インタビュー
「FFXIV: 紅蓮のリベレーター」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー
「4.0」では簡単操作で工夫の余地が広くパーティシナジーが重要に
2017年5月31日 22:00
スクウェア・エニックスは、プレイステーション 4/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)」の最新拡張パック「紅蓮のリベレーター」を試遊できるメディアツアーを、ドイツ ハンブルクで開催した。
「紅蓮のリベレーター」では全ジョブのアクションを見直した大きなバトルバランスの調整が入る。今回のプレスツアーでは、レベル63のインスタンスダンジョンと、一部のフィールドで自由に全ジョブのスキルを試すことができた。プレスツアーの最終日にインタビューの時間を得られたので、丸1日、いろいろなジョブを触ってみて、感じた印象や疑問点などを吉田氏にぶつけてみた。
具体的なスキルの詳細などは、各ジョブのプレイレポートにまとめてあるので、そちらも参照しつつ、調整の裏にある意図はこのインタビューから読み取って欲しい。
アクション調整は3つの視点で取捨選択
――ジョブのアクションを整理にするにあたって、どういう基準で取捨選択したのですか?
吉田氏: 3つのポイントが基本にあります。1つは、あまり使用率が高くないものを整理しています。わかりやすい例ですと、モンクの「フェザーステップ」などでしょうか。モーションはかっこいいけれど、ソロの時ですら無理に使わなくてもモンスターには勝てます。しかし、あるからには、なんとなくホットバーに入れておかなくてはいけない……それならなくしてしまった方がいいかなと。
もう1つは、「ウォール」のようなスキルです。「ウォール」はもともと、物理攻撃を1回だけ完全に無効化するという状態で実装されて、途中でダメージカットという方向に調整が入っていますが、それでも黒魔道士だけが、キャスターロール内において特定シチュエーションで物理防御が高い。そこまで高頻度に使うわけでもないけれど、性能が極端で今後のレイドバランスに影響がありそう……といったものは、全体を均すために無くなりました。あとは継続して、定期的にかけ続けるのが面倒なアクション、も含まれます。
――維持をすることが大変なもの、ということですか?
吉田氏: ない状態でも問題なくバランスがとれるし、プレーヤーの手間がひと手間減るというものです。例えば、今回はいっそ「プロテス」をなくそうか、という議論もしました。どっちみち常にかかっているなら、ない状態で全体のバランスをとっても同じことになりますので、一回極論まで議論が進んだのですが、たとえコンテンツに突入してサークルが開くまでかけられないというハンデがあったとしても、「ヒーラーとしての儀式的ひと手間」として、今はまだ残したほうがいいのではないかという結論になりました。
――3つめの理由はなんですか?
吉田氏: 最後は、ロールアクションとして、同一ロール内に共通のものが1つあればいいというものです。使いたい人は使えばいいし、使わないコンテンツ中には外した方が、ホットバーは楽になります。むしろそのコンテンツでより効果的なロールアクションがあるなら、そちらを選択するという、新しい楽しみ方もできるようになったりと、なくした方が新しい概念が出るから敢えてなくしたものもあります。
例えば今回、タンクのロールアクションにスタン技が入って、戦士のスタン技能である「ブルータスウィング」はなくなっています。でも、ナイトの「シールドバッシュ」は残してあるのです。なぜかというと、「シールドバッシュ」はウェポンスキルなので、コンボが途切れてしまうというデメリットはあるけれど、連続して使えるというメリットがある。そこはナイトの特徴だから残したうえで、リキャストはあるけれど、コンボに挟めるスタン技も選択できるということで、ナイトの特徴を維持したまま共通スタンも使えるようにしたほうがおもしろくなるという考え方です。
――あまり共有化しすぎても、似たようなジョブになってしまうということですか?
