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Taipei Game Show 2003現地レポート

Xboxキーパーソンインタビュー 台湾編
~ 台湾でのXboxLive成功の鍵は、プリペイドカードが握る

2月22日インタビュー

会場:世界貿易中心

 Taipei Game Showのレポートでお伝えしているとおり、ここ台湾では昨年11月29日にXboxの正規販売が開始された。そこでおよそ3カ月が経過したXboxの状況と台湾のゲームコンソール市場について、台湾MicrosoftのHome & Entertainment部門を統括する周文英(Grace Chou)さんに伺った。


完全中国語化を実現して2月15日に出荷された「HALO」を前にする周文英さん

編集部(以下、編):台湾でXboxが発売されてから、およそ三ヶ月が経過するわけですが、現在の手応えはいかがですか?

周文英(以下、周):期待以上の結果を出していると思います。今回のようなイベントをはじめとして、さまざまな場面でユーザーの盛り上がりを感じています。特にハードウェアに対する期待が大きいようですね。

編:ここ台湾では、すでにどれぐらいの数のXboxが出荷されているのでしょうか?

周:正確な数字は、3月末の時点で四半期ごとの結果という形で米国本社を通じてリリースされることになりますが、アジア圏全体では85万台というのが、現状で把握している数字になります。これには、台湾、香港、シンガポール、オーストラリア、韓国、そして日本での出荷台数が含まれています。

編:Xboxの2003年末までの出荷台数はどれぐらいと見込まれていますか?

周:現時点ではっきりとしたことは言えません。それは、まだ多くの予測できない要素があるからです。たとえば台湾でも、今年中にはXbox Liveが始まります。サービスが始まるタイミングや、ユーザーの反応によってハードウェア販売の動向は変わってくると思います。そうした判断を行うのは、今年の6月あたりになるのではないでしょうか。

G:いま台湾で発売されているXboxのタイトルのなかで、人気のあるタイトルは何でしょうか? また、それらのタイトルが台湾のユーザーに受け入れられている理由は、どう分析されていますか?

周:もう、ご想像はついているかと思いますが、「DEAD OR ALIVE:EXTREME BEACH VOLLY BALL」(以下、DOAX)が一番人気で、販売数も多いです。やはり綺麗な水着の女の子がたくさん登場するのが男性の心をくすぐるというか…(笑)。

 二番目は「Project Gotham Racing」です。これは、Xboxのハードウェア能力の高さを十分に見せてくれるタイトルということで、当初(Project Gothamは、本体と同時発売)から息の長い人気を見せています。やはりXboxと一緒に購入される方が多いです。

 三番目は「HALO」です。これは台湾では2月15日に発売されたばかりですが、確実にヒットタイトルになるでしょう。なんといってもFPSの人気は高いですし、ボイスも含めた完全な中国語版としたことも有力なポイントになると思います。

G:現在発売されているタイトルには、「HALO」のようにメニューやゲーム中の画面はもちろん、音声まで中国語になっている完全中国語版のものがある一方、「DOAX」のように付属のマニュアルは中国語になっていても、ゲーム中の画面はすべて英語といったタイトルもあります。こうしたローカライズの基準はどのあたりに置いているのでしょうか?

周:理由はいくつかあります。もっとも単純な理由は、いま挙げられたふたつだと「HALO」はMicrosoft Game Studioの制作によるファーストパーティのゲームで、「DOAX」はサードパーティ開発によるゲームだからです。自社開発タイトルでは、中国語へのローカライズを自社内の基準で検討できますが、サードパーティ開発では、Microsoftの判断だけではなく、開発側であるサードパーティの考え方やローカライズに要するコスト負担、マーケティングなど、さまざま要因が加わります。そこでもっとも一般的な英語版の仕様で、マニュアルやパッケージを中国語化して発売するという方法が取られることになるわけです。もちろんパブリッシャーとして、どういう形でのローカライズ方法がいいかというのは、常に開発側と相談を続けています。

 もうひとつ重要なのが(発売する)タイミングです。日本、あるいはアメリカの発売日に合わせられるのがマーケティング面でも有効で、利益ももっとも高くなります。もちろん、すべてをローカライズして、このタイミングで発売できれば理想的なわけですが、必ず実現できるとは限りません。そこで、いちばんいい方法を探っていくことになるわけです。

G:「HALO」に続いて完全中国語版として発売されるタイトルにはどんなものがありますか?

