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収録地:ネクソンジャパン本社ビル
韓国メーカーの海外展開は、最大手のNC Softに端を発し、Actoz、WebZen、Gravityと続いてきたが、NEXONはこれまでどちらかというと海外事業には消極的なメーカーだった。ところが、今年は、台湾で「メイプルストーリー」の大ヒットを目の当たりにし、中国上海でもShandaの主力コンテンツは「メイプルストーリー」、日本でも150万人の累計登録者数を誇るまでの人気コンテンツに育っている。 要するに今年は行く先々でNEXONと「メイプルストーリー」を見ないことはなく、同社にとって今年は昨年以上に大きな当たり年になっている。そしてG★で北米市場強化の発表を聞いて、韓国の眠れる獅子がついに全面攻勢に打って出たかという印象を強く持った。 今回は、こうした海外展開にCEOとして深く携わってきたネクソンジャパンの代表取締役社長David K.Lee氏に、韓国NEXON全体のビジネスと、2007年の日本展開について話を伺ってみた。
■ NEXONの北米再進出の真意について
David氏: まずは弊社の北米での経験を申し上げますと、正直あまりよくありませんでした。以前の100%子会社であったNEXON Americaについても先方の経営陣がMBOをしました。「風の王国」などの運営はやっておりますが、こちらからの支援はしない形に落ち着きました。北米とはそれで実質的に縁を切ってしまって、しばらくは力を入れない予定でした。 その後あまり期待せずに「メイプルストーリー」のフリーサーバーを北米に置いておいたのです。これがものすごく反応がありました。同時接続者数でピーク時5万人を超えました。しかもアメリカだけではなく、ヨーロッパや南米からもユーザーが入ってきて、ユニークユーザー数はかなり多かったのです。それが2005年夏頃からずっと伸びてきました。これはすごいと気づいて、年末頃にPaypalを通じた課金体系を導入しました。現在月次の売り上げが、無視できない数字まで上昇してきました。 そして、2005年の末に子会社を設立して本格展開しようと決意しました。マーケティングプランを組んでみたところ、その費用が韓国と比較にならないほどの膨大な金額になることが判明しました。日本と比べても2、3倍です。戦略的にも大金を投じてマーケティングをするか、どこかと組んで展開をするかという考えに至りました。 大手のメディア会社と話した結果、ちょうどViacomと弊社のニーズが合いました。Viacomのほうはメディアスペースに5億ドル以上の利益を出しますと言っているのに実際には宣伝広告収入しかないことやオンラインコンテンツに対してあまり手ごたえは無かったことと、弊社的には大手のメディアパートナーが欲しかったというお互いのニーズで、よい関係で話が進みました。 編: なるほど。しかし、現状を見ると、韓国メーカーは北米では結構手痛い失敗を重ねていますし、メジャーな展開先は、欧米から中国や東南アジアに移ってきています。そうした状況をふまえると、NEXONさんの北米再進出は大きなチャレンジですよね。 David氏: 1つは「メイプルストーリー」の反応があります。「メイプルストーリー」の課金だけで見ますと、1人あたりのユーザーの売り上げは日本と同じくらいの水準に達しています。中国のほぼ10倍、韓国の3倍です。しかも、北米ではプリペイドカードなどの課金手段がまだ確立されていないので、今後そうした環境が整ってくることも考えると、売り上げももっと上がると考えています。 もうひとつはカジュアルゲームの成功例がまだなかったことです。「メイプルストーリー」の北米展開は、正直に言って成功する自信はありませんでした。アメリカではハードコアゲームはある程度成功した実績はありますが、カジュアルゲームでの成功例はありませんし、前例がないだけに反応もわかりませんでした。しかし「メイプルストーリー」の人気ぶりを見て、アメリカにもカジュアルゲームのニーズがあるのではないかと思ったんです。 編: 北米のユーザーはどういった場所から接続していたのでしょうか? David氏: 北米にはネットカフェがあまりありませんので、99%は家庭からの接続です。課金システム以外は日本市場によく似ています。 