吉田氏: そうですね。やはりナイトは連続でスタンが使えることが特徴なので。例えば、沸いてきた雑魚をまとめて取ろうとした時に、ヘイトが安定していない間は「フラッシュ」を使いながら、連続してスタンを入れることで安定してまとめられるといった、ナイトにしかできないことがあるので、そこは残したうえで、リキャストはあるけれどコンボに組み込めるスタン技をチョイスできるほうがいいだろうと。
――ジョブの特徴を残しつつ、共有化することで選択肢も増えるということですね。
吉田氏: 白魔道士の「エスナ」は「FF」を代表する魔法だからメジャーですが、占星術師や学者を使うときに「あれ、エスナないんだっけ?」と思われるよりは、共通アクションに「エスナ」があったほうが覚えやすいですよね。そういう観点で、ベストバランスになるように考えました。プレーヤーの方はパッチノートをみて、あれがないこれがないと感じられるかもしれませんが、レベル70になった時に意図が分かっていただけるかなと思っています。1つ1つに理由はあるのですが、全部を説明している時間がなく申し訳ありません。ただ、基本的な方針は今お話しした通りです。聞いていただいて助かりました(笑)。
――物理耐性ダウンの技がなくなっていたり、被ダメージアップやクリティカル率アップに変更されていたりと、物理耐性に対する考え方がかなり変わっているように思えました。「3.0」では、斬耐性のあるなしが、パーティのシナジーに大きな影響を与えて、エンドコンテンツの誘われやすさに差が出た部分もありましたが、今後はどういった考え方になるのでしょうか?
吉田氏: もともとは一部のジョブが、ジョブの特性として極端な耐性ダウンを持っていました。僕らはそれを、ジョブ固有のアイデンティティのつもりで付けていました。僕らとしても個性はあまり消したくはないものの、そのせいでコンテンツから除外されやすいジョブが生まれてしまうのであれば、敢えて耐性ダウンを強くするよりは、与ダメージアップや被ダメージダウンや、敵の被ダメージダウンなどを入れたほうが、それぞれのジョブの特性を生かしながら、どのジョブが来ても戦えるので、その方向に調整しました。
――物理属性がなくなるわけではないが、あまり影響がなくなるということですか?
吉田氏: パーティDPSという考え方を強めています。ある特定のジョブを特定の値に定めたあと、このジョブはこのジョブよりもトータルのDPSが100高いので、この組み合わせになったときには、何パーセント分のパーティDPSに貢献させることで単体のバランスというよりも、パーティを組んだ時に全員が同じ値になるように、シナジーも含めた調整をしています。
――PLLでもパーティDPSについてお話されていましたが、個人の出すDPSの集合という意味あいとは違うのですか?
吉田氏: 例えばパーティで出せるDPSの平均を1万に揃えた場合に、個人が持っているDPSの足し算に見えますが、あるジョブがパーティ貢献用のシナジーアクションを使えば、当然ほかのジョブのDPSが伸びますよね。その伸びしろも個人の数字として考えて、それも含めた場合に横並びのジョブが同じ値になるようにという考え方です。正確には、そこに操作難易度も含まれますが。
――つまり、竜騎士がいてもモンクがいても、パーティ全体では同じくらいの火力になるようにするということですか?
吉田氏: はい、基本方針はそうです。竜騎士固有のDPSとモンク固有のDPSはもちろん異なります。ジョブ固有のDPSが低い分は、パーティへの貢献度が高くなるように貢献数値を多くしているという考え方です。
――自分のDPSが落ちるからシナジースキルは使わないよ、というのではなく、そのためのひと手間を使ったほうがパーティ全体では有利になるということですか?
吉田氏: そうです。「バトルリタニー」を使わない人はいないと思いますし、今回は、自分にもメリットがあって、ほかのメンバーにもメリットがあるという形で作っています。モンクの「桃園結義」などもそうですが、全体の物理DPSを一定時間引き上げつつ、その間自分に対してほかのメンバーから30%の確率で闘気が付与されるというものになっています。ですから、自分のDPSを上げるためにも、絶対に使うという設計になっています。
――今回新しくジョブゲージが入りましたが、今後はゲージ管理が重要になるということですか?
吉田氏: 基本的には今までと変わらないです。小さなバフアイコンと数字を見ているくらいだったら、大きくグラフィカルなゲージを目の端にいれておいて、今これが使えるというのが「なんとなくわかる」。この「なんとなくわかる」というのが重要で、管理する物をもっと感覚的に認識するために視認性を上げたことがジョブゲージの最大の役割です。基本はなんとなくでいいよ、なんですが、厳密にゲージや数値を管理する人にとっては、バフだろうがゲージだろうがたぶん変わらないです。今までバフを見るのが得意ではなかった方は、ゲージにより数値などが貯まっているのか見えやすくなるので、「貯まったから使っちゃえ」とアクションを使う、になってくれたらよいなと。
――ゲージをしっかり管理してないとDPSが出ないというものではない?
