AOU2002 アミューズメント・エキスポ
「GUNDAM PILOT ACADEMY(仮称)」体験レポート
~GPAはWindows XPベースで動いていた!~

2月22日~23日 開催

会場:幕張メッセ

 「AOU2002 アミューズメント・エキスポ」バンプレストブースの一角で、ひときわ人だかりが目に付くコーナーがあった。そのお目当ては「GUNDAM PILOT ACADEMY(GPA)」だ。


■ ガンダムシミュレータ登場

ブース内のGPA展示コーナーにはゲームファン、ガンダムファンの両方が詰めかけて周辺は常に大混雑という状況になっていた
 今さら説明の必要はないとは思うが念のため。「機動戦士ガンダム」は、20年以上前に放送された巨大ロボットもののテレビアニメだ。宇宙文明が開化したばかりの近未来を舞台に、ふたつの主義主張を持った勢力同士が戦争を行うという、それまでの子供向けアニメではあり得なかったようなリアリティ溢れるストーリー展開とキャラクタ像が人気を博し、空前のヒットとなった。最近ではテレビアニメというよりは「日本が世界に誇るSF作品」的な捉え方がなされており、最初に放映されてから20年以上が過ぎた現在では「2世代に渡ってガンダムファン」という家庭も珍しくないようだ。

 非常に根強い人気のある「機動戦士ガンダム」は、当然の事ながらこれまで様々な形でゲーム化されており、中にはゲームとしてかなりの良作も存在する。最近では、ストリートファイターII以来の対戦ブームをゲームセンターに呼び込んだアーケードゲーム「機動戦士ガンダム 連邦 VS ジオン」を挙げることができるだろう。

 今回展示されたGPAも、機動戦士ガンダムをゲーム化したもの…と捉えてかまわない。しかし、ガンダムゲーム史上もっとも巨大なシステムを使ったものであり、また「本格的なガンダム操縦シミュレータ」という前情報までもが流れたために、非常に注目度の高い作品となっている。


■ GPAを体験したゾ!

 まず初めにお断りしておきたいのが「今回展示されたGPAはあくまでプロトタイプであり、実際の製品ではどのようになるか全く分からない」ということだ。以下は、そのプロトタイプに関しての情報であり、本稿はガンダムを知らないと理解しづらい“ガンダム用語”が平然と使われている点、あらかじめご容赦いただきたい。

 まず、GPAは4人乗りで、丁度4人乗り自動車のように前列後列2人ずつ搭乗する形態を取る。前列の2人がゲーム進行に関わる操作をし、後列2人は前列2人がプレイしているゲームの映像を楽しむだけの見学者となる。このままで4人とも同じ料金にしたら、ちょっと問題がありそうな気もするが……。

 前列2人のプレーヤーのうち、ひとりが操縦系操作、もうひとりが射撃系操作を行なう。
 「操縦系と射撃系のふたりの搭乗員で操縦するということは、ガンタンク(ガンダムの支援メカ)のシミュレータなのか」という「通」なツッコミが殺到しそうだが、これは現時点における「ゲーム的解釈」ということで、このようになっているらしい。ゲーム設定上プレーヤーが操縦するのは「ガンタンクではなくてガンダム」となっているので安心して(?)欲しい。

 ゲームは、モビルスーツ(ガンダムの世界でいうところの巨大人型機動兵器のこと)の母艦となっているホワイトベースのカタパルトデッキ内からスタートする。視点は一人称……というかコクピット視点で固定だ。
 セイラ・マスが搭乗するコアブースター、カイ・シデンが搭乗するガンキャノンそれぞれの発進を見届け、気持ちの高ぶりが頂点に達したところでプレーヤーが搭乗するガンダムの発進となる。

 舞台は地球上、それも地球連邦軍本部がある南米大陸ジャブロー上空。空に飛び出したガンダムを待ち受けるのは、ガウ攻撃型空母と小型戦闘機ドップの大軍だ。
 プレーヤーは敵空中戦隊の攻撃を避けつつ、飛び回るドップに対して攻撃を仕掛けなければならない。基本的な機体制御は、発進時から全てオートパイロット(ゲームシステム的にいいかえるならば強制スクロール)で行なわれる。

 敵の攻撃が目前に迫ると、警報と共に画面上に表示されるのが方向マーカー。このとき操縦系プレーヤーは一定時間以内にレバーを表示された方向に入力しないとミスになる。表示される方向マーカーは、ゲーム中の映像にシンクロした形で「それっぽい」方向に表示される。たとえば正面から飛んできたミサイルに対しては“『左右』のどちらかに移動して回避せよ”というようにだ。

 回避したあとは赤い十字の照準マーカーが表示され、この瞬間から操作は射撃系プレーヤーに委ねられる。一定時間内に操縦桿上のトリガーを押すことが出来れば、ガンダムの頭部バルカンが発射されて敵に命中する。頭部バルカンは射軸固定武装なので操縦桿の方向入力は不要だ。

ホワイトベース登場 これがリアルタイム3Dグラフィックスというのだから驚きだ ホワイトベースのカタパルトデッキ内に横たわるガンダム
セイラさんが乗るコアブースターの発進を見送るプレーヤー ドップ襲来!! 赤い照準が表示されたらバルカン発射

