【特別企画】

全国高校eスポーツ選手権、初開催の「フォートナイト」部門予選レポート

白熱の「フォートナイト」高校生デュオ大会予選、決勝に進む40チームはどこだ!?

【全国高校eスポーツ選手権「フォートナイト」部門】

11月20~21日開催

 高校生たちによるeスポーツの祭典「全国高校eスポーツ選手権」が今年も始まろうとしている。第4回大会となる今大会は、昨年同様、全国高等学校eスポーツ連盟と毎日新聞社主催のもと、文部科学省の後援を受けて開催されている。採用競技は昨年までの「ロケットリーグ」と「League of Legends」に加え、今年は新しく「フォートナイト」部門も新設され、さらに規模を拡大して全国のeスポーツ高校生たちを迎える。

大会ロゴ

 「フォートナイト」部門は新設されたばかりでありながら、人気ゲームというだけあって、全国から261校447ものチームが参戦しており、これは前回大会の「ロケットリーグ」部門や「League of Legends」部門を凌ぐチーム数だ。1チーム2人組のデュオという形式を採用しているため参加の敷居が低いということもあるだろうが、高校生大会にしては他に類を見ない大規模な大会となった。しかし参加した全447チームの中、12月19日開催の決勝大会に進めるのはわずか40チームに限られる。本稿では、決勝大会へ向けた40枚の切符をかけて戦う予選決勝をレポートする。

 配信には毎度おなじみとなっているキャスターのOooDa氏、そして岸大河氏が登壇し、高校生たちの雄姿を見守った。また解説員として元プロゲーマーのShiras氏、アナリストとしてSCARZの「フォートナイト」部門マネージャーを務めるKilluA氏と、競技シーンをよく知る2名が登壇し、配信はプロの試合顔負けの豪華さとなった。予選決勝は混戦となること間違いないが、この戦いを抜け出し、栄光の決勝大会への出場を決めるのはどこの高校になるのか。

進行を務めたOooDa氏(左)、Shiras氏(右)
実況解説を務めた岸大河氏(左)、KilluA氏(右)

予選決勝DAY1、N高校、S高校が強さを見せた!

 予選決勝はブロック予選を勝ち抜いた91校により争われ、DAY1とDAY2に分けて開催された。ルールはデュオのサーキット形式で、生存順位やキルに応じてポイントが付与され、5ゲーム終了時のポイント差で最終順位が決まる長期戦のポイント制となっている。

 各日の最終順位上位20校が決勝大会への切符を手にすることができるため、いかに20位以内に食い込めるかが勝負どころだ。ポイント配分は以下の通りだが、ビクトリーロイヤルが10ポイント獲得できるのに対して、撃破1ポイントという配分となっていることから、勝ち上がるためにはビクロイを取るだけでなく積極的な姿勢が求められる形式となっていることが分かる。生存順位をキープしながらキルを稼ぐことが求められるため、高所の位置取りや移動のタイミングを見極める必要があり、勝利のためにはチームメンバー間の連携と戦略性が求められる。

ポイント表

 また今回の大会には、与ダメージが低いプレイヤーに継続ダメージを与えるストームサージも発生するため、隠密プレイはできず、ある程度の交戦は必須となってくる。実際試合を見ていると、選手たちのレベルが高い分序盤の生存率が高く、毎試合必ずといっていいほど50人サージ、30人サージが発生していた。サージを免れるためには敵プレイヤーにダメージを与え続けることが重要なため、あえて激戦区に踏み込む姿勢が重要になる。加えてジャンプパッドやペッパーを駆使して、適度な距離を保ちながら激戦区に有利に干渉できる位置取りが重要になってくる。試合ではこうした位置取りをめぐって、プロ顔負けの駆け引きが繰り広げられていた印象だ。

終盤のようす。狭いエリアに大勢が集まっているのが分かるだろうか。

 そんなハイレベルな試合の中で、一際目立っていたチームをいくつか紹介しよう。まずは本予選決勝DAY1を見事1位で通過し、トップの成績で決勝大会への出場を決めたN高等学校の「イケボくん・まーくん」だ。「全国高校eスポーツ選手権」も4回目の開催となってくると、必然的に常連校の存在が出てくるわけだが、その中でもとりわけ強豪校として存在感を放つのがN高等学校だ。私立通信制高校として全国に生徒を抱えるN高は、オンライン部活動としてのeスポーツ活動も盛んで、本大会の決勝でその名を見ない年はない。また今年は「第2のN高」として今年4月に開校されたS高等学校からも生徒が多数参戦しており、この2校は必ず上位争いに絡んでくるだろう。

 「イケボくん・まーくん」は恐らく全チーム中一番の安定を見せていたチームだ。ビクロイこそなかったものの、第1ゲームを除く4ゲーム全てにおいて生存ポイント7を獲得しており、5ゲーム合計28ポイントを獲得していた。また撃破数では飛びぬけており、最終ゲームではひたすら身を潜めて0キルだったのにもかかわらず、最終得点では撃破ポイント31と、ぶっちぎりの1位を獲得していた。そんな「イケボくん・まーくん」の戦闘能力の高さは彼らの立ち回り戦略にあり、ハイグラウンドにこだわらず地上で積極的に相手チームを撃破していく姿勢でキルを重ねていたのが印象的だった。

