|
会場:ガンホー本社
こうした流れにどう向き合うかというのが、月額課金制のタイトルで成長を収めてきた老舗メーカーの悩みどころとなっている。世界的には、日本や欧米を含め、もはや月額固定制のタイトルのほうが少数派となっている。ガンホーはこうした流れに対し、いわば迎合する形で大きく舵を切ったことになる。 ただし、一足飛びに、「ラグナロクオンライン」の日本サービスが、基本プレイ無料/アイテム課金化を採用したと見るのは早計だ。基本プレイ無料の“タダというハードルの低さ”を新規ユーザーや休眠(引退)ユーザーに対する起爆剤として捉え、期間限定で無料開放する。無料開放終了後は、既存サーバーに統合される。継続するか、辞めるかはユーザーの自由だ。実際に辞められてしまうと丸損になるが、ガンホーはオンラインゲームが持つ、コミュニティの結びつきの強さに賭けた。1カ月あれば、居心地のいいコミュニティが見つかるに違いないと踏んだわけだ。
この施策が当たるか外れるかは、もう少し時間が経たないとわからないが、いずれにしても珍しいタイプの大規模な初心者囲い込みの施策といえる。今回は、仕掛け人であるオンライン事業部マーケティング本部第一マーケティング部部長の飯野平氏と、第一マーケティング部第一企画課の中村聡伸氏に、今回の無料ワールドの企画経緯と今後の展望について話を伺った。また、副題として、7月20日に開催されたユーザーシンポジウムで公開されたアップデートの内容や3次職についても話を伺っている。 ■ 日韓の無料ワールドの違いとは何か?
飯野平氏: 韓国の無料ワールドは、基本プレイ料金を無料にしたアイテム課金のビジネスモデルによって運営されるワールドです。それに対し、日本は、韓国の仕様とスタート地点が全く違います。ガンホーでは自分たちの考える案をとりまとめた上で、日本独自の仕様を作っていったのです。 編: 日本独自の無料ワールドの構想は、どういった経緯から生まれてきたのでしょうか。 飯野氏: 私たちの方は、ワールド統合がきっかけでした。その中でキャラクタ名の重複など、様々な不具合が生まれるのではないかという問題などもあり、そのまま実行するのは難しい。しかし、なにもできないというわけではなく、何かしら新しい形にできないかを模索していました。また、今年の春先に、新ワールドを作りたいというプランもあり、こういった考え全てを掛け合わせて、日本ならではの無料ワールドを、という考えになったのです。 編: 韓国の流れと直接関係がないとすると、新たな疑問があります。新サーバーやワールド統合の実施と、無料ワールドの公開とでは、距離感がありますよね。なぜ無料ワールドという施策になったのですか? 飯野氏: 自分の中では両者がかけ離れているということを感じませんでした。というよりも、やりたいことを掛け合わせたらこうなってしまったということではないでしょうか。この時期には3つ考えていることがありました。1つ目は、新しいワールドを立ち上げたいと言うことです。ラグナロクオンラインの新要素として、3次職の実装というのがあり、これに向けて新しいユーザーさんにもラグナロクオンラインを楽しんで欲しいと考えていました。レベルアップにもある程度の時間がかかるので、夏休みにまとめてプレイしてもらえるように夏までには新ワールドを立ち上げたいと考えていました。 2つ目は、ワールド間の接続人数の格差を少なくしたいということです。しかし、ワールド統合は難しく、代わりに何かしなければならないということ。3つ目は、現在新規のユーザーさんが、24ワールドそれぞれに分散してしまい、新しいコミュニティを作りづらいという問題を解消したいと言うことでした。 この3つの課題を交互に考えているうちに、「統合の問題点であるデータベースを共有していれば、統合での問題点もクリアできるし、新ワールドを既存ワールドと一緒にすることで人数は増える、そして新しいユーザーの受け口をひとつにまとめることができるはずだ!」と繋がったのです。そして夏休みと言うこともあり、より多くの人に試してもらうためには? ということで無料ワールドになったのです。 編: 意外だなと思いながら今の話を伺ってました。というのも、2007年の頭に中国の盛大さんが「RO」にいち早くアイテム課金を導入しましたよね。その時に、何かの機会でガンホーさんにお邪魔して、飯野さんに感想を聞いたとき、飯野さんは「あり得ない、何でこんなにしっかりしたサービスを無料で遊ばせるのか」といっていた。