 ドップとの空中戦が終わると、プレーヤー達が乗るガンダムは地上に着地。舞台は密林へと移り、視界の悪い中での作戦が開始される。
 ガンダムは着地するなり歩行を開始するが、ここも強制スクロール。操縦系プレーヤーがやるべきことはない。ちょっと残念だ。
 その直後には、突然目前の視界をザクが遮り、ヒートホーク(斧状の接近戦用武器)を振りかざして迫ってくる。この時も画面にはマーカーが表示されるので、操縦系プレーヤーはこれに反応して一定時間内に操縦桿のボタンを押さなければならない。うまく反応できれば、ガンダムは盾を構えてヒートホークによる打撃を受け流してくれる。入力が間に合わないと直撃を受けてミスとなる。

 奇襲を仕掛けてきたザクは、バーニアをふかしつつ後退ジャンプで離脱行動に転じる。この時、警報と共に白い照準マーカーが画面に表示され、今度は操作系統が射撃系プレーヤーに移る。白い照準マーカーはガンダムが右手に持つビームライフルの射軸を表しており、射撃系プレイヤーは操縦桿を操作して、一定時間内に逃げるザクにこの照準マーカーを合わせなければならない。照準が大体合ったら一回トリガを引いてロックオン、もう一回トリガを引くことでビームが発射される。一定時間内に射撃できれば撃破、失敗すればまんまと逃げられてしまったことになる。

 舞台はジャングルからジャブロー基地内へと移り、ここで数回のイベント発生後「TO BE CONTINUED」のメッセージを表示して強制終了される。開発途中バージョンのため、ゲームはここまでなのだ。

 さて……このゲームの流れを聞いて「ジャブローにおける戦闘で、そんなシーンはないよね」と語り始めるガンダムファンもいることだろう。GPAは設定的には「(ガンダムの物語の舞台となった)連邦対ジオンによる1年戦争集結後、ガンダムの戦闘データを元にパイロット育成用のシミュレータが作られた……」ということになっており、本編とはストーリー的には関係がないものになっているのだ。

ガンキャノンと共に密林への着地を試みる 木々達はテクスチャではなく全て個別にモデリングされて配置されていた。着地の時ちょっとフレームレートが落ちるが、リアルタイム3Dグラフィックスの証でもある 密林で次の作戦行動を支持してくれるジム。密林にジム。これが本当のジャングルジムとかいっている場合ではない
ザクがヒートホークを振りかざす 逃げるザクを打ち落とせ!! ビームライフルがザクに命中。「一撃で撃破か。一撃でか。連邦軍のモビルスーツは化け物か……」とガンダムファンなら叫んでしまうはず
ホワイトベースが地下ドックへ着艦する。地下ドックには敵モビルスーツの気配が…… でも、そんなこんなで「続く」と表示されてゲームオーバー。早く完成版をプレイしたい 「GPAはアナハイムエレクトロニクス製です」……思わずにやりとしてしまったガンダムファンも多いのでは!?


■ ゲーム内容は今後変わる可能性大!

 AOU2002来場者で、このGPAプロトタイプを体験した人は一様に「すごい」と感激してはいたが、一方で「想像していたものとちょっと違った」と感じた人も多かったようだ。

 当初「シミュレータ」という前情報が流れたため、筆者もガンダムを思いのまま操作できるメックウォーリアーシリーズ・ライクなロボット・シミュレータを想像していたのだが、実際に展示されたGPAは、どちらかといえばディズニーランドのスターツアーズに代表される「ライド系アトラクション」に「モグラ叩き的」反射神経ゲームを融合させたものになっていた。

 これまでに発売されたアーケードゲームで似ているものを無理矢理挙げるとすれば、ナムコの大型筐体3Dシューティング「スターブレード」……という感じだろうか。
 ただし、開発担当者によれば「今回の展示はあくまでコンセプトの展示であり、このゲームシステムが最終決定稿ではない」とのこと。今回のAOU2002来場者のアンケート結果を見てゲーム内容の大幅な再編成を行なう予定だそうで、現時点では……

  • 完全にライド系アトラクションにする
  • 今回の展示のようにインタラクティヴ要素を持ったライド系アトラクションにする
  • プレーヤーに高い自由度を与えた3Dゲームとする
 ……仮に商品化されるとするならば、こういった展開が考えられるそうだ。
 ガンダムの世界観をベースにしたライド系アトラクションとしては、富士急ハイランドにある「ガンダム・ザ・ライド」がある。せっかくシミュレータメーカーとして実績のある企業が中心となって開発を進めているのであれば、筆者としてはやはり(多少敷居が高くなってもいいから)本格的なモビルスーツ操縦シミュレータとしての登場を期待したい。おそらく、多くのガンダムファンもそう願っているのではないだろうか。


■ プロトタイプはインテルPentium 4 + NVIDIA GeForce3 Ti500ベースのWindowsXP上で動作!

