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会場:ガンホー本社
インタビュー後編では、「北斗の拳ONLINE」、「グランディアオンライン」、「ラグナロクオンライン II」といった次期主力タイトルの展開戦略をはじめとした、2007年度のガンホーグループの事業戦略について話を伺っている。
■ 2007年度のコンテンツ戦略。「GO」、「北斗」、「RO2」は2007年リリース
森下氏: 大枠としてはガンホーグループとしてPC、オンラインだけでなく、家庭用ゲーム機向けソフト、モバイルも含めた総合的なゲームメディアグループとして、形づけていきたいと思っています。 ガンホーとしてコンシューマ、モバイルも形にしていきます。これは他のオンラインゲーム会社とは異なるガンホー独自の強みだと思っていますので、今年はぜひそれをやっていきたい。細かいことは今後発表していきますが、より積極的にコンシューマゲーム事業、モバイルゲーム事業を展開していきます。 編: 2006年に展開するはずだった新規タイトルがすべて残っているということになりますが、これらについてはいかがですか? 森下氏: すべて2007年にリリースします。 編: それはつまり「グランディアオンライン」、「北斗の拳ONLINE」、「エクストリームサッカー」、そして「ラグナロクオンライン II」もでしょうか。 森下氏: そういうことになります。 編: 「ラグナロクオンライン」に関しては、11月の戦略発表会で2007年度も様々なことを行なっていくことを発表しました。その中で、モバイルゲーム、アーケードゲームへの展開もあるという発表をしていましたね。 森下氏: アーケードやコンシューマゲームの企画も進行しています。2007年度にリリースするかどうかは明言できませんが、ガンホーグループとしてPCに固執することなく、モバイル、コンシューマ、アーケードなど総合的に展開をしていきます。 編: 大規模オフラインイベントであるRJCに関してはいかがでしょうか。 森下氏: 企画しています。寒くもなく、暑くもない時期に開催したいと思います。スケジュールは現在調整中です。昨年のディファ有明は我々の予想を遙かに超えてしまい、キャパシティ的にきついねということになってきたので、今年は別の場所での開催を考えています。 編: ネットカフェ展開に関しては「ラグナロクオンライン」対応店舗が1,720店舗と順調に増えてきて、「ECO」もIPスルーシステムを使ってプレイ料金だけで遊べるようにしたり、順調に伸びているなという印象があります。2007年のネットカフェ展開についてどのような戦略を考えていますか? 森下氏: 「ECO」に関しては店舗からもいい反応を得ています。問い合わせも多く、良い形になっています。これからのタイトル「グランディアオンライン」、「北斗の拳ONLINE」などもIPスルーを視野に導入を検討していきたいと思っています。ネットカフェ向けの独自施策も考えています。 編: 今後、「ラグナロクオンライン」にもIPスルーを導入する予定はあるのですか。 森下氏: 視野に入れて検討しています。ただ、「ラグナロクオンライン」は規模が違うので、まずはオリジナルである「ECO」から始めました。 編: 独自施策はどのようなものを考えているのですか? 例えば韓国や日本ではネットカフェ専用のアイテムがあったりします。 森下氏: ネットカフェ専用のサービスに関しては、ネットカフェ専用アイテムも考えていますが、もう少しコンテンツに近いものを考えています。まだ具体的なお話をできる段階ではありません。 編: また、ゲーム内広告事業やEコマース事業についても積極的に推進していく意向を表明していますが、今年はどうなるでしょうか。 森下氏: 少しずつ形にしていきます。どちらかといえば、ゲーム内よりもガンホーゲームズサイト内で実現していくことになると思います。そのためには色々クリアしていかなくてはいけない課題があるのですが、解決に向けて取り組んでいかなくてはと思っています。 編: 森下さんが積極的に推進しているEコマース事業は、今年ガンホーゲームズで始まると考えて良いのでしょうか。
森下氏: できるところからやっていきたいと思っています。Eコマースもやっていきたいと思っていますが、これはいつまでにしなくてはいけないという性質のものではありませんから、じっくり取り組んでいきます。 ■ 「ラグナロクオンライン II」、「グランディアオンライン」、「北斗の拳ONLINE」に対する今後の抱負
