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★PS3ゲームレビュー★

襲撃時の音楽が緊迫感をさらに高める! ハリウッド調「SIREN」
「SIREN: New Translation」



 プレイステーション 3「SIREN: New Translation」は、ホラーアドベンチャーPS2「SIREN」シリーズの最新作。本作がPS2「SIREN2」のようにナンバリングタイトルで無いのは、本作が初代作品「SIREN」という題材を、ハリウッド的解釈で新たに表現した作品であるからだ。そのため、「SIREN」を遊んだ人間にはゲームの随所で過去の記憶が蘇る。筆者はスタートした直後のエピソード1チャプター2で、操作キャラクタの外国人少年の移動になれようとウロウロしている間に敵の屍人(しびと)警官に射殺されて即刻ゲームオーバーとなった。個人的な名シーンであるPS2「SIREN」の冒頭の射殺シーンの思い出が脳裏をよぎると同時に、ホラーアドベンチャー「SIREN」シリーズの変革に驚かざるを得なかった。

 「SIREN: New Translation」の登場人物の多くは日本人から外国人となりシリーズ独特のフェイシャルモデル(「SIREN」、「SIREN2」はテクスチャ張り付け)は3DCGとなり、キャラクタの雰囲気はガラッと変わった。また、前作までのように静謐な音楽一辺倒というわけではなく、緊迫したシーンでは映画音楽のようにテンポのいい曲が流れ出し、緊迫感を演出する。まさにハリウッド的演出という狙い通り、わかりやすく遊びやすいホラーゲームに再誕したと思う。

 とはいえ、武器もろくにない弱者である操作キャラクタたちが、倒しても復活する存在「屍人」たちに襲撃される絶望的な状況下で足掻くというゲームの根幹部分に変更は無い。本作は屍人が蠢く村を舞台にチャプターごとに異なるキャラクタを操作し、他人の眼で見ている映像を盗み見るシステム「視界ジャック」や現地調達の武器などで対抗してチャプターのクリア条件を満たしていくことがゲームの目的となる。屍人の攻撃によりダメージを受け、体力値が尽きるとゲームオーバーになる。

キャラクタの後方にカメラを据えた客観視点(主観も可能)がメイン画面。屍人との戦闘を避けて進むことも多いためステルスアクションゲームの感覚も備えている


 ゲームディスクをPS3に挿入すると、PS3本体のHDDにゲームデータをインストールする確認画面となる(インストールしないとゲームを遊ぶことはできない)。HDDの必要空き容量は2,511MB以上、インストールは筆者の場合は6分ほどで終了した。ゲームのチャプター中にローディングすることは少なく、ローディングのせいでゲームへの没入感が薄れてしまうことはまずないだろう。

 インストールが終了すると、赤い水に水滴が波紋を作っている不気味な背景とタイトルが出現。初代「SIREN」で話題となった難易度の高さをフォローするかのように、NEWGAME選択時に難易度はNORMALとEASYが選べるという配慮がなされている。ただし、難易度はタイトル画面でしか変更することができない。エピソード・チャプター単位で難易度の変更は不能で、「このチャプター難しいからEASYに変えよう」ということはできない。アクションに自信の無い人は素直にEASYを選んでおこう。また、本作のセーブデータは自動的に上書き保存される。セーブデータは1ユーザーごとに1データのみなので、ご家庭のPS3で兄弟や家族が本作を遊ぶ場合はきちんとユーザーを切り替えておかないとセーブデータが上書きされてしまう点に注意してほしい。


