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★PSPゲームレビュー★
■ ハイクオリティなビジュアルと、ハイファイなサウンド
さて、実際にコースに出てみると、およそ携帯ハードらしからぬグラフィックエンジンを搭載したPSPだけに、グラフィックのクオリティはやはり圧倒的なものを感じさせてくれる。マシンのツヤツヤ感、コース上の路面の違い、山のてっぺんや海沿いで確認できる壮大なパノラマと、その景色が持つ情報量の膨大さ。たいていの場合、そのほとんどは高速ですっ飛んでいくので、いちいち確認しているゆとりもないのだが(風景を眺めたい人なら、タイムアタックでのんびりドライブするのもおすすめかと)。 このグラフィックを眺めている余裕もクラス3ぐらいまでではないだろうか。どんどん高速化し、ニトロ(後述)を使いこなせるようになってくると、ライバルマシンとの格闘、そしてコースとの格闘で周りが見えなくなってくるだろうから。 そしてサウンド。「リッジ」といえば伝統のテクノサウンドだが、本作もまた、「踊れる」ほどのクオリティである。ひとつひとつの音の作り込みや、音の位相を把握できるほどのハイファイなサウンドは、ATRAC3、MP3プレーヤーとしての顔を持つPSPの面目躍如といったところだろうか。すでにナムコを離れているクリエイターまでもが再集結し、新曲やリミックスを提供したという話は既報の記事に詳しいが、これまでのシリーズで使われた曲もオリジナルのままコンパイルされており、ファンには涙もののラインナップが揃っているというのが嬉しい。
個人的にはあの名曲「Grip」を再び聴けることと、サイケデリックトランスを彷彿とさせる新曲「Tek Trek」に狂喜乱舞している。また、新曲はディスコあり、ファンキーエレクトロ(ニカ)ありと、方向性も多彩でおもしろい。その筋のファンなら今時のテクノサウンドのショーケースとしても楽しめること請け合いである。
■全24コース、??車種のボリューム感
リニューアルされたコースは、基本的に初出タイトルのコースよりもコース幅が広くなっていたり、改善されているところがいくつか見受けられ、走りやすくなっているといえる。とはいえ、高次ツアーに登場するようなコースでは、マシンとのマッチングで初見ですんなり最後まで行けるかどうかは、コースレイアウトを読む嗅覚が必要であることは今までのシリーズと同様。仮想コースと仮想マシンならではのダイナミックなドライブが楽しめること請け合いである。
ハンドリング(ドリフト)のセッティングで「スタンダード」、「マイルド」、「ダイナミック」の3タイプが車種別に設定されているが、「スタンダード」はまさに標準。滑り出しもカウンターに対する応答も適度で、万人向けのセットになっている。刺激重視の人にはやはり「ダイナミック」がオススメ。ズルズルすべるマシンをどう押さえつけるか、1回のステアリング操作がタイムアップ/ダウンの結果に直結するシビアな乗り味といえる。「マイルド」はグリップ重視でコーナリングを楽しみたい人向け。かなり追い込んだ状態でやっとテールが滑り出すぐらいのセッティングになっている。後半ツアーでは「ダイナミック」が手に余るほどのハイスピードバトルになる。これを乗りこなせるかどうか、これから習熟していく楽しみもありそうだ。 また、ライバルカーの動きにも注目してみた。とにかくドリフトしまくってくれるし、ニトロも使ってくる。これが非常にいやらしい、というかなんというか。スタートして着実にランクアップしていこうとすると、鬼門となるコーナーには必ず彼らが待ち受けている。ベストラインをドリフトで潰された時には「コノヤロー!」といいたくなるぐらいの憎しみの感情が生まれてくるが、これがこのゲームの面白いところなので、本気にしないように。このあたりも「リッジ」っぽいな、と思わせる絶妙のさじ加減が味わえた。
というわけで、「ふーん。24コースで??種類ね」……それぐらいの気持ちでプレイを始めてみたものの、その数字の意味に気づくのに5時間ぐらいかかった。その時点で、コースはそこそこ見たものの、マシンはたったの16台しか所有していなかったのである。なぜか。それは本作のメインモードと呼べる「ワールドツアー」の仕様にある。 ■ じっくりと腰を据えるもよし、暇にあわせて遊ぶもよしの「ワールドツアー」モード