「私もその意見に賛成です」という話を2人でしたのですが、その飯野さんが、「RO」を無料で遊ばせることに対して、賛成の方向になっているのが意外だと思ったんですね。 飯野氏: 1カ月と期間を限定した無料プレイは、以前も行なっていた施策とほとんど変わっていないと思います。基本的な考えとしてはそれの形を変えたものです。アイテム課金のサービスはよくよく考えなければ難しいという考え方は、今でも変わりません。期間を決めた無料化は、試しにプレイしてもらう新しいアプローチと考えていますし、常に私たちは新しい形でプロモーション施策を実施していかなくてはなりません。今回の施策は「RO」は月額制での運営、という基本的な考えは変わっていません。 編: では将来的に無料ワールドが実装されることはあり得ない、と考えていいですか? 飯野氏: 今回の施策は、より多くの方に「RO」を遊んでいただくために純粋に考え出されたプランであって、「RO」の完全無料化を想定したものではありません。 編: 無料ワールドのサービススケジュールはどのようになりますか? 飯野氏: 本当は18日のシンポジウムで発表して、今日(22日)スタートと言うことを考えていたのです。プロモーション的には夏休みのスタートにあわせてやっていきたいと考えていたのですが、少し遅れてしまいました。とはいっても3月、4月にこういったことをしていこうという話を始めてから、社内的に検証し、確認して確認してなので、かなり早い時期にスタートにこぎつけられたと思います。Gravityさんとの話し合いも6月の上旬にしたばかりですので。 編: いつまでが無料期間になるのですか? 飯野氏: 9月2日までの予定です。夏休み中、ということと、これまでの無料チケット、お試しチケットというのは、5日、長くても7日というのが多かったのですが、それだとやはり体験できることが限られますよね。今回は1カ月半というボリュームでたっぷり遊んでもらって、例えば2次職になるくらい遊んだからこそ続けようと思ってくれるのではないかと。加えて、今回のターゲットとして、2~3年前にプレイされてた、いわゆる休眠ユーザーさんも視野に入れていますので、その人達が遊ぶレベルとしてはある程度のボリュームが欲しいなと。1からのスタートになりますが、充分楽しんでもらえると思います。 編: 「RO」のコアユーザーである中村さんにお聞きしたいのですが、1カ月という期間は、「RO」では何ができるのか、またここを遊ぶと良いのではないか、というポイントがあれば教えてください。 中村聡伸氏: 休眠ユーザーの方には新しい要素を楽しんでもらいたいですね。昔と比較して、冒険者アカデミーを始め、職業別のクエストなど、初期のレベル上げに適したコンテンツは増えています。物語を楽しみたいユーザーさんにも世界に触れてもらいたいです。 もう1つは、レベルの近いユーザーさんが多くなると思うので、転職間際などの状況で、パーティープレイが楽しいかなと思います。冒険者アカデミーではパーティーが組みやすいレベルまでソロで上げることができます。そこから各キャラクタが役割を担い、パーティーを組んで、コミュニケーションを楽しんで欲しいです。1カ月は、工夫次第で経験値が稼ぎやすい場所なども見えてきて、研究する楽しみも体験できる、そういう期間だと思っています。
■ 無料ワールドサービスの最終的なゴールは、ユーザー数の平均化
飯野氏: 他のワールドはどこかのワールドからのマイグレーションを受け入れているのですが、ヴェルダンディは完全に新規でできたワールドです。後発のワールドはほかにもあるのですが、それらは他のワールドからわかれるという形で、データとしてはヴェルダンディが一番若いんです。後は接続数が他と比べて少なく、24ワールドの下から5~6番目くらい、というのが理由です。 編: ヴェルダンディワールドの次はどうなるのですか? 別のワールドでも順次やっていくのかなという印象を受けますが。 飯野氏: 今回の施策が予想通りの効果を上げられれば、もっと少ないワールドなど統合を考えていたワールドで、第2のスクルド(今回の無料ワールドの名前はスクルド)、第3のスクルドという形で、順次やっていきたいなと思います。24サーバー全て、というつもりはないですが、新しいサーバーは突出して数字が少ないので、そこには早急にやっていきたいですね。 