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会場:Hotel Nikko San Francisco
会場ではSilicon Knightsの開発者Denis Dyack氏による実機デモが実演され、後半では試遊台が開放され、実際に遊ぶことができた。最新のビジュアルと Xbox360の成熟期を盛り上げるタイトルとして海外のファンから期待されている本作を早速レポートしよう。
■ 知る人ぞ知る名作「エターナルダークネス」を生んだスタジオの最新作! Xbox 360を所有する海外ゲームファンであれば「Too Human」については少なくともタイトル名くらいは知っているはずだ。2006年のE3ではMicrosoftブースでそれなりの規模でゲームが公開され、話題を呼んでいる。それから2年以上の期間、ひたすら開発を進めている状況で、いつ発売するか気にはなっていたが、今回プレス向けに開発途中のビルドが公開され、いよいよ具体的な発売時期が見えてきた。 現時点ではオリジナルの英語版発売は2008年予定で、具体的に今年のいつ頃に投入されるかは今回のデモ中に全く言及されていない状況。この2008年中というざっくりとした予定も会場で配布されたプレスキットに入っていたファクトシートに書かれているだけのもので、開発状況によっては更に遅れることも頭に入れておいた方がよさそうだ。 日本版の発売時期に関しても当然言及されておらず、それ以前にローカライズ自体も正式決定していないようなので、本作の発売を心待ちにしている日本のゲームファンにとっては気をもむところだろう。GDCに合わせた発表ではあるが、2年越しのタイトルを改めて発表した以上は、なるべく早く具体的な発売日等の公開が望まれる。 本作を開発しているSilicon Knightsは、かなりマニアック街道を突き進んでいるスタジオで、古くは吸血鬼ケインが活躍する人気アクションゲームシリーズ「Blood Omen: Legacy of Kain」などでゲームファンから一定の認知度を得ていたスタジオだ。 2002年に任天堂より時代を超えた冒険をするアドベンチャーゲーム「エターナルダークネス」を発表して以来、しばらく任天堂と密接な関係を続け、2004年にコナミと共同でニンテンドーゲームキューブ用に「メタルギア・ソリッド ツインスネーク」の開発を行なった際は、日本でも同社の名前が様々なゲームメディアに登場したため、スタジオの名前を覚えているゲームファンも多いだろう。
その後、任天堂ハードのみにこだわらず、Xbox 360を含め、PS3、Wiiなど現行の最新コンシューマゲーム機用にゲームの開発を進めている。「Too Human」は今年の発売がかなえば実に4年ぶりの新作となるため、同社の過去タイトル、特に海外で評価の高かった「エターナルダークネス」をプレイしたことのあるゲームファンからの注目度は高い。
■ Silicon KnigthsのDenis Dyack氏によるゲーム序盤のデモ実演 会場はHotel Nikko San Franciscoのボールルームで行なわれ、中は主に米国内のメディアがギッシリ。指定の時間よりやや遅れてスタートしたプレス向けデモは、Silicon Knightsの代表取締役Denis Dyack氏が登壇し、始まった。氏は「エターナル・ダークネス」のプロデューサー兼ディレクターを過去に務めており名実共に同社の顔という感がある。 デモの流れとしてはオープニングと思しき導入部分のムービーが流され「Too Human」の世界観や主人公などのゲームの概略が説明された。その後、ゲームが3つの世界を結ぶと言われている大木・ユグドラシルの偉大な姿が映ったオープニング画面に移ると、そのままゲームがスタート。Aesirと呼ばれる人類側の兵士達と共に主人公Baldurが強襲降下艇で巨大な遺跡らしきものに乗り込むシーンからゲーム本編がスタート。 ストーリーは遠い過去、“北欧神話に登場する神々が実在したら?”、“文化が原始的なものではなく現代よりも高度に進化していたら?”という内容で、人類を滅ぼさんと襲ってきた機械軍団との戦いで使用した大量破壊兵器により氷河期に突入している世界が舞台となっている。 プレーヤーは神話に登場する神の1人Baldurとなり、2丁の銃と一振りの大剣を携え、失われた知識を求めて、人間を超えた存在になり人類を危機から救わなければならない。神話とサイバネティックな兵器が合体した独特な世界観を持つゲームだ。 主人公は全部で5つの職種を選択することが可能。