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会場:神奈川県庁
「八都県市 青少年を守るためのゲームソフトに関する協議会」は、2007年11月12日に開催された「第52回八都県市首脳会議」の合意に基づき開催されたもの。埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市といった各自治体、ゲームソフト関連団体、販売店の各担当者、オブザーバーが参加し、CEROの運用状況、販売店などにおける規制取り組み、各自治体における青少年保護育成の観点からゲームソフトに対する取り組みなど、諸事について行政と民間で情報交換を行なう場として設けられた。
こうした取り組みでは、過去に東京都 青少年・治安対策本部が「テレビゲームと子どもに関する協議会」を2005年10月、2006年5月にそれぞれ開催している。本協議会はその延長線上にあるもので、構成や方向性などに大きな変化はない。よって、枠組みなどの詳細については前回もしくは前々回の記事をご参照いただきたい。
しかしながら、一部には粗暴性、残虐性を有する表現が含まれているゲームソフトもあり、青少年の健全な育成への影響が懸念されていることも事実。こうした状況に対し、ゲーム関係業界では年齢別レーティング制度を創設し、審査団体として特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構(CERO)を設立し、自主規制を進めている」とコメント。
続けて「本県では、青少年保護育成条例に基づき、平成17年に全国ではじめて『グランド・セフト・オートIII』を有害図書類に個別指定したが、次々と制作・発売されるゲームソフトの内容を自治体が個別にチェック・規制していくことは困難で、業界の自主規制も自治体の有害図書類との規制のあいだで整合性がはかれていないなど、混乱を招く恐れがある。そこで、児童福祉議会の有識者の方々に今後の取り組みを慎重に審議していただき、現行の個別指定制度にくわえ、業界の自主規制に対し、条例上も努力義務を課す『段階表示図書類制度(仮称)』を新たに創設することとし、条例改正に向けた準備を進めている」と、各自治体と業界の自主規制のあいだで生じている“ギャップ”を解消する新たな条例制定に着手していることを明らかにした。
協議会では、家庭用ゲームソフトに関して青少年を守るための取り組みの現状について、「各自治体の取り組み」、「レーティングを運用するCERO、使用するCESAの各取り組み」、「日本テレビゲーム組合、販売店における取り組み」について、それぞれ現状などが報告された。 各都県では「青少年保護育成条例」など、家庭用ゲームソフトに対応する条例がある。その多くは「個別指定」と呼ばれる制度で、これは株式会社カプコン「グランド・セフト・オートIII」など、ひらたくいえば「特例的なものとして“名指し”される」ケース。もうひとつは「包括指定」で、これはアダルトビデオ、成人雑誌など大量に出回る媒体について一定の基準を設け、該当物を自動的に有害指定するもの。個別指定は審議などが必要になるが、包括指定の場合は該当した時点で「有害指定」となり、それぞれ規制や罰則などが適用される。 現時点では、家庭用ゲームソフトに対する「包括指定」条例を制定している自治体ははない。一方で、個別指定、自治体の長が指定した業界団体の自主規制を基準に有害図書を判断する「団体指定」など、細部については大きなバラつきがある。保護者への啓蒙活動、青少年に配布するパンフレット、販売店の実体調査など、自治体が独自にこれを行なっていることが大半だ。
自治体ごとに条例が異なる点については、CERO、CESA、日本テレビゲーム商業組合のほか、株式会社 TSUTAYA、株式会社ドン・キホーテ、株式会社ビックカメラ、ブックオフコーポレーション株式会社、株式会社ヤマダ電機、株式会社ヨドバシカメラ、社団法人日本フランチャイズチェーン協会の各担当者からも「(自治体ごとにルールが異なるため)特にフランチャイズチェーンでは対応に困る」など、統一基準を求める声が異口同音にきかれた。
「コンテンツアイコン」は、「恋愛」、「セクシャル」、「暴力」、「恐怖」、「ギャンブル」、「犯罪」、「飲酒/喫煙」、「麻薬」、「言葉/その他」など、9つのカテゴリを分類して表示するもの。これは、そのゲームソフトの「対象年齢を決定した根拠をあらわした」アイコンで、ゲーム内容をあらわしたものではない。「このゲームは恋愛アイコンがついているから恋愛ゲームなんだな」と勘違いしていた人は、改めてパッケージを眺めてみると(やや不謹慎だが)面白い発見があるかもしれない。 今後の課題としては「PCゲーム(一部例外を除く)」、「業務用ゲーム」、「携帯電話向けゲーム」への対応があげられた。特に携帯ゲームは年少ユーザーの利用率が高いことから特に留意しているという。 日本テレビゲーム商業組合は、加盟店に「経済産業省認可」を明示す「加盟店シール」を配布し“青少年保護条例尊守の店”と健全性をアピール。自治体ごとに異なる青少年保護育成条例についても、毎年3月に更新した一覧、対応マニュアルを加盟店に配布し、情報共有と対応の統一をはかっているという。 ここで興味深かったのは、同組合が「非加盟店」、「異なる流通」の存在を気にかけていたことだ。2007年4月の時点で、1,680店舗が同組合に加盟。正確ではないと前置きしつつ、全国の約6割の店舗が加盟しているのではないかと説明する。組合側では今回のテーマでもある青少年保護育成の観点から「18歳以上対象ゲームソフトの販売ガイドライン」を設けている。対象は、CEROでZ区分と審査された作品、各自治体の条例で指定された作品、組合が独自に審査および認定した作品。 認定された作品は「18歳以上のみ対象」を明記し、所定のルールに基づき陳列。ルールは、棚や間仕切り、床からの高さなど事細かに設定されており、試遊台のフリープレイ禁止、新聞などの折込チラシに表示する際の画面素材にも明確なルールが存在する。組合理事の新谷氏は「データを取ったわけではなく、感覚的ではあるが、Z区分のタイトルが(近年)増えてきている」といい、こうした自主規制を「苦肉の策」と表現した。
ただし、こうした自主規制は“残り4割”の販売店を拘束するものではなく、PCゲームなどで多い「直輸入店」についても同様だという。「条例の罰則を最終的に受けるのは、販売店」という新谷氏は、CESAや自治体に対して「非加盟店に対して、いかに対応していくか。我々自身がルールを守っていくためにも大切。なんらかの協力体制を築いていただければありがたい」とコメントした。
しかし、これが終わりではなく、私は“始まり”だと思っている。制度というのは作るのも大変だが、それを維持していくのはさらに大変なこと。しかも、今回の指定は『条例を作ってやればそれでいい』というものではなく、業界の自主規制、行政とのタイアップ。そのような“新しい方向性”をもっている。その意味において、このような協議会が開催されたということは、非常に意義深いと思っている。これが1回で終わるのではなく、形骸化されるというものではなく、これからも定期的に開催して、さらなる連携、意見や問題点を協議する場であってもらいたい」とコメントした。
矢島教授の言うとおり、本件は「まだ始まったばかり」で、今後は八都県市以外の自治体が参加するケースも増えていくだろう。都道府県で基準が統一されるのはもちろんだが、その手段、内容、正当性についても、きちんとした議論が常になされていくことを痛切に願ってやまない。
□東京都のホームページ (2008年1月23日) [Reported by 豊臣和孝]
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