【特別企画】

第4回全国高校eスポーツ選手権「リーグ・オブ・レジェンド」部門、予選最終戦レポート

優勝筆頭候補N高「N1」も決勝へ! 決勝大会は12月26日開催

【第4回全国高校eスポーツ選手権「リーグ・オブ・レジェンド」部門:予選決勝】

11月23日 開催

 11月23日、一般社団法人 全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)は、「第4回全国高校eスポーツ選手権」における「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」部門の決勝大会進出を決める予選決勝を行なった。

 本大会は、一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟及び毎日新聞社が主催する、高校生を対象にしたeスポーツ選手権大会。前年から引き続き「リーグ・オブ・レジェンド」、「ロケットリーグ」が種目として採用されているだけでなく、今大会より「フォートナイト」が種目に追加され、昨年からさらに規模が拡大しての開催となる。「LoL」部門では、全国の高校より参加した全165チームから、各ブロック予選を勝ち上がってきた8チームが、12月26日に行なわれる決勝大会への4枠をかけて争った。

 試合の結果、アートカレッジ神戸「ACK A」(兵庫)、ルネサンス大阪「ロイヤル決して諦めない」(大阪)、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」(東京)、N高「N1」(沖縄)の4チームが決勝へと駒を進めた。

 なお、試合の模様はTwitch、YouTube、Twitterの大会公式アカウントにて配信された。配信にはMCとしてeスポーツキャスターのOooDa氏、アナリストに元プロ選手のiSeNN(アイセン)さんが登壇。また、実況・解説はLJLでお馴染みのeyes氏、Revol氏が担当した。

MCのOooDa氏
アナリストのiSeNN(アイセン)さん
eyes氏(左)、Revol氏(右)
【第4回全国高校eスポーツ選手権リーグ・オブ・レジェンド部門予選決勝】

【視聴URL】
・Twitch:https://twitch.tv/ajhs_esports
・YouTube:https://youtube.com/channel/UC2OpRCMIYRYGjnIt-Fv32kA
・Twitter:https://twitter.com/ajhs_esports

年々レベルが上がる高校生「LoL」。使用されるのは「プレシーズンパッチ」

 「LoL」はライアットゲームズが運営する、世界で最も人口の多いオンラインゲーム。MOBAと呼ばれる戦略性の高いジャンルのゲームで、5vs5のチーム戦ということもあり、チームの連携や戦略が勝利のカギとなる。特に本大会のような学生チーム同士の試合では、プロシーンでは見られないチャンピオンの選択や、実力の違う選手たちがチームを組んで参加することによる戦略などが見どころとなる。

 なお、「LoL」の詳しいルールやゲームの流れは、公式が分かりやすく紹介する動画を公開しているので、興味がある方は視聴して欲しい。

【1分でわかる!リーグ・オブ・レジェンド】
【リーグ・オブ・レジェンド:ゲーム紹介PV】

 さて、今回が4回目となる本大会。第一回大会開催時には1年生だった選手も高校を卒業したこともあり、多くの高校が新しいチームで挑むこととなった。それでも、今回予選最終戦まで残ったチームは前大会でも結果を残してきた強豪校・強豪チームが中心。そのどれもが学科としてeスポーツに取り組んでいたり、プロ選手に指導を受けていたりといった何らかのアドバンテージがあるチームだ。

 こうした背景を持ったチームの存在もあって、高校生「LoL」シーンは年々成長を遂げており、出場する選手たちはプロ顔負けの動きを見せてくれる。「LoL」では国内2部リーグ制度が存在しないこともあり、高校生「LoL」シーンが実質的に国内「LoL」プロシーンの発展を担う若手選手の育成の場となっていることもあって、学生全体のレベルが上がっていることは喜ばしいことだろう。

 そんな強豪チームの中でも注目だったのが、前回優勝のN高「N1」と準優勝のアートカレッジ神戸「ACK A」の2チーム。強豪チームがメンバー変更でどう変化したかが気になった。また、練習時間がとりやすい通信制高校や、eスポーツ学科のある私立高校に対し、様々な面で不利な国公立高校から唯一ここまで勝ち上がってきた大阪市立西「FTC」のプレイにも期待がかかった。

予選最終戦の組み合わせ。各ブロックの勝者がぶつかる

 今回の試合はBO1(一本先取)で行なわれるため、まさかの展開で強豪チームが敗退する可能性のあるルール。また、使用されるパッチも「プレシーズン」のものであることも重要だ。

 「LoL」は2週間に1度という高頻度でアップデートが入るゲームだが、特に次のシーズンに向けた「プレシーズン」と呼ばれる期間には大きな調整が入り、これまでとは全く違った戦略・連携が必要となる。本大会で使用されるのは先週配信されたばかりの「プレシーズンパッチ」ということで、どのチャンピオンにどのアイテムを持たせるのが強いのか、新要素に対しチーム全体でどう対応するのかなど、未知の部分が非常に多く、手探りでプレイをしなければいけない状況だ。だからこそ、いかにメタ(チャンピオンやアイテムの強弱)を理解し、チームとしてそれを実行できるかという対応力も出場チームには求められる。

