★ PCゲームレビュー ★

究極のウォーSLGがついにPCで登場!
自分だけの欧州戦線をたっぷり堪能しよう

アドバンスド大戦略2001

  • ジャンル:ウォーシミュレーションゲーム
  • 開発元:チキンヘッド
  • 発売元:セガ
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000/XP
  • 発売日:11月22日


 '91年にメガドライブ版として産声を上げ、'98年にPC版として劇的な復活を遂げた「アドバンスド大戦略」。正式タイトルは「アドバンスド大戦略98 Storm Over Europe」といい、'99年にはその続編「アドバンスド大戦略98 II Zwei」が、さらに2000年にはZweiをベースにコンシューマ向けの改良を施したDC版「アドバンスド大戦略」が発売された。
 「アドバンスド大戦略」復活の最大の功労者で、同シリーズのプロデューサーを務められた大高氏の口癖が「やり残したことがまだたくさんあります」。我々はそのセリフを聞くたびに「おお、また続編が出るんだ」と大喜びしたもので、事実、その後発売された新作はいずれも確かな手応えを感じさせてくれる作品に仕上がっていた。
 直系で言えばシリーズ第4弾にあたる最新作「アドバンスド大戦略2001」は、そういった経緯を踏まえ、最終的にどのような作品に仕上がったのか。じっくり見ていくことにしよう。


■ 超弩級のウォーシミュレーションゲーム「アドバンスド大戦略」

「アドバンスド大戦略2001」のメイン画面。1,920×1,440ドットでプレイすると、このとおり広大なマップでプレイできる。最低でも1,600×1,200ドット表示でプレイしたい
 「アドバンスド大戦略」は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線全期間を扱ったターン制のウォーシミュレーションゲーム。プレーヤーはドイツ軍の方面軍司令官となり、ヨーロッパ中を戦場にして転戦を繰り返していく。軍事演習、スペイン内乱、ワルシャワ攻略、ノルウェー侵攻、パリ陥落と、このあたりまでは誰でも同じ道をたどるが、そこから先は戦況に応じて、大勝利、勝利、引き分けと3パターンでシナリオがどんどん分岐していく。

 バルバロッサを経て泥沼のソ連戦に突入するか、南へ転戦して頼りないイタリア軍と共にアフリカ軍団を率いるか。あるいは大勝利を重ね、バトルオブブリテン、英本土上陸作戦、ウラル侵攻を経て米本土上陸作戦へ、といった歴史のIFにも挑戦できる。ただし、一般的に大勝利を重ねるほど、難易度の高い戦場へ行くことになり、戦いが次第に苦しくなっていく。そうでなくとも時が経てば経つほど敵の戦力は増強され、'43年以降は圧倒的な軍事費を誇るアメリカ軍が本格参入して、戦の趨勢は決定的になってくる。目標であるマップの果てにある敵首都に攻め込むどころか、敵の侵攻を防ぎきるのに精一杯になるのだ。一度でもこちらの首都を占領されればその時点でゲームオーバーで、圧倒的に不利な戦局をいかに打開するか、という史実の軍司令官と同じ苦しみを味わうことになる。

プレイ中、続々とエントリーされる新兵器群。これもアドバンスドの楽しみのひとつ
 このアドバンスド大戦略の核となるキャンペーンモードは、部隊をすべて次のマップへ引き継ぐことができる。マップを経るごとに魅惑の新兵器も次々とエントリーされ、旧兵器を廃棄して生産ラインに載せたり、経験値が最大の兵器をさらに強力な兵器へと進化させたりして、自分好みの精鋭軍団を作り上げていくことができる。これこそがアドバンスド最大の醍醐味だ。

 しかし、戦争も末期に近づいてくると敵の攻撃はいよいよ容赦なく、自軍ターンが回ってくると、前のターンまで確かにあった味方戦車集団が蒸発したように消え去り、変わりに敵の航空機が乱舞しているようなこともあるぐらいで、とにかく自分で自分を解任したくなるほど絶望的に勝てなくなってくる。アドバンスドのバランス調整の軸が「史実を忠実に」だから、勝てなくて当たり前なのだが、勝てないゲームを何故プレイし続けるのかというと、ストレートにいうにはためらいがあるが「絆」だからとしか答えようがない。

 特に成長に時間がかかる工兵小隊(2001ではさらに上位レベルの降下猟兵小隊がいる)や、部隊編成番号がヒト桁のような軍事演習から生え抜きの部隊が危機に瀕すると、それこそ全軍で救出作戦に乗り出してしまう。全滅すればむろんリロードであって、こうなってくるともはやゲームシステムなどは意味をなさず、俺と兵器が情義で直結した関係になり、しばしば俺と兵器しか知らない熱い戦場ロマンに酔いしれることになる。ここまで行くのは自分でもどうかと思うが、ともかく、歴史が好きでかつシミュレーションファンであれば200%楽しめるゲームが「アドバンスド大戦略」なのである。