周:具体的にはお答えできませんが、数タイトルについて検討中です。やはりRPGのようなタイトルでは、十分な対応が必要になるでしょう。ゲームのジャンルや内容もローカライズの程度を決める非常に重要な要素になります。これまで台湾のユーザーは、米国や日本から輸入された英語や日本語のゲームにも多く親しんできました。これは蓄積された経験ですので、すべて中国語にしてしまっても違和感が生まれることになります。

 例えば、エレクトロニック・アーツの台湾支社が発売している「ハリー・ポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」は英語音声のままで中国語字幕を入れる、映画のようなスタイルが取られています。やはりハリー・ポッターには英語が似合いますからね。そうした雰囲気というか、プレイヤーの思い入れを生かしていくことも大切だと考えています。

G:現状、台湾で発売されているのは欧米や日本で開発されているタイトルがほとんどですが、台湾オリジナルのタイトルを開発、販売される予定はありますか?

周:会場をご覧になっておわかりになったと思いますが、XPEC Entertainment社がすでにXbox向けの「Ex-Chaser(エクスチェイサー)」の開発を行っています。日本ではアイディア・ファクトリーを通じて5月頃に販売されるのをはじめ、世界中で販売される予定です。これが第一弾という事になります。他にも数社で計画が持ち上がっています。


■台湾におけるXboxLive成功のカギは、プリペイドシステムの導入

編:台湾でXboxLiveがスタートするのは、いつになりますか?

周:具体的な日付はまだですが、今年中には必ずスタートさせます。

編:すでにブースでは「WHACKED!」、「MECHASSAULT」、「Unreal Championship」などの対応タイトルが展示されていますが、これは現状ではスタンドアローンで楽しめて、さらに“XboxLive Ready”ということですね?

周文英さん(以下周):そうです。もちろん、対応するタイトルはそれだけではありません。

編:XboxLiveはブロードバンドが必須なわけですが、台湾でのブロードバンド普及率はどうなっていますか? 日本でのインタビューではXbox購入者の約半数程度が、購入時点ですでにブロードバンド環境を持っているというデータもありますが……。

周:台湾にはおよそ680万世帯が暮らしています。そのなかの30%がブロードバンドの利用世帯になります。現在、さまざまな通信会社が普及に力を入れていることもあり、今年中には(PCの)オンラインゲームユーザーも、合計400万人ぐらいがブロードバンドユーザーになるという予測があります。

 まだ発売から3カ月なので、具体的にXboxユーザーがどれくらいの割合でブロードバンドを使っているのか、正確な数字は分かりませんが、台湾は世界第四位のブロードバンド普及率ですから、日本ともそう違わない数字になっているはずです。そしてXboxLiveがスタートすれば、XboxLiveを楽しむためにブロードバンドを導入するユーザーも増えるでしょうから、そうした点にも期待しています。

編:ここ台湾では、PCのオンラインゲームの課金・集金システムはプリペイドカードを使ったシステムが主流だとうかがっています。いまのところ、米国、日本、ヨーロッパでもXbox Liveの利用料はクレジットカード登録による引き落としに限定されているわけですが、この点について台湾ではどのように対応していかれるのでしょうか?

周:基本的には、プリペイドカードによるシステムを採用していきたいと考えています。ご存じのとおりクレジットカードが利用できる年齢は18歳からなので、これはユーザー層を狭めてしまうことにつながります。そして、ゲームユーザーのクレジットカード所有率も決して高くありません。XboxLiveを使ってもらうための仕組みとして、プリペイドカードを使った課金・集金のシステムは重要でしょう。

編:日本でも当初からプリペイドによる課金システムのニーズはあって、日本におけるXboxLiveの責任者である小出雅弘氏にも何度かインタビューをさせていただきましたが、WebMoney導入の可能性についてたびたび言及されています。しかし現状では米国側との調整が難航しているのか、なかなか実現にはいたりません。米国との意識の差というか、こうした壁になる部分をどう越えていくのか、台湾では具体的なプランをお持ちでしょうか?

周:まだ、課金システムの内容について具体的な決定事項はなにもありません。いま私たちがすべきことのなかでは、こうした台湾の現状を米国側へ伝え、正しく認識、理解してもらうよう努力をすることがもっとも重要です。プリペイドシステムの導入が、台湾でのXboxLive成功のカギを握るという点をきちんと伝えていくつもりです。


■ 潜在的な若い女性のユーザー層が四割。他の地域がうらやむ女性の比率

編:続々と続くXboxタイトルの投入とXbox市場の拡大が、PCゲーム市場に与える影響はあるとお考えでしょうか?

周:影響はあると思います。元々、台湾ではPCゲームとコンソールゲームの比率は8:2ぐらいでした。現在は3つのコンソールが揃ったこともあり、これからはだんだんとコンソールにシフトしていくことになると思います。

編:Xboxの購入者は、PCを使ったゲーム経験者が多いのでしょうか? ヘビーユーザーとライトユーザーでは、どちらが多いのでしょう?

