【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

NETCLUEローカルチームインタビュー
開発者の想いと安定性を追求する、真のローカライズ

8月16日収録

会場:NETCLUE本社

 「コルムオンライン」、「アニス&フリッキー」のローカライズを行なっているのが、韓国NETCLUE本社にある“ローカルチーム”である。8月16日、本社見学と共に、韓国のコンテンツをどのように日本語化しているのかを、NETCLUEローカルチーム部長のKang,Bong Suk氏と、ローカルチームリーダーKim, Sung Wook氏、そして「アニス&フリッキー」のスタートのために韓国に出向しているGMO Games運営チーム吉本真也氏の3人にお話を伺った。

 ゲームでのローカライズは、メッセージだけでなく、サービスの傾向や、アイテム、スキル名など多岐にわたる。ローカライズによってゲームのイメージは大きく変わってくる。オリジナルのゲームの持つ独特の雰囲気、「制作者の想い」を再現するために、どのような努力をしているのだろうか。無機質な翻訳ではなく、その国ならではのニュアンスを再現するため、スタッフはどのような理念を持って取り組んでいるのだろうか。今回のインタビューでは、ローカライズを続けてきたKang部長ならではの“日韓のユーザーの違い”、“理想とするサービスのあり方”といったポイントも聞くことができた。


■ サービスを続ける上で見えてくる、韓国と日本のユーザーの違い

NETCLUEローカルチーム部長のKang,Bong Suk氏。日韓のユーザーの違いをその経験から思い入れたっぷりに語ってくれた
NETCLUEローカルチームリーダーKim, Sung Wook氏。ローカライズに関して、吉本氏と密接な打ち合わせを行なって進めているという
GMO Games「アニス&フリッキー」運営チーム吉本真也氏。一カ月以上韓国に出向し、「アニス&フリッキー」のスタートのための準備を進めている
編集部: まず最初に、皆さんの役割を教えてください。

Kang氏: 私は、「コルムオンライン」、「アニス&フリッキー」の両方のローカライズの全てを担当しています。基本的には開発会社との全般的なスケジュール管理とマネージメントをすることが主な仕事です。パッチなどの全てを管理し、開発と運営の橋渡しをします。ここまでが私達の役割です。

 ローカライズチームの仕事として求められるのはなんと言ってもQAです。ユーザーに届く前の、開発から運営へ渡る部分の品質を管理します。この仕事がローカライズチームのメインの仕事なのです。

Kim氏: 私は「アニス&フリッキー」のローカライズを担当しています。私はKang部長の設定したスケジュール通りに、運営チームが動くように働きかけています。そして不具合がないか、コンテンツがきちんと入っているか、などをチェックしています。基本的に開発されているのは韓国の言語なので、それを日本語に直して運営に渡し、帰ってきたものを今度は開発に渡す、ということをやっています。

吉本氏: 私は「アニス&フリッキー」の運営チームのリーダーです。現在は、規約や約款の文章作成や、ユーザーへのサポートをどうするか、ゲーム内イベントをどうするかなどを考えています。ローカライズチームやwebデザインチームが翻訳したものがきちんとした日本語になっているかをチェックしています。

Kang氏: 現在我々は、NETCLUEとGMO GAMESの2つの会社で仕事をしていますが、一番大事なのが会社同士のコミュニケーションです。韓国側のコミュニケーターとしてのKim君、日本側のコミュニケーターとしての吉本君、このふたりが、私の指示に対して、韓国、日本側でどうしていくかを相談して決めていっています。

編: ローカライズチームがとらえている、「コルムオンライン」、「アニス&フリッキー」の特徴とは、どんなものでしょうか。

Kang氏: 「コルムオンライン」はフィールドよりもダンジョンでの冒険を中心としたMMORPGです。日本では珍しい存在だと思います。そして大規模PvPを可能にする攻城戦「バトルダンジョン」の楽しさ、ガーディアンシステムがセールスポイントです。

 「アニス&フリッキー」は既存のMMORPGとは違う、アクション性の高い新しい作品です。緊張感、アドベンチャー性、アクション性、今までにない個性的な作品だと思います。ただモンスターを倒すだけではなく、キャラクタをジャンプさせ、走らせ、様々なトラップを突破していく、そのコントロールする楽しさ。そして高いところから落ちたときの「びっくりした!」というような気持ち、色々なことを感じることができるオンラインゲームです。