吉田氏: 今付与されているものがいくつあるのか、どれくらい溜まっているかなどは、もちろん正確に判断すればするほどDPSが上がります。これは今までと何も変わっていないです。ただ、より大きなUIで表示されるので、見やすくなった。これまで見落としていた人の見落としが少なくなり、極端にDPSが下がるというシチュエーションが減る、というのが正しい説明です。
――触った感じ、竜騎士は「蒼の竜血」の維持がかなり簡単になったと思いました。
吉田氏: そう感じていただけたならよかったです。コンボルートをかなりシンプルに調整していますし、むしろゲージで管理する必要もなくなるくらいになっているはずです。その上で、コンテンツに合わせた瞬間判断でDPSを稼いでいただければと思います。
――逆に今まで単純だったタンクなどは、ゲージを見ながら戦うという新しい要素が追加されたのかなと。
吉田氏: そうですね。特にナイトはハルオーネコンボをしていればいいやというところがあったと思いますが、コンボルートも調整され、やれることも増えましたので面白くなったと思います。あとは本当にコアな人たちが、ローテーションを考えていくうえで、スタックするバフがいくつというよりは、「オウス(忠義)」や「インナービースト」「ダークブラッド」などのエネルギーがいくつ貯まっているので、ここでいくつ消費して……という方が、プレイしていく感覚としては多分楽しいと思います。
――確かに、バトル全体の流れを少しずつ構築していくような感じになっていますね。
吉田氏: コアプレーヤーの方は、この変更で簡単になりすぎてつまらなくなるのではないかと思っているかもしれないですが、上級者が工夫する余地は全然減っていないと思います。分かりやすくすることやシンプルにするということは、必ずしもイージーとイコールではありません。わかりやすく、シンプルになったからこそ、腕の差が出始めることもあります。今回のスキルローテーションに関しては、どのジョブも瞬時の判断が大事になるように作られています。
例えば黒魔道士はエノキアンを30秒維持することで「ファウル」を撃てますが、この技はスタックできないので、せっかく30秒維持して使えるようになっても、次の30秒維持までの間に使わなければ1発分損をしてしまいます。かといって、ちょうどそのタイミングで「サンダー」のprocがあれば、そちらも維持しておかないと長い目で見るとDPSが落ちてしまいます。そういう感じに長期戦になればなるほど、ローテーションが崩れていく。機工士もガラッと変わるジョブですが、ヒートゲージをオーバーヒートさせないように、限界ギリギリでのゲージ管理は、やはり瞬時判断が必要です。そのときのコンテンツのフェーズと、自分のローテーションと、AOEなどのランダム要素を考慮しつつ、瞬時判断していくことが重要になるかなと思います。この辺りは上級者の間でも差が出始めると思います。
――どれを使うかを、その一瞬で決めなければいけないのですね。
吉田氏: 「黒魔紋」を出している際、ここは敢えてすべり撃ちしながら、自分の足で戻ったほうがいいのか、「ラインズステップ」を使って、一瞬で戻ったほうがいいのかは、距離やprocがあるかないかによっても違ってきます。そういったやりこみというか、玄人ならではのところはたくさん残してあります。ロールアクションも、組むパーティのレベルに応じて相談するのもアリかと思います。
――例えばどういう状況が考えられますか?