編: 第1回は7月24日から9月2日までとのことですが、第2回はいつになるでしょうか。 飯野氏: どのくらいのユーザーが遊んでいただけてどのくらい残るか、というのを見てみてからですね。今回は1ワールドのみですが、予想以上に好評なら、次は2つ、3つ同時に、ということにしなくてはいけないかもしれません。まずはやってみてからでないと、今後のスケジュールは決まりません。施策自体を成功させなくてはいけないので、今安易にはお答えできません。今回は、まずテストですね。僕たちは良いものだと思っていますが、ユーザーさんに受け入れられるかも含めてのテストです。 編: 今回の形を変えた対新規ユーザーの施策ですが、ゴールはどの当たりだと認識していますか? 飯野氏: 全てのサーバーのユーザー分布が平均的になることです。全てがケイオスワールドくらいに、というのが理想ですがそれは難しいので、まずは快適に動く状況でかつ人数が多いというのが目標です。 編: シンポジウムでは、いくつか制限があるが、詳細は順次に、とのことでしたが、実際どのような制限がかかるでしょうか。 中村氏: おおむねシンポジウムで公開した内容のとおりです。攻城戦がなく、そのためギルドダンジョンに入れない。クエストも一部進められません。モンスターレース、ビンゴゲームができず、結婚システムが使えないなどですね。 飯野氏: ヴェルダンディへの統合を視野に入れた制限というところで理解していただければと思います。 編: 休眠ユーザー向けに意識していることは何でしょうか。 飯野氏: 今回ターゲットとして考えているのは、3~4年前に「RO」をプレイしていた、というユーザーの皆さんです。具体的には、当時はBOTの問題等で批判を受けてしまうことがありましたが、様々な不満でゲームをやめてしまってプレイデータも残っていないが、「RO」は楽しかったと思っているユーザーの皆さんですね。そういったユーザーさんは、現在の「RO」に対して、資産的、知識的にも新規ユーザーさんと大差ないですが、稼ぎ方などもずいぶん変わっていますから、また新鮮な気持ちで楽しめると思います。 編: 少し話はさかのぼりますが、韓国の無料ワールドについていくつか質問があります。まず、韓国の無料ワールドは非常に人気ですが、日本ではこれをどのように見ていますか。 飯野氏: 私的には良いことだと思っていますし、韓国は無料ワールドというビジネスがやはり歓迎されるんだな、と思っています。 編: 個人的な意見としては、「RO」の長い歴史の中で、久しぶりに大きなニュースだと私は思いました。無料と言うだけであんなに人が集まるとはちょっと想像できなかったですね。 飯野氏: いくつもの新しいゲームが韓国でスタートする中で、無料であれば「RO」をプレイするというユーザーがあれほどに多いというのは、コンテンツが持つ力を改めて認められたのかな、と思います。 中村氏: 私としてはお金かける、かけないの差ではなく、ゲーム自体が面白ければユーザーはプレイしてくれる、ということをずっと思っています。きっかけがたまたま無料だった、というだけなんじゃないかと思っています。無料化が良いきっかけになったんじゃないかなと。 編: 韓国の無料ワールドのオープンは、リアルタイムでウォッチしていました。活況なのは事実なんですが、その内実は獲得経験値とアイテムドロップ率が50%下げられていて、とにかくゲームとしての難易度が高い。普通にプレイしているだけでリソースが枯渇しかねない、という極めて厳しいバランスになっている。そこを韓国ユーザーは、有料アイテムの傭兵をどんどん使って何とか稼いでいるという、既存のワールドとは全く違う風景になっているんです。仮に、日本でこの方式を持ってきたら絶対失敗するなと思っていたんですが、日本では全く違うとのことで、一安心という感じです。 飯野氏: 私は、今回の韓国の無料サーバーでプレイしていないので、プレイしてみた感じがどうなのかわからないのですが、他の基本プレイ無料のオンラインゲームと大きなバランスの差はないと考えていますよ。たくさんのユーザーさんに受け入れられていることでもありますから。 日本の「RO」では、基本プレイ無料のアイテム課金による運営というのはまだ考えたことがありません。今の韓国のモデルをそのまま入れるかというのを聞かれれば、「入れません」と答えますね。韓国には韓国の、日本には日本の皆さんのプレイスタイルがあると思うからです。