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★PCゲームファーストインプレッション★

次世代フライトシミュレーターを一足早く体験
緻密な地上表現と、多彩なミッションに注目

「Microsoft Flight Simulator X」

  • ジャンル:フライトシミュレーター
  • 開発/発売元:マイクロソフト
  • 価格:9,870円
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 発売日:1月26日



 フライトシミュレーターの代名詞的な存在である「Microsoft Flight Simulator」シリーズの最新作、「Microsoft Flight Simulator X 日本語版」が1月26日に発売される。

 前作の「Microsoft Flight Simulator 2004 翼の創世紀」から、より美しくリアルになったグラフィックスは、特に低空飛行の楽しさを大きく増している。さらに本作にはハンググライダーにエンジンをつけたような「エアクリエーションバギー582SL」や、上昇気流を見つけて飛び続ける、動力を持たないグライダー「DG-808S コンペティション」といったユニークな機体も登場する。

 本作の魅力はそれだけではない。初心者向けのチュートリアルから、映画のアクションシーンのようなシナリオまで用意されたミッションモードは、マニアックになりがちなフライトシミュレーターというゲームジャンルに、新しい楽しさをもたらしてくれる。間口が広く、かつ奥深い作品となっている。今回はファーストインプレッションとして本作の特徴と、感触をお伝えしたい。


■ より美しくリアルになったグラフィックス。地表の描写に特に注目

道路を行き交う車。飛行のリアリティーをぐっと増してくれる。車の動きが楽しいだけに、鉄道が再現されていないところや、道路の表現がルーズなところが気になってしまう一面も
多彩な航空機。レシプロやジェット、水上離着陸機やヘリコプターなど多彩な機体が操縦できる。ユーザーやメーカーが提供する追加機体にも期待したい
 「Flight Simulator X」の第一の特徴は、「低空飛行の楽しさ」にあると言える。前作に比べ、地上オブジェクトは全体的に大きくなり、樹木を含めて、より緻密に再現されるようになった。海面は太陽を反射してきらめき、地表すれすれを飛ぶ「空の散歩」がより楽しくなった。

 今作のセールスポイントである“動くオブジェクト”は特に必見である。都市の道路では自動車が走り回り、海では小型のボートがちょこまかと、大型の客船がゆったりと進んでいる。さらにアフリカなどでは野生の大型動物の姿も確認できる。今作で追加された「エアクリエーションバギー582SL」は地上すれすれを飛び、オブジェクトの細部を楽しむのにぴったりな機体だ。

 本作のシーナリーは厳密に言えば1つ1つの都市をすべてリアルに再現しているという訳ではないし、ビルのスケールや樹木の一本一本が現実と同じ密度や大きさで描画されているわけでもない。しかし、“らしさ”としての描写に確かな進化が感じられる。現実の旅客機に乗っていて見ることができる、高々度の景色から、着陸に移行する際の地上物の1つ1つがくっきり見えてくるその感覚を、本作は今までのフライトシミュレーター以上の精度で再現している。プレーヤーにとって、オブジェクトの緻密さは、着陸の緊張感も盛り上げてくれる。本作の高々度からのシームレスに変化していく地上の景色に注目して欲しい。

 収録される機体のバリエーションも豊かだ。他の飛行機に牽引され上空に浮かび上がった後は、上昇気流をつかってフライトを楽しむグライダー「DG-808S コンペティション」は今までの航空機とはまったく違う飛行を体験できる。この機体は気圧の違いを“音”で操縦者に知らせるため、操縦者は自らの経験と耳を頼りに上昇気流を捕らえ、飛ぶことを求められる。風をとらえて上昇していくその浮遊感はエンジンで飛ぶ他の飛行機とは全く違った感触をもたらしてくれる。

 この他にも地上だけでなく水上にも着陸できる「G-21Aグース」や、軽快なアクロバット飛行が楽しめる「Extra 300S」、70年以上も現役を務めている貨物旅客機「DC-3」など多彩な機体が収録されている。もちろん、ジェット旅客機のベストセラー「ボーイング737-800」をはじめとして、数人で乗るプロペラ機や、手軽なジェット機などプレーヤーの多彩な要望に応えるスタンダードな機体も取りそろえられている。ヘリコプターも2機種が収録されている。