吉田氏: 例ば、「うちのヒーラーはちょっとMPの管理が苦手なんだよね」とか、「うちのDPSは、みんな結構被弾するんだよね」という時には、ヒーラーのMPが枯渇しやすい。でも、もしパーティ内にキャスターがいるなら、敢えてヒーラーのロールアクション「ルーシッドドリーム」(※「女神の加護」の代替技能)を入れずにおいて、キャスターが「マナシフト」を使って自分のMPをヒーラーに渡す。そうやってヒーラーのMPを20%ずつ戻すといった使い方もできます。逆に「うちのヒーラーはMP管理がめちゃくちゃ上手いから」というなら、ひたすら攻撃的なセットアップにするとか。そういう選択にも、今までと違った面白さがあると思います。
――確かにロールアクションのセット枠は5個しか選べないので、「クルセードスタンス」にしても、入れたほうがいいのかどうか、かなり悩みますね。
吉田氏: ヒーラーは有用なロールアクションがたくさんあるので、かなり悩むかもしれませんね。
――パーティメンバーを自分のところに引き寄せる「救援」も面白いのですが、なかなか使いどころに悩みそうです。
吉田氏: どうしてもこのシチュエーションで、このギミックがニガテ!という友達を、「よし、このマーカーの位置にいてくれ、あとは救出で引っ張るぜ!」など、自分たちのコミュニティやパーティメンバーの腕に合わせて組んでいただけるところも、今回のロールアクションの新しさかなと思っています。
赤魔道士はヒーラーとしても優秀。吟遊詩人と機工士は大幅調整
――PLLで「難しい」と言われていた侍は、確かに手数がものすごく多くて難易度が高いですね。
吉田氏: 多いです(笑)。モンクに続く、完全ピュア近接DPSなので。
――しかも範囲技がとても多いですね。
吉田氏: これまで「FFXIV」を作ってきて、インスタンスダンジョンをデイリーで回る時に、範囲が前提になる要素が多いのと、レイドに行っても、雑魚が大量に沸いてきたときに、どうしても範囲技がないとそのシチュエーションの処理に時間がかかりすぎるという局面があるので、範囲をきっちり持たせるという前提はそれなりにあります。その上で、侍の場合にはきちんと「コンボ、必殺剣、居合」を使って範囲攻撃を行なって欲しかったので、適当な範囲攻撃を撃ちながら、適当に範囲居合を使う、ではなく、明確にこれらを意識して戦うジョブを目指しました。結果ルートが多いのですが、使い込むと意図がわかっていただけると思います。
――必殺剣がたくさんありますが、居合術用のコンボが忙しくて、間に挟むのを忘れますね(笑)。
吉田氏: 慣れないうちはコンボルートばかり気にしていると、必殺剣ゲージが真っ赤になっていたり。あれも、どこで挟んでいくか、これからローテーションが議論になっていくと思います。
――赤魔道士は説明を見ただけだと、難しそうに見えたのですが、使ってみると割と単純というか、分かりやすいジョブですね。
吉田氏: 言葉で説明しようとすると結構難しいし、説明されている側も複雑に感じるのでしょうが、触ってみるとそうでもないというところがありますね。この前のPLLでも話しましたが、連続魔という特性の「詠唱のあるスペルを唱えた場合、次が必ずインスタントキャストになる」というところが感覚としてなじむまでは、「あれっ、失敗した。ここインスタントだったのに、こんなにキャストが短いやつ使っちゃった!」とか、そこでのローテーションミスというか、時間当たりのDPSロスが出るジョブです。ローテーションはある程度決まるでしょうが、最終的には瞬間的な判断が必要になってくるだろうなとは思います。
――また「ヴァルエアロ」(※詠唱時間が長い)を詠唱付きで使っちゃった、ってことがよくありました(笑)。
吉田氏: あ、それ僕もよくやります(笑)。気が付いたらブラックマナばっかり貯まってた……、とか。今までの「FFXIV」にない手触りのジョブにできていると思います。
――意外だったのは、「ヴァルケアル」がすごく強かったことです。マスタリーも持っていて、ヒーラー並みの回復力ですね。
吉田氏: 赤魔道士は「黒魔法も白魔法も使えて物理もできるという」イメージが強い、しかしそのまま「FFXIV」のシステムに入れると絶対に中途半端なジョブにしかならないし……と実装までかなり悩んでいました。「双方のマナをバランスよく貯め、魔法剣を操る」というアイデアが出て好転したので、担当が良く考えてくれたと思います。かくして実装されていった赤魔道士ですが、ケアルとレイズについては、赤魔道士という印象をしっかりと確立させるためにも使えるようにしたほうがいいよねという話になり、そのぶんケアルはちょっと強めにしておいて、バトルコンテンツ中にヒールが回っていないときに、あえてDPSをロスしてでも使えるようにしておいたほうがいいんじゃないのということになりました。
――連続魔を使うと、1万以上一気に回復できますね。