編: 北米では、なんといってもMTVとのマーケティング提携が大きな柱となりますが、それ以外に北米展開に際して、新たな施策は考えているのでしょうか。 David氏: アメリカのみということは無いと思いますが、アメリカと日本とでセットで動いているものはあります。たとえばアニメーションです。韓国でもある程度の人気はあると思いますが、それはアメリカと日本狙いですよね。 次にコンソールゲームの開発です。これもどちらかといえば日本とアメリカ向けの戦略です。アメリカのみではなくて、既存のコンソールが流行っている地域に対しては似たような戦略になっていると思います。今までゲームをやっていない人や、やめてしまった人にオンラインゲームに馴染んでもらうようなマーケティングを考えています。これを通じコンソールユーザーにも訴求できるようにしていきます。 編: 現在北米では「メイプルストーリー」を展開しているということですが、客単価やアイテムの利用に関して、何か違いはありましたか? David氏: クレジットカード利用だけで見ると、韓国や日本並みの水準です。ペイレートや1人あたりの売り上げを見ますと、日本によく似ています。クレジットカードのみの決済ですので、ペイレートは低いのですが、プリペイドカードが入ってきますと、現在の50%から倍までは売り上げは伸ばせると考えています。 これは中国展開したときの話になりますが、基本無料のアイテム課金のビジネスモデルでサービスを展開した時には、物価は安いし、マイクロペイメント(少額決済)はあまり利用しないだろうという疑問の声もありました。しかし実際には中国で成功しました。現在ではカジュアルゲームが主流になっています。台湾でもそうでした。現地パートナーのガマニアは、当初自信がないと難色を示していたのですが、とりあえずやってみてくださいと。そして実際非常に受けました。日本も同じです。 3年前の話に戻ると私は、「メイプルストーリー」より「テイルズウィーバー」に期待していました。蓋をあけると「メイプルストーリー」のほうが強かったのです。結局どの国でも展開時には疑問なところもあったということです。どの国でも似たような実績があるので、文化や国に関わらずいけるのではないかという自信がつきました。
■ 北米ゲーム市場のAlex Garden氏は、NEXONに何をもたらすのか?
David氏: Alex Garden氏のスカウティングを私が担当しました。Alexは発表のように、何年も前からNEXONと関わりがあったのですが、彼には自身のスタジオをTHQに売却したという経緯があります。彼はしばらくゲームではないビジネスをやりたいとのことで、1年半から2年のあいだ違うビジネスをやっていたのですが、ゲーム業界に戻りたいという意思が強くなったようです。 彼にはオンラインゲームではないとだめだとの認識はありました。ちょうど今年のE3で彼に会いまして、話をしたところ、急に進展がありました。早かったですね。3、4カ月ですね。アメリカでもオンラインゲームに対して、普通のゲーム業界からも興味があるらしいです。 編: Alex Garden氏は「Warhammer」など日本のPCゲーマーからも知名度があります。北米ゲーム界の大物中の大物をNEXONはどのようにオペレーションしていくつもりなのでしょうか? David氏: おっしゃるとおり、Alexはこれまで数々の良いゲームを作ってきた人物ですが、RTSの作り手の中でもかなりハードコアなイメージを持たれています。それは彼の戦略として、1つのジャンルで成功しなければいけないというポリシーの中で作ってきたものだと思います。 しかし、彼とじっくり話した際に、オンラインゲームで同じような戦略を取る必要はなく、NEXONのようにもう少し簡単なカジュアルゲームにフォーカスしたいということも話しています。また、弊社は、開発期間を縮めてプロトタイプを早めにやりながら多数のタイトルを作るのが基本方針になりますが、彼のワークフレームも基本的に同じになると思います。 ただし、彼のセンスとしてゲームの中身は、北米のユーザー向けのコンテンツを計画しているだろうし、NPNAで外部タイトルをパブリッシングという機能もあると思います。かつての大々的なEAやTHQのパブリッシングではなくて、もう少しカジュアル、もう少し簡単なゲームを集めていくと思います。いずれにしても今まではなかった戦略になると思います。 