「RO」のデザインそのものは月額課金のスタイルに合わせてありますし、ただ単に韓国から持ってきて日本で成功するかというとやっぱり難しい、そんなに簡単じゃないだろうと思っています。本当に基本無料プレイのアイテム課金の「RO」が、よりユーザーさんのためになる形が見つかれば検討はしていきたいと思っています。常に新しいことにチャレンジしたいので! 編: もう1つ伺いたかったのは、韓国の無料ワールドでは、ユーザーが集中しすぎたのと、無料ワールドの仕様そのものが原因で不具合が発生しました。何故歴史がこれだけ長いゲームなのに、まだそういうトラブルが発生してしまうのか、非常に残念に思いました。 飯野氏: 私達は現時点で詳しいデータをもらってないので、韓国の無料ワールドでの不具合の原因は“わからない”としかお答えできないですね。日本の無料ワールドも、韓国の無料ワールドとは仕様が異なるので、不具合がないように注意を払って進めていきます。
■ 今後のアップデート計画と、独自企画イベントの進捗について
飯野氏: 純粋に、次の大型アップデートは非常に大きな要素を持っております。本当は、7月、遅くても8月に実装を予定していたのですが、マップの増加に伴い、サーバーを増やさなくてはならず、現在稼働しているワールドに手を加える必要がでてきました。そのため、サーバー構成のテストなどを行なう必要から遅れてしまっています。ただ、こういった問題はユーザーさんには伝わりにくいのであえて触れませんでした。 編: しかし、それを説明しておかないと、既存ユーザーとしては不満がたまりますよね。なぜなら新規ユーザーさんには、夏休み期間に無料ワールドという楽しみが提供されますが、既存ユーザーさんにはそれに相当するものがないわけですから。 飯野氏: そうですね。説明すべきだったかもしれません。ただ、既存のユーザーの皆さんにはサマーキャンペーンとして、ゲーム内でも企画していることがありますので、今後発表していきたいと思います。8月中にオンラインイベントも予定しています。 編: シンポジウムで、今後実装して欲しい要素としてクエスト関連、冒険者アカデミーが上位に来ています。これはこれまでのガンホーさん独自の取り組みがユーザーに評価されているからだと思ったわけですが、このアンケートの結果に関してどう思われますか? 飯野氏: ユーザーさんのブログや反応を見ても、嬉しい手応えはあります。季節イベントよりもストーリー要素、協力要素を織り込んだイベントが受け入れられるなと思いました。今後もぜひやっていきたいと思っています。 編: 経験値UPや、ドロップ率強化のGMイベントより上位に来ているのは面白いですよね。 飯野氏: 「蜃気楼の塔」は特にそうですが、MMOならではの遊び方として、知らない人と協力したり、みんなで一緒に協力するという基本的な要素が、スタートから5年がたち、ギルドメンバーなどいつものメンバーで遊ぶことが多くなったコミュニティの硬直化のようなところを突破する良いきっかけになったとのではないでしょうか。 編: 今後はどのように育てていこうと考えていますか? 飯野氏: ユーザーの皆さんのご意見から、私達が目指している方向に一致している点が見え、ヒントをいただくことができました。基本的にはこれまでの路線をさらに強化して今後の先のことを考えていこうと思っています。 編: 「蜃気楼の塔」は人気の高いコンテンツですが、これは続くのでしょうか。 飯野氏: 続けたいですね。ただ、「蜃気楼の塔」というタイトルで、まったく同じものではないと思います。「蜃気楼の塔」は10階で構成されていて、クリアするのに2時間くらいかかるんです。自分が早い階で倒れてしまっても、ずっと待ってなくてはいけないんです。1日数回しか開催できないとか、こういった問題点を解消しつつ、知らない人と接点ができるとか、みんなで協力できるとか、ユーザーさんが「蜃気楼の塔」を評価してくれている点をピックアップして次のイベントに繋げていきたいです。新しい名前で、新しい形にしていきたいです。現在企画中です。 編: 実装はいつ頃になりますかか? 飯野氏: まだお話しできません。年内に3つくらいそのほかの施策を考えているので、魔王モロクのアップデート、アニバーサリー、季節イベントなどの兼ね合いで考えながらなので時期についてはお話しできません。現時点で既に年末は盛りだくさんになる予定なので、年内はかなりパツンパツンです(笑)。 