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PlayStation Meeting 2003詳報タイトル収穫期に入り出荷本数の好調な伸びの反面に課題も |
SCEJの竹野史哉プレジデント。シェアの拡大、好調な出荷本数の伸びを見せる反面でビッグヒットタイトルの減少や、ジャンルの偏り、出荷時期の集中による機会損失の発生など今後の課題を提起 |
競合機とのマーケットシェアについて、プレイステーション 2は米国市場で約50%、欧州市場では約60%のシェアを確保しているという。これらふたつの市場では、いまだにプレイステーションが第2のプラットホームとして健在であり、それを加えたPSファミリーとしてのシェアはさらに大きいと説明された。また、日本市場はプレイステーション 2への移行が顕著でプレイステーション 2のシェアは80%にもおよび、家庭用ゲーム機市場において極めて安定したNo.1の地位を獲得していると分析した。
こうした圧倒的なシェアを背景に、ソフトビジネスが一昨年から爆発的に拡大を続けており、プレイステーション 2対応タイトルは、昨年全世界で1億9,000万枚を出荷したことを発表。これは前年比で50%増を超える勢い。「2003年度はさらなる収穫の年と考え、皆様と一緒にさらなる出荷本数の拡大を図っていきたい」とコメントした。
国内市場では今年2月に投入されたカラーバリエーションモデルの好評について触れられた。このカラーバリエーションモデルは、季節的に販売が厳しい時期にもかかわらず、前年比を超える売り上げに貢献したのに加え、女性ユーザーの拡大にも繋がっているという興味深いデータも示された。カラーバリエーションモデル以前の女性ユーザー比率は全体で13%だが、Sakuraは34%、Aquaは17%、Silverが11%とSakuraの女性からの圧倒的な支持の高さがうかがえる。またカラーごとに特定年齢層への訴求力もあり、今後もこうしたカラーバリエーションモデルのタイムリーな投入を検討していることを明らかにしている。
一方でソフトウェアについては「ここにいる皆様と課題を共有したい」と、問題意識を見せた。提示された資料のひとつは、プレイステーションの発売から3年目にあたる'97年度と、プレイステーション 2の昨年度の出荷タイトルのなかで、50万本以上の出荷を行なったタイトル数を比較したデータ。ビックヒットの目安ともいえる100万本を超えるタイトルが8本から2本へと減少していることを挙げた。また、オリジナルタイトルでのビッグヒットが減少していることについても指摘されている。
ふたつめの課題はジャンルの偏りについて。'98年度と昨年度で30万本を超える出荷を達成したタイトルをジャンル別に分類したデータが提示された。パズル、リズムアクション、レース、ボードといったいわゆるPSが作り上げたジャンルが縮小していることに加え、日本市場の核となるRPGの縮小傾向を見せている。この点について、安定しているジャンルに集中しすぎる傾向があるのではないかと分析し、今後ますます増えるライトユーザーへ対し、シンプルでわかりやすい家庭用ゲームの必要性を訴えた。いっぽう、北米および欧州市場においては、映画などと融合するアクションシューティングや、ドライビングアクションといったジャンルが3倍から5倍の拡大をみせている。
また、タイトルリリースのタイミングに関しても課題が提示された。提示されたデータは四半期ごとの国内タイトル生産枚数の推移。2003年度の第三、第四四半期にはビッグタイトルが多く控えているとは言え、過剰な集中によってメーカー、流通、そしてユーザーのすべてに機会損失が生まれる可能性について指摘し、来期以降にも影響を与えかねない深刻な問題である認識していると説明した。ユーザーの購買力、販売店店頭のキャパシティを考慮した平準化の促進をうながすとともに、SCEJサイドからも年間を通じたメリハリのある編成を提案するとともに、月単位あるいは週単位での再編成を依頼する方向になるという。
■ まったくの新作を含め、注目の5タイトルをプレゼンテーション
今秋以降に出荷される注目タイトルは、タイトル数が膨大なためスライドで一気にタイトル名のみが紹介されていたが、それらのなかから特に5タイトルについては、クリエイターを招いたプレゼンテーションが行なわれた。
カプコンの常務執行役員で第一開発部部長の船水紀孝氏。「バイオハザード アウトブレイクは、東京ゲームショウにプレイアブルで出展。11月下旬の出荷を目指す |
デモプレイは同社の4名のスタッフが同時にプレイ。シナリオは、ラクーンシティにあるバーに居合わせた一般市民にゾンビが襲いかかるもの。この模様が各プレーヤーごとの視点で映し出されていた。船水氏によれば「バイオハザード アウトブレイク」には当初5本のシナリオが用意されており、それぞれが1時間から1時間30分程度を要するという。オンライン・オフライン両対応のタイトルだが、オンラインでプレイをしてもそれほど時間に拘束されないゲームをめざしていることが説明された。同タイトルは9月に開催される東京ゲームショウにプレイアブル出展され、現在のところ11月下旬の出荷を目指している。
