【特集】

“次の10年”という前人未踏の領域に踏み出した「FFXIV」。「暁月のフィナーレ」メディアツアーレポート

吉田P主導でいよいよ始まる第2の「新生」。その中身を予測する

【ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ】

11月23日発売

価格:
4,620円(通常版)
6,600円(コレクターズエディション)

 スクウェア・エニックスは、プレイステーション 5/プレイステーション 4/PC用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」のメディアツアーを東京本社にて開催した。本稿では、メディアツアーレポートの導入として、参加を通じて感じたことをお伝えしたい。なお、記事中で試用している「暁月のフィナーレ」のスクリーンショットは、試遊時の最終調整前のものであり、リリース時には変更される可能性があることにご注意頂きたい。

【「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」メディアツアーレポート目次】

【新エリアレポート】
撮影に使える魅力的な場所がたくさん! 「FFXIV: 暁月のフィナーレ」、新エリアレポート
新拠点「オールド・シャーレアン」、新エリア「サベネア島」、「ガレマルド」をたっぷり紹介

【新IDレポート】
「FFXIV: 暁月のフィナーレ」新ID試遊レポート
「終末の塔」を彷彿させる「異形楼閣 ゾットの塔」をフェイスと共に攻略してみた

【最新ジョブレポート】
「FFXIV: 暁月のフィナーレ」ジョブレポート「リーパー&賢者編」
スタイリッシュに空間を移動するリーパー、攻撃的回復スタイルの賢者

「FFXIV: 暁月のフィナーレ」ジョブレポート「タンク編」
4タンク全てがMT・STどちらも可能なら戦国時代に突入

「FFXIV: 暁月のフィナーレ」ジョブレポート「近接DPS編」
モンクと竜騎士はスキル回しが一変。侍忍者は正統進化

「FFXIV: 暁月のフィナーレ」ジョブレポート「遠隔DPS編」
大胆な仕様変更で召喚一強時代は変わるのか? 各ジョブの変更点をチェック

「FFXIV: 暁月のフィナーレ」ジョブレポート「ヒーラー編」
設置型ヒールの白、早さの学者、占星はピュアヒーラーに

【「FFXIV」“次の10年”を予測する】
“次の10年”という前人未踏の領域に踏み出した「FFXIV」。「暁月のフィナーレ」メディアツアーレポート。吉田P主導でいよいよ始まる第2の「新生」。その中身を予測する

【吉田直樹氏インタビュー】
「FFXIV: 暁月のフィナーレ」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー
気になる「ハイデリン・ゾディアーク編」の行方や新エリアの謎、調度品へのこだわりなどに迫る

初の日本でのメディアツアー、新ジョブでガッツリ遊んできました

 「FFXIV」のメディアツアーは、拡張パッケージのリリースごとに欧米で実施されてきた。2015年の「蒼天のイシュガルド」はフランス ナント、2017年の「紅蓮のリベレーター」はドイツ ハンブルク、2019年の「漆黒のヴィランズ」英国ロンドンといった具合で、日本の本社ではなくあえて海外で実施するというのが伝統となっており、日本のメディアも先に実施される欧州のメディアツアーに参加して、日本の「FFXIV」ファンに最新情報をお届けしてきた。

【シャラン城】
「蒼天のイシュガルド」メディアツアーの舞台となったシャラン城。筆者も赴いたが、たどり着くまでが本当に大変だった

 「暁月のフィナーレ」では、新型コロナウイルスの影響で、日欧米で3回実施されるオフイベントとしてのファンフェスも、海外でのメディアツアーも共に中止となり、今回奇しくも初の日本での実施となった。メディアツアーの手前で実施される日欧米のファンフェスも中止になっているため、メディアツアーも中止という選択肢も当然あったはずだが、最低限メディアにプレイして貰い、一足先にプレイフィールをプレーヤーに届けたいというゲーマーとしての吉田氏(吉田直樹氏、「FFXIV」プロデューサー兼ディレクター)のこだわりを感じた。

【デジタルファンフェス】
オンラインでの開催となったファンフェス

 筆者も「FFXIV」担当としてメディアツアー初日に終日参加してきた。メディアツアーでは、複数のエリアは開けられるものの、ストーリーは完全にマスクされ、新ジョブでIDを遊んだ後は少し時間を持て余すかなと思っていたが、いざ参加してみたら時間が足りないぐらいだった。

【メディアツアー開始】
スタート直後の状態。各メディア担当者が思いのままに散っていく

 ジョブやバトルについては、初回からそれっぽく動ける手触りの良さ、最適解を追求する試行錯誤の楽しさは相変わらずで、派手なエフェクト、リッチなギミックと共にがっつりとした戦いのカタルシスを得ることができる。