吉田氏: 連続魔のケアルが強烈なので、赤魔道士がいると、ヒーラーが倒れた時の立て直しがすごく楽ですね。プロジェクトマネージャたちとオメガのノーマルチェックをしている際にも、「赤魔道士の“立て直し力”がすごかったです。赤魔道士がいないと終ってました」という場面が何度もありましたからね(笑)。
――タンクは今回3ジョブともスタンスを切り替えて、きちんと戦ってくださいという印象を感じました。
吉田氏: うーん、基本的にはどのタンクもスタンを切り替えた際には、各ゲージが半減することからもわかるように、あまりスタンスを頻繁に切り替えることを推奨してはいません。あくまでこれまで同様、まずはモンスターの敵視を奪い、しっかりそれをキープし、防御系のアクションを使ってヒーラーの負担を減らし、戦線をきちんと維持するのがタンクに求める最大の役割です。ただ、「3.X」シリーズの8人コンテンツにおいて、MTとSTを交代する際、どうしてもDPS差やもっているデバフの差によってジョブが固定化されるようになってしまいました。
今回は魔法攻撃に対してナイトの防御力を上げ、コンボルートを調整し、範囲攻撃も追加しました。「リプライザル」はロールアクションとしてタンクは誰でも使えるようになり、「シュトルムヴィント」の効果も調整されています。それぞれの特徴を残しつつも、MT、STいずれも3タンクで横並びになるように、というのが調整意図です。ただ、オウスゲージが「忠義の盾」の時しか使い道が無くてつまらない! などとならないよう、いずれのスタンスにも使い道があるので、パッと見ると「スタンスどっちも使うんだな?!」と見えるのかもしれませんね。ナイトの場合には、範囲攻撃にヘイトをつけるかどうも、議論してたりしますし、できる限り細かく見るようにしました。
――ヘイトがないと、インスタンスダンジョンではちょっと使い勝手が落ちますね。
吉田氏: IDではそうなのですが、コンテンツでは、タンクスイッチした後などに、ヘイトがついていると必要じゃない敵まで取ってしまう可能性があるのです。範囲敵視は「フラッシュ」で、安定したらウェポンスキルにしてありますし、範囲攻撃連発してもらう、という感じですね。
――意図的にヘイトを外してあるのですね。今後、アーリーアクセス開始までに調整の可能性はありますか?
吉田氏: いえ、このままいくのではないかと思います。「フラッシュ」がナイトに残っているのは、範囲は「フラッシュ」で取って、ということがあるからなので。
――試遊では、まだDPSが慣れていないからかもしれませんが、「忠義の剣」のままで戦っていても、あまりヘイトが跳ねなかったのですが、ヘイト関連でも調整が入っているのですか?
吉田氏: 多少入ってはいますが、それは単に周りの方のDPSが安定していなかったからだと思います。「忠義の剣」だけでやっていたら普通に跳ねますよ。うちのリードデザイナーの鈴木健夫に、調整の時によくIDでタンクをやってもらっていましたが、間違えて「忠義の剣」にしていて跳ねまくりでしたもん(笑)。
――IDくらいなら、ずっと「忠義の剣」で回れるようになったのかと期待しましたが、そんなことはないわけですね。
吉田氏: 違います(笑)。
――タンク全体として、暗黒騎士の「ブラックブラッド」がグリッドスタンスを切っている時のほうが貯まりやすかったり、盾役の時とDPS役の時を使い分けるという、ハイブリッド的な傾向が鮮明になってきてるように感じました。
吉田氏: MTの時とSTの時の差の明確化ですね。
――STの時にはしっかりとDPSを出して、という感じですか?
吉田氏: いいえ、繰り返しになりますが、タンクの役割はあくまで敵のホールドです。僕らはそれ以上、何も望んでいません(苦笑) ですので「“しっかりDPSを出して”という感じ」、ではないです。日本語が複雑だ(笑)。それはパーティの方針やプレーヤーのみなさんが望んだり、考えたりすることですので、僕たちが決めることではありません。ただし、STをしているときにも、きちんとゲージを使った攻撃があり、STをプレイしているときの敵視への影響や、ダメージ量も考えてバランス調整はしました。どうプレイし、何を目指すかはみなさんが選択されることですので、ST時に自分の火力を求めるタンクさんがいても、それは悪いことではないですし、楽しければそれで良いと思います。
――それにしても、戦士の「フェルクリーヴ」5連発なんかはすごいですよね。
吉田氏: うまくやれば、とりあえずもう1発いけますね……。だた、それがベストルートかと言われたら、わかりませんし、コンボルートの調整や、各種デバフを入れるタイミングも全部見直してあるので、色々研究してみてください。手になじむまでは少し時間がかかると思いますが、レベル70になるころにはなじんでいると思います。
――吟遊詩人と機工士は、新ジョブかと思うくらい雰囲気が変わっていますね。これまで何度も調整が入っているジョブですが、あの2ジョブの調整は難しいところがあるのですか?