■ チャプター形式で構成される全12のエピソード

チャプターは時間、場所、登場人物が明記されている
 今作は1から12までの独立したエピソードに分かれ、1つのエピソードは複数のチャプター(章)で構成されている。エピソード内は冒頭とラストのムービーチャプター(ムービーを見るだけでクリアできる)と、キャラクタを操作して終了条件を満たす通常チャプターで成り立つ。すべてのチャプター(章)をクリアすると次のエピソードに進むことができる仕組みなので、最初から後半のエピソードを遊ぶことは不可能。1から12まで順番にクリアするという一本道なゲーム進行となっている。基本的には「SIREN2」のように登場人物の行動が別のチャプターに影響することはないが、ゲーム中に手に入れたアーカイブが例外的に別のチャプターに影響する場合もある。

チャプターのダイジェストシーンが予告映像風に流されるムービーチャプター。チャプターに起こる出来事への期待感が刺激される


 各チャプターは時間と場所、8人の主人公の中から操作する人物が固定されている。チャプターをスタートさせると終了条件と、必要な小目的が表示される。小目的は「鍵を開ける」、「○○と合流する」といった終了条件に近づくための具体的な行動が提示される。小目的はセレクトボタンから入るメインメニューで確認する。メインメニューではマップや操作のマニュアル、TIPS(ヒント)、ゲームの設定を変更できるOPTIONなどを搭載している。特にメインメニューのマップはキャラクタの向いている方向や家屋や場所の名前が表示される。メインメニューに入っている間はゲームの進行は止まるので、ルートを確認するために何度も開くことになるだろう。

軽くコントローラを振るだけで良いが、襲撃時のパニックでついついオーバーアクションになってしまう
 操作系統は「SIREN」シリーズから大きな変更はなく、左スティックで移動、×ボタンでしゃがみ・立つ(しゃがみ移動も可能)、□ボタンまたはR1ボタンで攻撃となっている。屍人の組みつき攻撃を振りほどく・ダウン状態から素早く起き上がるにはワイヤレスコントローラを上下にブンブンと振るという要素が新たに加わっている。

 ゲームの舞台となる「羽生蛇村」は日本の山間部にある村。本来なら温かい田舎という場所なのだろうがゲーム中はそんな空気感は皆無であり、廃屋や無人病院などかつて栄えたであろう寒々しい場所ばかりが切り取られている。日本人なら必ず記憶の片隅には存在し、人々が打ち捨てていった場所を写実的に再現することでプレーヤーに内在する不安感がとても煽られる。

坑道ではトロッコやエレベータなどのギミックがある 屋敷の家具や壁の塗りなど写実的な背景が特徴だ ゴミや臓物(?)など不快感を与える光景が続出する



■ 登場人物が日本人から外国人へ。顔モデルもテクスチャから3DCGへ移行

 初代「SIREN」では登場人物は日本人だったが、本作では登場人物の基本的な役所はそのままに、外国人が登場する。ホラーゲームにとって登場人物たちはいわば生贄だが、ただ死を待つだけの役割ではなく「fack!」、「shit!」を連呼して抵抗を試みる外国人キャラクタたちはプレーヤーにちょっとした勇気を与えてくれる。それほど彼らは力強い。襲撃する屍人も元日本人、元欧米人が混成。日本語と英語で呪詛が吐かれるちょっとしたパーティー状態になっている。

常識を超えた現象に直面したときの絵面は、日本人だろうが外国人だろうがそれほど変わりはない


 登場人物たちの大きな変化は、顔がテクスチャ張りつけではなく、フェイシャルモーションキャプチャーを採用した3DCGに変わったことだろう。俳優の顔をキャプチャーしたという顔モデルは、キャラクタたちの愛情や戦意や孤独感を見事に表現し、過去2作品との差別化がきちんと図られているクオリティの高いツラ構えといえる。

 ただ、これは非常に個人的な意見で申し訳ないが、「SIREN」のシリーズファンとしては、あのテクスチャ張りつけの味のある顔でないのは少々寂しい。今作は「新訳」であり、欧米人の視点、およびハードパワーに合わせた顔作りということは重々承知しているが、やはり「SIREN」シリーズの世界には感情の無い死相を感じさせるあの顔が一番しっくりくると思う。「SIREN」の正式ナンバリングシリーズでは、あのテイストのフェイスが復活することをひそかに期待したい。

