|
Microsoft Taiwanの娯楽及装置事業部は、日本語で表現するとエンターテインメント事業部といった部署で、日本マイクロソフトでいうところのXbox事業部とパーソナルシステム事業部のPCゲーム部門を足したような組織だ。基本的にはXbox 360とPCゲームの販売が主業務となるが、日本や米国のXbox事業部のように大きな予算で独自にビジネスを展開するほどの裁量権は与えられておらず、現在提供されているハードウェアとサービスの枠内で、いかに売るかを追求する組織である。これは同じプラットフォーマーでもPS3やPSPを展開するSCE Asiaとは大きく立ち位置が異なる部分だ。 また、その一方で、次世代機の展開で重要なカギを握るHD液晶テレビの普及だが、日本以上に進んでいない印象を受けた。というのは、日本とは異なり、地上波デジタルのようなハイデフ水準の映像を日常的に提供してくれる環境がないためである。今回ブースで見られたBenQ製37インチ液晶とのセット販売は普及促進策のひとつだが、次世代機を本格的に普及させるためには、日本や欧米とは異なる工夫が必要だと感じられた。 今回は、娯楽及装置事業部の総経理を務めるGrace Chou氏に、Microsoft Taiwanが台湾で展開するXbox 360とGame for Windowsの事業内容について話を伺った。Grace Chou氏とは2003年と2004年にもインタビューを行なっており、昨年は未出展だったこともあり、話を伺うのは実に3年ぶりとなる。
■ HD環境でXbox 360を出展。日本のHD液晶はソニーのBRAVIAが人気
Chou氏: Xbox 360で初めての出展となりました。BenQさんと協力して、Xbox 360の魅力を最大限に引き出せるHD液晶テレビで出展できました。 編: 台湾のユーザーはHDにどのような反応を示しましたか。 Chou氏: HDでのプレイは台湾ユーザーを大きくひきつけています。素晴らしいという評価が多いです。 編: 日本でもHDTVはまだまだ高価なものですが、台湾ではいかがですか。 Chou氏: 台湾のユーザーにもHDTVは認知されています。台湾ではBenQのほかCHIMIなどOEMやディストリビューターとしてHDTVを供給している大手がいくつもあります。各社間で競争を繰り広げていますし、値段も下がってきています。日本製では特にソニーのBRAVIAが台湾で非常に人気があります。 編: 日本のテレビはフルHDに液晶テレビのメインストリームが移ってきています。 Chou氏: 台湾ではまさにフルHDのテレビの出荷が始まったばかりですね。たとえばソニーのBRAVIAは昨年11月に出荷が開始されたばかりで、ショップでよく見かけるようになりました。 編: 日本ではCRTモニターにXbox 360をつなげてプレイしているユーザーもいますが台湾ではいかがですか。 Chou氏: 台湾ユーザーにもそうしたユーザーはいます。CRTをディスプレイとして特に好んで使っているユーザーもおり、彼らはVGAケーブルをパソコン用のCRTに接続して遊んでいます。 編: AVケーブルとVGAケーブルとHDケーブルの利用率はどれくらいでしょうか。 Chou氏: はっきりとした数字はありませんが、やはりAVケーブルの利用率が高いです。次にVGAです。HDはこれからですね。 編: 過去3年間のMicrosoftの台湾でのゲーム展開内容を教えてください。 Chou氏: 昨年の3月にXbox 360を発売し、状況が激変しました。順次ソフトを増やしていく予定です。500以上のゲームショップで販売していますが、これが台湾のマーケティングのキーになるのではないでしょうか。 編: Xbox 360のセールスをどのように評価しますか。 Chou氏: Xbox 360は予想より高い伸びを示しています。昨年の11月からさらに売れ行きがよくなりました。ちょうどその時期にPS3の販売が始まりましたが、ユーザー達は逆にXbox 360を評価する動きにつながったからです。特にトップセールスを記録している「Gears of War」の人気がすごいです。同時に「ブルードラゴン」や「DEAD OR ALIVE 4」の日本語版も台湾ユーザーをひきつけています。 編: Xbox 360の出荷台数はどのくらいを見込んでいますか。
Chou氏: Microsoftのポリシーで数に関しては申し上げられません。現在までに1,040万台というワールドワイドの数字しか申しあげられません。6月末までに2,000万台の出荷を見込んでいます。 ■ ソフトの売り上げは好調なものの、並行輸入版の問題も
