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収録地:ネクソンジャパン本社
今回は「マビノギ」を開発する韓国devCAT 1室 室長イ・ヒヨン氏、マビノギチーム海外開発ユニット長キム・ソンアン氏、マビノギチーム企画ユニット長ユン・ソングック氏に今後の「マビノギ」について話を伺った。ストーリー要素はどうなるのか、PvP中心にシフトしていくのか、といった疑問を中心に質問をぶつけてみた。
インタビューはネクソンジャパンと韓国ネクソン本社の会議室を繋ぐビデオ会議システムを使って行なわれた。韓国では5月21日にエルフとジャイアントの「変身」が実装されている。日本ではこの要素は7月にアップデート予定とのことで、本稿では新しく公開されたスクリーンショットやイラストなども紹介したい。 ■ エルフとジャイアントの変身は7月に実装予定、今後は新しいシステムを取り入れた新地域も
イ・ヒヨン氏: ジャイアント、エルフ、人間という3つの種族は実は「マビノギ」開発の初期、4~5年前のアイデアなんです。ここに到達できたことはうれしいですね。そして新大陸イリアを実装した「チャプター2」では、“イリア大陸を完成させる”というのが目標です。2つの種族の完成度を上げると共に、イリア大陸の残りの部分を実装していきたいと思っています。 編: 新大陸と新種族は密接に関係しているという印象ですが、当初は別々の企画だったのですか? イ氏: 企画した時期は別々です。新大陸は「チャプター1」を作っているときに生まれたアイデアです。実装は2つを合わせた形になっています。 編: ストーリー、転生、アクション要素、スキルシステム、そして探検と、「マビノギ」は韓国のMMORPGでは独自路線を歩んでおり、同じようなゲーム性を持つ作品が韓国では出ていないような印象を受けます。これはなぜだと思いますか? イ氏: 冒険要素や可愛らしいグラフィックスのデザインなどは、韓国でも最近少しずつ似たようなゲームが出始めていますね。しかし、他のゲームは戦闘やギルドなどを中心としています。「マビノギ」の様なゲームシステムの作品が出ていないのは、こちらとしてもわかりませんね。 編: 今後の予定についてお聞きしたいと思います。韓国ではすでに実装され、日本でも7月に実装が予定のエルフとジャイアントの「変身」について詳しく教えてください。 イ氏: エルフとジャイアントはイリア大陸に昔から住んでいる種族、という設定です。この2つの種族は昔から対立しています。この対立の中で、2種族は自分達の先祖が持っていた力を探っていく事になります。その結果として変身という新しい力を得ることになります。その変身は“自然”や“野獣”といったものに近くなるものです。変身のコンセプトは、エルフやジャイアントが先祖のもっていた、野獣のような自然の力を得る、というものです。 その変身スキルを得る動きはエルフの方から始まりますが、この「種族の秘密を解き明かしていこう」という動きはジャイアントにも波及していきます。エルフの変身を噂に聞いて、自分達もということでジャイアンも種族の秘密に注意を向けていくのです。 編: 人間種族の変身「パラディン」や「ダークナイト」では、エリンの過去が明らかになったり、大きな勢力が動いたりと、「メインストリーム」という壮大な物語が展開しましたが、エルフやジャイアントの変身に関してのストーリー要素はあるのでしょうか。 イ氏: エルフ、ジャイアントに関してはそれほど大きなストーリーではないのですが、NPCから提示されるクエストをこなしていくことで種族の秘密に迫っていきます。メインストーリーほど大規模ではありませんが、クエストやNPCのセリフなどでストーリーを体験できます。また、ムービーもメインストーリー規模ではありませんが用意されています。 編: 4月のオフラインイベントでコンセプトイラストが紹介された新しい地域ですが、こちらの詳細を教えてください。 イ氏: 新地域は「水」をテーマにしています。川や湖、滝などのある、ジャングルが新しい冒険の舞台になります。この地域はアマゾンのような密林地帯になっていて、川に沿って、船に乗って移動しながらプレイをしていくことになります。川辺から出てくる敵と戦ったり、川の中から出てくるモンスターと戦う場面もあります。現在はこういったシステムやコンセプトをつめている状態です。 編: 新しいシステムも取り入れていくのでしょうか。
