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会場:東京都庁
「テレビゲームと子どもに関する協議会」は、ゲームの残虐表現と青少年への影響について論じられている現状をふまえ、「テレビゲームと青少年のよりよい関係を提示し環境を整えていく」事を目標に東京都 青少年・治安対策本部が中心となり、ゲームハードメーカー、ソフトメーカーや販売店、社団法人コンピュータエンタテインメント協会 (CESA)、特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング (CERO)、首都大学などが出席し検討していく協議会。今回が初めての会合となり、今後については「早い時期に」としている。
協議会は、舟本青少年・治安対策本部長の挨拶に始まり、協議会の設置についての説明、そして現在の取り組みについての説明がCESAやメーカー、販売店から発表される形式で進行した。 CESAの渡邉専務理事は、業界内のレーティングシステムとしてCEROを設置し、運用していると解説。レーティングには過激な暴力の表現やアダルト表現について禁止事項が存在し、これまでにも差し戻しが発生したことが数件あり、修正によるレーティングの取得や、発売に至らなかったこともあると説明。 2002年10月から2005年7月までで2,141件の審査依頼に対応し、その内訳として63%が全年齢対象であり、7%が18歳以上対象となったことを明らかにした。ちなみにレーティングチェックのカバー率は95%~97%としている。 同時に、「このソフトがなぜ18歳以上対象にならないのだ!」といったクレームや要望などは来ておらず、レーティング制度は社会の情勢に反応し、容認されていると分析。一方で、CEROのレーティング表示の認知度が低いという問題点も挙げ、レーティングを説明した小冊子の作成、ゲーム販売店でのポスターの掲示など告知に努めていると説明した。 認知度が低い問題に関しては、メーカー側も認識している問題であり、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 (ACCS) が8月に実施した「親と子の著作権教室 ~ゲームづくりから楽しく学ぼう!~」において、参加した父兄に「このレーティング制度を知っているか」という質問に対して「知っている」と答えた父兄は半数に満たなかった。渡邊氏のあとに報告したCEROの堀口氏は「(不適正なユーザーにソフトを販売しないという) 自主規制を販売店さんに協力を求めている。明らかに年齢が低いお客さんには説明して販売しないようしており、年齢がわからないときは確認作業を行なっている」としている。現在8,000店舗に対して店頭に掲出するためのポスターなどを送付し、告知の促進を行ない、販売店からも、もっと送って欲しいとの要望が寄せられているという。
取り組みとして、SCEJは「新ハードには視聴制限機能 (パレンタルロック) を搭載していく。PSPにはすでに搭載されており、プレイステーション 3でもサポートしていく」と解説。「いまの子ども達には生まれたときからゲーム機がある状態。しかしこれまでゲームとのつきあい方は考えてこなかった。教育の場にもゲーム機を活用してつきあい方を考えていきたいと思う。しかし、現状では教育現場にゲーム機なんてけしからんという風潮がある。そういった点では東京都と協力していきたい」と今後の抱負を述べた。
マイクロソフトの黒田氏は「Xbox 360にはCEROに基づいた視聴制限機能を導入しているが、保護者の認知度が向上することが重要」と、今後もアピールしていくという。そういった点ではゲームの制作時点から社内外に対して情報をいち早く入手し、アドバイスをしているという。さらにパッケージにレーティングのマークを入れるよう協力をソフトメーカーに働きかけており、業界として「わかりやすいパッケージ」を模索していきたいとコメントした。
協議会に参加した販売店側の立場として日本テレビゲーム商業組合の新谷理事長も「自主規制に積極的に取り組んでいる」とし、200店舗のデータと断わりながらも80%強が、商品の陳列の工夫、店頭でのレーティングの説明、ポスターの掲示のいずれかを行なっているといい、「100%に近づくようやっていきたい」とコメントした。
また、全国にTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブの横山氏は「1,800万人いるTSUTAYAの会員は、購入の際にポイントが蓄積されることから、70%の会員がレンタルの時だけでなく購入時にもカードを提示する。そのカードには年齢のデータも入っているため、そこで年齢の確認が可能となっている。100%徹底できているわけではないが、CESAのポスターなども掲示し近づけるよう努力している」と語った。東京都側はこれら販売店側のコメントに対して「自主規制は販売店の協力がなければできない」とし、よりいっそう徹底させて欲しいとの意向を示した。
この「表示図書類」の表示というのは、18歳未満には販売しないという意思表示を持った表記である。では、現行のCEROレーティングによる“18歳以上対象”という表記でいいのかという点について東京都は「いや、まずは『表示図書類』として認定した上での表示を行なって欲しい」との意向を示した。この点については「この場で決定するのではなく、業界としてどのように表示するのか検討して欲しい」と“宿題”を出した形となった。 東京都はさらに、長時間ゲームをプレイする事への不安感にも言及。一部出版社による「小学校高学年・中学生ユーザーが1日に2時間程度ゲームをプレイしている」というデータを引き合いに出し、「この年齢では、友達と遊んだり家族との会話は大切」とし、「取り組み方を考えられるか検討していく」と続けた。東京都 青少年・治安対策本部の舟本氏は最後に「初回と言うことで色々な意見を聞けて良かったと思う。提案を持ち帰って検討して欲しい」とコメントし締めくくった。
和田氏が「ゲーム業界は世の中に対するコミュニケーションを取ってこなかった」とするコメントはある意味正しく、ゲーム業界ではすでにオンライン・オフライン問わず、ゲームによるコミュニケーションの重要性について考えられているのに対し、都側の「ゲームは1人で遊ぶもの」という業界側とは食い違った見解が出されたことひとつをとっても興味深いと言える。CEROのレーティングについてアピールした業界側と、「表示図書類」による統一表記を提案した都側の接点は、これから議論と共に見いだされていくことと思われるが、今後も注目していきたい議論である。 (2005年10月19日) [Reported by 船津稔]
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