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★PCゲームレビュー★
第3回目となる「マイクロソフトフライトシミュレータ 2004 翼の創世紀 」(以下、「翼の創世紀」)のレビュー。今回はゲームのタイトルイメージにも使われている旅客機DC-3のフライトを中心に、「シナリオ」の魅力について紹介していきたい。 本作は、さまざまな歴史的飛行に加えて、バックストーリーを絡めたシナリオにより想像力を刺激する飛行が楽しめる工夫がされているのである。 ■DC-3でのロッキー山脈越え
シナリオではこの機体を操り、デンバーからソルトレイクシティーまでの航路を飛行することになる。ゲーム的には7つのセッションに分かれていて、空港から空港へと飛んでいくこととなる。セッションによって15分という短いものから、1時間以上かかるものまでさまざまだ。 ソルトレイクシティーまでの空路は、ロッキー山脈を越える困難で「高い」ルートである。スタート地点のデンバーで既に海抜5,000フィート、ここからさらに高い山を越えるために充分な上昇をする必要があり、空港へと向かう道筋は、高度の確保も重要なファクターとなる。 シナリオをスタートすると、コクピットから地上が全く見えないことにまず驚かされる。前輪が大きく高い機体のため、着陸中の機体は上を見上げている形になっているのだ。この時代の機体には珍しくない姿勢ではあるが、滑走路まで移動するタキシングが難しい。乗客を21名も運べる重い大型機であることも要因のひとつだ。 視界不良で滑走路になかなかうまくたどり着けない場合は、GPSを使ったフライトプランを設定する際に、“空港に移動する”というオプションを選択するといい。こうすることで空港での滑走路までのタキシング作業をカットして、即滑走路上からフライトが可能になる。 さて、いよいよフライト開始だ。離陸距離を縮めるために、フラップを下げておくことを忘れない。上昇してから降着輪と、フラップを上げる。このゲームを始めてから、ライト・フライヤーや、スピリット・オブ・セントルイス、現用機でもセスナに主に乗っていたので、「ウィーン」という作動音につづき「ガッコン」と車輪が収納されるこの感触は久し振りで、この機体に込められた“新技術”を再認識させられた。 ロッキー山脈に近いこのルートは、山という大きな障害物があることはもちろんだが、気流も激しく、機体は常時がくがく揺さぶられる。機体は鈍重で上昇性能は高いとは言えないため、山肌からきちんと離れた高度とコースを通るようにする。 もうひとつ、プレイをする上で気をつけたい部分がある。それは機体の安定性だ。今までのフライトとちがい、今回は旅客機、しかもスチュワーデスは機内で立ってサービスを行なっているのである。さらに航空産業はまだ始まったばかりで、「飛ぶ」ということ自体はじめての客が多いはずである。彼らに不安を与えてはいけない。無理な旋回をしないように、緩やかな操縦にもこだわってみた。 このフライトでは、山岳地ならではの風景がたのしめる。谷間からわき上がる雲などは、山登りの人達が使う「ガスってる」という表現そのままで、あらためて本作の表現の細かさに感心させられた。山岳地なだけに雲が多く、雷雲のすぐ横を飛んだり、雲を突き抜けると、盆地が広がっていたりと、「雲との関わり合い」も多い。また、湖や、植物、小さな街など地上の表情も刻々と移り変わり、飛行の良いアクセントとなってくれる。 空港間のフライトは、現代の利器であるGPSが頼りになる。コースには意外に空港が多いため、きちんと把握しないと間違ったところに着陸しかねないし、特に初めてのフライトでは近くまで行かないと滑走路の向きもわからない。GPSを使用し、フライトプランを組んでおけば、正しい空港に正しい進入角で滑走路へ進入できる。空港の「高度」も大事だ。これをきちんと頭に入れておかないと、安全な着陸ができない。 これだけ準備をしていても、着陸は一苦労だった。DC-3はその機体重量のためか、とにかく止まってくれないのである。ブレーキを必死になってかけても、どんどん走っていってしまう。それに加えて、着陸する空港が小さい場合も多いのだ。特に最初の着陸地点である「ブエプロ」が大変で、かなりオーバーランして止まるという、職業パイロットとしては失格のフライトをしてしまった。 もっとも、初フライトでいきなり商業飛行という筆者のプレイに問題があるわけで、きちんと「定期便」を気取るならば、何度も飛行をして、練習を積むべきなのだ。滑走路の位置や、距離、安定した着陸速度などをきちんと把握することで、「プロパイロット」らしいプレイが可能になる、というものだろう。