Chou氏: 台湾で1万本以上です。ワールドワイドでは300万本です。 編: Xbox 360のブースでは「アイドルマスター」が目立っていたように思います。台湾での発売日はいつですか。 Chou氏: 「アイドルマスター」は台湾では発売ができません。Microsoft Taiwanとバンダイナムコゲームスとのコネクションが無いからです。現時点では日本から並行輸入したものが店頭に並んでいます。多くの日本タイトルがそういう状態です。今後はオフィシャル版として台湾でも発売したいと思います。 編: というと、現時点では並行輸入を認めているのでしょうか? Chou氏: 認めていないですが、ノーコントロールです。今回出展されているもので、「カルドセプト サーガ」が近日発売されますが、並行輸入版で日本語のまま意味もわからず遊んでいるユーザーも多いです。 編: 「ブルードラゴン」や「ロストプラネット」といったその他の日本のタイトルはいかがでしょうか。 Chou氏: とてもとても人気です。台湾では常に日本が1位ですね。「ブルードラゴン」、「ロストオデッセイ」といったタイトルにも注目が集まっています。 編: 日本や欧米ではXbox 360に「ファイナルファンタジー XI」が移植されましたが、台湾で展開されることはないのでしょうか。 Chou氏: 「ファイナルファンタジー XI」は北米・日本市場にはありますが、ほかの国にはリリースされていません。台湾のゲームは日本のサーバーを経由するものが多いです。 編: ショップを見て回ると、プレイしているユーザーがいたりします。市場もニーズもあるのではないでしょうか。
Chou氏: それは我々も認識しています。今はMicrosoftのアメリカの本部でこの問題を解決しようとしています。本部で決められる問題なので、解決されて欲しいです。問題が解決できればぜひ台湾市場で展開したいです。ニーズはあると思います。
■ 増加傾向のコンシューマユーザー、台湾ではXbox 360は次世代機No1に
Chou氏: 日本や北米にはないサービスとして、台湾のレコード会社と協力して、明日からこうした台湾と香港、タイの人気歌手のプロモーションビデオをXbox Liveでダウンロードできるようになります。Xbox Liveのゴールドメンバーなら無料で利用できます。 編: ゴールドメンバーシップの料金はいくらですか。 Chou氏: 台湾では12カ月と3カ月単位での料金設定があります。12カ月で1,290台湾ドル(約5160円)です。 編: Xbox Liveの利用率はどれくらいですか。 Chou氏: だいたい60%以上です。想定している数字よりもやや低いですね。 編: 台湾のXbox 360ユーザーは、Xbox Liveを介してどのようなオンラインサービスを利用していますか。 Chou氏: オンラインプレイとXbox Live Arcadeのダウンロード、各種ゲームの最新アップデートが主になります。 編: ネットワークでの対戦はいかがですか。 Chou氏: 「Gears of War」が発売後、増加傾向にあります。 編: 台湾では次世代機の中で一番人気は何でしょうか。 Chou氏: Xbox 360です。次世代機の中でも早期に展開できたからです。 編: PS3の台湾での売れ行きをどのように見ていますか。 Chou氏: 数についてはソニーさんに聞いてください(笑)。Xbox 360と比較すると、ゲームタイトルが少ないと思います。現在Xbox 360は種類も、種類ごとのタイトルも豊富です。 編: PS3に対するXbox 360のアドバンテージは何だと考えていますか。 Chou氏: まずはタイトルの豊富さです。Xbox 360のリリース以来すでに100タイトルをリリースしています。同時にXbox向けに発売された200タイトルがXbox 360で遊べますので、300タイトルをプレイできます。2つ目に同時にリリースしているアクセサリの充実度です。ハンドルやアダプタなど25種類あります。 編: 日本ではWiiとDSの人気がすごいです。
Chou氏: Wiiはまだ台湾では発売されていませんが、並行品が入ってきていて台湾でも非常に人気があります。ニンテンドーDSも人気がありますね。 ■ PCゲームプラットフォーム「GAME for Windows」をどう育てていくか?
