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★PS2ゲームレビュー★
オーシア連邦とユークトバニア連邦共和国――大海を隔てて相対する2つの超大国。そのオーシアとユークトバニア両国間に広がるセレス海の孤島、サンド島の碧く輝く空の下に存在する、オーシア国防空軍第108戦術戦闘航空団、通称“サンド島分遣隊”所属・バートレット大尉率いる飛行中隊は、2010年9月23日、ランダーズ岬沖合の飛行訓練空域“A-7”にて国籍不明機の侵入に遭遇、交戦状態へと突入した。
通信指令室のミスは突然の襲撃を決定的なものへと変えた。バートレット大尉、ナガセ少尉を除く8名の飛行士が、不明機の砲口に散る。人々の記憶から遠く離れたサンド島に、高次警戒配備態勢が敷かれる。地上に還った2人に若いパイロットを加え、急遽、小隊が結成された。バートレット隊長、ナガセ少尉、ダヴェンポート少尉、そして……主人公であるプレーヤー、コールサインは「ブレイズ」。その翌日、またしても“A-7”に国籍不明機が出現――スクランブル。交戦記録は依然として一切を伏せられたまま。物語は大きく動き出す。 ■ チームメンバーをより身近に感じる無線の進化
なかなか見えてこない国家の意志、そして軍人として、人間として、真意の見えない上層部に疑問を感じながら翼を広げて今また空へと飛び出していくパイロットたち。さらに衝撃的な事件が立て続けに起こっていく。その狭間で、人として、プレーヤーは何を感じ、困難にどう立ち向かっていけばいいのか? 詳しいストーリーはプレイして実際に体感してもらいたいのだが、なんとも考えさせられるストーリー展開になっているのではないだろうか。序盤から丁寧に描かれる人間像と、いやおうなしに起こる日々の戦いのコントラストが、前作よりもさらにプレーヤーに刃を突きつけるように迫ってくる感覚を覚えた。 それには、英語、日本語2タイプが26,000以上収録されているという無線通信、そして3Dとなった幕間デモの相乗効果ははかりしれない。とくに無線に関しては、まさにひっきりなしといっても言いすぎではない量がプレイ中に流れ、いちいち覚えていられないぐらいの情報量には最初あわててしまうほどだった。だが、プレイ感覚がつかめてきて、そして何度もプレイする間にその情報はするすると頭へと入ってくる。音声、字幕ともに日本語/英語の切り替えがオプションで可能になっているので(一部設定が反映されない箇所があるが)、初心者には日本語音声をまずオススメしたい。最終的には、ぜひいろんな設定で楽しんでほしい要素だ。 また、仲間からの無線に応えることができるようになった点も大きな魅力。「はい」か「いいえ」、そして無応答という3つのリアクションが可能だが、ただ“応える”ということがどれだけの効果があるのか、最初は疑問に思っていた。しかし、プレイして思ったことは、これは想像以上の効果を挙げている、ということだ。他愛のない雑談かと思えば、作戦上重要なアドバイスだったり、そしてパイロットの愚痴だったり……その内容の多彩さには、否が応でもそのメッセージに注意を払わざるを得ない。失敗して最初からやり直す際、つい前回とは違うリアクションをとって反応を見てしまう自分がそこにはいた。 ただ「やり直す」それだけなのに、繰り返していく間にずいぶん「ウォードッグ」のメンバーのディテールがはっきり伝わってきた気がする。記事を書いていて失礼な話だが、プレイ前までイマイチ「ウォードッグ」のメンバーに対してピントが合わなかった筆者は、まちがいなくプレイしながら、彼らについて感じることが多々あったことは事実だ。事前情報からいろんなことを理解できている“進んだ”読者には失礼かもしれないが、プレーヤーの自分が置かれているのは、まさにエッジやチョッパー、アーチャーたちと同じ「何も知らされていない、ただ命令に従うだけの」1人の軍人……に近い“勘違い”の意識の中にいた。 それから、陸上部隊や敵からの無線など、戦況判断のためにこの無線は欠かせないものになっている。とくに、護衛ミッションや他の部隊との連係ミッション、ミッション中にさらにミッションがアップデートされる状況などでは、彼らの無線がなによりの情報源になる。広大な戦場を高速に移動するジェット機のコクピットから、視覚で得られる情報はそれほど多くない。それを見事にフォローし、プレーヤーの情報収集を助けてくれるこの無線の進化ぶりには、もはや音声や字幕なしではプレイ不能じゃないのか、と思わせるすごさを感じさせてくれる。それに加え、戦闘中にチームメンバーから戦術の変更を提案されることがある。これに応えると、ウイングマンコマンド(後述)も変更され、プレーヤーのフォローを行なってくれる親切さもある。
