夫する必要があると考えています。アソブログはそうした試みのひとつです。 編: どういった分け方になるのでしょうか。 千氏: 例えば年齢で言えば、小学生中学生高校大学生までの年齢層までのものですとか。アソブログは20代から30代、40代です。これを40代、50代と分けた場合は当然運営の仕方も違いますし、コンテンツも違うと思います。 アソブログはそれほどPRに力をいれずにクチコミがメインでユーザーが集まっていますが、ほとんど狙ったユーザー層の方に集まって頂いています。実際にインターネットのエンターテインメント系のコンテンツで20代後半から40代は実に集めにくいユーザー層なのですが、その層のユーザーさんに集まって頂いているのは大きな成果ではないかと社内では考えています。 編: そういう意味では、NHNがカバーできていない世代は、小学校低学年と高年齢層です。こうした層に対してはどのようにアプローチしていくつもりでしょうか。 千氏: コンテンツだけではなく、サイトの運営の仕方から変えて、マルチポータル戦略で考えています。 編: そうした動きが見えるのは来年になるのでしょうか。 千氏: スタートはすると思います。まずは社会人向けのアソブログを強化しながら次の展開を考えていきたいと思っています。 編: 最終的には全年齢層をカバーするのでしょうか。 千氏: そういうことになります。 編: 現状日本ですとNHNといえば「Hangame」になっていますが、将来的には「Hangame」は一部になっていくのでしょうか。 千氏: はい。「Hangame」以外にもメジャーなポータルに育っていって欲しいと思っています。 編: 最後に日本のユーザーさんに向けてメッセージをお願いします。 千氏: コンテンツを作る側は、コンテンツによって幸せな気持ちを味わって欲しいということで、お客さんにはそういった部分を応援していただければ嬉しいです。日本のアニメやゲームにオンラインの羽が生えてグローバルに行くことを是非応援していただきたいと思います。 私はオンラインゲームの世界に国境の意味はあまりないと思っています。コンテンツはもっと強くなるのに、コンテンツをグローバルにサービスしているところがあまりないのが残念だなと思っています。たくさんの人に幸せを与えられる企業になりたいと思います。インターネットを使っているお客様にとってはなくてはならない会社、なくなったら寂しくなるような会社になりたいです。 編: ありがとうございました。 Published by NHN Japan Corporation (C)2006 NBGI (社)日本野球機構承認 NPB BISプロ野球公式記録使用
□NHNのホームページ (2006年11月17日) [Reported by 中村聖司]
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