イ氏: ダンジョンとは違うオープンフィールドでの戦闘が楽しめます。企画としてパーティープレイが楽しめる様にしていきたいと思っています。1人では無理なくらいの難易度を考えています。上級プレーヤーならば1人でも挑戦可能だと思いますが、初心者や中級者も仲間に入れて楽しんで欲しいですね。
■ エルフとジャイアントの対立が明らかになる「マビノギ」、PvP要素のこれから
イ氏: エルフやジャイアントは道で出会ったらその場で戦いが始まるような、戦闘中心の設定を考えていたのですが、企画を進めて行くにつれ「マビノギ」というゲーム、そしてプレーヤーにとってそういった戦闘が似合うか、ということに疑問を持つようになりました。そこでユーザー間の戦いで表現するのではなく、スキルの習得や、ゲームとしてのストーリーを進めていく上で設定として2つの種族の対立を織り込んでいきたいという方向で企画を練っています。 これはダークナイトとパラディンの関係でも見られるのですが、対立の関係にあるし、PvPも可能なのですが、プレーヤー同士の戦いがプレイの中で必ずしも必要だというわけではありません。 編: 「マビノギ」を戦争中心のゲームにはしたくない、というところでしょうか。 イ氏: そうですね。種族間のプレーヤー達による大規模な戦争、ということも考えていません。 編: エルフvsジャイアントということを考えると、現在はエルフは弓が得意でさらに馬に乗りながら攻撃できるので、エルフばかりが有利な印象を受けます。PvPを前提に考えた場合、率直にいってバランスが取れていない印象を受けます。 イ氏: 現在ジャイアントがかなり不利であることは認識しています。ただ、オンラインゲームは改良を加えていくコンテンツです。ジャイアントも戦っていけるような新要素なども追加できればいいかなとも考えています。それにエルフの方が半年ほど先に実装されたので、現時点ではどうしても差がついていますね。 ユン・ソングック氏: ユーザーの間で戦いたくない人はPvPを不可にするといった事をしていますし、ユーザーの意志で戦いを楽しめるようにしています。この他の事に関しては現在考えているところです。 編: 現在対戦できる場所としてアリーナが用意されていますが、この他にもユニークな仕掛けの対戦マップなど、専用のPvP空間を用意するのは「マビノギ」のゲームシステムに合っている気がするのですが、そういったアイデアはありますか。 イ氏: 今のところはPvPを申し込む設定を用意したぐらいで、他はアイデアを練っている段階です。中国ではPvPに関しては去年から独特のルールを入れていますが、それを他の国の「マビノギ」に適用することは考えていません。ユーザーの反応などを見て、より「マビノギ」らしい方法を考えています。 編: 中国のPvPシステムとはどのようなものでしょうか。
キム・ソンアン氏: 中国の一部のサーバーでは、街などの安全地帯以外でPKが可能になっています。同意なしに他のプレーヤーを襲うことができます。PKのペナルティルールや、PKのカウントシステムなども入っています。
■ 2つの種族と大陸の秘密に焦点が当てられるストーリー要素
イ氏: ユーザーが「マビノギ」にストーリーを求めていることはこちらも認識しています。ジェネレーション4から6までは新しい大陸、新しい種族を実装することがメインになっていました。その中でイリア大陸の設定などは断片的ですが語られていますが、積極的に表には出していませんでした。 今回、エルフとジャイアントの変身スキルを得る過程で、ここに「ストーリー要素が欲しい」というユーザーの要望を反映しました。ストーリーを前面に出すことで韓国でも良い反応を得ることができました。 編: これからしばらくはエルフとジャイアントのストーリーにフォーカスが当てられていくのでしょうか。 イ氏: エルフとジャイアントの種族の秘密というのは、イリア大陸全体の秘密と密接に関係しています。ですので種族に限ったストーリーではありません。種族の秘密から大陸の秘密、そして世界全体の謎へとストーリーは繋がっていきます。 ただ、これらについてはメインストーリーのような大きなものではありません。イリアを探検していくことで遺跡や発見物などを通じて、プレイをしていく中で得られる情報によってプレーヤーはストーリーを知っていくことになります。 編: チャプター1のメインストーリーのような、女神や多くのNPCが出てくる映画のような濃いストーリーが展開するわけではないと言うことですか。 イ氏: ストーリー性は持たせていますが、チャプター1のような壮大なものではありません。 編: イリアの遺跡を作った文明はエルフのものか、ジャイアントのものか、それとも関係ないかはまだ謎のままですが、こういった部分にもフォーカスは当たっていくのでしょうか。 