【バトル】

 新エリアについては、ガレマルドなら吹雪、サベネア島なら濃霧といった具合に、エリア特有の天候エフェクトをたっぷり効かせながら新たな世界、新たな物語に光の戦士たちを誘っていく。すでにほぼ完成しているためか、フライト可の状態で公開する余裕もあり、開発は順調そうだ。

【新エリア】
オールド・シャーレアン
サベネア島
ガレマルド

 IDは、レベル81~向けの「異形楼閣 ゾットの塔」を試すことができ、新ジョブであるリーパーと賢者で楽しんできた。言うまでもなく、導入とボス撃破後、それからボス戦登場のカットシーンはマスクされ、前後のいきさつはさっぱりわからないが、ストーリー用IDだけあって実に凝った作りで、ボスが「FFIV」伝来のメーガス三姉妹ということもあり、期待通り、いや期待以上のデルタアタックでいい汗をかいた。

【現地でスキル選定】

 ちなみに筆者が賢者で、三姉妹のデルタアタックを受けているとき、後ろに人の気配がしたため、「このゾットの塔、もうクリアしました? これヒドいですよね、(デルタアタックが激しすぎて)回復が間に合わない」などと軽口を叩きながらプレイしていたら、一拍おいて「中村さんの愚痴を聞いているのが楽しい。僕は当然チェックでクリアしましたよ」とお馴染みのハスキーボイスが飛んできて、後ろにいるのがまさかの吉田氏だということを知った。ボス戦の真っ最中だったため、振り向かなかったがおそらくニヤニヤしていたはずだ。なんとか実施にこぎ着けたメディアツアーに手応えを感じていたのかも知れない。

【ヒドい】
デルタアタック中のワンシーン。初回賢者で突入したが、なかなか地獄を見た

“次の10年”という未知の領域に挑むゲームクリエイター吉田直樹

 さて、今回のメディアツアーで体験できた各コンテンツの詳細、魅力については別途コアプレーヤーによるレポートを参照いただきたいが、本稿でお伝えしておきたいのは、吉田氏がメディアツアー開幕を告げるウェルカムスピーチの中で、“次の10年”について改めて意欲を示したことだ。

【吉田直樹プロデューサー】

 「Ultima Online」から、かれこれ20年以上、筆者がメディア人としてMMORPGと向き合ってきて経験知として持っているのは、いかなるゲームクリエイターも抗えない事実として「MMORPGには人間と同じように一定の寿命がある」ということだ。「ファイナルファンタジーXI」や「EverQuest」、「World of Warcraft」、「ラグナロクオンライン」等々、この20年で無数のMMORPGが生まれてきたが、いずれも数年でユーザー数がピークアウトしている。その後は、拡張パッケージや大規模アップデートを止め、運営継続のための小規模アップデートやメンテナンスに留めながら、次期タイトルの開発に乗り出していくというのが通例だ。

【ウルティマオンライン】
「UO」がピークアウトした理由は、様々な要因が挙げられそうだが、1つだけ挙げるなら、やはりPKのない安全な世界を作ってしまったことだろうか……

 「FFXI」における「FFXIV」がまさにそうだし、「UO」における「UO2」、「EQ」における「EQ2」、「RO」における「RO2」、いくらでも類例を挙げられるが、MMORPGファンならご承知の通り、これが恐ろしい確率でうまくいかない。うまくいかない理由は明白で、MMORPGの場合、過去の成功体験はプラスになるどころか、新たな世代に向けて、新たなMMORPGを作ることを考えた場合、むしろ足かせにしかならないためだ。

 「FFXIV」もその意味ではご多分に漏れず、ほとんど瀕死の状態に陥りながら、吉田氏の加入により不死鳥のように復活を遂げた稀有な例で、吉田氏がゲームクリエイターとして世界中から称賛を集めているのは、そのこと自体がまさに偉業だからだ。

 その吉田氏の次の大きなチャレンジは、1年前のPSショウケースで発表されて以来しばらく沈黙を保っている「ファイナルファンタジーXVI」なのかと思われていたが、「FFXVI」は「FFXVI」で吉田印のシングルプレイの「ファイナルファンタジー」最新作として開発しつつ、軸足はあくまで「FFXIV」に置いたまま、「FFXIV」を拡張し続ける方針だという。それが“次の10年”という取り組みになる。

【ファイナルファンタジーXVI】

 この構想が明らかになったのは、「暁月のフィナーレ」、いわゆるパッチ6.0で、ストーリーが完結することが発表されてからだ。旧「FFXIV」からずっと語られてきたメインストーリーに「ハイデリン・ゾディアーク編」と名前が付与され、「暁月のフィナーレ」で完結を迎えるという。