編: 彼は3年に1回大作を発表するというクリエーターでした。今後はNEXONさんの方針に従って、年間に3本、比較的カジュアルなオンラインゲームを作るという理解でよろしいでしょうか。 David氏: はい。 編: ジャンルは例えばFPSやRPGでもいいのでしょうか。 David氏: 私が彼と企画しているのはゲームに似ているようなコミュニティサービスに似ているようなそういうコンテンツになると思います。 編: 私が1ゲームファンとして期待したいのは、最近はRPG、FPS、アクションなどさまざまなタイトルがオンラインゲーム化されています。その中で唯一オンラインゲーム化されていないジャンルがRTSです。RTSのヒットメーカーである彼がオンラインRTSを開発してくれたらおもしろいことになるなと思ったのですが。 David氏: AlexがRTSのオンラインゲームを開発することは、近いうちには無いと思います。RTSについてはNEXON内部でも検討してはいるのですが、アイテム課金としては非常に難しいジャンルだという認識です。「カートライダー」のようなカジュアルなスポーツゲームに比べますとRTSはオンラインゲーム化するのに非常に難しい分野だと思います。いろいろなアイデアは出ているのですが、現実的にうまくおもしろいゲームにしていくのは難しいのではないかと考えています。 編: それではAlex Garden氏に期待することは何でしょうか? David氏: 弊社がアジアで積み重ねてきたノウハウを活かしてアメリカのユーザーにも違和感無くローカライズされたコンテンツを配信してもらうことを期待しています。それとアメリカのユーザーやゲーム開発業界に対して、オンラインゲームの重要性を伝えてくれることにも期待しています。ただ、我々はただ単に彼のネームバリューにだけ期待しているわけではありません。最終的には韓国に匹敵するようなゲームスタジオが作れればいいなと思っています。 編: 彼が作ったゲームの展開対象エリアは、ワールドワイドと考えていいわけでしょうか? David氏: 今弊社が作ったゲームはアジアに限られているわけではありませんし、彼の作るゲームも北米だけに限られたものではないと思います。日本や韓国などアジア諸国も含まれていると思います。弊社はこういう国でこういうゲームが流行るからこういうゲームを作りましょうという枠にはめたビジネスをやっているわけではありません。スタジオ制度になったとしても、ゲーム内容についてはプロデューサーにほぼ任せると思います。まずは面白いゲームを作りましょうという方針です。 韓国で面白いゲームは他の国にいっても8割の人はついてくると思うし、彼が作るゲームもそうだと思います。つまりコアになりたくないのです。コアになればなるほど弊社から見るとローカルテイストになります。一般的なカジュアルに集中してゲームを作れると、アメリカでヒットすれば日本でも成功すると思うし、韓国でも成功すると思います。 編: Alex Garden氏の開発プラットフォームについてはいかがでしょうか。 David氏: PCのみです。 編: それは意外ですね。Xbox 360やニンテンドーDSは彼のスタジオとは関係ないのでしょうか? David氏: まだ、関係はないです。ゲーム業界での経験が長いので、任天堂やMicrosoftなどアメリカでは色々な紹介がありますが、直接関わることはないです。 編: では仮にXbox 360版が出るとしても別のチームのローカライズということになるのでしょうか。 David氏: はい。 編: 最初からEAさんがやっているようなマルチプラットフォーム展開を前提にした開発は行なわないと? David氏: そうです。ただし、PC中心に開発してその延長線上にニンテンドーDSもあるかもしれないし、Xbox 360もあるかもしれないし、モバイルもあるかもしれないのですが、前提とすることは無いと思います。
■ コンシューマ市場への参入について。Xbox 360版「マビノギ」の開発はこれから
