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★PCゲームレビュー★

空の歴史と広々とした世界を体験できる
懐の大きなフライトシム
フライトシミュレータ 2004
翼の創世紀
レビュー第1回
  • ジャンル:フライトシミュレータ
  • 発売元:マイクロソフト株式会社
  • 価格:未定
  • 対応OS:PC Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:2003年10月発売予定


 「フライトシミュレータ 2004 翼の創世紀(以下、FS2004)」は、実際に空を飛んでいるパイロット達も愛用しているというフライトシミュレーターというゲームジャンルを代表する人気シリーズの最新作である。今回、レビューにあたり3回にわたって本作の魅力を紹介していきたい。
 最新のグラフィック、日本語化された膨大なテキスト、地形や各国のデータなど詳細な資料、これらによって作られた本作は非常に期待のもてる作品になっている。

 第1回目の今回は「飛ぶ」ということにテーマを絞って、ファーストインプレッション的なポイントをお伝えしていきたい。




■本物そのものの飛行訓練

雲や遠景の表現、見やすいGPSなど、グラフィック、インターフェイスは更なる進化を遂げている
 本作を立ち上げ、ゲームを始めるとそのあまりにすっきりしたデザインに驚かされることだろう。いわゆる「ゲーム」ではなく、どちらかというと教育ソフトや、電子図鑑のような、硬質なインターフェイスのウィンドウなのだ。

 “はじめに”、を選ぶとキング夫妻の笑顔が出迎えてくれる。かれらは世界中で飛行機訓練の教育用ビデオを作った人で、空を目指す人ならば誰もが彼らの姿を見ているとのことだ。

 「イントロフライト」という項目を選択すると、夫妻の丁寧な解説と共に、ゲームの説明が始まる。本作の特徴として「ビデオ教材の多用」がある。詳細なテキストと共に、ビデオを見ることで、マニュアルを読まなくてもフライトが楽しめる工夫がされている。キーの使い方、セスナ機の基本的な操縦法……これらを頭に入れたらいよいよゲームスタート。テキストと資料を参照してから、スムースにゲームに移行できるように工夫がされている。

 いよいよフライトである。講演家であり、教官、さらにはユーモア作家としての一面を持つロッド・マチャド氏を隣に乗せてセスナで空に飛び立つ。時にロッド氏に操縦をしてもらい、助言を受けながらのフライトになる。

 デフォルトのフライトモデルはかなり簡単に設定されていて、初心者でも楽に飛行ができるようになっている。もちろんオプションを調整することでよりリアルなフライトが楽しめるが、ひとつひとつ指導を受けての最初のフライトはそれなりの緊張感もあって、楽しい。特に着陸訓練は非常に緊張する。ロッド氏の「お疲れさまでした」を聞いて、息をついてジョイスティックを離す瞬間などは、とてもリアルな感触だ。

 キング夫妻やロッド氏など、彼らのメッセージは見事に翻訳され、吹き替えが行なわれている。「いかにも」な声優さんを使っているのがポイント。キング夫妻の説明に頷き、画面を見ながら、ロッド氏の声で慎重に操縦する、彼らの声は実に自然で耳に入りやすい。

 助言に従いながら飛行をする感触は新鮮で、ひとつクリアするたびにちょっとした安心感が生まれるのがおもしろい。筆者はこのままいくつかのフライングレッスンも体験してみた。フライングレッスンの項目は、非常に細かい。そしてプレイをしてみて気がつくのである。ゲームにしてはあまりに本格的である、そう、このソフトは実際の空を飛ぶための「教材」という側面も持っているのだ。

 ただ単に飛ぶというならば、基本だけで充分だ。しかし、こういった「本物」の感触を味わえるソフトというのは少なく、それが本シリーズの大きな魅力なのである。実際空を目指す人々、飛行機を操縦する人達にも評価が高く、「予習・復習」を可能にする。この本格的な訓練スタイルは、実際には飛行機を操縦するチャンスをもてない人にも非常に魅力的だ。また、事業用操縦士、つまり職業パイロットの訓練も追体験できる。限られた人しかなれない、あこがれの職業の感覚を味わうことができるのである。

 こういった、「本物の感触」は、シリーズを通して非常に大切にされているものである。最新作である本作は、そこからさらにインターフェイス面で進化しており、説明を見てそのままゲーム画面に移行できる。今作はテキストもHtmlで作成されており、閲覧しやすい。