イ氏: 遺跡を誰が作ったのかはまだ明らかになっていません、ゲームが進むごとにその秘密にも迫っていくことになります。 編: チャプター1では他のプレーヤーと協力してストーリーを進めていきましたが、今後は協力要素などはありますか。 イ氏: それは今後の展開に関する部分なので、現在は公開できません。新しいシステムなども入るかもしれません。エルフとジャイアントの変身に関する要素としては、クエストの難易度的に他プレーヤーに手伝ってもらった方がスムースに進めます。 編: エルフのプレーヤーのクエストにジャイアントのプレーヤーが手伝うと言うことは可能なのでしょうか。 ユン氏: 設定にこだわってエルフとジャイアントは協力しない、ということもできますが、システム的な制限はないので、協力することは可能です。エルフしか入れないダンジョンや、ジャイアントだけのダンジョンといった種族制限のあるダンジョンはありません。 編: ストーリー要素に関しては、「対立するエルフとジャイアントの戦いを止めよう」、としていくような平和を模索するような流れが「マビノギ」には合うのかな、というような気がします。 イ氏: その意見は中々鋭いですね(笑)。ストーリーに関しては現在まだ公開していません。ユーザーには様々な方向でストーリーを想像してもらいたいと思っています。どのようなストーリーが展開していくかは今のところはお話しすることができません。私の心には思うものはありますが、今はユーザーが色々な方向性を持ってストーリーを考えていって欲しいと思っています。 私が作っていく上での方向性はぼんやりと見えていっていますが、ユーザー達が現在のコンテンツに関してどう思うか、どのような意見を寄せてくださるかはまだはっきりとは見えていません。今後の方向性はまさにこれから、というところです。まず現在のコンテンツをユーザーがどう受け止めるか、そこで方向を定め、はっきりした時点でお知らせをしていきたいと思っています。 編: 日本ではストーリー要素の要望が強く、中国ではPK要素を求めたりと、サービスする国で様々な要望が寄せられていますが、開発側はどのようなスタンスで開発の方向性を定めているのでしょうか。 イ氏: 「マビノギ」は特に世界観を強調しているゲームです。各国の要望は色々寄せられますが、ユーザーの要望に対して「マビノギ」の世界観に合わせた形で答えていきたいと思っています。このため、様々な要望を取り入れていきますが、世界観が変わってしまうようなことはないと思っています。 編: エルフやジャイアントが入ってくることで、「マビノギ」も多くの韓国産MMORPGのように戦争中心のゲームになっていってしまうのではないかという不安がありましたが、「マビノギ」らしさを追求していく、という姿勢は変わらないということでしょうか。 イ氏: アイデアによって戦闘要素も強化はされていきますが、大事なのは「マビノギ」らしさです。これを常に頭に置いて、そして“面白さ”考えながらゲームを作っています。 編: イさんの考える「マビノギ」らしさ、というのはどういうものでしょうか。
イ氏: 最後のユーザーへのメッセージで取っておいたのですが(笑)。他のオンラインゲームはスキルや戦争、アイテムの争奪戦などが強調されている印象を受けます。一方で「マビノギ」は、それとは別に“ささやかな面白さ”を大事にしていきたいと思っています。例えば日本では楽器スキルを使った音楽会なども頻繁に行なわれていると聞きます。そういう、戦闘とは別な面白さ、「ファンタジーライフの楽しさ」それが、「マビノギ」らしさなのだと思っています。
■ 新たに登場する「魔法料理」、ハウジングの日本での実装は未定
イ氏: 戦闘に関してはある程度自由にシステムを作っていこうと考えているのですが、生産に関しては現実に即したものにしていこうと思っていて、「マビノギ」オリジナルの何かを作り出したいとは考えていないのです。生産に関しては新しいスキルを追加していくのではなく、レシピなどの生産できるものを増やしていこうと思っています。もっとも、現時点ではアイデアがありませんが、今後面白いものが浮かんだらスキルの追加というのもあり得ます。 編: 生産に関してはスキル上げが少し単調なのではないかという印象もあります。 イ氏: 生産のスキル上げが難しいのはインターフェイスが難しいのではないか、と私達は考えています。しかしプレーヤーにものを作っている実感を体験してもらいたいという部分もあって、糸を紡いで布にしてから、型紙を持って服にするというような段階を踏んで、手間がかかるようにしています。