David氏: DSからお答えすると、現在弊社が展開している「メイプルストーリー」をはじめとしたカジュアルゲームと相性が良いからです。プラットフォームのインストールベースとしてもPSPよりニンテンドーDSのほうが数が多いし、Wi-Fi機能で考えてもニンテンドーDSの方に魅力があると思います。PSPを現実的に検討したことはほとんどありません。ニンテンドーDSの方が開発費用も比較的に安くできますし。連携性を見てもニンテンドーDSが優れていると思います。 Xbox 360については、北米展開が主な狙いです。今後、Microsoftさんとどのようなビジネスができるか相談をしながらつめていかないといけませんが、三社のコンソールメーカーのオンライン戦略を見ると、弊社として一番受け入れやすいのはMicrosoftさんでした。Xbox ArcadeやXbox Liveといったシステムを見ますとポテンシャルを感じます。今の形が弊社の考えているような形に進化すれば非常に面白いことになっていくと思います。そのあたりは弊社の方がMicrosoftを説得できるかだと思います。 編: Xbox 360初参入タイトルは「マビノギ」を予定しているとのことですが、これはどういったサービス形態をとるのでしょうか。例えばマルチプラットフォーム展開をしているMMORPGですと、日本では「ファイナルファンタジー XI」、「信長の野望 Online」があげられます。ポータルとしては別ですが、同じサーバーで遊ぶことができます。 David氏: それもMicrosoftと相談していかなければいけないことだと思います。基本的にはMicrosoftとしては許せないですね。例外と言っているのがその2タイトルです。通常のスタンスとしてMicrosoftはそうした独自展開を必要としていないのです。しかし弊社としては必要ですので、そのあたりも話さないといけません。 それからその2タイトルで重要なのは、パッケージとエクスパンションを発売するパッケージビジネスであるところです。弊社の場合はそれがありません。弊社の配信方法はパッチシステムにしてオンラインですべて済ませています。これを当てはめようとすると先方にしてみればかなり複雑なことになります。エクスパンションをリリースするためには、独自の審査過程をクリアする必要がありますが、すべてオンラインで提供する場合は、この審査をどうするのか。 それがOKであればPCと同じタイミングで連動して出すことができます。ご存知のようにPCのオンラインゲームの場合1カ月に1回、2カ月に1回といったペースでパッチでのアップデートを行ない、問題があればすぐに修正するパッチを配布します。そうしたした世界はMicrosoftさんもまだ慣れていないと思います。このシステムが使えるか使えないかですね。 編: 現在NEXON.comを中心にポータルを展開されていますが、Xbox 360の場合はXbox Liveというクローズドなコミュニティポータルがあります。 David氏: そのあたりも現在話をしているところです。Xbox Liveにはアカウントがあって、取得する必要があります。その上で弊社のアカウントを取って、PCとXbox 360を共有にしたいのが希望です。 編: とすると、まだ交渉の段階なのでしょうか。 David氏: そうです。しかし移植プロジェクトそのものは始まっていますので、問題が整理されれば来年中の配信も可能だと考えています。 編: 北米の「マビノギ」のタッチがどれほど受け入れられるのかという懸念があります、ユーザー数の見込みなどどのようにお考えでしょうか? David氏: 確かにカートゥーンレンダリングシステムがどれほど受け入れられるのかということはありますが、正直今まで良い意味でも悪い意味でも見込みが外れたことが何度もありますのでそれほど心配はしていません。 アメリカのコンテンツの流れを見ますとジャパニメーションなどのキャラも入っていますので、違和感なく受け入れられると考えています。これが無料ダウンロード方式であると、逆に「マビノギ」は割りと深いので、Xbox 360のコアなユーザーには反応があると思います。反応はどれだけあるかはわかりません。無視できないほどあるのではないでしょうか。 編: ビジネスモデルはどうする予定ですか? David氏: PC版とまったく同じ、基本プレイ無料のアイテム課金制を考えていますが、Microsoftではフルクライアントをダウンロードさせることをまだやっていません。弊社の納得いかないところが、デモクライアントがダウンロードできるもので、「マビノギ」のフルクライアントより大きなものもあります。それでなぜできないのかというところで揉めてはいます。 編: では、実際の開発にはまだ着手していないようですね。 David氏: していないです。どのくらい開発費用がかかるか検討しつつ、Microsoftさんがどの程度前向きに弊社の希望に応じてくれるのかを確認した上で、着手したいと考えています。