 筆者が個人的に注目したいのは、今パッチで追加された新システム「オブジェクトの賞金」。負けているチームがオブジェクトを獲得すると追加でゴールドも獲得できるというもので、これまで難しかった逆転への糸口となりうるシステムだ。また、新ルーン「ファーストストライク」や、新たな「ヘクスティックドレイク」、「ケミテックドレイク」という2体の新ドラゴンなど、気になる追加要素も多く、選手達がこれらをどう活かすかが楽しみだった。

新システムの「オブジェクト賞金」では、負けている側のチームがミニマップで黄色く縁取りされたオブジェクトを獲得すると追加で賞金が手に入る

第1試合、前回準優勝チームが見事な対応で勝利

 第1試合は、クラーク国際記念 CLARK NEXT Tokyo(東京)の「板橋卍會」と、アートカレッジ神戸「ACK A」(兵庫)との試合。「板橋卍會」は全員が1年生というフレッシュなチーム。一方の「ACK A」は前回大会準優勝のチームで、プロチーム「V3 Esports」から指導を受けている強豪チームだ。引退した先輩の穴をどう埋めるかが注目された。

「板橋卍會」のピックは、硬いチャンピオンが中心で戦いを仕掛けやすい。対する「ACKA」は、前線を支えるチャンピオンが少ないテクニカルな構成だが、どの時間帯でも戦えるというメリットがある

 試合は序盤、MidでクラークのSabile選手の使用する「サイラス」が仕掛けるも、Kensou選手の「カシオペア」がうまく対応して逆にキル。その後も「ACK A」がTop、Midでキルを獲得し有利を広げていく。一方の「板橋卍會」もドラゴン前で人数差を活かした仕掛けを行なうが、これは「ACK A」の味方を囮にしたプレイ。仕掛けをいなしつつ「ACK A」のメンバーが素早く集合し、カウンターで戦闘に勝利した。

 その後も「板橋卍會」は諦めずに仕掛けていくが、「ACK A」の対応が素晴らしく立て続けに勝利。試合は「ACK A」が積み上げた有利を活かしてバロンを獲得すると、一気に敵陣まで押し込んで勝利した。

「板橋卍會」の仕掛けに対し、tatsu09選手の使用する「リリア」のアルティメットによるカウンタープレイが見事に突き刺さった

2試合目は同校対決。ドラゴン前での駆け引きが勝敗を分けた

 2試合目はまさかのルネサンス大阪から出場している2チームがぶつかる同校対決。「EXカチコチザウルス」と「ロイヤル決して諦めない」がぶつかった。普段から一緒に練習をしていることもあり、互いの手の内がわかっている両チームがどのような戦略をとるのかが見どころだった。

「EXカチコチザウルス」のIDsaki選手がピックした「ベックス」は最も新しいチャンピオンで、集団戦での影響力が大きい。一方、karehamodoki選手がピックした「ブラッドミア」はこのパッチで強力ではないかと注目されているチャンピオン

 試合は、序盤に「EXカチコチザウルス」がボットでキルをとるものの、その後は拮抗した内容に。お互い有利を作るために仕掛けていき、双方キルやオブジェクトは獲得するものの、痛み分けのような形が続き決定打が生まれなかった。

 試合が動いたのは24分。「ロイヤル決して諦めない」のぴえろちゃん選手の「ラカン」が集団戦を仕掛けようとするものの、「EXカチコチザウルス」のメンバーはこれをうまくいなすことに成功し、カウンターでプレッシャーをかける。しかし、「ロイヤル決して諦めない」のkarehamodoki選手の「ブラッドミア」が完璧なタイミングで、カウンターを狙って前のめりになった敵陣中央に切り込んで大ダメージをたたき出し、他のメンバーもこれに続き「ロイヤル決して諦めない」が集団戦に勝利、ゴールドの優位を築くことに成功した。

 その後は、不利を背負った「EXカチコチザウルス」もうまく耐えてはいたものの、「ロイヤル決して諦めない」がドラゴン前の駆け引きに勝利し「ドラゴンソウル」を獲得。集団戦を制し、そのままネクサスを破壊して試合を決めた。

試合を決めたkarehamodoki選手のプレイ。敵陣に切り込み、一気にダメージを出したことで勝利を掴んだ

3試合目、集団戦での僅かな差が勝敗を分ける結果に

 3試合目はクラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」(東京)と大阪市立西「FTC」(大阪)の試合。「Yuki飯食べ隊」は本大会の常連校で、元プロ選手がコーチをしているチーム。一方の「FTC」は、ここまで残ったチームでは唯一の国公立校。チームメンバーは全員が3年生で、今年が最後の大会というだけでなく、大阪市立西高校は2024年3月の廃校が決まっており、様々な思いを背負っての出場となる。