万能型の能力を持つCHAMPION、銃撃に巧みなCOMMANDO、体力が高いBIO ENGINEER、剣などの直接攻撃に優れたBERSERKER、アーマーの耐久力がとにかく高いDEFENDERから、好きな職種をゲームの最初に選ぶ。デモではマルチプレイに関してはほとんど言及されていなかったが、マルチプレイ時にはこの職種選びがかなり重要な鍵を握ることになりそうだ。 遺跡の中は機械軍団が占拠しており、主人公Baldurとお供の兵士達で戦いつつ、深部へと進んでいく。この際にはBaldurの戦い方とレベルアップやスキル、装備のパワーアップなどに関する説明がDenis氏から同時にされた。ちなみにスキルはツリー状に進化形態を選べる「Diablo」や「World WarCraft」方式の、海外ゲームファンにとってはおなじみのシステムになっていた。 ゲーム序盤は主人公が遺跡探索中に記憶がフラッシュバックする形で探索前の出来事が1シーンとして挿入される。その中にはフレイと呼ばれるヒロイン役と思しき女性も登場しており、序盤以降のゲーム展開への期待度も増すというもの。そのほかAesirたちの首都のような巨大な街中を歩くシーンなども登場し、Xbox 360と「Unreal Engine 3.0」をベースに独自開発の「Silicon Knights Engine」の組み合わせによる高い表現力を活かした演出によって、物語の盛り上がりも期待できそうだ。 デモは引き続きBaldur達が遺跡の深部にたどり着くと、泉のようなものがあり、Baldurが触れるとファンタジーRPGのような草木が生い茂る世界へと飛ばされる。メカメカしい装備を身につけた主人公にはとても不釣合いなこの世界は「サイバースペース」と呼ばれ、どうやら人間の住む場所とは別次元の世界として設定されているようだ。
主人公はこのサイバースペースで何らかの力を得たようなシーンを見たが、あいにく詳しい内容はわからなかった。人類・機械・サイバースペース、この3つの要素がゲームの世界観を構築する要であることを、デモを通して体験することができた。最後は会場中から拍手があがり、本作のデモがゲームにすれたメディアの目にもインパクトのある内容だったことを伺い知れたのが印象的だった。
■ デモ後には試遊台が開放! 「Too Human」ファーストインプレッション デモ終了後、引き続き会場後方に設けられた試遊台で実際に「Too Human」をプレイすることができたので、米国の現地メディア達に混じって体験してきた。会場では試遊台1台につき1人の担当がついてゲームの進め方や操作方法などを詳しく解説してくれるようになっており「イェース」、「オーゥ」、「リアリー?」など適当な相槌を打っていたが、会話の理解度もかなり適当だったにも関わらず、ゲームの進行で戸惑うことはほとんどなかった。 まずプレイして確認したことは「Too Human」は1080pのフルHDに対応したゲームでゲームのビジュアルはアンチエイリアシング処理がかかり、キャラクタが大きく映しだされても滑らかに表示がされていた。光源処理にも力を入れているようで、太陽をバックに主人公が移動しているシーンでは太陽の明るさが非常に鮮明に表現されており、ビジュアルはXbox 360用の同ジャンルゲームの中では間違いなく先頭集団を走るタイトルになっていると言ってもよさそうだ。 本作は物語を描くカットシーンはロード画面をはさまずにシームレスに展開し、インゲームとムービーでキャラクタや背景の質感に統一性を持たせることで、プレーヤー側にゲーム内の世界観をより印象良いものにさせることに成功している。 ゲーム内容としてはDenis氏も「Diabloライク」を連発していたが、確かにその通りで「3D版Diablo+α」という印象を強く受けた。これはFPSゲーム同様に欧米のゲームファンが強く好むアクションRPGの確立されたスタイルなので、アクションRPGを作ろうとすると必然的に「Diablo」や「Hellgate: London」とベースの部分で同じようなゲームシステムになってしまうのは避けられないが、プレーヤーの敷居を下げ、説明書を読み込まなくても簡単にゲームに慣れることができるという大きなメリットがある。 操作の印象として剣を振るアクションはコントローラーの右スティック、二丁の銃は左右のトリガーが割り当てられており、左右トリガーで攻撃し、他のボタンで銃と剣を切り替えるという方式ではなかった。