周:まだ購入者の具体的な調査結果は出していません。ただ販売店から得られた情報では、若いユーザーが多く、中学生と既存のPCユーザーが目立つそうです。中学生ぐらいの子供を持っている家庭ではパソコンの所有率も高いため、きっと彼らもPCゲームには触れていることでしょう。中学生が多いというのはXboxの発売された時期と大いに関係があります。ちょうどこの3カ月間は、年末と正月、旧正月といった期間にかかるために、親たちからのプレゼントとして、数多くのXboxが子供たちの手に渡っていったようです。ヘビーユーザーは、それほどいないと思っています。一般ユーザーのほうが多いでしょう。

編:Xboxのユーザー層は世代で見ると、どのあたりが多いでしょうか?

周:やはり中学生、高校生が中心です。あるいは新社会人になるあたりの20代前半のユーザーが目立ちます。Xbox本体の販売価格である7,490台湾ドル(約3万円)は、前述したような親御さんの購入や、新社会人の彼らにとって(PC本体などに比べると)適当な価格の製品ということになるのでしょう。

編:女性のユーザーはどれぐらいいますか?

周:これまでお話ししてきたのと同じように、Xbox購入者の正確な調査結果ではありませんが、以前とった購入意識のアンケートによると、購入希望者の四割程度が女性だったというデータがあります。これはかなり高い数字ですよね。なぜかと言うと、台湾の(PC向け)オンラインゲームのユーザーが、やはり四割程度は存在するからです。台湾では、若い女性がゲームを日常的に楽しむという土壌がある程度は整っているということでしょう。でも、女の子がDOAXを買って楽しんでいるのも、なかなか想像が付かないんですけど(笑)

編:日本市場の現状を考えると、4割というのは驚くべき数字です。それなら、女性向けに(マッチョな)DOAXを制作すると、結構ヒットするかも知れませんね(笑)

周:それはいい考えです(笑) それから、かわいいキャラクタは人気があるので、「Blinx」は、女の子にたくさん売れたタイトルですよ。

編:ほかに台湾の市場が、日米欧の市場と違うと認識している点はありますか?

周:これは市場の成り立ちの経緯もあって、台湾は元々並行輸入品が多かった市場です。最初はPCですが、PS、PS2と続きました。PS2のユーザーが主にコアユーザーで構成されているのは、そうした背景があるからでしょう。昨年、PS2とXboxの正規販売が開始されたことで、狭く深い市場から、日本や米国のような広く浅い市場への変化は、これから進んでいくと思います。

編:その並行輸入品ですが、一昨年11月の米国発売、昨年2月の日本発売によって流入してきた海外リージョンのXboxは、台湾でのXbox正規流通開始後に、やはり駆逐されてきているのでしょうか?

周:その傾向は確かにあります。特にXbox本体に関しては、ほぼ海外市場と同等の価格を実現していますので、明らかに価格の高い並行輸入品にはアドバンテージはありません。ただ、ソフトウェアについてはまだ問題も残っています。それは、最初に述べたように(新作タイトル発売の)タイミングの問題です。やはり日本と同時に発売できないタイトルについては、並行輸入品が有利となる余地を残しています(編集部注:日本版と台湾を含めたアジア版のXboxのリージョンが同じなため、アジア版でもそのまま日本版のソフトが動作する)。この点について、まだまだ努力していかなければなりません。他の市場にはあるけれど、台湾ではまだ発売されていないというタイトルを減らして、ラインナップを充実させていくことが大切だと思っています。

編:PS2など、他のプラットフォームに対して、Xboxがアドバンテージを持っていると考えている点を教えてください。また逆に後塵を拝しているところはなんでしょうか? その点については、今後どのように解消されていきますか?

周:すでに確認されていると思いますが、まずは価格です(会場内の店舗で販売されているXboxが7,490台湾ドルなのに対して、PS2は7,980台湾ドル。日本円にして2,000円弱、Xboxの方が安価になっている)。そしてスペックということになるでしょう。5.1chサウンドへの対応やハードディスク、ネットワーク機能の標準搭載などがXboxのスペック面でのアドバンテージに挙げられます。

 逆に我々がもっと頑張らなければならないところは、絶対的なタイトル数の増加です。PS2に比べ、まだまだ不足しています。これについては、今年中に100タイトルのラインナップを予定していて、少しずつ追いついていくつもりです。

編:ありがとうございました。最後に世界中のXboxのユーザーに対して、何かメッセージをお願いします。

周:Have Fun! Play More! (笑)。以上です。

□Taipei Game Show 2003のホームページ
http://show.tca.org.tw/tgs/

(2003年2月23日)

[Reported by 矢作 晃]


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