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NHNグループ本社訪問レポート
大手ポータル「Hangame」、「NAVER」を擁する
韓国最大のインターネット企業の総本山を覗く

11月8日訪問

会場:NHN本社



 NHNは、2005年後半から2006年にかけて、日本のオンラインゲーム市場に対して常に話題を提供し続けてくれたメーカーだ。2005年以前までは、ゲームポータルサイト「Hangame」を通じた無料のカジュアルゲームとコミュニティ/アバターサービスが中心だったが、2005年からはアイテム課金制のオンラインバスケットボールゲーム「FreeStyle」やMMORPG「Xenepic Online」の提供を皮切りに、徐々にオンラインゲーム事業を強めてきた。

 2006年には「アラド戦記」、「ガンストライク」、そして東京ゲームショウで大きな反響を呼んだ「プロ野球ファミスタオンライン」など、アイテム課金制のカジュアルゲームを中心に順調にコンテンツの数を増やしつつある。本業であるHangameで長年かけて構築していた小額決済の課金システムをうまく活かしたビジネスモデルといえる。

 GAME Watch編集部取材班は、G★取材に合わせて、開催前日の8日にNHNグループの本社を訪れた。本稿ではその模様をお伝えする。NHN CGOの千良鉉氏とのインタビューも追ってお伝えしたい。


■ スタッフのホスピタリティに重きを置いた数々の施策。送迎バスに朝食、保健室まで

最寄り駅の亭子洞は一大ベッドタウンになっている
NHNが入居するベンチャータウンビルディング。京畿道城南市が推進するハイテクパークの拠点となるビルだ
NHNスタッフ専用の送迎バス。これはHangameバージョンだが、NAVERバージョンもあるようだ
 NHN本社は、ソウル市郊外の京畿道城南市盆唐区にあり、ベッドタウン的なマンションエリアの一角にそびえ立つベンチャータウンビルディングに入居している。最寄りの駅から数分の好立地だが、地理的にはソウル市東部のロッテワールドから南に電車で30、40分ほどのところにあり、慢性的な交通渋滞と鈍行のみの地下鉄という交通事情の悪い韓国ではかなりの距離感が感じられる。

 以前は江南区に本社を構えていたというが、会社としての規模が大きくなったため、単一のビルに収容するためにあえて郊外を選択したという。現在社員数は1,450人で、男女比は6.5対3.5。これは他のインターネット企業と比較しても女性の比率が高く、韓国の就職人気ランキングでもゲームを含むインターネット企業全体の中で常にトップだという。

 NHNは、ネクストヒューマンネットワーク(頭文字を取るとNHNになる)という社名からも伺えるように、企業の最大のリソースは“人”だと位置づけており、これを裏付けるようにいくつかユニークな施策を行なっている。

 第1に、江南から城南に引っ越した際、18台のバスを会社で一括購入し、朝と夜に送迎バスを走らせている。バスのボディにはNHNの広告が張られ、走る広告塔としての機能も兼ねているが、スタッフにはありがたいサービスだ。最終便は夜の23時。NHN関係者なら誰でも無料で利用することができる。また朝は、引っ越しにより移動に多くの時間が取られることになったことから、エレベーターホールに朝食を用意しているという。これらはすべて会社側が用意した福利厚生の一環となる。

 オフィスは、ベンチャータウンビルディングの9階から18階までを占めており、9階に総合受付がある。受付の裏には、50人ほどがくつろげそうなリラクゼーションスペースがあり、売り上げはすべて寄付に当てるというコーヒーショップ、オリジナルグッズの社販コーナー、社員が自由にひけるピアノ、NHNの検索ポータルサイトNAVERを通じて紹介されている本や雑誌のたぐいが置かれている。

 そのほかにも商談スペースや休憩室、ヘルプデスクなどがあり、奥には“保健室”まで存在していた。保健室には簡易ベッドと薬品棚、医薬器具、作業用デスク、マッサージチェア等が置かれ、国家資格を持つ保険医が常時待機している。保険医によれば、1日の来診者は60人から70人程度で、症状は風邪、疲労感、頭痛、筋肉痛などが多いという。現在は時期的に風邪を訴えるスタッフが増えており、風邪薬を処方することが多いということだ。