 例えば第2ゲーム中盤戦、他のチームがこぞってハイグラウンドを狙って建築合戦をする中、「イケボくん・まーくん」は地上に拠点を構えてじっくりと戦況を見計らっていた。建築合戦の途中に足場を壊されたプレイヤーがひとたび地上へ落ちると、そこには彼らが待ち構えており、人数差を活かして確実にキルしていく。まるで獲物を待ち侘びるアリゲーターのような立ち回りでキルを重ねており、さらにはチャグスプラッシュとジャンプパッドもちゃっかり携えているため、終盤戦への対応策も万全というわけだ。ハイグラウンドの奪い合いにあえて参加しないことで資材を温存し、キルを稼ぎながら安全に終盤戦まで生き残る戦略なのだろう。虎視眈々と地上に構える彼らのこの戦略は、決勝大会でも猛威を振るうこと間違いない。

「イケボくん・まーくん」視点

 同じくN高「じゃがりぃーとみかん」も終始目覚ましい活躍を見せており、最終成績5位で決勝大会への進出を決めた。「じゃがりぃーとみかん」は先ほどのチームとは対照的にハイグラウンドに貪欲で、常に建築合戦に参加するような姿勢でポイントを稼いでいた。中盤から資材を大量に消費する作戦のため、失敗したときのリスクは大きいが、代わりに成功したときのリターンも高い戦術だ。そんなハイリスクハイリターンの中でも安定して高順位を保持していたというのは、日頃の練習の賜物だろう。

 例えば「じゃがりぃーとみかん」がビクロイを決めた第2ゲーム、彼らは移動安地が始まった終盤戦に差し掛かると、それまで温存していたペッパーを使用し自らの移動速度と建築速度にバフをかけた。そして加速を活かして一気に地上の混戦を抜け、圧巻の建築スキルでハイグラウンドを築き上げる。アイテム一枠を潰してまでペッパーを保持していた判断と、一気にハイグラウンドを作って他を出し抜いた勝負の勘、そしてなんといっても移動安地に合わせて建築をするスキル、これらが揃ってはじめて可能となる圧巻のプレイイングだ。また資材がなくなってから再び地上に降りる際のタイミングも絶妙で、階下のプレイヤーに奇襲をかけるようなかたちで攻撃し、見事ビクロイを獲得していた。

「じゃがりぃーとみかん」視点

 N高のチームが存在感を見せる中、S高も負けてはいなかった。最も目立っていたのはS高「スバッシュ」で、彼らは生存得点では全チーム中1位の30ポイントを獲得し、最終順位2位で決勝大会へと駒を進めた。彼らの持ち味はなんといっても安定した生存能力で、終盤戦で彼らの姿を見なかったことはないほどだ。序盤から盤石な立ち回りで資材とアイテムを揃え、終盤の位置取りも無理をしすぎないところが非常に上手い。日頃の練習からチーム内の連携が潤滑に行われていたからこその動きだろう。

 「スバッシュ」がビクロイを決めた第3ゲームは、終盤まで混戦が続いていた試合だった。全体の生存率が高く、残り49名の時点で30名まで削るストームサージが発生し、狭いエリアの中でプレイヤーたちがダメージを求めて彷徨う乱戦模様となる。そんな中でも「スバッシュ」は落ち着いており、それまでハイグラウンドを保持していたチームが資材切れでジリ貧になっているのを見るとすかさず強襲し、資材を温存しながら高所を確保する。そこからはハイグラウンドを維持しながら終盤戦を戦い抜き、ストームが縮み切った後は温存していた12個ものチャグスプラッシュを活かし、他プレイヤーと交戦することなく回復合戦に持ち込むことで、安全に勝利を収めた。この高校生離れした冷静さは、決勝大会でも脅威となるだろう。

「スバッシュ」視点

 DAY1の全体的な印象としては試合のレベルが非常に高く、単純なスキルのみならず判断力や連携力が勝敗に直結していた印象がある。その中でもやはりN高、S高の存在感が大きく、決勝大会で誰が彼らを止めるのかが一つの見どころになるだろう。またN高、S高以外にも、クラーク記念国際やルネサンス高校も安定した活躍を見せていた。決勝で彼らがどのような戦いを繰り広げるのか、要注目だ。

DAY1最終順位表
20位に入れなかったチームは惜しくも敗退となる

上位3チームの激戦!白熱のDAY2

 DAY2の試合もDAY1に負けじとハイレベルな戦いの連続だったが、特に印象的だったのは上位3チームの競り合いだ。DAY2の最終順位を見てみると、1位通過はN高仙台キャンパス「イノシシ舐めんな」が総合得点56、2位に吹田高校「あいうえお」が得点55、3位に成立学園高校「赤点回避」が同じく得点55と、上位3チームが大接戦を繰り広げていたことがわかる。この上位3チームはどこも強者揃いで、決勝大会でも上位争いに絡んでくることは間違いないだろう。