 GPAのプロジェクトの立ち上げは、バンプレストがガンダムを題材とした大型アミューズメント機の企画を検討する中で、大型機器の製作に関して実績とノウハウを持つ三菱重工と組んで開発するのが良いと判断したことから、バンプレストが三菱重工に製作を依頼したという。

 「三菱重工が、なぜガンダムシミュレータ?」と思うかも知れない。同社はテーマパークなどのエンターテインメント・シミュレータ製造メーカーとして高い実績があり、その分野で培われた技術を多分に応用しているのだ。

 プロジェクトは発足からわずか7ヶ月しか経っていないようで、今回のAOU2002で展示されたGPAのハードウェア部分はGPA専用ものではなく、航空機シミュレータ用の汎用部材を使っているとのこと。筐体は画面の動きに合わせて前後左右に最大傾斜角約20度まで可動するが、さすがは業務用シミュレータ筐体を利用しているだけあり、過激なまでに速い駆動速度が印象的だった。

 歩行移動の際も、ガンダムの脚部の接地タイミングに合わせて細かく振動するなど、芸の細かい振動演出が盛りだくさん。ソフト面はライド系アトラクションだったが、ハード面(≒体感面)ではシミュレータ的な手応えは十分にあったと思う。

 画面は100インチ前後の汎用ホームシアター用のパールビーズ系スクリーンが使用されており、映像の投影にはエプソン製の市販フロント液晶プロジェクタが利用されていた。

 そして、今回のプロトタイプのソフトウェアは、なんとPCベース、それもWindowsXP上で動作しているとのことだった。さらに驚かされるのが、ゲーム中の全ての映像がリアルタイム3Dグラフィックスだという事実だ。

 今回の展示システムのマシンスペックは、CPUはIntel Pentium 4で、クロックは未公開としながらも「最高クラス」とのコメントが得られたことから、恐らく2GHz以上のものが使用されていると思われる。使用ビデオカードはNVIDIA GeForce3 Ti500。
 「今回の展示でGeForce4 Ti4600を使いたかった(笑)」は担当者の弁。今回公開されたGPAでプレーヤー達が乗るガンダムが空中から地上に降り立つシーンがあるのだが、この時に若干フレームレートが下がる瞬間がある。これもGeForce4だったならば改善できたかも(?)しれない。現在、NVIDIAの方にも開発協力を呼びかけているとのことだ。
 サウンドはサラウンドに対応。こちらもリアルタイム生成しているとのこと。


■ 登場時期未定 現時点ではDirectX 8.1ベースで開発されている!

 今回展示されたプロトタイプは、幅4メートル、長さ5メートル、高さ3メートルという比較的大きな暗室にも似た筐体に4人乗りの可動席を設置するというシステムになっていたが、最終的にはどのように提供するかは未定だという。例えばソフトをライド系アトラクションにした場合、大人数同時参加できるように今回のような大型筐体システムで提供されるだろうが、ひとり乗りのシミュレータという方向性でソフトが開発が進められた場合は、体感ゲーム機並の小型筐体システムになるかもしれないのだ。つまり、ソフトとハード、両面から仕様の折り合いを付ける必要があるというわけだ。

 そのため、提供システム価格も現段階では全く未定だという。大型ライド系アトラクションになった場合はテーマパーククラスにのみ設置されるため高価になるだろうが、体感ゲームサイズの筐体ならば街のゲームセンターにも設置されることを想定して低価格になるはずだ。

 ソフトウェアの開発はWindows XPすなわちDirectX 8.1ベースで進められているとのことだが、これも最終的にどのような形で提供されるかはまだ分からないらしい。街のゲームセンターにも設置されるようなシステムとした場合は、NAOMI2やトライフォースのような業務用システム基板ベースで動作するようなものにするかもしれないし、テーマパーク設置の少量生産の大規模システムの場合はPCシステムのままで完成させるかもしれないという。

 担当者によれば完成時期も未定で、数ヶ月以内にリリースされるようなものではなく、開発は長期に及ぶ可能性が高いとのことだった。ガンダムファンとしては完成が非常に待ち遠しいタイトルだ。今後も何か情報が入り次第、お届けしたいと思う。

(C)創通エージェンシー・サンライズ
(C)BANPRESTO 2002

□バンプレストのホームページ
http://www.banpresto.co.jp/
□AOUのホームページ
http://www.aou.or.jp/
□ニュースリリース
http://www.aou.or.jp/expo/
□関連情報
【2月21日】バンプレスト、「機動戦士ガンダム」シミュレーター試作機「ガンダム・パイロット・アカデミー(仮称)」を「AOU2002」に参考出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020221/banpre.htm
【2月22日】「AOU2002 アミューズメント・エキスポ」開幕「ガンダム・パイロット・アカデミー(仮称)」など大型筐体に注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020222/aou01.htm
【2月22日】「AOU2002 アミューズメント・エキスポ」ブースレポート(セガ編)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020222/aou02.htm
【2月22日】「AOU2002 アミューズメント・エキスポ」ブースレポート(ナムコ編)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020222/aou03.htm
【2月22日】「AOU2002 アミューズメント・エキスポ」ブースレポート(バンプレスト、タイトーほか)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020222/aou04.htm

(2002年2月27日)

[Reported by トライゼット 西川善司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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