■多彩な条件下で、フライトを楽しもう
リンドバーグの大西洋横断に象徴されるような「冒険」的フライトもいくつも収録されていて、ヴェガを使ったフライトでは、世界一周にまで挑戦できる。このフライトは挑戦するのにも相当な覚悟が必要となるだろう。 定期便的なフライトも数多く収録されていて、先ほど取り上げたDC-3以外にも、郵便飛行や、定期便を操縦する「職業パイロット」になる事ができる。航路や機体だけでなく、乗せる乗客も考慮に入れた飛行を心がけるのだ。 これら歴史的飛行の中で、最も“破天荒”なのがパイパーカブでのアメリカ横断だ。史実的には墜落、修理を繰り返すまさに「大冒険」にふさわしい過酷なもので、ゲームではさすがにそれは再現できないが、わずか3時間足らずで燃料がつきてしまうこのカブでの飛行は、スリリングでありながらどこか牧歌的な「冒険飛行」が楽しめる。次の着陸地点を探しながら、地表近くをゆっくり飛行、夕暮れと共に地上に止まり、夜明けと共にひたすら西を目指して再び飛び続けるのである。 このシナリオでは、驚くべき事に燃料の補給は飛行場に限る必要もない、という設定になっている。この飛行を成功させたカルブレイト・ロジャースは大きな農場に突然降り立ち、驚いている農場主に交渉をして飛行機の燃料を入手して旅を続けたのだ。それをまねて郊外のなだらかな場所を見つけたら、着陸をして燃料を補給すればいい。言葉も通じない未開の土地を飛ぶのとは少し違う、アメリカならではの冒険。それを再現した設定なのである。 歴史的なフライト以外にも、現代のフライト用にも多彩なシナリオが用意されている。エジプトのピラミッドやグランドキャニオンなど特徴的な場所を飛ぶものから、エアラインのパイロットになりきってフライトするもの、休暇に自家用飛行機でハワイを楽しむ、といったさまざまなシチュエーションのシナリオが用意されている。ヘリコプターや、水上飛行機でのプレイも楽しむことができる。 筆者がオススメしたいのはヘリコプターでのヒマラヤでのフライト。山の峰は険しく、ヘリコプターは薄い空気のため上昇が困難で、緊張感を持った飛行となる。木が生い茂るところから、いきなり雪がかぶり、植物層が途絶える険しい山肌へ変わっていく景観は非常に見応えがある。この景色は、平地のみならず、ロッキー山脈とも全く違い、本作の地形表現の多彩さも感じることのできるフライトである。 ユニークなものでは「女流推理作家」の専属パイロット、というものがある。彼女を乗せてサイン会や取材に赴く、というものなのだが、何故か難易度設定が「高」に設定されている。プレイをしてみて納得できるのだが、この推理作家さん、まさに「最悪」の飛行条件の中、フライトさせるのだ。外は大雨の上霧が濃く、GPSや計器を頼りにしなくては飛行ができず、着陸の時は滑走路や飛行場の明かりなど、ほとんど見えない。さらに帰路には「夜」という条件が加わるのだ。
彼女のイベントがある日はことごとく悪天候で、「雨女」は、本当に飛行機に合わないということをしみじみ感じさせるフライトである。プレイをすると、彼女が専属パイロットを使う意味がわかる。商業飛行機は、この状況では欠航しているに違いないからだ。
また、ソフトが発売された後は、ユーザーがシナリオを作り、ネットにアップすることも可能になる。ユニークなシナリオは、フライトをより面白くさせる有効なスパイスになってくれる。良質なシナリオの登場にも期待したい。 (C) 2003 Microsoft Corporation. All rights reserved.
□マイクロソフトのホームページ (2003年10月15日) [Reported by 勝田哲也]
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