■ NEXONのコンシューマ、ゲームポータルに対するとらえ方
David氏: オンラインプレイも楽しめます。ゲームの中での結果に応じてオンラインゲームでもベネフィットを貰うといった連携がないとつまらないと思います。基本的にカジュアルゲームを対象に、ニンテンドーDSとPCの連動をサポートしていきたいということですね。 編: 発売時期はいつごろになるのでしょうか。 David氏: それもQAなど弊社がやっていない過程があるのですが、来年の下半期くらいを予定しています。 編: 展開地域を教えてください。 David氏: おそらく韓国・日本・アメリカになると思います。韓国については現時点ではまだニンテンドーDSは正式に発売されていませんので、はっきりは申し上げられません。 Xbox 360はまずはアメリカです。おそらく日本と韓国は無いと思います。ただし、リソースはすでにありますから、韓国版を作ること自体はそれほど難しいことではないと思います。 編: プレイステーション 3への展開についてはいかがでしょうか。 David氏: PS3については少し様子を見たいと思います。オンラインのシステムについても戦略やシステムをソニーさんがどう動くかも見えないですしね。弊社はコンソールメーカーではないので、ローンチと同時に出さなければならないといったプレッシャーも無いですし、ニンテンドーDSやXbox 360のようにちょっと様子を見てユーザーさんがどういう反応をするかを確認してから動いても遅くないと考えています。 編: ちなみにPS3にはフルブラウザが搭載されています。モニターもフルHDに対応しています。将来的にPS3からWebを見る時代が来るかもしれません。現在ブラウザ上で配信されているゲームポータルは、FLASHとJAVAベースであり、実質的にPC以外のプラットフォームには対応していません。これは今後考えていかなければいけないのかなと思ってまして、ネクソンジャパンさんでも、PS3に限らずいろいろなところからポータルが見られる時代が来るかもしれません。その際に備えた対応は何かなさっているのでしょうか? David氏: どのくらいの人がPS3を通じてインターネットを利用するようになるか私は正直確信が持てません。PS3本体の他にキーボードを買わなければいけません。(手で小さい円を描きながら)PS3のユーザープールがこのくらいあるとすると、(今度は大きな円を描きながら)ウェブのユーザープールはこれくらいあると思います。だからわざわざ新しいデバイスが生まれたとしてもこちらにリソースを集中させる必要があるかなと思います。PCでカバーできればいいのではないのかとも思います。PCユーザーがPS3ユーザーになるかといえばそうではないと思います。基本的には5万円でいろいろな追加機能を入れれば6万円7万円になると思います。その値段だったら良いPCを買うことができますよね。一般のユーザーがPS3を買うかPCを買うかといったら一般ユーザーはPCを買うと思います。 編: 今はインターネット≒PCになっていますが、5年10年のスパンで言えば、その構図は崩れるかもしれません。PS3はその一例に過ぎず、携帯電話でも、PDAでもいいのですが、いろいろなプラットフォームからインターネットを見る時代は来ると思います。その時のNEXONさんのインターネットサービスの姿をお尋ねしています。 David氏: 最終的にどのコンテンツもプラットフォームに限らず遊べるようにはなると思います。しかし、モバイルはモバイルなりにしっかり使ってもらうためにはそのままではダメで、カスタマイズする必要があります。モバイルユーザーの使い方のパターンはコンソールとはまた違うと思いますし、PCともまた違うと思います。それを安易に「カートライダー」が売れたからといって、単にそれをモバイルコンテンツに変えたところで売れることは無いと思います。モバイルはモバイルなりのやり方楽しみ方があるし、コンソールはコンソールなりのコントローラを用いた楽しみ方があると思います。それらに通じるカスタマイズを行なわなければ行けないと思います。 我々としてはメインはPCで、その延長でさまざまなプラットフォームで楽しめるコンテンツを作ろうと思うのですが、無理をしてさまざまなプラットフォームに展開をしなければいけないプレッシャーがあるかといえば、それはありません。 編: 今のところはプライオリティの高い検討事項ではないと? David氏: そうですね。実際にユーザーがどのように端末を使うのか。たとえばモバイルではパケットのスピードや、画面のサイズなどいろいろな観点から見ながら反応しても遅くはないと考えています。