Chou氏: オンラインゲーマーが1番ですね。これが60%です。PCゲーマーが10%で、コンソールゲーマーが30%です。 編: 今後のこれらの割合はどのように変化していくと思いますか。 Chou氏: ここ1、2年くらいのうちに、コンソールゲーマーの割合が増えて、オンラインゲーマーと並ぶことになるのではないかと思います。次世代機の価格が下がれば、コンソールゲーマーの割合は着実に増えていきます。 編: 台湾でのGAME for Windowsの基本戦略を教えてください。 Chou氏: 大体1年に4本のPCゲームのパッケージタイトルが出ています。昔に比べて減りました。現在の売れ筋は「Age of Empires III」です。現在台湾でもWindows Vistaが発売されています。今後Vista対応の「Halo 2」、「Shadow Run」が今年の春に台湾で発売されます。 編: 「Age of Empires III」の昨年の出荷本数を教えてください。 Chou氏: 昨年の10月から10万本販売されました。 編: 初代「Age of Empires」では台湾では海賊版が多かった印象がありますが、「Age of Empires III」ではコピーは出回っていないのでしょうか。 Chou氏: 出回っていません。工夫といえば、ネットカフェと協力しています。ゲームをネットカフェで遊べるようになっています。現在はネットカフェやセブンイレブンを通してソフトを販売しています。 編: 2001年のWCGで台湾の選手が「Age of Empires」の種目で優勝しましたよね。 Chou氏: 台湾ユーザーには本当に人気がありますね。WCGの優勝者が出たことでこのシリーズ人気が本当に高くなりました。 編: 現在でも「Age of Empires」シリーズの人気は高いのでしょうか? Chou氏: はい。プロモーションをあまり行わなくとも大人気です。セブンイレブンでもよく売れています。 編: 海外ではいまだに「Warcraft III」の人気が高いです。台湾ではどちらに人気があるでしょうか。 Chou氏: 台湾では3つのPCタイトルが人気です。「Age of Empires」と「Warcraft III」、「Diablo 2」です。 編: 台湾にはネットカフェはいくつあるのでしょうか。 Chou氏: 4,000店です。そのうちMicrosoftの加盟店は3,000以上です。 編: 「Age of Empires III」をプレイするためにはハイスペックPCが必要ですが、それだけスペックの高いPCがネットカフェに置かれているということでしょうか。 Chou氏: 今台湾のネットカフェは1年くらいの周期でPCを入れ替えています。「Age of Empires III」や「Warcraft III」、「Counter Strike」が人気ですので、ハードウェアの定期的なアップデートが必要でしょう。 編: Microsoftがイベントをサポートすることはあるのでしょうか。 Chou氏: 私たちはたくさんの「Age of Empires III」のイベントをサポートしています。例えば、ネットカフェでのトーナメントや、中華電信とジョイントした大会、「Age of Empires III」の世界大会への出場などです。本作はシリーズを通じて非常にパフォーマンスの良いタイトルです。 編: Windows Vistaにはどのような期待をされていますか。
Chou氏: ゲームに関する具体的なアナウンスが無く、まだ我々も詳細は見えてこないのですが、Live anywhereでの携帯電話やWindows Vista、Xbox 360の連携には非常に興味があります。 ■ 台湾オリジナルタイトルは現在10社で開発中。日本メーカーとのパートナーシップにも期待
Chou氏: 次世代機のキーはゲームコンテンツです。Xbox 360は今年もっとたくさんの繁体字版のタイトルを出していきます。また、日本のコンテンツを台湾のゲーマーに届けていきます。さらには台湾のパブリッシャーのタイトルも出していきます。台湾の2社の開発会社のタイトルも今年リリースされる予定です。ジャンルは麻雀と大富豪です。 編: どこが開発しているのですか? Chou氏: XPEC、Softstar、Softworld、Funtownといった台湾のメーカーがXbox 360タイトルの開発を行なっています。台湾にいる30社程の開発会社のうち、10社が10タイトル以上を開発しています。 編: 麻雀のようなシンプルなカジュアルゲームではなく、世界に通用するようなタイトルは作らないのでしょうか。 Chou氏: 世界に向けてゲームを発信するために、現在コンテンツを作成しているところです。内容ははっきりしていないのですが、Softworldなどでそうした大々的なRPGタイトルが開発されているのではないでしょうか。 編: どのようなジャンルなのですか? Chou氏: Microsoft本社が台湾開発会社との窓口になっていますので、詳しい情報は我々まで下りてきていません。