森下氏: 「ラグナロクオンライン」は私たちがファーストタイトルとして育ててきただけに、「II」に関しても、開発会社とも長い付き合いですし、色々内部体制は変わりましたが、開発会社とよりよいものと、よりよいサービスを提供できればと思っています。お客さんがいいと思ってくれるようなタイトルにしていきたいなと。 編: 新しい施策、展開戦略などがあれば教えてください。 森下氏: 現在、「ラグナロクオンライン」でやっていることに加えて新しいことを盛り込んでいきますが、基本的な戦略に違いはありません。 編: たとえば「1」と「2」の棲み分けはどのようにしていくのでしょうか? 森下氏: 中身が全く違うのでその点はあまり意識していません。既存のお客さんにも遊んでもらえればすばらしいですが、そこまで望んでしまうのもどうかと思っています。「ラグナロクオンライン」という名前は知っていたけど触ったことはない、というユーザーにも遊んでもらえればいいなと思っています。 編: 「ラグナロクオンライン II」はFPSの様な独特のインターフェイスを採用していますが、これはコンシューマと親和性が高いように思いました。コンシューマへの展開についてはどのように考えていますか? 森下氏: コンシューマへの展開という意味では、3Dグラフィックスを採用していたりして充分考えられるのですが、インターフェイスに関してはそのままは無理だと思います。ほかにも色々直さなくてはいけない。たとえば、「RO II」は高度な3Dグラフィックスを採用していますので、Wiiにそのまま載せることはできないと思います。ですから、仮にWiiに展開するとすると、グラフィックスの変更が必要になります。我々としてはあらゆるプラットフォームへの展開の可能性を検討し、いろいろな条件を考えてビジネス的にチャンスがあれば、「NO」というつもりはまったくありません。 編: ガンホーとしては「ラグナロクオンライン II」のコンシューマ展開に関して意欲的に捉えていると? 森下氏: はい。我々のコンシューマ開発の強みも活かしていければいいなと思っているし、開発同士のコラボレーションをしていければいいなと思っています。 編: 「ラグナロクオンライン II」のビジネスモデルはどうなるでしょうか。 森下氏: まだ未定です。 編: 「ラグナロクオンライン II」のプロデューサーのパク・ヨンウー氏は「月額課金をベースに複数のバリエーションを」と弊誌インタビューで発言しています。それはあくまで韓国サイドの話ですが、日本ではどのような課金体系になるのでしょうか? 森下氏: まだまったく決まっていません。複数の課金体系を組み合わせたハイブリット課金になるのではないかとも思っていますが、パブリッシングタイトルなので、開発元と協議の上決めていくことですから、我々だけで決めつけるわけにはいきません。 編: 日本のユーザーがプレイできるのはいつぐらいでしょうか。 森下氏: それもまだ未定です。ただ、2007年にはリリースしたいとは思っています。今回の韓国のテストの状況によってスケジュールが見えてくると思いますので、決まってきた段階でお知らせしたいと思います。 編: 2007年第2四半期にサービス開始が予定されている「北斗の拳ONLINE」に関してはいかがでしょうか。 森下氏: もっと早く延期をお知らせできれば良かったと思っています。延期したことで自信を持った作品をリリースすることができ、結果的にお客さんにも良い反応をもらうことができれば、我々の延期をした判断が間違っていなかったと思うことができると思います。 編: 「北斗の拳ONLINE」は具体的にどのようなMMORPGになるのでしょうか。原作モノとしてユーザーさんの間では色々な希望的観測が話されていますが。 森下氏: 具体的な内容についてはおいおい発表していきます。元々のコンセプトが「拳で語り合え」というものです。コミュニケーションを最大に活かした作品。PK的な意味ではなく、戦うこともコミュニケーションであるようなゲームになってくれればいいなと思っています。対戦して負けても憎しみにならないような戦闘システムが、大きな違いになっていくと思います。 編: ゲームアーツからガンホーに引き上げた上で再開発を進めているという「グランディアオンライン」についてはいかがでしょうか。 森下氏: 中身の部分は元々大きく変わっていません。ゲームサーバーなどももう完成しています。どちらかといえばクライアントベースでの修正を行なっています。一番大きいのはグラフィックスの変化ですね。 編: グラフィックスはどう変化したのでしょう? 森下氏: 3Dグラフィックスに関して、もう少し軽くしていくという作業をしています。ロースペックのPCでも遊べるという感じにしていっています。「グランディアオンライン」は特に美しいグラフィックスにしていくということではなくて、中身で勝負していきたいなと考えています。 編: 「グランディアオンライン」もリリースは2007年とのことですが、後半になりそうですね。