吉田氏: 「3.0」の時にはより難しくして欲しいということと、DPSを出したいという要望が非常に多かったのです。そこで全体の方針として、どのジョブも難易度を上げて、使いこなすには一定の練習や鍛錬が必要で、うまくやればよりDPSが跳ねるという考え方で作られていたのですが、コンテンツだけではなくてそこもやりすぎた点かなと思っています。レベル50のときと、レベル60になったときのジョブを扱う難易度が、あまりにも差が開いてしまいました。それによって、「吟遊詩人はかっこいいし、支援のための詩も歌える」と気楽に使うジョブではなくなってしまいました。
また、カジュアルにプレイしていた方は、DPSをより高くとは考えておらず、新しいアクションを使うと「動けなくなる」というストレスの方が圧倒的に大きかった。レンジロールの使用率を増やしていかないと、コンテンツのマッチング速度にも影響してしまうので、それならやはり自由に動けるジョブであったほうがいいだろうということで、吟遊詩人はパッチ2.5の頃にいったん戻し、そこからプラスアルファを加えることにしました。主に詩を常に意識する、といった感じでしょうか。最低限の使いこなしについては難易度を下げたうえで、工夫の余地をひろげようという方針でバランスを調整しています。
それと、詩人なんだから歌えよというフィードバックを結構いただいたので、詩人の歌はパーティ支援専用というよりは、セルフバフのようにして自分にいろんな効果がかかる、かつ味方の支援もできるという形にしたほうが楽しいかなと。今までのパーティ支援系の機能は、吟遊詩人と機工士については、すべてロールアクションに入れてしまいました。
――これまでの歌が全部ロールアクションにはいったぶん、吟遊詩人だけはアクションが増えている印象がありますね。
吉田氏: 歌い踊りながら弓を撃つという感じなので、使っていて楽しいと思いますよ。
――機工士は、見違えるぐらいアグレッシブになっていますね。
吉田氏: 非常に地味だと言われたこともあり、いろんなオーバーアクションで撃てるようになっています。後は、ヒートゲージをどう上手く使うかというところでDPSの伸びをカバーします。吟遊詩人とは全く扱いが違うレンジDPSという考え方で大幅調整されています。これまでは自身のアクションと機工士が使えるアディショナルアクションの多くがDPSに影響し、管理するものが多数あり、どこで何を使うのが正解かわかりにくい状態でした。ワイルドファイア後の空白時間が単調でもあったので、方向性を変えるために「ヒートゲージ」というシステムを搭載しました。ヒートゲージを維持しつつ、ダメージバースト時にはオーバーヒートを……という感じです。コンテンツを理解すればするほど上手く扱える、という部分は同じかと思います。オーバーヒートさせるタイミングをどこにするかが工夫のしどころです。詩人以上に変化が大きいジョブになりました。
――機工士は、オーバーヒート前に火炎放射器で「ひゃっほー!」という感じが楽しいですね。
吉田氏: 範囲攻撃で一気にというときにも使えますし、ヒートゲージを一気に貯めたいときにも使えるし、いろいろな使い方ができます。バトルだけではなくて、スクリーンショットを撮ったり、ロールプレイでも活用していただけるのではないかと思ってます(笑)。
――ヒーラーは、これまでもレイドではヒーラーのダメージはカウントしませんということで来てますが、攻撃面が結構強化されている印象ですね。
吉田氏: 正確には、早期攻略以外の、僕らが考える適正アイテムバランスで挑む場合はヒーラーのDPSは気にしなくて良いです。早期攻略をしてとにかくDPSを出したいのであれば、そこは自由にしてくださいという。
今回、ヒーラーで一番大きいのは、計算式をMNDに変えたことで無理に「クルセードスタンス」をしなくてもよくなったことです。新規の方が「クルセードスタンス」の有無を注意されたり、切り忘れて味方が死んでしまったというようなことを無くしたかったのが大きいです。「クルセードスタンス」のオンオフが面倒臭いからヒーラーはやらないという方も結構いるのです。もちろん、コンテンツの狭間で「クルセ」を切り替えながら、一瞬の隙をついてDPSを出すのが楽しかったのにという方がいることも理解はしているのですが、DPSを出したい場合は、今はもう素でも出るので「クルセ」をオンオフしている分も攻撃に回す、という方向に考えを切り替えていただけると助かります。ロールアクションのセットアップによっても動きが多少変わりますし、色々お試しいただけると嬉しいです。
メインクエストのナビゲーターで「もう迷わない」
――システム面ですが、今回メインクエストのナビゲーターが付きましたね。
吉田氏: あれは、新規プレーヤーの方が次に何をすればいいのか迷わないように、「次に何をすればシナリオが進行するか」が明確にわかるものです。また、しばらくゲームを休止してから復帰すると、何をすればいいのかわからないことがありますよね。特に、クエストを受注した状態で終わっていれば良いのですが、クリアした状態で終わっていると、「あれ?どのクエストやればいいんだっけ」と、そもそもどこに行けばいいのかわからない。今回追加となるメインクエストナビは、次にどこへ行けばいいのかわかります。メインクエストは「新生エオルゼア」の最初のクエストから、「紅蓮のリベレーター」のクリアまですべてサポートされています。オプションで非表示にすることもできます。
――サポートされるのはメインクエストだけなのですか?
