★オンラインゲームファーストインプレッション★
新境地へチャレンジ精神を強く感じる
コミカルなSFアクションMMORPG
「アニス&フリッキー」 |
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- ジャンル:アクションMMORPG
- 開発元:ActozSoft
- 運営元:GMO Games
- 利用料金:アイテム課金を予定
- 対応OS:Windows 2000/XP
- サービス開始日:11月予定(クローズドβテスト実施中)
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「アニス&フリッキー」は、韓国Actoz Softが開発し、GMO Gamesが日本で運営を行なう、アクション重視のMMORPGである。今回は9月9日から9月11日までの3日間実施された“1次X-Test”で体験できたゲームの感触をお伝えしたい。
X-Testとはクローズドβテストとは異なり人数を限らない形で行なわれる機能テストで、今回は基本的なゲームの要素を体験できた。第2次テスト、第3次テストでは、高レベルキャラクタ向けフィールドや、パーティー機能などがテストされるという。その後9月29日よりオープンβテストを開始し、11月中旬にアイテム課金による正式サービスに移行する予定だ。
■ SFマインドを強く刺激されるキューブ世界。キャラクタのコミカルな雰囲気にも注目
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オープニングのムービーシーン。ポップでコミカルな独特の世界観が伝わってくる
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立方体の空間に作られた電脳世界。SF的なオブジェクトには漫画的なアレンジが随所に加えられていて、デザイナーの強いこだわりが感じられる |
「アニス&フリッキー」のストーリーは2030年の未来世界で進行する。未来の人々は仮想現実システムを応用して生まれた、巨大な電脳コミュニティー空間「キューブスペース」でより進化した形のコミュニティーを形成していた。しかし、キューブスペースを管理する目的で結成されたキューブスペース委員会の委員長クールディングはそこから莫大な利益を得ようと陰謀を企てる。
キューブスペースの生みの親であるペリド博士はそれを阻止しようとプロテクトプログラムを動作させるが、クールディングのプログラムと衝突してしまったために、キューブスペース全体がバグで汚染されてしまう。キューブスペースに「バグドール」と呼ばれる多くのモンスターが生まれ、彼らに襲われた人々は現実世界に帰ることができない「ゴースト」となってしまう。
ペリド博士は人々を救い、新たなキューブスペースを建造するために、アニスとフリッキーという少年と少女に白羽の矢を立てる。プレーヤーはアニス、またはフリッキーとなって狂った世界を元に戻すためキューブスペースに旅立つのだ。
「アニス&フリッキー」の第一の魅力はその世界観にある。立方体そのもののキューブスペースと、ネオンサインのようなきらびやかなオブジェクト、ノリの良いBGMも相まって、独特の雰囲気を形成している。デザイナーのセンスが前面に出された「電脳空間」はプレーヤーが異世界にいることを強調する。
美男美女ではないキャラクタ、そしてクエストでエピソードが語られるNPC達の性格付けもユニークだ。登場するキャラクタは、世界を救おうというプレーヤーの使命をまったく感じさせないボケキャラばかり。クエストで語られるエピソードによりキャラクタがより一層変になっていくのが面白い。メッセージの翻訳は少し固く、16歳の少年であるアニスだが、1人称は「私」で、描写に関する言葉もどこかきまじめな雰囲気がある。しかし、その文体がキャラクタの変な雰囲気を強調するところもあって、個人的には好感を持った。
ゲームを初めてプレイするとチュートリアルが始まる。ムービーで具体的な説明をしてくれるためわかりやすいのだが、いきなり本作のすべての要素を教え込もうとするため、いささか退屈だ。この手法は韓国産MMORPGではおなじみといえるものだが、むしろ逆効果であり、強く改善を望みたいポイントだ。たとえば日本のアクションゲームなら、最初に練習用ステージがあって、ジャンプ、そしてスイッチを使ったトラップ解除、といったように、練習と実践がバランスよく配置されている。このチュートリアルは知識の詰め込みばかりで、具体的な達成感に欠ける。今後改善してもらいたいところである。
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キャラクタ作成画面。髪型と顔のパターンを数種類から選択する |
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チュートリアルではムービーも挿入されてわかりやすい。しかしちょっと詰め込みすぎだ |
ゲーム内のメッセージは少し硬質な感じのする翻訳がなされている。その文体が独特のおかしさを生みだしている |
プレーヤーをあごで使う部隊長ルーク。誰も世界の心配をしていないところが奇妙だ |
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クエストでは特別なアイテムも手にはいる。クエストはキャラクタ育成に非常に役立つ要素だ |