編: ローカライズ作業を続けていて、感じた日本と韓国の違いは、どういったところでしょうか。

Kang氏: まず、オンラインゲームユーザーに限った話ですと、最近は、特に韓国と日本で人気のあるオンラインゲームのジャンルが異なってきました。日本では「ウルティマオンライン」や「ファイナルファンタジーXI」の様に、1つのオンラインゲームのタイトルをずっとプレイし続けているユーザーもいます。韓国は次々と新しいタイトルをプレイしていくユーザーが多いです。

 国民性が出ているな、と感じさせられる部分もあります。日本の場合、自分が面白いと感じたゲームは、例えそのタイトルが人気が出なくてもずっとプレイし続ける人が多いと思います。韓国のユーザーは、「新しい面白いゲームが出たぞ!」という情報が出たら、みんなそちらに行ってしまうんです。

 「コルムオンライン」や「レッドストーン」の人気は、そういったユーザーの違いを物語っているように思えます。2つとも韓国ではそれほど大きな人気が出ませんでしたが、日本では多くのユーザーを獲得できました。運営もしっかりしていたからだと思いますが、自分の価値観を大事にし、自分が面白いと感じたゲームをプレイし続けるユーザーの性質があったからだと思います。韓国ではあまり見られないことです。また、現在の韓国は、以前よりオンラインゲームをプレイしている時間が減っています。MMORPGをプレイするのではなく、FPSやカジュアルゲーム、スポーツゲームなど、短い時間で楽しめるタイトルをプレイする人が増えています。韓国のトレンドの変化を感じます。

 日本の方は、自分が好きになったゲームに対して、長い時間プレイする傾向があります。韓国は自分の職業が弱体化されるようなパッチがあると、すぐにゲームそのものを見限ってしまいますが、日本のユーザーは「もう少し待ってみよう」と長い目を持って、開発者にチャンスをくれるユーザーが多いです。メールでの要望もたくさんくれます。

 また、日本のユーザーは韓国のユーザーに比べて1つの目的に集中する所がありますね。ユーザーイベントとしてボス討伐のためのプレーヤーを募集するのは、日韓両方でよくあることですが、韓国では集まったらなし崩し的にボスにつっこんでいきますが、日本のユーザーは回復役や攻撃役など、事前に色々なことを取り決める人が多いです。他にコンテンツの評価でも違いがありますね。日本のユーザーは掲示板の書き込みなどで評価を共有、評論しますが、韓国のユーザーは個人で判断して終わってしまう場合が多いようです。


■ ローカライズで最も気をつけるのは、「元の要素をできる限り再現すること」

インタビューの雰囲気から、Kang部長が強い信念を持ってチームを引っ張っていることが伝わってくる
kim氏にはスタッフとしてインタビューに答えてくれただけでなく、Kang部長の言葉を通訳していただいた
編: 次に、言葉に限定した部分で、韓国語から日本語に変換する場合、大きく異なる部分はどこでしょうか。

Kang氏: ローカライズで一番気をつけているのは、開発スタッフが作る新しいコンテンツの企画意図をなるべく正確に伝える、ということです。こちらのスタッフで翻訳を行なってから、吉本君をはじめとした日本のスタッフにきちんと見てもらう。

Kim氏: 「アニス&フリッキー」の場合、韓国語のモンスター名をどうローカライズするか、吉本君と議論を重ねました。「ケジュリ」というモンスターがいるのですが、この言葉は韓国語で「犬の首輪」という意味なんです。その名の通り、犬の首輪がそのまま動いているようなモンスターなのですが、「どういう意味か考えさせる要素が面白い」ということで「ケジュリ」のままにしました。一方、スキル名などは韓国語のままだとわかりにくいので、英語名を使っています。

編: 韓国スタッフから来るもので、いつも直す、気がついた部分はどこでしょうか。直す上で、気をつけているところはどこでしょうか。

吉本氏: これは韓国の方の特徴かどうかわからないですが、語尾に少しなまりのようなものを感じることがありますね。気をつけている部分は、このゲームを始めてプレイする人のことを考えて、すぐにぱっとわかりやすい言葉、というものを心がけています。そして、ゲームの世界の雰囲気を崩さずに、いかにゲームにあった日本語にするか、というのを重視しています。

Kim氏: 私達も日本のスタッフがわかりやすいように、できるだけ韓国語をそのまま日本語にしています。僕たちは勝手に変えずにそのまま出すことで、日本の意味に合うのか、日本のスタッフと話し合うことができると思います。

編: 先日「エミル・クロニクル・オンライン」の日本語から韓国語への翻訳の際、「パンマル(目下の人に使ったり親しい間柄で使われる ぞんざいな言い回し、親密になった関係を象徴する)」の問題がある、という話がありましたが、韓国語から日本語の場合は、どういったものがありますか。