ポリフォニーデジタルの山内一典代表取締役社長。いまから3カ月後ぐらい、秋頃には新しいチャレンジをみせられるとコメント。時期的に東京モーターショーが有力か? |
操作はアナログスティックをふたつだけ利用する単純なものになるようだ。藤田氏は「われわれは比較的コンパクトなプロジェクトで開発をしています。こんなシンプルなゲームが、明日の業界を担っていくくらいの気概で制作をしているので期待してください」とコメントしていた。
ナムコのCTクリエーターグループ、藤田光成氏。「塊魂(かたまりだましい)」はこの日発表された新作。アナログスティックでの簡単な操作と、単純なルールでライトユーザーの獲得を目指す。こんなシンプルなゲームが、明日のゲーム業界を担うという気概で制作中とのこと |
コーエーからはゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ氏が登壇。コーエーは25周年、また信長の野望もシリーズ20周年を迎え6月には同社初のMMORPG「信長の野望オンライン」もスタートしている。現在は6万本ほど出荷しているそうだが、今期末となる2004年3月までには10万本ほどに達するペースでユーザーが増加しているという。同氏も連日連夜戦国の世に降り立ち、ざっと250時間ほどはプレイしているそうだ。
同氏からのビッグニュースは、ユーザーからの要望がもっとも大きかったという、無双シリーズの戦国版といえる「戦国無双」の開発表明である。同席した杉山芳樹プロデューサーは「戦国無双の舞台は、戦国の世です。その世界で侍、忍者、くの一として、またお馴染みの有名武将となって、一騎当千の爽快感を味わっていただけるようになっています。ゲームの中では桶狭間、川中島といった有名な戦、そして安土城のなかなどさまざまな城のなかで繰り広げられる場内戦闘など、『三國無双』とはひと味違う和風の楽しみと戦いの舞台を提供します」とタイトルを紹介した。この日に公開されたのはタイトルロゴのみ。来年3月の発売を予定しているという。
コーエーのシブサワ・コウゼネラルプロデュサー(左写真)と、杉山芳樹プロデューサー (中央写真)。「三國無双」の戦国版とも言うべき「戦国無双」の開発を発表。この日公開されたのはタイトルロゴだけだが「侍や、忍者、くの一、あるいは有名な戦国武将となって、有名な合戦や城内戦闘など、新しい戦いの舞台を提供します」とのこと |
スクウェア・エニックス松野泰己氏。シリーズ12作目になる「Final Fantasy XII」の制作を発表。時期的には、今秋のあるタイミングで物語やキャラクタを公開するとのこと。“これがFinal Fantasyシリーズなの?”と疑問を持たれるような、新しさをキーワードにゲームを構築しているという |
そして、「開発チームにはXやXIのスタッフがいるものの、私(松野氏)自身はプレイステーション 2でタイトルを制作するのは初めてになります。ただ、XやXIに負けない技術やグラフィックを駆使して、いいタイトルを作ろうと努力しています。Final Fantasyシリーズにはファンの皆さんそれぞれの解釈があると思いますが、12本目を迎えた今回は“これがFinal Fantasyシリーズなの?”と疑問をもたれるかも知れません。そんな新しさをキーワードに、ゲームを構築しています」とコメントした。
□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.scei.co.jp/
□プレイステーションのページ
http://www.playstation.jp/
□関連情報
【7月29日】PSPは2004年のE3で公開。出荷は2004年暮れを予定
無線LAN、アナログスティック搭載はクリエイターの強い要望で搭載
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030729/psp.htm
【7月29日】「PlayStation Awards 2003」最も売れたソフトを表彰
ダブルプラチナプライズは「FINAL FANTASY X-2」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030729/psawa.htm
【7月29日】SCEJ、PlayStation Meeting 2003開催
PSPに無線LAN搭載、プレイステーション 2「Final Fantasy XII」など発表相次ぐ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030729/scej.htm
(2003年7月30日)
[Reported and Photo by 矢作晃 / Photo by 船津稔]
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