■ 2007年は、「ZerA」を皮切りとしたマルチタイトル展開とコミュニティポータルの立ち上げ
David氏: 既存タイトルの売り上げが今年も伸びています。しばらく止まる気配が無いのでもう少しマーケティングをさせていただければと思っています。「マビノギ」の宣伝も始まりますし、「メープルストーリー」も「学校へ行こう」と「名探偵コナン」で宣伝していますが、もう少し積極的にしていこうと思います。 また、「ダンシングパラダイス」というタイトルがありますが、音源などの権利を獲得して積極的にマーケティングしていきたいと思います。年明けから本格的にしていくことになります。他に「ZerA」とか「Bigshot」、「カートライダー」があります。これらは来年内の展開を予定しています。アニメーションの展開もありますし、マーケティングの方からの他のマーケティングへの展開もあります。 編: それはゲームメーカーとの連携ですか? David氏: ゲーム会社同士ではなく、韓国ではよくあるのですが、お菓子メーカー等との提携です。韓国で有名なところではコカ・コーラと「カートライダー」の展開ですとか、そういったことです。日本もそういう意味では非常に3年前に比べてオンラインゲームに対する反応は変わってきていると思います。 編: 最近では、NEXONを表現する時にどういった呼び方をしたらいいか迷うくらいに多角化が著しいですが、最終的な着地点はどのような姿を想定されているのでしょうか? David氏: インタラクティブエンターテインメントコンテンツメーカーです。もともと良いオンラインコンテンツを作ることから始まっていますので、ゲームとは限りません。ゲームとWebサービスの境が見えなくなっていますので、良いゲームは良いコミュニティサービスの要素も入ってきていると思います。いろいろなジャンルのゲームを作り出すのが1つですね。そこから追加の展開をさせてもらうのがベースになります。このあたりはガンホーさんには失礼ですが、ガンホーさんと違うところです。10数年間のゲーム開発の実績がありますし、それぞれの国でも運用経験もあります。 編: ネクソンジャパンさんは爆発的に伸びている印象はありませんが、順調にシェアを拡大してきている印象があります。どうしてだと思われますか? David氏: 本当にどうしてなのでしょうね(笑)。私にも不思議なところなのです。3年間ずっと「メイプルストーリー」は伸びていますし、「テイルズウィーバー」もアイテム課金化して定額の時代に比べ2倍ほどの売り上げはあがっています。なぜなのでしょうね。 編: 他の会社と比較して言えることですが、サーバーダウンや緊急メンテナンス、あるいは社内での不正、顧客情報の流出など、そういうネガティブな話題が少ない印象があります。 David氏: 韓国での運営のノウハウがありますので、運営面での安定感はあると自負しています。ただ、それだけが理由なのでしょうか? 安全な環境でユーザーが気軽遊べる環境を提供するのは基本だとは思います。我々としては当たり前の仕事を当たり前にやっているだけですね。 編: 次のタイトルとなりますと何が挙げられるでしょう。 David氏: 「ZerA」だと思います。「Bigshot」というカジュアルゲームもありますが、次の大きなタイトルといえば「ZerA」になります。 編: NEXONさんはどちらかというとカジュアルなタイトルで成功を収めてきたメーカーですが、そういう意味で「ZerA」は、本格派のMMORPGであり、ちょっと毛色が違う存在ですよね。 David氏: そうですね。でも、「マビノギ」も弊社のこれまでのカジュアルゲームとは違うと思います。「ZerA」もアイテム課金ベースなので、ビジネスモデル的には変わりはありません。