 NHN本社を実際に訪れてみて感じられたのは、NHNはゲームパブリッシャーである以前に、韓国最大手のインターネット検索サイトNAVERを運営するインターネット企業だということだ。社内におけるプレゼンス、社内掲示の量、スタッフの規模、売り上げのいずれを見ても、NAVERのほうが上回っており、広報スタッフの話もどちらかというと、NAVERに関する話題のほうが多かった。このあたりは、ハンゲームジャパンとして立ち上がったNHN Japanとは明らかに異質の雰囲気を漂わせていておもしろい。

【リラクゼーションスペース】
受付の奥には広大なカフェテリアが広がる。社員の休憩室となっているだけでなく、ドリンクの料金は500ウォン(約65円)から700ウォン(約90円)。カフェの収益は「NAVER」の社会寄付サイトhappybeanを通じてユニセフに寄付しているという。また、カフェでは販促グッズとして作成したオリジナルグッズの販売も行なっている。決して安くはない値段だ

【保健室】
NHNスタッフ専用の保健室。薬品棚には錠剤がギッシリ並べられ、簡単な診断ならここで行なうことができる。社員の健康診断もここで受けられるという


■ オフィスエリアにもユーザーリサーチラボや図書室などユニークな施設が

デザインを行なっている10階の様子。パーティションで区切られ、働きやすい環境が提供されている
ユーザーリサーチラボ。奥の会議室でユーザーにプレイして貰う。会議室からは、こちらの風景は見えない
各階にあるという図書室。10階はグラフィックスデザイン関連の書籍が並んでいる
 さて、10階以上は、NHNのスタッフたちが業務を遂行するオフィスになっている。10階には、NHN全社のグラフィックスデザインを担当する「UXデザインセンター」があり、11階は技術部門、12階は検索ポータルNAVER部門、そして13階にはNHN Japan代表取締役社長の千良鉉氏がCGO(チーフゲームオフィサー)を務めるグローバルゲーム制作センターがある。

 14階以降もHangame部門、自社開発部門であるNHN GAMES、事業支援、人事、経理、広報などなどさまざまな部署がひしめいている。実際に視察できたのは9階、10階、13階の一部だけだが、その中でもいくつかユニークな機能を確認することができた。

 10階にあったユーザーリサーチラボは、ユーザーの動向を肉眼でチェックするための部屋だ。あらかじめユーザーを募集して、テスターを小さな部屋に集め、そこで新機能を自由に試してもらうという。スタッフ達は、反対からは見えない特殊ガラスを通して裏の部屋からユーザー達の目や手の動きを直に観察しつつ、さらに監視カメラでユーザーの動きを追い、後で聞き取り調査なども行なう。このプロセスを経て、本導入に向けて検討を行なっていくことになる。

 また、10階では図書室もあった。これは各階に設置され、デザイン部門ならデザイン系、技術部門なら技術系の書籍が置かれている。高額な専門書をスタッフひとりひとりが購入するのは経済的に大きな負担となるため、各部署で希望する書籍を定期的に募り、会社が一括して購入するシステムを採用しているということだ。

 13階では、サウンドルームを見ることができた。ここで自社のオンラインゲームやポータルで使用するすべてのBGMやサウンドエフェクト、ボイスの制作と録音を行なっている。防音処理されたサウンドルームの奥には、アーロンズチェアを取り囲むようにシンセサイザーが配置され、その隣にはアフレコを行なう小部屋がある。

 ちなみにサウンドルームの隣には、インターネット放送を行なうための設備があり、ゲーム番組の制作に欠かせない対戦用のPCが配置されていた。といっても現在はHangameの囲碁の対局を週に1度放送している程度だという。

【サウンドルーム】
13階のサウンドルームでは、主にHangameとHangame内のフラッシュゲーム向けのBGMやSEが制作されている

【CGO室】
NHN本社取材の最後の目的地として訪れたCGO(チーフゲームオフィサー)室。NHN Japan代表取締役社長千良鉉氏が務めている。隣には会議室があり、本文でも触れた各国のリアルタイムデータや顔写真付きの社員リストなどを見ることができる


■ NHNが自社開発している新作タイトルをチェック

MMORPG「R2」は、韓国で10月26日に正式サービスを開始したばかり。攻城戦を楽しむために、あらゆるエッセンスを詰め込んだMMORPGだ
至近距離で射撃戦を展開する。頭上のアイコンで敵味方の区別が付けやすい
 13階では、NHN CGO兼NHN Japan代表取締役社長の千良鉉氏に迎えられ、インタビューを挟んで、現在NHNがHangame向けに自社開発している3タイトルの紹介を受ける機会に恵まれた。