長いものでは、順調に規定順位でクリアしていったとしても、クリアまでに30分を要する。乱暴に平均して、ひとつのツアーをクリアする時間を20分と計算すると、確認できているだけのツアーをクリアするまでにおよそ半日かかる。一気に遊び込むことが困難なレースゲームで半日。文字にするとずいぶんあっさりしているが、これは結構とんでもないボリュームなのだ。 ツアーの中身を見てみると、これがまたよくできている。クラス1のコースではひたすら走れば規定順位をクリアしている、という感覚だろうが、先に進めば進むほど、リズムやテンポの異なるコースを巧妙にパッケージングしている。逆走(R)コースも序盤のツアーに登場するなど、仕掛けは十分。さらに、特定のコースを集めたツアーや、“あの”マシンとの対決などもてんこ盛りに用意されており、飽きさせずサービスしすぎ! といえる内容になっているのがまたいい。
■ レースゲームとしてのゲーム性を進化&深化させる「ニトロ」の存在
ニトロは最大3個まで溜めておくことができ、レース開始時、ニトロのゲージは3個のうちのひとつが半溜まり、といった状態である。このゲージをどう増やせばニトロを使えるようになるかというと、ドリフトである。高速でドリフト状態になればなるほどニトロのゲージが溜まり、そしてニトロを使うことで高速ドリフトが可能となり、ドリフトがニトロを、ニトロがドリフトを呼ぶ展開になるわけだ。 ポイントは、ニトロ使用中のドリフトではニトロゲージが増加せず、ニトロの使用時間が終わり、マシンが基本スペック以上のハイスピード領域をキープしている間にドリフト状態に入ること(アルティメットチャージ)。つまり、ストレートの先にきついコーナーが待っている場所などが、ニトロを使用するポイントとなる。その場所までにいかにニトロを溜め、コーナー入口でニトロの使用時間がきっちり終わるようにいかに組み立てていくか。そういうことを意識しながら走っていくのがまた楽しい(突き詰めるならやはりタイムアタックで、ということになるのだが)。 すべてがうまくいき、エンジンが聴いたこともないような回転音をさせているようなときに、ニトロは驚くほどモリモリ溜まる。進入速度とコーナーの長さや角度の相性によっては、1つのコーナーを曲がり終えた時点で、もうニトロゲージがひとつ溜まっていたりさえするほどだ。極めれば、狙ったコーナーのたびにニトロを使っていけば、使った分がそのまま戻ってくるんじゃないかという印象すらある。下りのややタイトなコーナーのニトロゲージの溜まりっぷりには1度注目してもらいたいもの。 マシンの性能ごとのドリフト使用開始ポイントや、コーナリング時のクリッピングポイント、コースの起伏の把握、速度ごとに異なるコースの傾向。「リッジ」で優秀なタイムを叩きだすために注意しなければならないポイントは多いが、そこにニトロの概念まで加わるのだからこれはたまらない。おそらく自分では極められないだろうとあきらめつつも、腕のいいプレーヤーだけが味わえるめくるめく高速感に、少しでも近づきたいという気持ちも捨てられない。極めればその先に「リッジ」の新たな境地が待っている。新システムのニトロとは、それほどのものなのである。タイムアタックが好きなプレーヤーなら、十分以上に期待していい。 さらに、今回は体験できなかったが、「ワイヤレスバトル」でのニトロの使いどころも考えていく必要も出てくるだろう。
通常のモードでのリプレイはセーブできるし、タイムアタックモードでは自分のゴーストデータをセーブできる仕様になっている。メモリースティック内に納められたデータは友達と交換したり、ネットワーク経由で配布することもできるだろう。知り合いとのタイムアタック合戦も盛り上がること間違いなしだ。 ■ あのコースが! あのサウンドが! あのゲーム性が! という実感
起伏に富んだ「レイジ」のコースを走る楽しさや、初代「リッジ」のコースの完成度の高さに驚愕し、クラスが上がり、速度が高まるにつれて同じコースでも難度が格段に上がっていく「リッジ」のゲーム性の神髄。そのすべてが不変のままに、いつもと同じかそれ以上の強烈なおもしろさとして僕を引き込んでいく。アクセルから手を放してしまいたくなるほどのスピード感、「だめだ! 死んだ!」というほどの豪快なジャンプ。疾走感あふれるBGMと、疾走感のカタマリのようなマシンと流れていく背景。「俺のレースゲーム脳が覚醒している!」と思わせる刺激と興奮。これが「リッジ」だ。これでこそ「リッジ」なんだと、何かに取り憑かれたかのように遊んでしまった。いやあ、面白い!
□ナムコのホームページ (2004年12月11日) [Reported by 平田 洋]
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