序盤で使用できるスキルは少ない。Rank3以上で、キャラクタの役割が明確になる |
冒険中いつでもアイテムを預けられるトランスファーシステム。引き出しはロビーまで帰らなくてはならない |
■ アクションはレスポンスもよく快適、ギミックの盛り込みなど更なる進化に期待
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今回のテストではコグマ神殿のみに挑戦することが可能だった |
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遺跡風の石でできたステージ。犬の形の石像や回転する滑車、動く床などオブジェクトは多く、階層が深くなることに作りも凝ってくる。次はどんな場所か、探検する楽しさがある |
アクション要素を取り入れたMMORPGというのが、「アニス&フリッキー」の大きな特徴である。筆者も何度かプレイをしているが、今回改めてじっくり触ってみたところ、そのレスポンスの良さに感心させられた。この感触は最初から備えていたものではなく、徐々に改善されていると感じた。連続して足場を飛び越えたり、ハシゴに登ったり、ジャンプ台で高く跳ね、スイッチのあるところにたどり着いたりと、アクションそのものが楽しく、ステージを越えていく達成感がある。アクションゲームの基本的な水準はクリアしていると言っていいだろう。
その一方で、本作の戦闘は足を止め、殴られつつ殴るという、おなじみのストロングスタイルのゲームデザインである。戦闘にもちょっとしたアクション要素を取り入れ、成功すると有利に進める、といった要素が欲しいと感じた。アクションゲームとしての要素が強い移動部分と少しズレを感じるところだ。
今回のテストでプレーヤーが挑戦できたのは初心者向けの「コグマ神殿」のみで、「未来世界」などの上級者向けステージは今後実装される予定だ。筆者はテスト中、コグマ神殿の中程までしか到達できなかった。最後まで到達はできなかったが、深い階層に行くごとに仕掛けも凝ってきて、本作ならではの「迫力」も感じることができ、新しい場所へ移動するのは楽しかった。テストは3日間行なわれたが、17:00~24:00までと時間も限定されており、ちょっと短かったのが残念だ。
ゲームの展開としては、ステージの入口で敵を倒してレベルを上げ、キャラクタがある程度成長してきたらトラップを越えてステージを進め、次のチェックポイントを目指す、という内容が基本になる。ステージにはいくつかのゲートがあり、マップ画面でチェックポイントへの最短のルートを探し、敵の攻撃を振り切って進んでいく。レベルはサクサク上がり、レベル上げと移動のバランスは取れていると思ったが、戦闘そのものは少しきつめで、敵が与えてくるダメージが全体的に大きく、倒されてスタート地点に戻ることも多かった。
もっとも、敵との戦闘で倒されることが多いのは、本作ではある程度意図したバランスのようだ。「アニス&フリッキー」にはどこにでも“復活ポイント”を設定できる「ロータス」という技能が最初から用意されている。「狩場」に到達したときに安全ポイントを見つけ、このロータスを設置し、倒されてもそこで復活し、戦闘を続ける、というのが推奨される戦闘スタイルのようだ。ただし、これを続けるには回復アイテムも多数用意しておく必要がある。きちんと準備をして、休憩して回復を取りつつ、キャラクタのレベルアップを図っていくことになる。
「トンキーレース」というタイムアタック要素は本作ならではの仕掛けだ。本作のステージには頻繁にタイムアタックコースが用意されている。このコースを規定時間以内にゴールすれば経験値やアイテムがもらえるルールだ。序盤は階段を上るだけ、といった単純なものだが、徐々にコースも凝ったものになっていく。ジャンプは心持ち“助走”が必要で、触ると一定時間消える仕掛けの足場の上で、ちょっとだけ後ずさりさせたりというドキドキ感が楽しい。ゲームのレスポンスは日々向上しているようで、特にジャンプアクションは以前プレイした際と比べてもずいぶんプレイしやすく感じた。スタッフの努力を強く感じた部分だ。
ただ、本作のアクション要素は日本のコンシューマのアクションゲームの水準から言えば、まだまだといったところもある。動く足場は距離がつかみにくく、ジャンプした先の足場の状況が見えにくかったりする。筆者は特にジャンプの判定がシビアなことが気になった。足場ぎりぎりのところでジャンプをしたり、幸運にも足場にキャラクタが乗っかって助かる、というプレーヤーの安堵感を刺激する要素がない。特に足場ぎりぎりでジャンプをしようとしてできないまま落ちてしまうことが多かった。
このバランスに加え、「キーボードのみ」という本作のインターフェイスも弱点といえるだろう。ジャンプをするためのスペースキーは、ベストのタイミングでは押しにくい。欧米のFPSをプレイしていても感じるが、連続してジャンプで足場に飛び移るのは、キーボードではやはりプレイしづらい。アクションゲームはコンシューマで発達したジャンルであり、パッドやレバーでの操作を前提としてゲームは進化している。本作もそういったアクションゲームの影響を強く受けている作品だ。パッドへの対応は、これから追加するゲーム要素の、可能性を広げる意味でも必須といえるだろう。