吉田氏: サブクエストは数が多すぎるのと、最短ルートを通るためにもメインクエストに絞っています。ただし、レベル30付近でジョブになってない場合、「ジョブクエストが発生しているからやってみようね」というお知らせも出ます。他にも、「チョコボを支給してもらえるから、軍票を貯めてみよう」とか。メインの脇にあって、やっておいたほうがいいクエストもあの中でサポートされています。新規で始めたかたが取り合忘れるということができるだけないように、でもできるだけシンプルに作られています。UIのシステム名をいま考えているくらい、先週実装が終わったばかりです(笑)。
――新マップ上には、日本の妖怪や伝説を使ったものがたくさんありますね。
吉田氏: IDにチャレンジされたと思いますが、今回のIDの2つ目のボスにもちょっとしたネタがありましたよね? ああいう、アジアや日本のロアっぽいものや、民族的なものをいろんな確度で意識して入れています。
――ちなみに男性キャラも○○になってましたが、○○バージョンはないのですか?
吉田氏: あれは、最初の企画では分岐があったのですが、グラフィックス側にそんなコストはないといわれて(笑)。
――鬼ヶ島っぽい島もありましたね。
吉田氏: 紅玉海の火山は、最初はあそこに、鬼っぽい蛮神を用意するかもしれないので、鬼ヶ島っぽくしておいてねという話をしてああなりました。ストーリー上来ないことになってしまったのですが、いずれ何か来るかもしれないです(笑)。そういう余地としても、あればあったで何か使えるから、そういう設計にしておいてねと。日本人プレーヤーから見ると、これはあれが元ネタかという部分がありつつも、海外の方からは、これってなぜこうなっているのという時に、それは実は日本の伝承だったり、東方文化らしいよということでロアを面白く知ることができる。海外の方はその辺りの文化が好きな方が多いので。そういうエッセンスはたくさんありますかと聞かれたので、幾つかお話したらすごく喜んでくれて、そういうのがたくさんあるなら、それを遊ぶのも楽しみだと言ってくださいました。
――探すのも楽しそうですね。
吉田氏: ストーリー上に何気なく組み込まれているものも結構あるので、ぜひ元ネタを探していただければと思います。
――最後にプレーヤーに向けてメッセージをお願いします。
吉田氏: どうしても変わった部分にフォーカスが当たっていると思いますが、「蒼天のイシュガルド」と同様に、メインストーリーもたっぷりあるし、コンテンツもたくさん用意しています。まずはコンテンツをとにかく楽しみにしておいてください。そのうえで、「FFXIV」がこの先もさらに長く発展していくため、レベル70になるために、もしくはレベル70になったときに楽しめる、そしてレベル70になった後は、よりハードなコンテンツできりきり舞いするためにという、全方位を見て、いろいろなものを変えた拡張になっています。ある種、未来が詰まっているので、既存プレーヤーの方は初めてすぐに判断するよりは、レベル70になってからを見て欲しいです。
今から始めるプレーヤーの方に向けては、メインストーリーの坂の途中にあった石ころとか、曲がりくねった部分をできるだけ地ならしして、まっすぐにエンドまで登っていけるような施策が、説明しきれないほど本当にたくさん入っていますので、初めていただくにはまさにベストタイミングだと思います。アーリーアクセスまであともう少し、皆さんのために頑張っていますので、ぜひ楽しみにしておいてください。
――ありがとうございました!
(C) 2010-2017 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.