 タイトルの紹介には会議室が使用され、会議室奥の左右上部に配置されている液晶モニタには、千氏が担当している韓国、日本、中国、北米の4エリアの会員数、同時接続者数、そしてその日に入会した数が、かわるがわる数秒おきに表示されている。株価のように、前日との上下比率も表示され、この会議室にいれば、各国の状況が一目で分かる仕組みだ。

 この会議室では、NHNの新作タイトルとして3本のオンラインゲームを見ることができた。ゲームジャンルは、MMORPG、カジュアルレースゲーム、そしてウィンタースポーツ。NHN CGO千氏によれば、今後あらゆるジャンルのオンラインゲームに手を出していきたいと語る。日本展開についても意欲的で、すんなりいけば来年早々にも具体的な発表がありそうだ。ここでは大型タイトルとなる「R2」を取りあげたい。

 本格派MMORPG「R2(Reign of Revolution)」は、韓国では10月26日より正式サービスがスタートし、11月8日時点で、10日あまりで約2億円の売り上げを達成と、上々の滑り出しを見せている。これまでの累計会員数は80万人、最大同時接続者数が5万人。韓国産MMORPGとしては珍しく月額19,800ウォン(約2,500円)の月額課金による定額サービスを採用しているのが大きな特徴だ。

 基本的なゲームデザインは、攻撃側と防衛側に分かれて城の支配権をかけて繰り広げられる攻城戦に特化したRvR主体のMMORPGとなっており、封建色の強い中世ヨーロッパをモチーフにした美しい仮想世界を舞台に、複数の勢力が割拠する島の統一を目指して各勢力が鎬を削ることになる。

 その最大の特徴は、城の数が1つや2つではなく無数に存在し、攻城戦が同時多発的に行なわれるところだ。各勢力が勝ち抜くためには、部隊の最小単位となるギルト間の連携、強力が必要不可欠となる。ギルドシステムも、ギルドメンバーのみが利用可能なギルドスキルや、ギルドマスターの裁量により、経験値やアイテム等を報酬としてメンバーに与えられるシステムなど、こちらも攻城戦に特化した内容となっている。

 いくつかプレイムービーを見た限りでは、中世ヨーロッパ諸国の城をそのまま模したような石造りの重厚な城を舞台に、優に100人を超す大勢のプレーヤーが細い通路で激闘を繰り広げるシーンが印象的で、対人戦好きには手応えのあるタイトルとなりそうだ。また、個人の力より、リーダーの統率力や戦術が大きくクローズアップされるタイプのMMORPGとも言えそうだ。

 気になる日本展開については、まだ韓国でスタートしたばかりなので即答はできないが、前向きに検討していきたいということだ。仮に「R2」の展開が日本で決まれば、NHN Japanとしては、初の本格MMORPGということになる。続報に期待したいところだ。

【「Riding Star」】
「Riding Star」は、NHNの自社開発チームBLUECATが現在開発しているカジュアルオンラインゲーム。スノーボードをモチーフに、純粋なレースだけでなく、トリックを決めて得点を競うバトルモードなどを用意。現在クローズドβテストを実施しており、来年1月よりオープンβテストを実施する予定となっている。正式サービスは今冬を予定し、ビジネスモデルはアイテム課金制を採用予定としている

【「Skid Rush」】
「Skid Rush」は、公道レースをモチーフにしたMMORPG。カートゥーンレンダリングを採用した柔らかいタッチが印象的だが、実際のゲームプレイは、セガの「クレイジータクシー」のような荒っぽさがある。単にレースを楽しむだけでなく、ひとりでクエストに挑戦したり、ガレージでカスタマイズを行なうことが可能。12月よりオープンβテストを開始予定

□NHNのホームページ
http://www.nhncorp.com/
□NHN Japanのホームページ
http://www.nhncorp.jp/
□関連情報
【2006年11月11日】NHN Japan代表取締役社長 千良鉉氏インタビュー
日本発のグローバルパブリッシング戦略の全貌とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060303/nhnjapan.htm

(2005年11月15日)

[Reported by 中村聖司]


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