 機体やシーナリーは今後、多くのファンやメーカーによって作られていくだろう。最もメジャーなフライトシミュレーターと言える本シリーズは、ファン達の交流も大きな魅力だ。また、本作はより本格的な飛行体験を目指すオンラインプレイも可能である。ボイスチャットにも対応しており、複数の機体で飛んだり、1機の飛行機を役割を分担して操縦することもできる。また、初搭載の機能として管制官として他のプレーヤーを導くプレイもできる。

 その一方で、カジュアルな楽しみ方も可能になっている。フライトシミュレーターは機体や航空機の選択、フライトプランの設定など知識がない人には敷居が高いゲームだが、「Flight Simulator」シリーズは単純にジョイスティックを握り、基本的な操作を覚えるだけで大空に飛び上がれるという手軽な一面を持っている。「地球を丸ごと再現し、どこでも自由に飛ぶことができる」というのが、本作の最大の楽しさだと筆者は思っている。

 そこで今回筆者は、「Flight Simulator」シリーズと同様に地球を丸ごと再現している「Google Earth」を使って世界の名所を調べ、その座標に向かって飛ぶ、というプレイを楽しんだ。Google Earthには名所の座標も、最寄りの飛行場も登録されている。このソフトを併用することで、本作の楽しさが更にふくらんでいった。「Flight Simulator X」は、様々な世界の特徴的な地形や、代表的な建物を3Dで再現している。名所の場所を調べ、ゲームでそこを訪れる、というのは非常に楽しい体験だった。

 加えて、本作は地域ごとの植物相や海の色もきちんと再現している。ランダムに描画される建物も地域に合わせたモデルになっていて、目標を見つけるだけでなく、その地方独特の景色、目標までの“過程”も楽しむことができる。アフリカのサバンナ、中東の砂漠、アマゾンのジャングル、ニューヨークの大都会、ヒマラヤ山脈……世界中を旅し、“あこがれの地形”を飛ぶことができる。フライトシミュレーターは確かにマニアックなゲームジャンルではあるが、一方で非常にポピュラーな楽しさをもっている、ということも強く主張しておきたいところだ。

コクピット画面1つ1つの計器がリアルタイムに動き、マウスでパネルを操作することも可能だ こちらは仮想コクピット画面ハットスイッチで視点を自由に動かすことができる。コクピットの雰囲気が味わえるが少し計器が見にくい 外部視点と別ウインドウでGPSを表示することで、より気軽に操縦をすることもできる
空の散歩をするのにぴったりなエアクリエーションバギー 動力を持たないDG-808S コンペティション 滑走路でも、水面でも離着陸ができるG-21Aグース
羽田から富士山を目指して飛ぶ。富士山は非常にこだわって描写されているオブジェクトの1つ 函館上空。寒さが伝わってきそうな景色だ 夏の沖縄。美しい海の色に注目して欲しい
ケープカナベラル周辺にあるスペースシャトル打ち上げ施設 夜のニューヨーク。名所を見るには座標や空港などを調べておく必要がある お台場にあるフジテレビも再現されている
ヴェネチアのサン・マルコ寺院 インドのタージ・マハル ヒマラヤ山脈周辺
アフリカのサバンナ地帯。植物に注目してほしい アマゾン川上空 早朝のモスクワ


■ 操縦の基礎からアクション要素、ストーリー要素まで取り入れた多彩なミッション

バリエーション豊かなミッション。ストーリーの面白さや、操縦の腕が必要なものなど多彩だ。故障や事故などのアクシデントに対処しなくてはいけないものも……。じっくりプレイしたい要素である
あっという間に追い越していくUFO。細部がはっきり見えないのも非常に“らしく”、ニヤリとさせられる
 「Flight Simulator X」は飛行機の操縦と飛行感覚の再現だけに特化した作品ではない。ミッションモードによる“ゲームとしての楽しさ”も取り入れた、今までのシリーズ以上に間口の広い作品となっている。

 本作のミッションモードではエアクリエーションバギーで飛行の基礎が学べたり、グライダーやヘリコプターなどの特殊な機体の操縦法を学ぶことができるだけでなく、多彩なシナリオに従って飛行機を飛ばすことが可能になっている。そのシナリオの数はチュートリアルを含めて50もの数が用意されている。ミッションはEASYからEXPERTまで4段階に分かれていて、自分の腕に合わせた挑戦が可能だ。