「アドバンスド大戦略2001」のオープニングムービー。ヒトラー登場からスペイン内乱に至るまでの経過が当時のスチル付きで紹介される。かなり凝ったつくりだが、ムービーはDC版のベタ移植のため解像度は荒い


■ 航空機をとりまく状況が一変 深まる戦術要素

飛行場には工作車と補給馬車をセットで置く。2001の基本戦術のひとつだ。敵からの攻撃は、レーダー配備の戦艦シャルンホルストでにらみを効かせる
 さて、本題である2001。編集部にβ版が到着後、さっそくプレイしてみた。レビューのためということで、ユニットに妙な愛着を持たずに一定の距離を置いてプレイしたつもりだが、アドバンスドが持つ魔的な魅力にはやはり耐えられず、レビューを書いている今の今も、すべてをなげうってゲーム世界に没入したい衝動が体内をくすぶり続けている。余談だが、MD版が発売された当時、あまりのおもしろさに仕事に手が着かないというのでカートリッジをたたき割ったという話をいくつか聞いたが、私の場合もかなりそれに近い危機感が脳内を渦巻いている。しかしながら、レビューが書けないからβCD-ROMをたたき割るのはネタにもならないだろう。

 というような話はどうでもいいとして、2001の新要素。98からZweiの際と同様、改良もあれば改悪もあった。ただし、いずれにしても改変の軸となっているのは、史実に近い戦闘戦術を再現することにあるので、シリーズのユーザーは今回も安心していい。

 Zweiとの一番の違いは、航空ユニットの扱いだ。Zweiから1日1ターンから12ターンに増やされ、時間の概念が加わった。これにより夜間は、夜間仕様以外の全ユニットの能力が大幅に下がり、夜間に大活躍する夜間戦闘機(攻撃機)という新たな種別を生み、敵戦闘機がZOCを失う深夜を狙って敵首都へ夜間爆撃を行なうことがが可能になった。2001ではこのあたりのルールをさらに拡張しているのだ。

 まず、すべての航空機は飛行場に「収納」しなければ補充と補給が行なえず、耐久度の低い(規模の小さい)飛行場では爆撃機などの大型機が発進できなくなった。また、夜間の着陸は経験値に応じて、着陸に失敗して数機を失うようになっている。一方、夜間の発進は経験値200以上が必要となり、このため夜間に爆撃機迎撃用に戦闘機を出しておくといった戦術が前作より難しくなっている。

航空機を飛行場に帰還させる場合は、かならず収納を。ここで召喚を選べば、未配備部隊に戻すことができる。ただし、再び戦場に出す場合は再配置が必要になる
 収納中の航空機は、マップ上には表示されず、飛行場に小さく数字だけが見えている。つまり、扱いとしては「爆撃可能な空母」のような感じなので、飛行場ががら空きの状態で爆撃機に狙われると、収納部隊(耐久度に応じて1~5部隊)もろとも粉砕されてしまう。これを防ぐためにはこれまでのように飛行場の上に戦闘機を置いておくしかない。しかし、2001ではこの状態は機数の補充はおろか弾丸の補給すら行なえない直俺状態なので、戦爆混合で攻められればやはり飛行場は陥ちる。それを防ぐには直俺部隊を増やさなければならない、というわけで前線に置ける最重要拠点である飛行場の扱いが、実に重要になっている。

 また、工作車で好きな平地に飛行場を作れるのは前作と変わらないが、完成直後の飛行場は1部隊しか収納できず、収納しても小型の攻撃機以外は発進すらできない。そこで引き続き工作車に耐久度を上げさせるわけだが、今回工作車の能力は一律ではなく、経験値に比例するようになっている。それでは経験値最大の工作車ならすぐ工事が終了するかというと、まったくその逆で、経験値最大の工作車以外は使い物にならないのだ。

 すなわち、前線に爆撃機クラスの大型機が離発着可能なまともな飛行場をつくるためには、経験値MAXの工作車と補給車、それに作業する数ターンの間、彼らを守り抜くための護衛部隊も必要になる。これがなかなか大変な作業で、墨俣一夜城的なちょっとした修羅場になる。しかし、このあたりの攻防は実に緊張感に満ち、本当におもしろい。シリーズのプレーヤーが一番変わったと感じる部分はおそらくここだろう。


■ 総勢2,201ユニットを3Dモデリング化 フル3Dで展開される迫力の戦闘シーン

Weapon Collection機能。一度でも遭遇した兵器はすべてここに保管され、3Dモデリングデータを見ることができる
 続いては戦闘部分を見ていこう。98では、1,500種類の兵器が登場するということで話題を呼んだが、2001では増えに増えて2,201種類にも達するというから凄い。もっとも、時期によっては続々と新兵器が開発され、一度も戦場に出さないまま廃棄されていく兵器も数多く含まれているから、実際にマップ上に出現する兵器はそれよりずっと少なくなる。