森下氏: 「北斗の拳ONLINE」が第2クォーターですので、その後に行きたいなあと思っています。2007年度には必ずリリースしますし、それは堀にはスケジュールはマストだから、と厳命しています。内部的にはスケジュールはフィックスしています。ゲームとしては我々の自信作です。 ■ RMTへの取り組みと、森下氏の予測する2007年のオンラインゲーム業界
森下氏: 12月1日にもRMT利用者に対する大規模な取り締まりを行ないました。ガンホーがRMT業者、またはその利用者に対して措置したのははじめてでしたが、こうした取り締まりは今後も継続していきます。 現在はRMTという言葉だけが一人歩きして、RMTは純粋に悪者の代名詞になっています。その是非はともかくとして、現実問題として明確に捉えられるパブリッシャーと捉えられないパブリッシャーがあって、その対応に温度差があると思います。RMTがゲームに影響をそれほど与えていないタイトルと、逆にもろに影響を受けているタイトルもあるし、バラバラにやっていたら対応しきれない部分もある。 ですから、ガンホーとしてはCESAのオンラインゲーム委員会の中心として色々な事件のトラックレコードも含めて開示し、業界のプレーヤーが中心となって取り組んでいけるように積極的にアプローチしていきたいと思います。 編: 昨年5月のRJC2006の際にRMTに関してお話を伺った時、森下さんはRMTは全面的に禁止したいと。関係各省にも積極的に働きかけていきたいという趣旨の発言を行ないました。現在の森下さんのRMTに対する基本スタンス、その理想像とはどのようなものでしょうか? 森下氏: 現在我々が提供しているゲームはRMTを想定して作っていませんし、それ自体に対応するシステムになっていません。それが一番大きな所だと思うんです。今後は、作る側が「RMTは存在するんだ!!」という前提でものを作っていかないといけないのかなと。RMTに対応できるシステム、対策を打てるようなシステムを作っていかなくてはいけない。 これからはRMTを前提として取り込んでいけるようなシステムと、RMTを全面的に排他していけるようなシステムの2つの方向にわかれていくと思うんです。両者でシステムは全く異なったものになっていくと思います。どちらにしていくかは業界の中においてもRMTに対するコンセンサスがある意味不十分なところも現在あって、法律的な部分も含めて、現在は明快な答えがない。 僕らとしては基本的に後者の対策、つまりRMTを全面的に排他する方向で、ゲームを作っていくつもりです。だからといって業界の動きとして前者が活発化した場合は、目をつぶるのではなく、その時点で改めてR&Dをしていかなくてはいけないと思っています。 編: 森下さんとしては「どちらかにしなくてはいけない」ではなくて、「どちらでもいい」という立場なのでしょうか? 森下氏: 僕は基本的には「対策をしていかなくてはいけない」と考えています。最高の理想型というのは、RMTが想像できないようなシステムであって、現在はあまりに現実的ではない理想ではあるけれども、RMTを必要としないゲームシステムを考えていきたい。我々の理想はそちらの方向です。しかし、逆に法律などが前者の方向性に向けて変わってきた場合は考えていかなくてはならないとも思っています。 編: アメリカでは「Second Life」というRMTを前提としたゲームが人気です。 森下氏: そもそも「Second Life」がゲームなのかという疑問もあります。僕らの定義ではあれはゲームではなく、だからこそ成立している部分もあるのかなと思います。ただ、コミュニティは非常に活発だし、メーカーとしてもそれを後押ししている。とても勉強になる作品です。それはそれとして我々も勉強、研究していこうと思っています。 編: 「グランディアオンライン」、「北斗の拳ONLINE」、そして「ラグナロクオンライン II」ではあらかじめRMT対策が施されていると期待していいわけでしょうか?