この方式だとプレーヤー側が視点変更で周囲を自由に見渡すことができないため、死角から敵に襲われたりすることが危惧されるが、左右の両ショルダーボタンでカメラワークの変更が可能になっており、この点は杞憂に考えても良さそうだ。 敵を倒しレベルを上げ、装備に6種類までの様々な機能を付与するパーツが取り付けられるなど、システム面では「Diablo」シリーズを筆頭に同ゲームジャンルを良くプレイしているゲームファンであれば戸惑うことなく進めることができそうだ。 印象的なのは最近のゲームには欠かせないトレンドと化している「お供」がゲーム中についてきてくれることだ。AIで操作されるお供NPCはまるで某宇宙海兵隊に神話に出てくる兵隊を合体させたような、何とも独特なデザインの兵器をまとった兵士達で、見た感じは頼もしい味方というよりは「Call of Duty」シリーズのようにゲーム内の戦闘を盛り上げプレーヤーに戦場の雰囲気を感じさせる一種の効果のような役割を担っている。 プレーヤーが操る主人公Baldurは二丁拳銃に大剣を1本背負っており、ゲーム中の戦闘はこれらの武器の使い分けとコンボ攻撃による組み合わせが重要だ。画面をパッと見すると「無双」系のプレイ感覚を連想するかもしれないが、バッサバッサ斬る爽快感よりもマウスをひたすらクリックして剣を振るい、敵の体力を削る「Diablo」のようなプレイ感覚に近い。本作が純粋なアクションゲームという主観で設計された訳ではないことを物語っているのではないだろうか。 「デビル メイ クライ」のように敵を浮かせた際に銃を連射することで、敵を浮かせたまま銃弾で体力を削るようなアクションも用意されており、この辺の剣劇・銃撃アクションシーンは高い評価を得ている様々なアクションゲームを参考にしているようだと、デモを見ていて感じた。主人公のアクションは多彩で、見ていて飽きない戦闘シーンを実現しようと作りこみを進めていることは良く見て取れた。 ゲーム中には中ボス格の敵も登場し、通常の敵キャラクタのようにひたすら力押しで倒すのは困難な敵も登場する。例えば巨大なハンマーを装備した敵の場合は、ハンマーを振り下ろした際の衝撃をジャンプでよけつつ、敵の頭上に張り付いて、振り落とされないようにうまく操作をしつつ、脳天に剣でとどめの一撃を食らわすといった特定の倒し方が必要な敵が登場するなど、戦闘を作業的なものにしない努力がされており、全体的なゲームデザインのバランスは時間をかけて作っているだけあって好感が持てる。 メディア専用の催しということもあってプレイ時間の制限も特になかったのだが、それでもやはりじっくりというには程遠いプレイ時間でもあり、ゲーム全体の評価をこの時点ですることはできない。しかしながら、発売を待ち望んでいるゲームファンの期待を裏切らないだけの内容を備えたゲームであることは、今回のデモを通して実感することができたのは十分すぎる収穫だった。 Xbox 360では良質なアクションRPGは絶対的な数が少ないため、本作の早い時期での投入が望まれる。海外ゲームの未来物とか科学ファンタジー物はいくつかの例外を除いてなかなか日本のゲームファンには受け入れられにくいが、調整を重ねて前例を打破するだけの威力を持ったタイトルへと、更なる進化を期待したい。
今回は公開されなかったマルチプレイ部分に関しても、デモ中のメニューから存在が確認されており、どのようなマルチプレイモードが用意されているかは発売に向けた大きな話題のひとつになりそう。今回のお披露目によって着々とゲームの制作は進み、開発はいよいよ佳境に到達したと言ってもよさそうだ。「Too Human」のリリースに向けた続報には引き続き注目をしていきたい。
□Game Developers Conference(英語)のホームページ http://www.gdconf.com/ □Game Developers Conference(日本語)のホームページ http://japan.gdconf.com/ □「Too Human」のページ(英語) http://www.xbox.com/en-US/games/t/toohuman/ □関連情報 【2007年3月】Game Developers Conference 2007 記事リンク集 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070308/gdclink.htm (2008年2月20日) [Reported by Game Dude]
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