 しかし、2001で驚くのは、2,201種類のユニットすべてを3Dモデリング化しているところで、戦闘シーンではそれらユニットが3Dグラフィックで構成された戦場で攻撃しあう様子を見ることができる。また、一度でもラインに上がった兵器、遭遇した兵器は、性能表のユニットシルエットをクリックすることにより、3Dモデリングデータを参照することができる。私のように1回ずつしか戦闘シーンは見ないという向きには大変便利な機能だ。

 ところで、2001で追加された「向き」の要素。これによりマップ上にいるすべてのユニットは6方向のいずれかを向くようになり、新コマンドにユニットの向きを変える「旋回」が追加された。向きの要素は、後ろを取られると攻撃判定が不利になるほか、固定砲座式の駆逐戦車や対戦車砲は側面から狙われると反撃できないといった効果がある。また細かいところでは、艦船は射撃目標に対して側面に向けないと、後部砲門から射撃できないなど、ミリタリーファンなら思わずニヤリとしてしまう効果ももたらしている。

史上最強の歩兵、降下猟兵小隊。特殊能力の覧に燦然と輝く「空挺能力」の文字。降下猟兵の育成はデンマークシナリオがお勧めだ
 新ユニットでは、ドイツ軍に降下猟兵小隊が新たに追加されている。工兵小隊の進化型となるレベル6歩兵として登場し、輸送機から好きなポイントに降下できる「降下能力」と、要塞の下に降下すると要塞を1発で破壊できる「強襲能力」を備え、アメリカのレンジャー部隊を優に上回る全歩兵中最強の性能を備えている。今回、飛行場使用の制限から、輸送機と歩兵による遷都予定の敵第2首都を電撃的に占領してしまう飛び石作戦が難しくなっているが、彼を使えば難関マップの大勝利も夢ではない。なによりあの鉄壁の防御を誇る要塞を一撃で粉砕するという特殊能力が痛快でいい。

 あと、見逃せないのが最大部隊数が256から512に倍増したところだ。これにより、旧式だけどある一定の条件でめざましい効果を発揮する兵器や急降下爆撃機など消耗の激しい兵器などをあらかじめ大量にストックしておけるようになった。また2001では、味方陣営に兵器を提供できるコマンド「供与」があるため、余りそうなら片っ端から供与することで無駄も省ける。

 ちなみに供与の仕方は、一度配備して味方陣営の都市や飛行場まで届ける必要があり、少々やりにくい。しかし、2001で新たに追加されたシナリオ「本土防空戦(41~44まで4種類ある)」では、独本土防衛を担当する航空艦隊に定期的に戦闘機を供与していかないと、爆撃で徐々に収入が低下した結果、敗北軍事費で勝手に降伏してしまうといったことも起こり、無視できないコマンドとなっている。

 一番最初に使うケースはノルウェー侵攻作戦「ウェーザーユーブンク」だろうか。ゲーム開始と共にマップの最奥にあるナルヴィクで孤立している第3山岳師団に、He 51C-1あたりの旧式戦闘機を増槽タンク付きで送り込む。第3山岳師団が飛行場を確保できない場合でも、その位置に留まって燃料切れで墜落するまで援護射撃してやることで、彼らが体勢を立て直すための時間稼ぎができる。2001では、最悪彼らは降伏してしまう微妙なバランスになっているため、この戦術は非常に有効だ。

 まだまだ書いておきたいことが山ほどあるが、あまり長くなるのもどうかと思うので、とりあえずここまでにしておきたい。繰り返しになるが、「アドバンスド大戦略 2001」は歴史に興味があり、シミュレーションゲームに素養のある人なら確実に楽しめる作品だ。それも10時間や20時間といったはした時間ではなく、少なく見積もっても1,000時間はたっぷり楽しめる大作だ。ぜひプレイして自分だけのヨーロッパ戦線を味わってみていただきたい。

迫力の戦闘シーン。正直言って陸上戦や首都爆撃はあまりパッとしない出来だが、航空戦や急降下爆撃、艦隊戦は見応え十分。特にシュトゥーカの特異な動きは必見だ

(C)SEGA CORPORATION, 2001 Original Game.(C)1988 SystemSoft Alpha Corporation.


□セガのホームページ
http://sega.jp/
□「アドバンスド大戦略2001」のホームページ
http://sega.jp/pc/advd2001/
□関連情報
【11月2日】「アドバンスド大戦略2001」体験版
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011102/demo1102.htm
【10月9日】セガ、PC向け「アドバンスド大戦略2001」の発売日を11月22日に決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011009/adv2001.htm
【4月14日】大幅な機能拡張を行なった決定版「アドバンスド大戦略2001」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010414/adv.htm

(2001年11月22日)

[Reported by 中村聖司]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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