 このシナリオが非常に凝っており、面白い。「ハワイでのチェックアウト旅行」ではハワイの景勝地を巡ることができるし、「秘密のシャトル便」では、UFOの基地として有名なエリア51に職員を運ぶ極秘任務を遂行する。そのほか迷子の子象を探す「自然保護区パトロール」や、エアバスでデモンストレーション飛行する「パリ航空ショーデモ飛行」などなど。シナリオは難易度別に分けられているため、まずは簡単なものからということになる。難易度の高いものはクリアするためには何度も挑戦しなくてはならないだろう。

 シナリオを盛り上げてくれるのが声優達だ。本作では堀内賢雄、池田秀一、高乃麗、岡本麻弥といった31人もの声優達が出演しており、シナリオを盛り上げてくれる。引退間近の老パイロットや、アフリカで自然保護に取り組む監視員、救助を求める工場の人などシナリオには多くのキャラクタが登場する。彼らの声の演技はそのシナリオにより一層のリアリティを与えてくれる。

 ミッション選択画面では出演声優の情報もある。出演する声優達はいささか渋い人選であり、ゲーム内でも明確なキャラクタとして登場するわけではないので、声優ファンが彼らの演技のみを目的として本作を購入する、というのはちょっとハードルが高いかもしれないが、ゲームをきっかけに出演声優達がどんな役を演じているかを調べてみるのも面白いかもしれない。

 今回、筆者はEASYのミッションを中心にプレイしてみた。お気に入りはエリア51に職員を運ぶ「秘密のシャトル便」である。「この任務は極秘だ。またこの任務で見たり聞いたものは一切口外してはならない」と同乗のパイロットに何度も言われるこの任務は、独特の緊張感と、何とも言えないうさんくささがあって面白い。内容そのものは短時間のフライトにすぎないのだが、UFOとの接近遭遇もあって、アメリカ人のUFOに関する“あこがれ”の様なものも感じられる。オカルトに興味のあるプレーヤーならば是非挑戦してもらいたいミッションだ。

 「小麦粉パワー」というミッションはエアクリエーションバギーで水上に浮かぶターゲットに“小麦粉爆弾”を落とすという、ゲームらしさを前面に出したミッションだ。投下のタイミングに関しては完全に経験だけが頼りになる。何度も練習をくり返し、より高得点を狙うことを目指す。フライトシミュレーターを使ったミニゲームで、カジュアルな楽しさを体験できる。

 この他にも、走っているバスの上に着陸する映画のように派手な「LOOPY LARRY」や、激しい雨の中を跳び、アマゾン川に着陸する「アマゾントレッキング」、成田空港まで重要人物を運ぶといった「東京ヘリ秘密指令」など、シナリオや天候、地形などバリエーション豊かなミッションが用意されている。レビューではこれらミッションをもっとじっくり取り組んだ形でのレポートをお届けしたいと思っている。

 前作「翼の創世紀」では様々な歴史的フライトを追体験できたが、「Flight Simulator X」は、より多くの人に馴染みやすい題材を持ってきていると感じた。極寒の地で、密林で、秘密の任務を得て、レジャーに……飛行機は様々な活躍をしている。ミッションをプレイすることで普段想像することすらない「仕事の現場」を追体験することはとても新鮮で楽しい体験だった。

 飛行の基礎から様々なシチュエーションを取り入れたミッションモード、飛行に関する知識とゲームの詳細を学べるラーニングセンター、世界中の空を自由に飛ぶことができるフリーフライト、そして世界中のファンと交流できるオンラインモード。今作は、特にフライトシミュレーター初心者にお勧めしたい作品となっている。

 本作をプレイする前に注意したいのは、「重さ」である。特に海外のファンから指摘されているが、本作の推奨環境は下記の通り、Pentium 4 3.0GHz以上、メインメモリ1GB以上、ビデオメモリ128MB以上と高めだが、このスペックを満たしていても、グラフィックスオプションや解像度、飛ぶ高度などの諸条件などによって、十分なパフォーマンスがでない可能性もある。マイクロソフトには、すでに発売されている英語版のように、日本語版の体験版を用意することで、ユーザーがスペックのチェックをできるようにしてもらいたいところだ。