森下氏: 「ラグナロクオンライン II」に関しては、僕たちが開発しているわけではないので我々だけで断言することはできませんが、他の自社タイトルに関してはそういうことになります。既存タイトルに関しても、現時点で万全な対策をしているとは言えませんが、議論をしていく中でRMTを排除する対策を考えて作っていきます。
森下氏: 2007年はオンラインゲーム業界は、色々な意味で淘汰されていくのではないかと思います。導入期から成長期、発展期、となっているオンラインゲームですが、より早いタイミングで淘汰が始まっていくんじゃないかと思います。淘汰というのはけっしてマイナスな意味ではありません。 編: 淘汰というのは、M&Aの再開を意味しているわけでしょうか? 森下氏: 必ずしもそうではありません。1つの企業から見れば淘汰はマイナスですが、業界全体から見れば成長、発展のためには大きくなるためには必要なことだと思います。昨年も色々終了していくタイトルもありましたし、企業、コンテンツにしても色々淘汰が進んでいくんじゃないかと思います。 その中でガンホーのポジショニングは明確で、オンラインゲームだけでなく、総合的なゲームグループになっていく。社内的にはモバイルやコンシューマの会議なども活発に行なっていますし、色々なデバイスに展開できる事が強みです。 特に次世代機がオンラインに対応したことは待ち望んでいたことでした。僕のスタートラインは、ネットワークゲームを作るためのSDKを提供することでした。当時はドリームキャストしか対応していませんでしたが、家庭用ゲーム機がオンラインとなるのを夢見ていたので、個人的にも嬉しいです。 2006年はジー・モードもとても良い状況になってきたので、モバイルもコンテンツの重要性をキャリアの特色としてよりアピールしています。2006年は次にスタートダッシュをするためのとても良い状況になったのではないかと思います。我々は周りの人達からもPC、モバイル、コンシューマと総合的なゲームメーカーとして見てもらえるようにしていきたいと思っています。 編: 昨年のインタビューでは、総合メディア事業を目指すということでガンホーゲームズが生まれました。今年はさしずめ“マルチプラットフォーム展開”が1つのテーマになってきそうですね。 森下氏: それはあくまで1つです。グループとしては3つの戦略があります。1つは「ガンホーゲームズ」を通じてゲームポータルの会員ビジネスを拡大していく。もう1つが我々のグローバル、家庭用ゲーム機に向けたキラーコンテンツの提供。3つ目がバリューチェーン、開発から決済までのサービスを幅広い形で、きっちりディストリビューションできるような形をきちんととっていこうと思っています。 編: 昨年、決済手段も自前で備え、バリューチェーンはすでに完成したのではないかと見ていましたが。 森下氏: 今年はそれをもっと強化したいと思っています。戦略としての軸は昨年はポータル、マルチユース、オリジナルコンテンツの提供でした。今年のテーマはポータル、キラーコンテンツ、バリューチェーンの3つです。それらを色々な意味で強化をしていきたい。手法としては様々なものがありますが、M&Aも含めた形でやっていきたいと思います。 編: ポータルとキラーコンテンツはわかりやすいですが、バリューチェーンはユーザーにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。 森下氏: より買い求めやすく、わかりやすくなっていく、身近なものになっていくことや、機会損失がないといったメリットがあると思います。色々なオンライン販売も含めた形でディストリビューションを強化していきたいと思います。 編: 最後にガンホーのユーザーさんへメッセージを。 森下氏: 今年は「ラグナロクオンライン II」、「グランディアオンライン」、「北斗の拳ONLINE」という3つのオンラインゲームタイトルだけでなく、色々なコンテンツ、色々なデバイスでの展開を発表していきたいと思っています。これからもガンホーグループとして期待をしてもらえれば非常にありがたいと思います。
編: ありがとうございました。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2007年1月19日) [Reported by 中村聖司]
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