10社の台湾の開発会社がコンテンツを開発中だということと、2つのタイトルが今年中にリリースされるという情報だけが発表されています。 編: 台湾の開発会社にはどのような援助を行なっているのでしょうか。 Chou氏: アメリカの本部に特別なチームがあり、彼らが直接台湾のデベロッパーと交渉して取り決めています。 編: Xbox 360の台湾独自の取り組みがあれば教えてください。 Chou氏: オンラインゲームの大会を数多く開催しています。今年は多くのXbox 360のゲーム大会が行なわれると思います。メーデーの休日には私たちもユーザーとXbox Liveで遊びたいと思います。 編: 今後どのようなゲームが生まれることを期待していますか。 Chou氏: 今年は国内産のオンラインゲームやPCゲームでさまざまな素晴らしいタイトルが発表されました。Xbox 360でも同じように台湾にふさわしいタイトルが発表されることを期待しています。 編: 現在、台湾では無数のオンラインゲームが存在しますが、Xbox 360に移植することは考えていないのですか。 Chou氏: Microsoftは非常に期待をしているのですが、開発するかどうかは開発会社次第ですね。三国志のような台湾にあったテーマでの開発が期待されます。 編: 現在、中国語版と英語版と日本語版と3つが並行して発売されています。これは今後どのように変化していくのでしょうか。 Chou氏: Microsoft Taiwanではあくまで国内産の製品を望んでいます。現在は他言語のものをそのまま持ってきているものが多いですが、中国語のボイスで繁体字のテキストの状態でのリリースが望ましいです。たとえば、日本のテクモさんとは連携がとれており、繁体字でリリースできています。今後こうした動きを広げていきたいです。 編: 今年期待しているタイトルを教えて下さい。 Chou氏: 「ブルードラゴン」や、「ロストオデッセイ」、「Project Gotham Racing 3」などの繁体字版です。また、バンダイナムコゲームスやセガが公式に台湾に来て欲しいです。しかし台湾マーケットは非常に小さいため、台湾マーケットにだけ供給しようとすると、開発会社の開発費が相対的に非常に高くなってしまいます。そのため日本語バージョンや英語バージョンも同時に開発していかなければならないでしょう。 編: 今後の台湾のゲーム市場全体をどのように考えていますか。 Chou氏: オンラインゲーム市場は十分発展しましたから、今後はコンソールゲームのシェアがあがっていくと思います。最終的に両者は拮抗するのではないでしょうか。 編: それは市場規模は変わらないまま、既存のオンラインゲームのシェアをコンソールゲームが奪っていくのでしょうか。それともコンソールゲームの躍進が市場全体の規模を広げていくのでしょうか? Chou氏: コンソールをやっている人とオンラインゲームをやっている人は重複していますので市場規模としてどうなるかを予測するのは難しいですね。PS3やXbox 360を持ちながらPCゲームなどをプレイしているユーザーは多いです。Xbox 360をプレイしながらオンラインゲームを遊んでいるユーザーは、Xbox 360ユーザー全体の半分くらいはいると思います。 編: 今後もゲーム産業の市場規模は大きくなると思いますか? Chou氏: 2006年の市場規模が約100億台湾ドル(約400億円)です。昨年と比べて今年は15%ほど上がると期待しています。 編: ユーザーが重複するということは、顧客ひとりあたりの単価が上がっていくだろうということですか? Chou氏: 台湾のオンラインゲームのほとんどは月額無料になりつつあり、多くのユーザーはADSL料金のみを負担しています。ARPのような考え方はなく、日本や韓国のオンライン事情と異なる変化を遂げるかもしれません。 編: 世界中のユーザーに向けて一言お願いします。 Chou氏: Xbox 360は最高のコンソールだと思います。ハイデフ環境と数多くのタイトルはきっと皆さんを魅了すると思います。皆さん一緒にXbox Liveで世界の友達と遊びにいきましょう。 編: 日本のメーカーに対してメッセージがあれば一言お願いします。 Chou氏: 台湾のゲーマーは日本のゲームが本当に大好きです。日本のゲーム会社さんたちには台湾ユーザーのために素晴らしいタイトルたくさん開発していただけるようよろしくお願いします。また、台湾進出に際し、Microsoftに何か手助けが必要でしたら、いつでもおっしゃってください。大歓迎いたします。 台湾では「アイドルマスター」や「プロ野球スピリッツ3」といったタイトルにも人気があります。しかし、日本のメーカーさんと接点がないので、ローカライズをすることができないのです。このメッセージを是非お伝えください。 編: ありがとうございました。
□Microsoft Taiwanのホームページ (2007年2月13日) [Reported by 中村聖司]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|