トライしてみる価値はあると思っています。 編: ゲームポータルビジネスについては今後どのような展開をお考えですか? David氏: オンラインゲームユーザーが喜ぶコンテンツを提供していかなければならないですね。ただ単にゲームやゲームの紹介だけではなく、ゲームに関係する情報を提供できるようなサイトを作りたいです。といってもインプレスさんのようなニュースサイトでなく、ゲームユーザーさん同士で情報交換できるようなコミュニティサイトを作りたいです。自分の好きなものを共有して他のユーザーを巻き込んでいくようなものを提供するポータルサイトを作っていかなければいけないと思います。 編: 確かに2006年は、ゲーム関連ポータルサイトが大きくクローズアップされた年になりました。ただ、オンラインゲーム、アバター、コミュニティ、Flashゲーム、メディア化などなど、狙う方向性はそれぞれ異なりますが、NEXONさんが向かう方向性はどちらですか? David氏: もっと軽く、もっとカジュアルなものになると思います。 編: 方向性としては、低年齢層を意識すると? David氏: 低年齢層ではなく、女性の方や今はゲームをやっていないユーザーさんにも違和感を覚えさせないようなものを考えています。何かをインストールするのではなく、サイトに来て直感的にゲームを遊べるようなサイトにします。今まではこれができませんでした。 編: 機能的にはどのようなものが追加されるのでしょうか。 David氏: 1つ検討しているのは、ユーザーが自分のノウハウを共有できるものを作ろうと考えています。ヒントやTipsを使いやすく共有するシステムを作ろうと思っています。 編: つまりウィキペディアのような? David氏: Wikiよりももっとインタラクティブだと思います。質問と答えで終わるのではなく、そこでの盛り上がりができるようなシステムです。これについては現在いろいろ案が上がっているのですが、まだ固まってはいません。 編: そういうゲーム情報を扱ったコミュニティサイトはいくつかあります。そうしたこともやっていくのでしょうか。 David氏: もちろんそれだけではありませんが、そうしたことも含めてやっていきます。ユーザーがなぜうちのサイトに来るかの目的を与えなければいけません。それから弊社コンテンツとの連携も強化しつつやっていきます。最終的には弊社のゲームにこだわらなくても価値があるものにしていきます。 編: 現在ネクソンジャパンのポータルの利用者はどれぐらいいますか? David氏: 登録ユーザー数が累計で240万人です。ユニークユーザー数では、数十万人といったところです。「メイプルストーリー」だけで20万近くのユーザーがいますから、もっと多くなるかもしれません。 編: 新しいサービスの実装はいつぐらいを予定していますか? David氏: 状況が見えてくるのは上半期中だと思います。現在はNEXONのためのNEXON.comですが、それを脱却する努力をしてみたいなと思っています。 編: それは極端な話、他社さんのゲームの話題で盛り上がるのもいいということでしょうか? David氏: はい。狙いはゲームコミュニティの抱きこみです。そのためにもまずはユーザーの人数を集めるのが非常に重要だと思います。 編: 集めた後は何をされるのでしょうか。やはりメディア化ですか? David氏: それもあると思いますし、ユーザーが増えることによって弊社にノウハウが入り、いろんなことがやりやすくなってくると思います。これは既存の弊社ゲームユーザーにとってもメリットがあると思います。そこからのビジネス展開については自信があります。弊社はそれを何回もやってきていますので。 編: 最後に日本のユーザーに来年に向けたメッセージをお願いします。 David氏: いつも同じことを言っている気がしますが、より安全な環境で気軽に遊べるような、オンラインゲームを配信していきます。皆さんにも応援していただければと思います。アニメなど今までになかったコンテンツをオンラインゲームの延長線上に配信していきますので期待していてください。 編: ありがとうございました。
□ネクソンのホームページ (2006年12月7日) [Reported by 中村聖司]
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