 彼らが最初に相まみえたのは第2ゲームの終盤戦だ。この試合ではストーム収縮後の安全地帯が山の上に設定されたことで、プレイヤーたちは安地をめぐって高低差のある移動を強いられ、資材の差が生存順位に大きく影響する展開となった。そんな中でも真っ先にハイグラウンドを確保したのは「イノシシ舐めんな」だった。彼らはストームの軌道を真っ先読んでジャンプパッドで移動し、他のチームが崖を登りあぐねている最中にすぐ高所に陣取っていた。その後「あいうえお」、「赤点回避」もそれぞれハイグラウンドを狙って圧力をかけるが、「イノシシ舐めんな」はこれをすぐさま察知して迎撃。誰にもハイグラウンドを明け渡すことなく、盤石な立ち回りでビクロイを決めた。

 「イノシシ舐めんな」は以前開催された別の高校生大会「NASEF JAPAN MAJOR」で準優勝した経験もあるチームで、動き随所から大会慣れした落ち着きと連携の円滑さが伺える。チームメンバー2名の役割分担も周到で、ハイグラウンドがジリ貧になった時はどちらか一方が地上へ降りるなど、そういった判断能力でもワンランク上のプレイングを見せていた印象がある。この安定したプレイングをもってすれば「イノシシ舐めんな」は決勝の上位争いにも必ず絡んでくるだろう。

ハイグラウンドを確保する18番「イノシシ舐めんな」と、すぐ下に構える27番「あいうえお」

 そんな「イノシシ舐めんな」と全く真逆のプレイスタイルを持っているのが「あいうえお」だ。「あいうえお」は過去に公式大会「FNCS Grandfinal」で準優勝を収めた経験のあるOtome選手率いるチームで、何よりも個人技を重んじたプレイスタイルが特徴的だった。敵チームが見えれば積極的に2対2の戦闘を仕掛けていき、ローグラウンドで着々とキルを重ねていく姿はまるで傭兵のようで、フィジカルの強さに自信があるからこそできる立ち回りを見せていた。

 Otome選手のプレイングで特に目を見張ったのは第4ゲーム中盤戦の一幕だ。残り36名の時点で他のチームが徐々にハイグラウンドを形成しようとする中、Otome選手が単騎でジャンプパッドを使い高所を奪いに突入する。Otome選手は他チームが足場を積み上げている地点から少し離れた場所に着地すると、卓越したエイム能力で建築中の敵を一気に掃射し、ジャンプパッドで逃げようとする敵をも確実に捉えていた。極めつけはハープーンガンでしっかりとアイテムも回収しており、キル、位置取り、物資、全てにおいてアドバンテージを取るスーパープレイだった。こうした大胆なプレイングはスキルに自信がないと中々できるものではない。

単騎で強襲するOtome選手

 また、ビクロイや大量キルなどの派手なプレイはしなかったものの、「赤点回避」の安定感も圧巻だった。彼らの立ち回りを見ていると、中盤から終盤にかけてハイグラウンドを意識した位置取りはするものの、必ずしも最高所を取ろうということはしない。彼らはむしろセカンドハイと呼ばれる中間層に陣取ることが多く、決して無理をしないプレイングで、どの試合でも一定のキル数と一桁台の生存順位を獲得していた。高校生大会においてこうして一歩引いた立ち回りを見せられるチームは非常に稀であり、好戦的な上位チームがつぶし合うような展開になった場合には「赤点回避」が漁夫の利的にトップに躍り出ることも十分に考えられる。決勝でも要注目なチームの一つであるといえよう。

ジャンプパッドやジャグスプラッシュを携えてセカンドハイを狙う「赤点回避」

 上位3チームが接戦を繰り広げたDAY2だったが、決勝でも要注意なのはやはり「あいうえお」だろう。「あいうえお」の立ち回りは決して安定しているとはいえなかったが、Otome選手の爆発力は大会中随一であり、彼をいかに封じ込めるか、もしくは彼をいかに避けるかが決勝の一つのみどころになるだろう。また上位3チーム以外にも素晴らしい活躍を見せていたチームも多くあり、決勝大会はまさにどこが勝ってもおかしくない状況になった。

DAY2最終順位表
20位に入れなかったチームは惜しくも予選敗退となる

 DAY1、DAY2共にハイレベルな戦いが続いたが、その中でも各チームがそれぞれ個性的な立ち回りを見せていたのが印象的だった。好戦的な者もいれば安定を好む者もおり、それぞれの戦いぶりからはプレイヤーの人となりさえも垣間見えるようだった。大会を観戦する皆さんも、個性豊かなチームの中から是非推しのチームをひとつ見つけて、来たる12月19日の決勝大会に臨んで欲しい。