【スクリーンショット】
まずプレーヤーを迎えてくれるのはジョン・キング、マーサ・キング夫妻 夫妻出演のビデオによる説明。他にもさまざまなビデオ教材がある ロッド・マチャド氏によるフライトレッスン。彼の軽妙な語りも見事に日本語化されている
ロッド氏を横に乗せての訓練飛行。ちょっと肩に力が入ってしまうのが面白い感覚だ ランディングアプローチ。セスナ機なので難易度は高くないが、非常に緊張する ひとつの訓練が終わると認定書がもらえる。より高度な訓練も用意されている



■世界中を飛び回ってみよう!

 本格的な「訓練」が楽しめる本作ではあるが、ただ単純に、「空の散歩」を楽しむことも、もちろんできる。特に今作はこの部分が非常に楽しいことを強調したい。
 なにしろ、本当に世界中のマップがこのソフトには入っているのだ。アメリカ、ヨーロッパ、インド、オーストラリア、南極ですら地形データに入っている。

 シリーズの最新作に期待される一番のポイントはやはりグラフィックである。本作は特に雲と地表にこだわっており、その描写は非常に美しく、飛んでいるとき周りを見回すのがとても楽しい。低空では、都市部のモデリングはもちろん、地方都市もビルなどが立っているのがうれしい。世界の大きな都市にはその土地ならではの「ランドマーク」があり、それを見つけていく楽しさもある。

 世界中を網羅している本作だが、自分の住んでるところ、あるいは故郷といった「地元上空」を飛ぶ、ということをやってしまうユーザーは多いのではないだろうか? 本作はGPSデータをベースに、さらにランドマークの設定されている大都市名所に関しては航空写真を元にマップをおこしており、日本も非常に詳細に描画されているという印象を受けた。また、今までのシリーズに比べて建物を配置しているところが多く、これはさすがにその土地ならではとか、実物のものではないのだが、飛んでいるときのいいアクセントになる。

 筆者は千葉の田舎の出身なのだが、海岸線の描写が“それっぽく”見えて、感心させられた。地元の近くの、海から大きく水を取り込んでいる場所が、きちんと描写されているのだ。しかし、南側にちょっと大きな都市部があって、これはちょっと違和感を覚えた(筆者の住んでいる方が発展しているはず、とかいうひいき目もあるが)。ある程度のデフォルメも行なわれているようだが、こういった現実との違いを確認しようとしたくなるほど、詳細に作られているのである。一度旅行したところ、思い出の場所などもチェックすると楽しいだろう。

 こういった飛行を助けてくれるのが「GPS」である。本作のそれは、感覚的には車に搭載されているものに近く、今飛んでいる場所を地形まで含めた形でグラフィカルに表現してくれる。実際の地図を手元に持っていれば照らし合わすことも容易で、名所見物にかかせないアイテムだろう。また、出発点と目的地を設定しておけば、計器よりもずっとわかりやすい進路指示アイテムとなってくれるため、計器を見るよりずっと楽に飛べる。

 観光飛行をするなら、セスナかヘリがやはりオススメ。ジェット機は速すぎて低空を飛ぶのは少し難しい。もちろん、高空から眺める地表が好き、という方には旅客機はまさにそういった視点が楽しめるようになっている。

 セスナやヘリの特徴は「スピードの遅さ」であるが、これは利点とともに、欠点でもある。例えば富士山の周りを飛びたいのに、そこに向かってえんえん飛び続けなくてはならなかったりする場合ちょっと退屈だ。もちろん、その「間」こそ飛行の味であるのだが、「ゲーム」として楽しむ方法もある、それがシミュレーション速度の変更である。なんと64倍速以上にまでできる。ここまで早くしてしまうと多少難しいが、8~16倍速のセスナの運転は非常にユニーク、ビデオの早回しのように地形が吹っ飛んでいく。目的地に近づいたら、速度を戻し、ゆっくり観光を行なえばいい。

 この倍速飛行が非常に爽快で、操作感も「ゲーム」的で楽しい。ローマを飛んでいるとき、ふとした気まぐれでギリシアのアテネまで足を伸ばす、ということができるのだ。沖縄一周もほんの数分、日本の海岸線を気ままに飛び続けたりするときや、ヨーロッパの名所巡りなどでも有効に使えるだろう。前作までは倍速をしてしまうと、「飛行」するのではなく、場所移動といったものになってしまっていたが、今作の倍速移動はとても快適で、面白い。