3位に入っている「モンスターサイドストーリーズ」も人気が高くて、これの続編に当たる企画も動いています。第1話が4月に入っているのですが、2話、3話……という形で年内完結を目指しています。「モンスターサイドストーリーズ」は昨年までで全7話で完結しました。現在は「アカデミーシークレットストーリー」というのが現在始まっています。 シナリオは社内で作っていて、イベント担当者がストーリーだけでなく、バランス調整、モンスター配置などを作っています。アマツでのお花見イベントのミニゲームなど、全て社内でイベント担当が企画しています。 編: こういった独自企画は何人ぐらいで作っているのですか? 飯野氏: 数名です。もちろん行なうイベントイベントによって増減します。 編: 「魔王モロク」アップデートの中で実装が予定されている「戦場システム」のマップが公開されましたが、ここでは何をするのでしょうか? 飯野氏: 基本的にはPvPです。韓国では19対19の集団戦、GvGとPvPの中間という規模ですが、自分の陣地のクリスタルを守り相手方のクリスタルを壊した方の勝ち、というシステムです。攻城戦ではなく、ユーザーさんが集まって実施されるものと聞いております。勝つことで報酬が獲得でき、これを集めることでアイテムがもらえる、といった形になると思いますが、日本での仕様は現在検討中です。実装時期は「魔王モロク」の第2弾アップデートですので、10~11月くらいを予定しています。 編: システム面での改善要望では、不正対策が1位でないのが意外でした。これは不正対策をしっかりやっていると評価されているということでしょうか。 飯野氏: 評価をいただけているのは確かです。マナーに対しての取り締まり要望や、「今後も手を抜かないで」といった要望が多かったです。不正が取り締まられていく一方で、現在はノーマナーに対する取り締まり要望が大きくなっています。1位の「動作が重い」と言うことに関しては、不正対策に関しては改善してきているから、その次にという感じだと思っています。 編: 「動作が重い」というのは、具体的にはどういった状況ですか。「RO」は、常にわずかな移動ラグがありますが、あれですか? 飯野氏: それもありますが、攻城戦の時間はユーザーさんが集中するために重くなるなどのコアタイムでの遅延です。非常に要望が大きいのが攻城戦時の遅延ですね。その対策が、ワールドのサーバーの増設です。15台のサーバーから17台となることで、サーバーの負荷を分散し、負荷を低くしていく狙いがあります。全ワールドでこの拡張を行ないます。作業は定期メンテナンス時に順次対応する予定です。 編: それからネットカフェの専用マップも公開されましたが、これはインスタンスなのですか? この仕組みを教えてください。 飯野氏: インスタンスダンジョンではありません。ネットカフェユーザーさんへの特典、という感じです。属性の異なるモンスターがいるダンジョンを用意しています。夏休み期間中には遊んでいただけると思っています。ネットカフェでのプレイを考えているので、ソロもしくはペアでのプレイを想定しています。 編: 報酬はどのようなものを考えているのですか。 飯野氏: ありません。装備に合わせた遊びやすさを提供することが狙いです。属性がはっきりしているため装備も確定しやすく、狩りをしやすい場所といえます。ただし、今後報酬に関しても仕様が変わることもあります。ネットカフェ専用ダンジョンには、ネットカフェで遊んでいる方のみ各街からNPCを介して移動することができるようになります。 編: ネットカフェ特典への要望の2位が、「特典をなくして欲しい」となっていますが、これに対してどう思われますか。 飯野氏: 1位は、ネットカフェのお金を出しているから経験値ボーナスも欲しい、というところで、2位はネットカフェに行けない人もいるのだから、優遇はいらないんじゃないかという、どちらもユーザーの正直な発言ですよね。ですが、ゲームバランスが壊れるといった意見はほとんどないですね。経験値1.5倍という設定は実際にはバランスを崩壊するというほどではないと考えています。 編: 現在、ネットカフェ利用者の利用形態はどのような状況ですか。
飯野氏: 平日よりも週末、昼間よりも夜の方が多いですね。ゴールデンウィークに、経験値3倍のキャンペーンをやったときはやはり普段よりも多くの方にご利用いただけたようです。
■ ユーザー待望の3次職。実装時期、転職条件はどうなるのか?
