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★PCゲームレビュー★
ついに発売された「マイクロソフトフライトシミュレータ 2004 翼の創世紀」(以下、「翼の創世紀」)。最終回となる今回のレビューでは「空の表情」に注目していきたい。進化を続ける本作は、今まで以上の空の表現を可能にしているのである。 ■さまざまな表情を見せてくれる「空」
一日だけではなく、「一年」の変化も本作では体験することができる。設定により、好きな日時、好きな季節で飛ぶことができるのだが、夏と冬ではっきりと空の表情が変わっているところに注目して欲しい。空の色が全く違うのである。 空の色は太陽の光が空気にふれて生み出されるものだが、地表と空の温度によって光の屈折率が変わって変化する。この現象をきちんと再現しているのだ。四季によって変化する空の「高さ」、これをゲームでも目にすることができるのである。 フライトシミュレーターにとって重要なポイントである「雲」の表現も、クリエイターの強いこだわりを感じさせるものがある。冬に特に美しい高空の筋状の雲や、今にも降り出しそうな雨雲、山から立ち上ってくるかのようなガス、海上ならではの下の部分が水平になっている雲など、状況や季節によって変化するその形を非常にリアルに再現している。 雲、そしてそれを生み出すさまざまな自然現象が組合わさった「天候」を設定することで飛行はよりダイナミックなものになる。雲の量や、気温など非情に細かいカスタマイズもできるが、用意された“タイプ”から選択するのが簡単な方法だ。特に雷雨は必見である。稲妻の表現も本作のセールスポイントのひとつで、至近距離に落ちた時など大迫力で結構コワイ。また、風防に当たる雨や雪も本作でパワーアップした演出のひとつ。視点を横にして、流れていく雨滴で嵐の激しさも感じることができる。 天候を細かくカスタマイズすることで、よりリアルな“シナリオ”を作ることができる。天候の設定は気象台ごとにできるので、名古屋付近で発達している暴風圏を抜けて東京-大阪間を飛ぶ、といったものも作成できる。気象台による設定はちょっと手間もかかるが、史実の再現や、困難なフライトに挑戦したいプレーヤーには満足できる細かさだろう。 天候はフライトシミュレーターのシナリオによる大事な要素である。用意されたシナリオにも天候、さらに「雲」そのものにテーマを絞ったものがいくつかある。都市上空にあっという間に雲が集まり、積乱雲が形成されていくシナリオなどは、教育番組のビデオのようで、ちょっとした驚きをもたらしてくれる。 また、前回のレビューで触れた「嵐を呼ぶ女流作家」のシナリオは、ほとんどギャグレベルにまで飛行が困難な天候になっているので、風や霧の怖さを感じ取るにはオススメである。もちろん、既存のシナリオも時間や天候をアレンジすることでまったく違う飛行を体験できる。
■さらに多彩なアプローチを
歴史的機体の非力なエンジン、不安定な飛行に慣れた感覚では、ジェットエンジンで飛ぶ機体のスピード、上昇性能は、まさに驚異的なものだった。技術の進歩をはっきりと体感できたのである。 機体の違い、という点では「Extra 300S」がすさまじい。曲芸用に特化した飛行機で、宙返り、背面飛行が簡単にできる。以前、歴史上の機体であるジェニーで背面飛行を試み、どうしてもできず、「このゲームのフライトモデルでは曲芸はできないだろうか?」と密かに思っていたのだが、300Sの機動はそんな筆者の勘違いを吹き飛ばしてくれた。そして、あらためて操作性の悪いジェニーで演技をしたパイロット達のすごさを感じることになった。 筆者は毎年日本でも行なわれる飛行機のアクロバテック選手権「アエロバティックス」を、昨年はじめて見て、その大胆かつ繊細な演技に感動をした。与えられた時間内でテーマ音楽に乗って、小さな飛行機で「舞う」彼らの演技は、筆者の中の飛行の認識を大きく変えてくれた。 本作では、“インスタントリプレイ”もしくは、“フライトビデオ”という機能を使うことで、競技会でプロパイロット達が行なった「魅せる」飛行にも挑戦できるのである。宙返り、錐もみ落下、さらには空中停止など、普通の飛行機では難しい飛行演技も、この機体は可能にするポテンシャルを持っている。 管制塔を客席に見立てて、ショーを演出することもできる。もちろんちゃんとした演技をするには努力が必要となるが、本作は通常のフライトとは全く違う、こうした遊び方もフォローしているのである。また、飛行場所、天候、時間にこだわることで“最高の情景”のスクリーンショットの撮影にも挑戦可能だ。本作の自由度は、多少労力は必要となるが、プレーヤーの思うまま、さまざまなアプローチを可能にしているのである。 フライトシミュレータというのは、どうしてもマニアックな印象を受けがちのジャンルである。本作もまた、マニアのこだわりを満足させるような深い懐を持っている。しかし、アプローチ次第では初心者も充分楽しむことができる作品でもある。特に本作の美しくリアルなグラフィックは、多くの人を引きつける魅力を持っていると思う。空にあこがれを持っている人、世界の風景を楽しみたい人、色々な雲を眺めるのが好きな人……表現力の進化は、こういった人達にもアピールできるクオリティーを備えつつある。
アメリカにはよりマニアックなデバイスを販売しているところもあるのだが、「初心者がソフトと一緒に気軽に買える」という状況そのものがなくなりつつあるこの現状は、フライトシミュレータファンの筆者には、必要以上の危機感を抱いてしまう。 (C) 2003 Microsoft Corporation. All rights reserved.
□マイクロソフトのホームページ (2003年10月28日) [Reported by 勝田哲也]
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