 今作でも登場人物の所有武器と身体的特徴によってチャプターの難易度は大きく変動する。主人公の男子学生ハワード・ライトはすべての武器を使いこなし体力も高いので、場合によっては屍人に見つかることを前提とした脱出方法を試みることもできる。その一方で10歳の女の子ベラ・モンローは攻撃ができないので逃げ回るしかなく、体力も低い。屍人に接触したらほぼゲームオーバーなので、リトライを繰り返して綿密な脱出計画を探る必要があるだろう。

主人公の1人、犀賀省悟は狙撃銃を標準装備していることが多いキャラクタ 他のキャラクタは惨殺されてゲームオーバーとなるが、ベラに限り、屈みこんで暗転とソフトに作られている



■ 屍人の強さ・復活速度は控えめで屠りやすさアップ

 「SIREN」の敵の多くは、「屍人」という赤い水の影響によって人外となった 存在。一度倒しても一定時間の経過で蘇ってしまうので、復活までの時間にできるだけ屍人から離れておかなければいけない。ゲームではおなじみのゾンビに近いが、決定的に異なる点は彼らが生前の記憶をおぼろげながらも残していること。銃器や刃物などの武器を操るだけの知能を有しており、コミュニティを形成して家屋で生活する屍人なども存在する。前作までとの比較になるが、NORMALでも倒した屍人が再び動き出すまでの復活速度は遅め。銃を持っている敵も少ないので、脅威には違いないが戦闘は楽になっているといえる。

武器を操り、キャラクタと同等の速度で走る性能を備えた屍人。空を飛ぶ屍人などが出現する


 屍人を殺すことはできないが、武器での攻撃や地形トラップなどで一時的にダウンさせて動きを止めることができる。例外的にチャプターの冒頭から武器を所持しているキャラクタもいるが、基本的に武器は現地調達。武器や弾薬はチャプターを越えて持ち越せないのでガンガン使ってしまっていいだろう。マップに落ちている鉄パイプや包丁、時としてビール瓶などの小物も拾って使用する。今作でも最強は銃、続いてリーチの長い鉄パイプや火かき棒などの武器となっている。

ビール瓶などは一度使うと壊れてしまう。ハンマーを屍人に振り下ろしたときの肉の砕ける音なども非常に無気味だ


銃で頭を打ち抜けば屍人を一撃で倒すことができる
 銃器はL1ボタンを押しっぱなしにして構えてから、□ボタンかR1ボタンで発砲。遠距離射撃が可能な狙撃銃の場合は銃を構えると自動的にスコープで覗いているような狙撃モードになる。弾丸のリロードはワイヤレスコントローラを振るか△ボタン。△ボタンの方が信頼性はあるが、ワイヤレスコントローラを振ったほうが弾を入れ替えている感触は出る。また、武器はアーカイブという画面に追加されるので、チャプターをやり直して武器収集をしていくのも楽しみの1つとなっている。


■ 分割画面採用で状況把握が楽になった「視界ジャック」

 「SIREN」は様々な面で他のホラーゲームとの差別化が図られているが、その際たるものが「視界ジャック」システムといえる。「他人の眼で見ている映像を盗み見て情報を得る」というぶっ飛んだ能力の視界ジャックは、わかりやすく言うと「敵や味方の視点の主観カメラに切り替えることができる」システムだ。単純に物陰に身を隠して進むだけではなく、「視界ジャック」で敵や味方を移動するビデオカメラのように使い、「屍人がどこにいるか、どちらを向いているか」といった情報を入手して安全なルートを探すという独特の攻略が面白い。

L2ボタンを押して視界ジャックサーチモードに入った場面。L1かR1を押すごとにテレビのチャンネルを切り替えるように画面が変化。赤い十字マークは敵、青い十字マークは操作キャラクタ、緑十字マークは味方キャラの表示