これを単純に便利にしてしまうと、ものを作る楽しさそのものをスポイルしてしまうかとも思っています。 他のゲームでは生産ボタンを押すと自動的に材料が減ってものができたりします。「マビノギ」では羊の近くでちゃんと毛を刈ったり、食べ物を作るときは鍋をかき回したり、自分が何を作っているのか、ちゃんとプレーヤー自身が認識できるように作っているつもりです。これは「マビノギ」の開発初期からのポリシーであり、これを諦めたくはないです。 編: 高品質の食べ物は食べるとムービーが挿入されたりと非常にユニークですが、こういった要素は今後追加されるのでしょうか。 イ氏: ムービー付きの料理は韓国でも人気で、開発者自身も面白がって作っている部分もあります。韓国では「魔法料理」というのが追加されました。ムービーだけではなく不思議な効果を持つもので好評でした。今後、日本でも今後追加されると思います。こういった要素はどんどん追加していきたいと思っています。 編: 楽器が増える予定はありますか? イ氏: 日本からは特に要望が多いのですが作業として簡単なものではなく、作りたいとは考えているのですが、現時点では決まっていません。 編: ハウジングシステムは韓国ではどのような形で実装されているのでしょうか。また、日本に関してはいつ頃実装されるのでしょうか。 イ氏: 韓国では実装されて2年近くになります。ギルドが持つことができる2つの城と、その周りに家を建てて街を作ることができるシステムで、1つのサーバーで500人のプレーヤーが家を持つことができます。家は城を所有するギルドのメンバーが競売という形で他のプレーヤーに販売します。城もまた競売で所有者が代わり、家に住むプレーヤーから税金を徴収できます。 家は、NPCが販売するアイテムを集めることでカスタマイズができます。今は家を求めるプレーヤーの声が大きく、値段も高くなり中々手に入らない状態になっています。実装した当初は使いにくいという声も多かったのですが、競売を各町で確認できたり、露店の代わりに使えるなどユーザーの意見を取り入れ改良され、今では好評です。 ネクソンジャパン運用部マビノギチーム八木沢彰彦氏: 日本では現在開発側と話をつめている段階でまだ具体的な時期などはお話しできません。こちらとしてもちょっと直したい部分などもあって、日本に韓国のシステムをそのまま持ってくるのが良いかなど、様々な点を検討中です。 編: 韓国では「プロジェクト英雄伝(仮)」という「マビノギ」と世界観を同じにする新しいゲームが発表されましたが、この作品と「マビノギ」はどう関係していくのでしょうか。 イ氏: 「プロジェクト英雄伝(仮)」は、「マビノギ」のアートディレクタを担当していたイ・ウンソク氏が作った新しいゲームです。アクション要素の高い、「マビノギ」とは全く別なゲームとなるため、世界観は同じですが、ゲームにおいての関わりは今のところありません。ユーザーの方でも共通性は感じないかもしれませんね。 編: 最後にユーザーへのメッセージをお願いします。 イ氏: 「マビノギ」は開発側が考えているものだけではなく、ユーザーが考えている「マビノギ」像、というものもしっかりとした形になってきました。開発とユーザー両方が考える「マビノギ」を完成させていくのが今の開発の仕事だと思っています。その中でユーザーに楽しんでいってもらいたいと思っています。「マビノギ」を充分お楽しみ下さい。 キム氏: 海外への開発を担当していて、日本だけでなく中国や台湾からもたくさんの要望をいただき、国によって違うな、と思うこともあります。これまで以上にみなさんの声を活かしたコンテンツを追加していきたいと思っています。是非声を寄せてください。 ユン氏: 企画を考えるときに最初は韓国のユーザーだけを考えていましたが、現在では「日本のユーザーはどういう意見をくれるかな」、「台湾ではどうかな」というように、他の国のユーザーのことも考えるようになりましたし、考えなくてはいけないと思うようにもなりました。 ラットマンに関しては日本で凄く反応が良く、予想していなかっただけにびっくりしました。他の国では話題になっていなかったのですが、国によっての違いを再認識しました。これからも色々な国のユーザーに満足してもらうような企画を考えていきたいと思います。
編: ありがとうございました。
□ネクソンジャパンのホームページ (2007年6月5日) [Reported by 勝田哲也]
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