 実は筆者は、本作の「Flight Simulator X」のプレイをきっかけに、Core2 Duo E6700、Geforce8800GTS、メインメモリ2GBといった構成のマシンを新しく用意した。これによって標準的な設定で常時フレームレート50以上を確保することができたが、それでもシーナリー(建物の密度)を高く設定すると、東京上空などのランドマークが多いエリアでは一気にフレームレートが10程度まで落ちてしまう。

 ただし、同作はレースゲームではなく、フライトシミュレータであるため、10程度でも操縦に関して支障はなく、体感的には快適なフライトが楽しめる。それでも地表近くのフライトを楽しみたい場合などはどうしてももっと高いフレームレートが欲しくなるが、はっきり言って現行のPCでは不可能だと思う。「Flight Simulator X」では、手持ちPCのスペックに関わりなく、プレーヤーの環境と好みによって、設定は細かく調整する必要があることを覚悟しておいてほしい。

 加えて、本作は本来Windows Vista向けに作られた作品だというところも留意しておかなくてはならないだろう。「Flight Simulator X」は、Windows VistaとDirectX 10の組み合わせによって更に美しいグラフィックス表現が可能となると言われている。現状ではまだそれを確認することはできないし、DirectX 10モードそのものが未実装だ。本作はWindows XPでもゲーム的には遜色なくプレイが楽しめるが、いずれにせよ、真の評価が下されるのはWindows Vista発売以降、ということになりそうだ。

 「Flight Simulator X」は現行のハードのスペックではかなり“重い”ゲームであるということは厳然たる事実である。しかし今までの作品以上のリアルで美しい地表の描写、世界全体を再現したボリューム、初心者からベテランパイロットまで、リアル指向のプレーヤーから、カジュアルに飛行を楽しみたい人まで楽しむことができるミッション……。こういった多くの魅力で、本作は“次世代のフライトシミュレータ”を提示してくれている。多くの人に注目してもらいたい作品だ。

ミッションでは目的地やコースがグラフィカルに表示される 着陸ミッション。操縦の基礎を学ぶ グライダーのチュートリアルミッションでは上昇気流も表示されている
エアクリエーションバギーに乗って、迷子の子象を探す 海上の的やボートに小麦粉爆弾を落とす「小麦粉パワー」 ハワイ上空を飛び名所を案内してもらう「ハワイでのチェックアウト旅行」
走っているバスの上に着陸する「LOOPY LARRY」 熱帯の島に着陸する「カリブ海での着陸」 夕闇迫る中、遭難者を探索する「日没までの捜索」
【フレームレート比較】
今回プレイした1,024×768ドットの解像度。地上のシーナリーは最高に設定してある。フレームレートは8.4 解像度を1,280×1,024ドットに変更。フレームレートは変わらないが、地上物の描画が少し遅い シーナリーの設定を低にするとフレームレートが大きく向上する。フレームレートは60

(C) 2007 Microsoft Corporation. All rights reserved.


【Flight Simulator X】
  • CPU:Pentium 4 1.5GHz以上(Pentium 4 3.0GHz以上推奨)
  • HDD:15GB以上
  • メモリ:256MB以上(1GB以上推奨)
  • ビデオメモリ:128MB以上

□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□「Flight Simulator X」のページ
http://www.microsoft.com/japan/games/fsx/default.mspx
> □関連情報
【12月15日】マイクロソフト、「八谷和彦 - Open Sky 2.0」展に協賛
「Flight Simulator X」で“メーヴェ”に乗ろう!!
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【12月11日】マイクロソフト、WIN「Microsoft Flight Simulator X 日本語版」
八谷和彦氏の展示会に「M-02J」のシミュレータとして出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061211/fsx.htm
【12月4日】マイクロソフト、Vista対応のフライトシミュレータ
WIN「Microsoft Flight Simulator X 日本語版」2007年1月26日発売
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「Microsoft Flight Simulator X」の推奨商品に認定
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【10月18日】マイクロソフト、WIN「フライトシミュレータX」
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「フライトシミュレータX」の日本語版を開発
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http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060106/fsx.htm

(2007年1月11日)

[Reported by 勝田哲也]



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