屍人が鉛筆でノートに円を描き続ける。こんな光景も視界ジャックで見ることができる
 視界ジャックサーチ中に□ボタンを押すことで、視界ジャックの映像をキープしたまま移動できる「移動モード」となる。「移動モード」では画面が縦二分割になり、左半分がプレーヤーキャラクタの画面・右半分が視界ジャック中の画面になる。3D対戦ゲームの対戦を分割1画面でやっているような感覚で画面は窮屈になるが、自キャラクタの状況・位置関係がとてもわかりやすい。前作までは「視界ジャック→移動→視界ジャック」と若干ゲームのテンポが悪かったのだが、今作では索敵と移動が同時に実行できる「視界ジャック移動モード」のおかげでゲーム進行がスムーズになっているといえる。

 視界ジャックすることで聞こえるようになる、屍人の聞いただけで呪われるような擦れた呻き声も素敵だ。また、一部の屍人は人で無くなった後も登場人物への感情が残存している。登場人物を愛しているという思いが増幅した屍人が「大好き」と話しているのを聞いてしまうと、憐憫の情が湧くというか戦意が削がれてしまいそうになる。登場人物の知人や肉親が屍人になったというシチュエーションが本作では多いので、安全地帯へ到達することができたなら、視界ジャックで屍人の訴えに耳を傾けてみてほしいと思う。最終的には戦うことになるのだが……。


 筆者のゲームのクリアまでのタイムは13時間弱。「SIREN: New Translation」の難易度は、視界ジャックや戦闘の調整により「SIREN」シリーズで最も遊びやすい作品に落ち着いているといえる。そんな本作は2種類の恐怖を内包していると考える。1つは「SIREN」シリーズの持ち味ともいえる、背景に気配を潜ませた空間を歩ませ、狂気に飲まれる人物の描写を連ねることで怖さを浸透させていく怪談のような恐怖。もう1つはグラフィックスの向上で説得力の増した戦闘映像やムービーのスプラッタな残虐シーンがもたらす生理的な瞬間的に打ちのめされるホラー映画的な恐怖だ。怖いゲームのファンの中でも様々な好みがあると思うが、「SIREN: New Translation」はホラーゲームファンの需要に幅広く対応できる作品だと思う。

 ちなみに、本作の始祖であるPS2「SIREN」は、PLAYSTATION BEST版として1,800円と安価で発売されている。順番はどちらが先でもかまわないが、ぜひPS3「SIREN: New Translation」とPS2「SIREN」の2本とも遊んでもらいたい。この2作品は並行世界的な存在であり、PS2「SIREN」をやっていないと話が理解不能ということはない。だが、2作品の登場人物のリンクやシナリオを再考してみると、また新しい解釈や見解が浮かんでくる。どちらか一方だけ遊んで片方をスルーというのは、非常にもったいないと筆者は思う。

(C)Sony Computer Entertainment Inc.
(C)2008 Sony Computer Entertainment Inc.

□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□「SIREN: New Translation」のページ
http://www.jp.playstation.com/scej/title/siren_nt/
□関連情報
【7月24日】SCEJ、「SIREN」シリーズの軌跡を振り返る展示会
懐中電灯を片手に探索する「SIREN SECRET MUSEUM」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080724/siren.htm
【7月18日】SCEJ、PS3「SIREN: New Translation」発売記念イベント開催
「SIREN SECRET MUSEUM」でこれまでの制作資料などを展示
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080718/siren.htm
【7月4日】SCEJ、PS3「SIREN: New Translation」
ソフト発売に先がけ全12のエピソードをPSNで48時間限定販売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080704/siren.htm
【4月25日】SCEJ、ハリウッド的視点で描かれた“日本の恐怖”
PS3「SIREN: New Translation」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080425/siren.htm

(2008年8月18日)

[Reported by 福田柵太郎]



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