飯野氏: あの3次職のグラフィックスが決定稿ではないということではないので注意していただければと思います。動作モーションなども現在作成中です。韓国で秋にテストサーバーに入る予定で、日本では来年になる予定です。 編: 実装前にも関わらず早くも転職条件が厳しすぎるので緩和して欲しいという要望が出ているのがおもしろいですね。 飯野氏: 転職条件は、Gravityさんが発表しているもので、まだ確定情報ではないのですが、2次職の99(オーラ)レベルになることで選択肢が現われます。1つはそのまま転生するか、もう1つは3次職に転職するかですね。転生した場合、再度上位2次職でレベル99を目指し、そこから3次職に行けます。3次職は転生を経由するか、しないかの2つのルートが用意されているわけです。 2つのルートがあるのと、2次職の99レベルからしか3次職になれないというところは公開されているのですが、レベル99まで行かなくてはいけないのを緩和して欲しい、という意見が出ています。転職までのレベルのハードルを下げて欲しい、レベル99になりやすくして欲しいといった意見があります。効率の良いマップや、レベルテーブルの見直しに対しての要望が出ていますね。 もう1つが、転生を経由するか、しないかで差別化をちゃんとつけて欲しいという意見があります。3次職までのハードルを下げるのと、転生を経由することで色違いにするなど、誰からもわかる差別化をして欲しいというのがユーザーさんの大きな要望です。上位2次職の人は、自分たちの苦労をちゃんと性能に反映して欲しいという意見が強いです。 編: 中村さんはコアユーザーの立場から見て、どのように思われますか。 中村氏: 私自身は結構「RO」を遊んでいる方で、1キャラくらいは上位2次職から3次職へ転職するキャラクタを作れそうですが、そのルートを選んだ場合は、プレミアムが欲しい、という意見には共感できます。ただ、手っ取り早く3次職になりたいという人も中にはいるのかな、とも思っていて、言いたいことは両方とも凄くわかります。 ただ、あくまでゲームなので、ユーザーそれぞれの楽しみ方、3次職にならなくてはいけない、という状況にさえならなければいいかなと思っています。パーティーでみんなでどこかに行くときに、3次職じゃなくてはダメとなると、オンラインゲームのパーティープレイとしては問題があるかと。2次職と3次職の人が一緒に遊べるという環境さえ作れれば、仕様の細かいところは問題ないかと思っています。 編: 様々な意見がある中で、日本ではどのような仕様にしていくつもりですか? 飯野氏: 3次職に関してはグラフィックスが初出というのが大きかったと思います。質問も多かったですね。ただ、実は韓国からまだ仕様が来てないんです。今は絵と名前だけで、スキルの決定稿なども来てません。ですから、これから調整というところです。向こうの考えをきちんと聞いて、細かい情報を見てから私達の方針を考えていきたいなと思います。 編: 弊誌で掲載した「RO」関連の記事の中で、もっともページビューが高かったのが韓国Gravityで取材した2-2次職のスクープ記事でした。日本だけでなく韓国や台湾など海外でも高い注目を集めたことを覚えています。新職業は世界中で高い関心を集める人気コンテンツですが、日本ではこの大きな波をどのように活かそうと考えていますか? 飯野氏: 「RO」の日本展開は当初より日本での独自性を持った実装に注力してきました。日本ではこうしたいということを私達は開発チームに伝え続け、その結果が現状反映され続けています。今回の3次職についても日本ならではの方針を考えて、仕様に反映して欲しいと思っています。 編: 実装時期についてはどのように考えていますか? 飯野氏: 発表してから2年、3年待たせてしまうのは、例えクオリティを上げるためだと言っても良いとは言えません。発表している以上、スケジュール通りに進めることがベストだと思っています。3次職も、3-1、3-2とありますし、プレイに大きく影響して来るというのがありますので、来年ということしかお答えできません。