今作ではストーリーも分岐するが、それすらスムーズにデモで語られていくことで、プレーヤーの意識を大きな1つのうねりの中にうまく落とし込んでいく。ミッション終了後にリプレイ、そして次のミッションへの合間にセーブやリトライなどが表示されるのが惜しいぐらい、「先が見たい」と思わせる作りのうまさが感じられるといったら褒めすぎだろうか。
■ 程よく調整された「ウイングマンコマンド」 本作の最大の変更点といえるのが、僚機に指示を発する「ウイングマンコマンド」だろう。4機編隊の残りの3機に集中攻撃、分散攻撃、援護の3タイプの指示を出すことができるのは以前もお伝えしたとおりだが、E3 2004から見てきた限り、僚機の性能は強すぎず、弱すぎずといったうまい落としどころに落ち着いた感じだ。 後述するが、メインとなる「キャンペーンモード」では、1機だけの力でミッションを突破するのは相当難しいだろう(機関砲を使いまくってミサイルや特殊兵装を節約するといけるだろうが)。そういった意味で、僚機の活躍にもかなりの期待がかかるわけだが、そこで彼らが強すぎてもらっても困ってしまうわけだ。リプレイを確認してみればわかるが、出すぎず、かといって控えめすぎずといった攻撃パターンになっているし、攻撃指示すれば的確に攻撃も行なってくれる。 僚機が攻撃対象にしている敵には小さな三角マークが出現しているので、一緒に攻撃して早く片付けるか、それとも僚機に任せて自分は別の敵を叩くか、といった戦略の幅の広がりを楽しむこともできる。直接プレーヤーが指示した敵を撃破すると、さらに別の敵を攻撃してくれるので、コマンドを忘れていてもきちんと戦いには参加してくれる。 ランクを気にするなら僚機に敵を撃破されると困ってしまうわけだが、慣れないうちは彼らにとどめを刺してもらう機会もなくはないだろう。そういった意味でも、程よくさじ加減された調整になっている点は非常にありがたい。
蛇足だが、ウイングマンコマンドを入力する際は、□ボタンと併用ができない。レーダーマップを見ながらのコマンド入力はできないので注意しよう。また、慣れないうちは、自機の状態を確認してからコマンドを使ったほうが、旋回中などに入力して建物や山に激突、といったミスをしなくてすむ。
■ 機体は戦術を考えて運用することで思い入れも出てくる
機体選択の場所となるハンガーでは、それぞれの機体の能力が数値で表現されるほか、機体ごとに異なる第3の武器“特殊兵装”の解説も△ボタンで閲覧可能。ぞれぞれのミッションに必要な戦闘能力の指針(編隊バランスゲージ)もハンガーで表示されているので、それを参考にしながら機体選択を行なえば間違いはない。このバランスラインを超えていない場合、出撃前に警告メッセージが表示されるので便利だ。腕に自信のある人はあえて無視することも可能。 特に今作では、あまり飛ばしすぎるとあっという間にミサイルと特殊兵装がカラになってしまうので、それぞれの武器を大事に、そして機関砲も含めた武器の使いどころをバッチリ見極めていくことが非常に大切になってくる。さらには、自分が倒さなくてもメンバーに戦ってもらうことも可能なので、そういった意味でもそれぞれの機体特性を考え、理解していくことが大切になってくる……というより、プレイしていればよほどの腕利きでなければ、そのことについておのずと考えていくようになるだろう。 それぞれの機体を使用することで「キル・レート(機体経験値)」が設定されており、ミッションで敵を撃破するごとに、使用機体のキル・レートが蓄積されていく。ゲージが満タンになると、その機体の進化系機体が新たに登場し、購入が可能となる仕組みになっている。ミッションクリアによっても新しい系統の機体が購入可能となる。チーム内で自分がどんな役割をするかによって、バランスをみながらいろんなタイプの機体に乗っていけば、早くいろんな機体バリエーションを楽しむことができるようになっていくはずだ。 ミッションの内容についてあわせて触れておくと、前作よりも中盤あたりからちょいとひねりの利いたものが増えていく印象だ。ただ真正面からぶち当たっていくだけではそうそう埒が明かないものがちょくちょく登場してくる。さらに言えば、機体の基本操作をそれなりにマスターしておく必要があるものがあるといっておこう。個人的には橋の下などを潜り抜けるアクロバット飛行的な“魅せる”プレイができる場所が多数あるので、リプレイで悦に入ってほしいな、と願わんばかりだ。 ミッション中、やはり最も難易度が高いと思われるのはシリーズの伝統といってもいい対地、対艦ミッションだろう。敵の攻撃を避けながら絨毯爆撃となる対地ミッション、そして○○○を回避しながらの急降下爆撃など、つねに地面や海面との激突の恐怖と、敵の攻撃にさらされる緊張感、さらに敵空軍の猛攻といった多数の危険をはらみつつ、任務を遂行するのはなかなかハードなもの。