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触れると消えてしまう床や、多くのモンスターが行く手を阻む。クエストに関するオブジェクトなどもあり、モンスターと戦いながら隅々まで探索する必要がある |
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ゲーム内でいつでもマップを呼び出し、ステージ間の繋がりを確認できる。まずチェックポイントのあるフロアにたどり着き、それから腰を落ち着けて戦うというのが有効だ |
ロータスを設置することで、倒れてもすぐに復活できるようになる。敵に襲われないように安全地帯に設置しなくてはならない |
チェックポイントを見つけ出すことで、他のポイントからすぐに移動できるようになる。ステージの奥に進むためにこのチェックポイントが重要な足がかりになる |
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多数設置されているトンキーレースのコーナー。制限時間内にゴールすることで回復アイテムをゲットできる |
結果はランキングに反映される。上位のプレーヤーはどうやって進むのか想像がつかないほどに早い |
ゲームを進めていくことで様々なスキルを取得していくことが可能に |
■ 特別イベントでボスと対決! インスタンスダンジョンでは新しい魅力も
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テストではGMが頻繁に現われ、プレーヤーと交流を行なっていた。イベントの案内の他、プレーヤーとのんびりと雑談をしている場面も
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1次X-Test最終日には「司祭長バウ討伐イベント」が行なわれた。これはコグマ神殿のボスがいるダンジョンにプレーヤー達を転送し、パーティープレイを体験させるというイベント。
結論から言うとこのダンジョンの推奨レベルは転職後のRank3(レベル30)程度に設定されていて、筆者のキャラクタでは力不足だった。しかもこのダンジョンはパーティーのみで攻略するインスタンスダンジョンなため、数を頼んだ攻略もできなかった。運営側が行なったのは、ただ希望プレーヤーをダンジョンの入口に転送し、パーティー結成を推奨したのみ。ダンジョンのレベル調整が行なわれたわけでもなく、インスタンスダンジョンのシステムテストをとりあえずやってみたという感じで、正直なところプレーヤーを楽しませるための「イベント」としては用意が足りない部分が多かった。
しかし、パーティープレイを体験できたというところでは、プレーヤーにとっても得るものも大きかっただろう。このイベントがなかったら、多くのプレーヤーがソロプレイのままテストを終えていたに違いない。
司祭長バウへたどり着くまでの道は多くのトラップが仕掛けられている。ジャンプを駆使し、スイッチのあるところまでたどり着き、道をつくらなくては奥までたどり着くことができない。しかもダンジョンは制限時間が設定されていて、その時間内にボスを倒さなくてはならないのだ。ダンジョンではトラップだけではなく強力なモンスターが行く手を阻む。筆者も含め転職前のキャラクタにとっては戦闘が特にきつかった。
ここで「転職」についてもう一度触れておこう。本作のキャラクタは3Rankになると4つのサブ職業のうち1つを選ぶことができる。「ダンサー」は治療スキルを持つパーティーの要となる存在。「バード」は仲間の能力をアップさせることができる。「フォーサー」はパーティーの盾となってくれる力を持ち、「トラッパー」は爆弾を仕掛け敵にダメージを与えることができる。3Rank以降のプレーヤー達はそれぞれの特性を活かして戦闘を行なっていく。筆者達のパーティーにはダンサーのプレーヤーがいてくれたため、きつい戦闘も何とかこなすことができた。
バウのダンジョンで特に面白かったのが協力してトラップを突破していく楽しさだ。パーティーにアクション要素が苦手なプレーヤーがいても、他のプレーヤーがトラップを解除してくれるおかげで道を通ることができるバランスには好感が持てた。アクションが苦手なプレーヤーはレベルアップをより重点的に行ない、戦闘での活躍を目指すのも良いかもしれない。
トラップを解除すると敵が襲いかかってきたりと仕掛けも凝っていた。推奨レベルに達していればもっと活躍できたのになあと、少し歯がゆく感じた。それでも、ダンサーに回復してもらうことで少しはパーティーに貢献できた。筆者のパーティーは何とかトラップを突破し、雑魚モンスターを倒し、ボスまで到達することができた。
しかし転職前のキャラクタでは決定力に欠けるためか、制限時間内にボスを倒すことができなかった。他パーティーの人に話を聞いてみたが、「トラッパーの攻撃力が凄かった」とのこと。インスタンスダンジョンにたどり着くまでの雑魚キャラクタも強く、やはり3Rankにならなくては楽しめないようだ。次はキャラクタを鍛え上げ、他プレーヤーと連携して戦いたいと思った。
短い期間であったが、本作をプレイしてみて、スタッフの意気込みと本作の可能性を確かに感じることができた。ジャンプアクションと高低差のあるフィールド、SF的な何でもありの世界観と、デザイナーのセンス……。本作の将来像は楽しみである。期待は大きい分、これから越えていってもらいたいハードルも高くなる。4つの職業が生み出す戦略性は、開発者とプレーヤーのアイデアでもっともっと深くなってほしい。