Kim氏: パンマルの場合、そのまま日本のスタッフに見せるようにしています。それで不自然ならば修正しますし、そのままで大丈夫な場合はそのままにしています。韓国人のマインド、日本のマインドそれぞれで答えを出していきますね。僕たちもテキストだけでなく、「韓国ではこういう意味もあるんだ」というメモをつける場合もあります。開発に理由を聞いたり、開発の言いたいことを代弁することもあります。

Kang氏: テキストに限った話で言えば、世界観などに関わる部分はあまりいじりません。「アニス&フリッキー」の場合、指令を出してくるNPCはパンマルの場合が多いです。私達はそれをそのまま日本語化して、吉本君の方で直してもらっています。私達は「コルムオンライン」でもそうしてきたし、「アニス&フリッキー」でもそうしていくつもりです。ハードコアのユーザーたちにも受け入れられていると思っています。

編: 次に、「カルチャライズ」、日本文化に合わせて、原作にどんなものを追加していくか、という部分についてお聞きしたいと思います。

Kang氏: 日本で行なわれた「アニス&フリッキー」の発表会で今後の追加要素を発表しました。記者の方々は、他のパブリッシャー、デベロッパーが「日本のユーザーのためにこのアイテムを作った」というような発表を多く耳にしていると思います。私は、こういう要素ももちろん必要だと思っていますが、他の部分でもユーザーを楽しませたいと考えています。

 「コルムオンライン」のサービスを始めたばかりの時は、日本オリジナル要素、日本人向けアイテムを追加すればいいと考えていましたが、それ以外にもアピールできる部分に気がつきました。まず、「アニス&フリッキー」は世界観的に、韓国的、日本的というわけではなく、アメリカ市場でも通用するグローバルな市場をターゲットにした作品です。そのゲームの中でユーザーが何を欲しがるかもある程度は把握しています。

 私はそれは、「安定したサービスの提供」だと考えています。まず、開発者の考えた世界を自然な形でローカライズすること。2番目が、クオリティーと安定性。そして、3番目がオリジナル要素なのです。まず2番目までの要素をきちんと実現できれば、ユーザーから「このゲームはクオリティの高いゲームだ」という評価を受けることができます。安定した、質の高いサービスを提供し、開発者の想いをできるだけ忠実に再現できなくては、オリジナルコンテンツをいくら足しても意味がありません。

 コンテンツのローカライズに関しては、変えていくべき所は要望を出しています。例えばタイムトライアル要素など、今はまだ具体例を出せませんが「こう変えて行ければいいのではないか」というような要望も出しています。運営チーム、ローカライズチームで密接に話をしていって、現在方向性を決めているところです。


■ 経験を積んだスタッフが企画し、サービスをする新しいGMイベント

日韓の架け橋になるからこそ見えてくる日本でのサービスプラン。「アニス&フリッキー」のサービス開始時にはたくさんのプランが企画されているという。今後の運営体制にも注目したい
編: 「コルムオンライン」では、特にGM主導によるオンラインイベントがユーザーの評価が高いと思います。このイベントにローカライズチームはどのような協力をしているでしょうか。

Kang氏: 「コルムオンライン」は残念ながら、イベントスクリプトという機能がなく、イベントを行なうときにはまずGMが企画を出し、現在のシステムで行なうことができるか判断し、無理ならば私達を通じて開発チームに要望を出すという形になっています。イベント専用アイテムを作るとか、ステージを用意する場合には、開発チームの協力が必要不可欠です。

 一方、「アニス&フリッキー」は最初からイベントを企画しやすいようにシステムが用意されています。競争できるシステムや、○×ゲームが楽しめるシステムなど、イベントスペースとシステムが用意されており、GMが企画することですぐにイベントを行なうことが可能です。自動で行なうプログラムまで用意できれば、将来的にはユーザーたちが集まって、独自にイベントを開催することも可能になります。

編: 自動化システムは、まだ韓国でも実装されていませんね。

Kang氏: まだです。現在はGMの主導でイベントが行なわれていますが、ユーザーが集中し、大きなラグが発生するほどの混雑具合になっています。これを分散させ、多くのユーザーに遊んでもらえるようにするのも今後の課題です。

 ○×クイズは、他のオンラインゲームでも実現していますが、例えば他のゲームではズルをしてしまうユーザーを止めることは難しい。「アニス&フリッキー」では、答えが間違った人たちの床が消え、強制的に下に落とされてしまいます。このシステムは、問題を間違って下に落とされたユーザーも、そこから観客席に移動し、「次の答えは○だ!」などと、好き勝手に言うことができたり、勝っているプレーヤーを応援できる点が優れています。また、敗者復活戦も可能になっています。