メインとなるキャンペーンモードでは、「VERY EASY」、「EASY」、「NORMAL」、「HARD(機関砲800発の制限つき)」の4段階の難易度が選択できるので、少し遊んでみて“厳しいな”と感じたら、難易度を下げてみることもオススメする。ちなみに、キャンペーンモードでは、ゲームを進めている最中にも難易度設定の変更が可能(一度ミッションを抜け、メニューのトップまで戻ってから「OPTION」の「GAME SETTINGS」中の「DIFFICULTY LEVEL」を変更すれば反映される)になっているので、難しいミッションに直面したら、そこで改めて難易度を変更してもいいだろう。 ■ 「AC04」ライクに遊べる「アーケードモード」
マップ、戦闘機などのグラフィッククオリティはまさに「ACE5」なので、同じマップでも新鮮味を持ってプレイできた。たった1機で敵に挑まなければならないわけだが、各面(エリア)には多数の敵機が登場し、設けられた制限時間内に指定された数の敵機を撃墜するとクリア、次のエリアへ進むことができる。全7ステージだが、難易度別に4ルートの分岐が用意されている。 敵機を撃破するとタイムボーナスがもらえたり、特殊兵装が増加するので、敵を計画的に狙っていく必要がある。タイム制限は1エリア単位で見ると初見ではちょいと厳しい設定になっているので、マップ画面を利用したりしながら戦っていくと効率が上がるだろう。輸送機などは戦闘機群と違う高度に位置していたり、またAA GUNなどの地上物も猛攻を仕掛けてくるので、レーダーばかり見ているわけにはいかなくなるが……。
難しくなっているとはいっても、基本は一緒。敵機の背後を押さえてロックオン、ミサイルを撃つという流れは変わらない。無駄を減らし、特殊兵装の使いどころを抑えていくことがクリアのコツになるだろう。難易度別にA~Dまでのルートがあるが、ルートDはかなり辛口。腕に自信のある方はぜひ試してもらいたい。ちなみに、「アーケードモード」の難易度はルート選択以外の変更はできない。 ■ よりシャープになったグラフィック ここで改めていうまでもないが、「AC04」から「ACE5」へとグラフィックは確実に進化している。全体的にシャープなイメージで、前作では「これぞPS2のグラフィック」と思っていたものが、3年も経過したこともあってか「よくぞPS2でここまで」というグラフィックに進化したといえばいいのだろうか。特に、ミサイルの煙、爆発炎などに力の入り具合がうかがえるし、リプレイは格段にかっこよく見える。ゲーム中も自分の行動が視覚でわかりやすくなったのはうれしい進歩だ。 また、地上部分の解像度が向上しているので、垂直降下した際など、方向感覚がつかみやすくなっている。だんだん降下していくと、リニアに地面のテクスチャが拡大しているのだが、前作と比べその拡大度は控えめに見えるので、とくに遊び初めには高度計には十分注意したほうがいい、というぐらい良くなっている。 リプレイでは、自機をいろんなアングルで確かめられるほか、チームメイトの機体もそれぞれが確認できるようになっている。彼らがどんな行動を行なっているかは、結果報告画面の矢印でもわかる(4機ともフォローされている矢印を見るだけでも感心してしまうのだが)が、リプレイもなかなか面白い。ただ、セーブができないのは相変わらずなのが残念といえば残念だ。自分のリプレイを人に見せたくなるだけのグラフィックなのに……。
グラフィック、そしてドルビープロロジックII対応になったサウンド、さらに豪華になった無線……見て、聴いて、飛んでみて感動する「ACE5」は、「エースコンバット」シリーズの集大成といえるできばえだ。PS2HDD対応ははずされたが、ロード時間はナムコらしく短め。何度も遊ぶには十分の環境が整えられているといってもいいだろう。 「キャンペーンモード」では「2」以来の勲章が復活し、ランクもS~Cまで用意されているため、やりがいは十分。ミッション1つが長丁場のものが多いので、腰を据えてプレイしてもらいたいし、「アーケードモード」は効率を極めながらも気軽に遊びこんでもらいたい。
最初は無線の情報量や、若干あたりにくくなったミサイルなどに戸惑うことがあるかもしれないが、それは数時間もプレイしていればむしろ当たり前になる。逆にもう“『AC04』には戻れない”と思うかもしれない。3年待ったかいは十分あるだろう。
※画面は開発中のものです。
□ナムコのホームページ (2004年10月20日) [Reported by 佐伯憲司]
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