また、水がある場所に落ちても通常の床に落ちたのと同じダメージを受けてしまう、といった点など、日本のアクションゲームの「常識」に比べてまだまだだと感じさせられる部分も多かった。細かい点ではあるが、フィールドのオブジェクトはアイデアを詰め込むことで未来が広がり、それが組み合わさることで更なる可能性が見えてくる。今後追加される新ステージではさらにプレーヤーを驚かせるギミックを取り入れてもらいたい。
最後に、アクションという新境地に果敢に挑戦するスタッフは素直に応援したいと思う。本作をきっかけに、韓国のゲーム業界が更なる発展を遂げ、日本や欧米に匹敵するような、技術的なブレイクスルーを迎えることに期待をしたい。「アニス&フリッキー」は韓国産MMORPGの新しい流れを感じさせる作品である。今回に続いて実施されるX-Testも参加者を制限しない形で行なわれる。是非ともテストに参加し、開発スタッフの挑戦心に応え、忌憚ない意見を届けてほしい。
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「司祭長バウ討伐イベント」では筆者もパーティーメンバーと協力してダンジョンを攻略した。今回は力及ばずボスを倒すことができなかったが、キャラクタを鍛え、メンバーを募って再度挑戦してみたい |
(C)2006 GMO Games Inc. All Rights Reserved. (C)2006 NETCLUE CO,. Ltd. All Rights Reserved. COPYRIGHT (C)2006 ACTOZSOFT ALL RIGHTS RESERVED
※画面は開発中のものです。
【アニス&フリッキー】
- CPU:Pentium III 800MHz以上(Pentium 4 1.8GHz以上推奨)
- HDD:2GB以上
- メモリ:256MB以上(512MB以上を推奨)
- ビデオカード:Geforce 4 MX以上、Radeon7000以上(Geforce 5600以上、Radeon9500以上を推奨)
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□GMO Gamesのホームページ
http://www.gmo.jp/
□「アニス&フリッキー」のページ
http://www.enf.jp/
□関連情報
【9月7日】GMO Games、MMORPG「アニス&フリッキー」
3段階のβテスト「X-TEST」を9月9日より実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060907/ernis.htm
【8月19日】「アニス&フリッキー」開発者インタビュー
システム、世界観……今までにない作品を生み出すために、大きなチャレンジを
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060819/eafint.htm
【8月19日】「アニス&フリッキー」日本語版デモプレイレポート
独特のセンスに彩られた新要素、最新スクリーンショットによって、高まる期待
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060819/eandf.htm
【8月18日】NETCLUEローカルチームインタビュー
開発者の想いと安定性を追求する、真のローカライズ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060818/local.htm
【8月18日】Netclue共同CEO Hwang Sang Kyu氏インタビュー氏
次の韓国市場のトレンドはM&A!? 「アニス&フリッキー」日本展開の抱負を語る
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060818/gmo_net.htm
【7月14日】Actoz Softチェ・ウンCEO、GMO Games/ネットクルー村岡総仁社長インタビュー
「コルム」の経験を活かし、X-TESTで多くのユーザーの意見を吸収
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060714/eafint.htm
【7月13日】GMO Games/ネットクルー、「アニス&フリッキー」体験レポート
ポップな世界で大暴れ! 新しいアプローチによるMMORPG
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060713/eandf.htm
【7月13日】GMO Games/ネットクルー、「アニス&フリッキー」発表会を開催
9月9日よりX-TEST、11月中旬よりアイテム課金による正式サービスを開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060713/eaf.htm
(2006年9月13日)
[Reported by 勝田哲也]
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