 「アニス&フリッキー」は9月9日から、「X-TEST」という形で参加人数を限らないβテストを開催する予定です。ゲームシステム、世界観共に、少し馴染みの薄い、独自路線のゲームですが、テスト中、GMによって様々なイベントを行ない、本作の楽しさをアピールする予定です。まだ企画の段階ですが、X-TEST中に重要なレポートを提出したユーザーや、テストに積極的に協力したプレーヤー、それらをランキング化し、ランキング上位のプレーヤーには特典を上げようと思っています。大きなバグを発見したプレーヤー、様々な要素をテストしたプレーヤーなど、テストの内容をこちらで確認します。グラフィックスカードの相性問題を発見する、メッセージの不具合を発見する、など、様々な問題点を、積極的に発見して欲しいです。この新しいゲームに対しては、テストもまた新しい形を提示したいです。

 また、最後のテストを終了させてから、オープンβテストまでは1日しか空いていません。X-TESTで盛り上がった気持ちのまま、オープンβテストに向かってもらおうと思っています。X-TESTでこの作品の面白さに気がついたユーザーを逃がしたくないですから。

編: ユーザーの特典はオープンβ、そして正式サービスまで引き継がれなくては、モチベーションを維持できないのではないか、とも思います。

Kang氏: X-TESTからオープンβテストに移行するとき、キャラクタのデータはワイプされます。ただ、現在はキャラクタ名だけは引き続き使用できるようにしていくつもりです。ただ優秀なテスト成績を残したプレーヤーには何らかの特典を引き続き与えてあげたいですね。アイテムになるか、装備になるかも今はまだわかりませんが。オープン時にはたくさんのプレーヤーに来てもらえるような準備も現在企画中です。それは、チームみんなで考えていこうと思います。

編: スタート時に行なうGMイベントで、具体的なものを教えてください。「これは絶対面白いぞ」という自信があるものはどんなイベントでしょうか。

Kang氏: それは公式ページでこれから明らかになるでしょう。景品のある大規模なキャンペーンも開催予定です。細かいところは、今後広報部がアナウンスしてくれると思います。

 個人的に、ゲーム内コンテンツでは「死の道」が素晴らしいと思います。高難易度の迷路ですが、クリアするとスキルポイントがもらえ、更にチャンネル内に「~さんが死の道をクリアしました」というアナウンスが流れます。達成感もある、魅力的なコンテンツです。

  編: では最後に、「コルムオンライン」をプレイしているユーザー、「アニス&フリッキー」を楽しみに待っているユーザーへメッセージをお願いします。

Kang氏: 「コルムオンライン」はサービス当初、不具合が出てしまったことを大変申し訳ないと思っています。「コルムオンライン」は現在、より新しい姿を見せるために用意をしています。バトルダンジョンやアイテム強化など、もっと日本のユーザーが楽しめる、様々なものを企画しています、お楽しみに。

 「アニス&フリッキー」は新ジャンルのゲームです。現場としてゲームを見ると、緊張感、アクション性が結構強くて、簡単に遊べるMMORPGです。本当にユーザーが楽しめるオンラインゲームを目指してサービスしていきたいと思っています。「アニス&フリッキー」を愛してください、よろしくお願いします。

吉本氏: 運営はサービス業だと思っています。いかにお客さまにご満足いただけるかということを、web展開、ゲーム内、そしてイベント運営で意識してやっています。お楽しみいただき、ご満足いただけるようにがんばって用意しています。是非、「アニス&フリッキー」をプレイしてみてください。

Kim氏: 「アニス&フリッキー」はコンシューマゲームが好きな人に、是非プレイしてもらいたいです。

編: ありがとうございます。

□ネットクルーのホームページ
http://www.netclue.co.kr/jp/index.asp
□GMO Gamesのホームページ
http://www.gmo.jp/
□「コルムオンライン」のページ
https://www.corum.jp/
□「アニス&フリッキー」のページ
http://www.enf.jp/
□関連情報
【7月24日】GMO Games/ネットクルー、「アニス&フリッキー」発表会を開催
9月9日よりX-TEST、11月中旬よりアイテム課金による正式サービスを開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060714/eafint.htm
【7月14日】GMO Games/ネットクルー、「アニス&フリッキー」体験レポート
ポップな世界で大暴れ! 新しいアプローチによるMMORPG
http://watch.impress.co.jp/GAME/docs/20060713/eandf.htm

(2006年8月18日)

[Reported by 勝田哲也]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.