「Yuki飯食べ隊」はborutu選手が得意とする「ジグス」が注目。対する「FTC」はMidにファイターの「セト」を置く珍しい構成で挑む

 試合は開始後すぐに「Yuki飯食べ隊」のジャングラーsiroshi15選手がTopガンクに成功し、キルを獲得。それに対し、「FTC」もテレポートを使ったカウンターアクションを仕掛けるものの、「Yuki飯食べ隊」はうまくこれをさばき、無傷で終える。

 その後、Midでの戦闘で「Yuki飯食べ隊」のNanabito選手の使う「イレリア」が3キルを獲得。一方、Topでは「FTC」のLovelyJack選手の「モルデカイザー」が相手をソロキル。どちらの選手が集団戦で活躍するかが勝負の分かれ目となった。

 中盤、リフトヘラルド前の集団戦でLovelyJack選手の「モルデカイザー」が暴れるも、「Yuki飯食べ隊」のNanabito選手の「イレリア」が僅かな差で勝利。これで完全に波に乗った「Yuki飯食べ隊」はborutu選手の使う「ジグス」のタワー破壊性能を活かしてマップを掌握していく。「FTC」も最後まで食らいつこうとするがこれを寄せ付けず、「Yuki飯食べ隊」がネクサスを破壊し勝利した。

僅かな差で勝利した集団戦。ここで得た有利が勝負を分けた

優勝筆頭候補「N1」が実力を見せつける

 予選最終戦は、本大会優勝筆頭候補であるN高「N1」(沖縄)と、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Sesa飯食べ隊」(東京)の試合。「N1」は、チームメンバーの半数がプロのアカデミーに所属しており、プロコーチやチームと日々プレイしているだけあって、個人技・連携共に非常にレベルの高いチーム。全国高校eスポーツ選手権では前回、前々回と優勝。本大会では3連覇に挑む。本大会に出場している全チームが「打倒N高」を掲げているといってもいい状態だ。対する「Sesa飯食べ隊」は、3試合目で勝利した「Yuki飯食べ隊」と同じクラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabaraのチーム。強豪校を倒し、決勝大会での同校対決を目指す。

 試合はBAN/PICKから異色の展開に。「N1」は「ブラッドミア」、「ヨネ」、「ジンクス」といったプレシーズンで強力ではないかと注目されているチャンピオンを中心にピックし、メタへの対応力を見せる。一方の「Sesa飯食べ隊」はTopのkosisan選手が「サイオン」をピック。「サイオン」は死亡後も数秒間動ける能力を活かすことで、奇策に使われることもあるチャンピオン。強豪相手に搦手を使用して勝利することはプロシーンでも珍しくない光景なだけに、「Sesa飯食べ隊」の動きに期待がかかった。

「N1」のメタで注目されているチャンピオン達に対し、「Sesa飯食べ隊」は「サイオン」を用いた奇策で挑む

 試合は予想通り、「Sesa飯食べ隊」の奇策からスタート。TopとBotの選手を逆側に配置する「スワップ戦術」をとり、「N1」に揺さぶりをかける。ジャングラーのAcciy選手と、Topのmomo tqt選手を抑え込むのが狙いだ。

 しかし、「N1」はこの奇策に冷静に対応。Botレーンで、ないな選手の使う「ジンクス」がサイオンをキルし、Midでもrre選手の使う「ヨネ」が相手をソロキル。一方の「Sesa飯食べ隊」もTopの「ブラッドミア」を狙ったガンクや、サイオンのアルティメットによる奇襲を仕掛けるものの、「N1」の高い個人技で返されてしまう。

 試合は中盤、これまで耐えていたmomo tqt選手の使用する「ブラッドミア」が爆発。集団戦でキルを獲得すると、完全にキャリーコースに入り最終的にはほとんど1vs5に近い形でも敵をなぎ倒していく。試合はそのまま「N1」がバロンを獲得し、集団戦でも勝利。メタや奇策に対する対応力、個人技の高さ、集団戦での連携など、プロ顔負けのプレイを見せて決勝へ駒を進めた。

「N1」はmomo tqt選手の使用する「ブラッドミア」が育ち止められなり、ほぼ1vs5の状態でもキルを獲得する展開に

栄冠はどのチームの手に? 決勝大会は12月26日に開催

 さて、今回予選を勝ち上がった、アートカレッジ神戸「ACK A」(兵庫)、ルネサンス大阪「ロイヤル決して諦めない」(大阪)、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」(東京)、N高「N1」(沖縄)の4チームがしのぎを削る決勝大会は12月26日に行なわれる予定。今後、決勝の組み合わせを決める抽選が行なわれる。

 年々レベルが上がっていく高校生「LoL」シーンは、今や未来のプロ選手が活躍する場となった。予選を見てもわかる通り、トップクラスのチームのエースプレーヤーはプロ選手顔負けのプレイを見せてくれるし、連携の質も相当に高い。中でもやはり「N1」の強さは別格。このまま圧倒的な力を見せて優勝するのか、それともライバルチーム3校の何れかが雪辱を果たすのか、今から楽しみだ。まだ決勝までは十分に時間があり、その間にも選手たちは練習を重ね、より高いレベルのプレイを見せてくれるはずだ。