 燃料を無制限に、フライトモデルを簡単にしておけば、いささか現実離れした「世界めぐり」も可能になる。マニアックなイメージが伴いがちの本シリーズだが、旅行を趣味にする人や、世界の名所を扱ったテレビ番組が好きな人など、フライトシミュレータ初心者にもふれてもらいたい作品だ。非常に細かく作られた「ガイドマップ」ととらえてもらってもかまわない。これほどのクオリティーで世界中を散歩できるゲームは、他にはないのだから。


【スクリーンショット】
東京上空をヘリで。目の前に見えるのは新宿。特徴的な建物を再現している 沖縄を観光飛行。GPSを使えば、自分がどこを飛んでるかが直感的にわかる 朝日を受ける富士山。より綺麗なスクリーンショットを撮りたいと思わせるグラフィック
夜の大阪上空。街の明かりが雲間から。福岡-東京間の飛行中にて 冬の函館。時刻だけではなく、四季でもテクスチャーは変化する 空港選択画面。日本だけでも127の空港に対応。成田のモデリングは非常に詳細だ
イタリア・ローマ市内のコロッセオ。様々な国のランドマークを探すのも楽しい 夕闇の香港。ビルの明かりが非常に綺麗だ。ビルの林を通り抜けることもできる グランドキャニオン。下の方に降りたら、谷の上に出るのにちょっと苦労してしまった
シドニー。世界各地の都市の「顔」の違いを見比べることも可能 ギリシア・アテネ沖には豪華客船が。カリブ海を運航するセンチュリー号だろう アフリカ上空を倍速飛行で。広大な土地を快適に飛び抜けるのは独特の楽しさだ

 筆者は個人的に「フライトシミュレータ」というゲームジャンルが好きで、何本かプレイしたことがあるのだが、「アメリカ製のゲームは地表が茶色い」というのが、ちょっとした不満であり、疑問であった。前作もさわらせてもらったことがあるのだが、日本がやたら茶色くて、びっくりした記憶がある。

 その筆者の疑問が、アメリカに行ったときに氷解したのである。旅客機の窓から見える大地は一面の茶色。日本の感覚の、「地表が緑」というものとは、まったく違う「お国柄」だったのである。アメリカで、陸地の印象、基本となるテクスチャーは、茶色なのだ。
 今作の日本のテクスチャーは緑が多く、より詳細でリアルなものが張られている。地元周辺を飛んでちょっと確認したくなる、今まで以上にその行動が楽しい作品である。

 今回はあえて「とりあえず飛んでみる」ということにテーマを絞って紹介をしてみた。次回のレビューでは、本作のメインテーマであり、アメリカの航空史を振り返る「翼の創世紀」にスポットを当ててお送りしていきたい。

(C) 2003 Microsoft Corporation. All rights reserved.


【フライトシミュレータ 2004 翼の創世紀】
  • CPU:Pentium 4 1.4GHz以上(最低 Pentium III 800MHz以上)
  • メモリ:256MB以上(最低128MB以上)
  • HDD:インストール時:4GB以上 実行時:400MB以上
  • ビデオカード:VRAM 16MB以上(32MB推奨)


□マイクロソフトのホームページ
http://game.watch.impress.co.jp/
□マイクロソフトのPCゲームのページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「Flight Simulator 2004 翼の創世紀」のページ
http://www.microsoft.com/japan/games/fs2004/
□関連情報
【2003年7月30日】マイクロソフト、「Flight Simulator 2004 翼の創世紀」記者発表会を開催
日本語版の魅力や動作環境などを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030811/fs2004.htm
【2003年7月30日】マイクロソフト、「Flight Simulator 2004 翼の創世紀」を10月発売
歴史的名機と現代機計25機を揃えたフライトシムの決定版
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030730/fs2004.htm
【2003年5月15日】Microsoftブースレポート 鉄道シムの極致「Train Simulator2」、渾身の力作「Flight Simulator 2004」詳報
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030515/e3_ms2.htm
【2003年2月13日】米Microsoft、「Flight Simulator: A Century of Flight」を正式発表
ライト兄弟機からボーイングまで20世紀の名機を盛り込んだFSシリーズ最新作
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030213/fscof.htm

(2003年9月4日)

[Reported by 勝田哲也]


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