飯野氏: 理由としては半々ですね。継続だけではなく、新しいユーザーさんも入っています。ユーザーが他のユーザーを誘うというシステムなので、既存のユーザーと年齢が近い人が増えていくという傾向はあります。低年齢層のユーザーを取り込みやすい状況かというのも考えるところです。高校生にはモバイルゲームが人気ですし、アイテム課金のゲームが、低年齢のユーザーを獲得しているという状況も否めません。 編: ちなみに、現時点で、運営側が想定している「RO」の対象年齢は何歳ぐらいですか。イラストの感じからすると、メインターゲットは十代のように見えますが。 飯野氏: 十代にこだわっているわけでなく、二十代にもアピールできればと思っています。大学生から社会人、19~24歳くらいを考えています。「エミル・クロニクル・オンライン」より少し高いくらいでしょうか。 編: 今回の無料ワールドの導入で年齢分布はどのように変わると予測していますか? 飯野氏: 低年齢のユーザーは獲得したいと思っています。もう1つの休眠ユーザーに関しては、25歳以上のユーザーにも来て欲しいと思っていますね。 中村氏: オンラインゲームだけではなく、ゲームそのものに触り始めて何年、というユーザーも増えてきていますし、全体的にゲームのユーザー自体の年齢が上がっているとは思います。 編: 最後に私は無料ワールドの実装は、「RO」の長い歴史の中でもエポックメイキングな出来事だと思っていて、懸念事項として、その後、なし崩しに無料化してしまうのではないか、とも思っています。日本では、今後も、アイテム課金制基本プレイ無料のサーバーというのは生まれないと理解して良いのでしょうか? 飯野氏: 正直、先のことはわかりません。しかし、現在我々ではアイテム課金制基本プレイ無料のワールドの企画は一切上がっていません。私個人としては、「RO」は魅力あるコンテンツで、この魅力を続けるためには月額課金のビジネスモデルを大切にしていきたいと思っています。 編: ただ、「RO」のプロモーションにおける有料アイテムのウエイトがどんどん高まっている印象を受けます。有料アイテムは今後どのようになっていくのでしょうか。 飯野氏: 現状の延長でいくつもりです。ただ、有料アイテムの収益だけを考えた施策を打ちたいとは考えていません。遊んでもらう人を増やすための施策をしていきたいと思っています。 編: それでは最後に、ユーザーさんに向けてメッセージをお願いします。 中村氏: ユーザーシンポジウムの開催前に寄せていただいたご意見を見ても、現状に不安を持っているユーザーさんが多くいる印象を受けました。今回のシンポジウムで、ユーザーに安心してもらえたのではないかと思っています。ゲームをプレイしてもらうというところに関しては不安を解消してもらい、ユーザーにその気になってもらうというところを大事にしていきたいと思っています。僕自身は、ユーザーをその気にさせていく施策をやっていきたいと考えています。アップデート時の遊び方などを提案するといったことで、新しいことができたらいいと思っています。 飯野氏: シンポジウムはオフラインミーティングよりもアットホームな感じを出したいと思って企画しました。ユーザーさんと制作側で対話をしたい。今だからこそ、フランクな感じでよりよいゲームの方向性を模索できるのではないかと思いました。やってみるまでは不安でしたが、当日、和やかな感じで、ご意見をいただける機会を持てたのはとても良かったと思っています。今後もみんなで考えていこうという姿勢をアピールしていきたいです。次回がいつかというところはまだお答えできませんが、機会を見てやっていきたいです。 今回、ユーザーさんの意見が私達の考えと近く、私たちも施策や方向性に関しては、迷っている部分はありましたが、少し安心しました。これからも頑張っていきたいと思っていますので、寄せていただいた意見を参考にして新しい「RO」を作っていきたいなと思っています。
編: 応援しております。がんばってください。ありがとうございました。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2008年8月5日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|