 ただ、現時点で判明しているのは、“物語が完結を迎える”ということだけで、その後がどうなるのか、パッチ6.1のストーリーも含めて、一切明かされていない。もっとも、24人レイド「ミソロジー・オブ・エオルゼア」や、新ハウジングエリア「イシュガルド」など、すでにパッチ6.1のアップデート内容自体は一部公開されており、そのコンテンツの性質から言っても、エオルゼア自体が消滅したり、主人公が別世界の何者かに転生したりなど、世界設定の連続性が断たれることはなさそうだ。

 では、完結したあとどういう展開になるかというと、さっぱりわからない。幾つかの予測はできるが、本当に当ててしまった場合、スポイラーになってしまうし、“天邪鬼”を公言する吉田氏のことだから、すでに動き始めているとは言え、そこは柔軟に対応出来るようになっているはずだ。

 もう時効だから書いて良いと思うが、実際「旧FFXIV」の時代、何度目かの吉田氏とのインタビューの際、筆者が「衛星ダラガブはバハムートではないのか?」と尋ねたところ、「新生FFXIV」の最高機密の暴露になるため、質問そのものがNGになったことがある。吉田氏のこの判断は正しく、RPGにおいて物語のスポイラーは避けるべきであり、本稿でもみだりな予測は避けたい。

 ただ、間違いなくその伏線は、「暁月のフィナーレ」を通じて張られるだろうし、すでに始まっている可能性もある。いずれにしても「暁月のフィナーレ」リリース後におぼろげながら次の展開が見えてくることだろう。

デノミからから始まる“次の10年”に向けたシステムアップデート

 次のストーリー展開がまったくの謎の一方で、MMORPGとしての「FFXIV」が今後どうなるかは明白だ。次の10年を生き抜くために最終的にシステムを一新することになるはずだ。「FFXIV」のシステムはすでに一部ガタが来始めている。「旧FFXIV」のサービス開始から数えて11年、「新生FFXIV」から8年になる。この間、コンスタントに2年おきに拡張パッケージをリリースし続けており、それだけ運営すれば土台が老朽化するのは当然だ。

【デノミネーション】

 「暁月のフィナーレ」では、その露払いとして、ゲームシステムにメスを入れる。PLLでも発表されたように、先々まで考えてパラメータや数値の規模を一新するデノミネーション、遙か先のレベルキャップ開放まで見据えたレベリング時間の見直しなどが代表例だが、いずれもピークアウトしたMMORPGならまずやらないようなことばかりだ。

【テレポも4桁に突入】
サベネア島からオールド・シャーレアンは1,593ギル。賢く使わないとガッツリギル回収されてしまう

 それに加えて、フェイスの全面採用、データセンタートラベルの実装、オセアニアデータセンターの新設、無人島開拓と、より快適にプレイできるように更なる投資を行なっていく。これらのアップデートが意味することは、より多様な遊び方、多様な国や地域からのアクセスを可能とし、そしてログイン中のロイヤリティを高めることで、更にアクティブユーザー数を増やそうとしているということだ。

 こうした発表済みの計画が綺麗に実装され、世界に馴染んできたら、グラフィックスエンジンの刷新、既存エリアの再活性化、UIの変更を含めたシステムアップグレードと、今までやりたくてもできなかった部分にも大胆にメスを入れていくことになるだろう。それはおそらく“第2の新生”と呼ばれるようなものになるはずだ。

【「FFXIV」は再び新生する】
これは吉田氏が「FFXIV」を新生させたときのスライド。吉田氏は再び「FFXIV」を新生させようとしている
筆者がとても気に入っている1枚のスクリーンショット。吉田氏の「新生」のビジョンを1枚のSSに収めたものだが、6.0以降にそのビジョンが再び示されるはずだ

 吉田氏からはプレゼンの中で、「FFXIV」が、「ファイナルファンタジー」フランチャイズの中で、もっとも利益貢献度の高いタイトルであることが明らかにされたが、しっかり投資して、ユーザーを存分に楽しませつつ、さらにガッツリ稼いでいく。この幸せのスパイラルをさらに拡大していく考えなのは間違いない。

 吉田氏のプレゼンの内容と、現時点で判明している「暁月のフィナーレ」の取り組みから見えてくるのは、吉田氏は、「FFXIV」について、正式サービス開始から10年以上が経過したMMORPGとして、ユーザー数維持という守りの戦略ではなく、さらに伸ばしていくという攻めの戦略しか考えていないと言うことだ。

 これはMMORPGファンとして、非常にエキサイティングな未来だ。吉田氏は、「暁月のフィナーレ」リリース後に、落ち着いた段階で次の展開を発表するという。“次の10年構想”の正式発表を楽しみにしながら、まずは「暁月のフィナーレ」を楽しみたいと思う。