【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★PS3 / Xbox 360ゲームレビュー★

地獄のような未来世界でどう生き、何をなすのか
無数のアイデアが詰まったSF世界を遊び尽くせ!!

「Fallout 3」

  • ジャンル:SFRPG
  • 開発元:Bethesda Softworks
  • 発売元:ゼニマックス・アジア
  • プラットフォーム:PS3 / Xbox 360
  • レーティング:CERO:Z (18歳以上のみ対象)
  • 価格:7,980円
  • 発売日:PS3版:1月15日 Xbox 360版:2008年12月4日(発売中)



 ゼニマックス・アジア株式会社は「Fallout 3」のプレイステーション 3版を1月15日に発売する。Xbox 360版はすでに2008年12月4日に発売されており、本誌でも1度レビューで取り上げているが、あえてPS3版を待っていたというゲームファンも多いだろう。そこで今回は、PS3版をベースに、さらに踏み込んだ形で「Fallout 3」のプレイレポートをお届けしたいと思う。

 今回のレビューはゲームの内容、作品での要素をより多く紹介することで「Fallout 3」の世界の深さ、広さを楽しんでもらいたいと思う。そのため、「Fallout 3」に対して知識のない方、ネタバレはしたくないという方には、前回のレビューをお読みいただきたい。

 筆者はXbox 360版をクリアしてからPS3版に臨んだ。2回目のプレイで見えてきたのは、様々なアイデアを詰め込んだ「Fallout 3」の世界を歩く楽しさ、別なベクトルで挑むことで見えてくるゲームとしての自由度の高さだった。核戦争の後の世界を描く「Fallout 3」は過酷で厳しい世界であり、SFというテーマからも人を選ぶだろう。1人でも多くこのユニークな世界を旅して欲しい、という想いで今回のレビューをお届けしたい。


■ 拳は銃よりも強し! 地獄のような世界を拳で突き進む「Fallout 3」2度目の挑戦

「Fallout 3」では大きなダメージを受けたモンスターは粉々になる。鍛え上げた拳は強敵“スーパーミュータント”すら粉砕する威力を発揮する
フィールドマップ。すべて歩くことで様々な地点が明らかになる
建物など特徴的なオブジェクトが点在している。荒廃した世界だが、人類は生き続けており、戦いは絶えることがない
Iron Fistを上げていくことで素手でも銃に劣らない破壊力を持つ。Perkを選ぶことでさらに特徴的なキャラクタに育て上げる事ができる
 「Fallout 3」は2077年という未来の世界に核戦争がおき、そこから200年後の2277年のワシントンDCが舞台となる。プレーヤーは核戦争直後に閉鎖された核シェルターVault 101から出てこの世界をさまようことになる。

 核戦争から200年、すべての水は濁り、放射能を帯びている。樹木は枯れ下生えのような草が生えるのみ、かつて繁栄を誇っていた都市も今や瓦礫と化している。しかしそんな中でも人類は滅んではいなかった。200年の時を人は放射能と戦い、過去の資産を活用して生活を営んでいる。集落を作るだけでなく、少ないながらも果敢に世界に旅立ち開拓しようとする人々もいる。

 それでもこの世界での人類の生活は厳しい。放射能によって変異したクマ「ヤオ・グアイ」や毛のないカピバラのような巨大なネズミ「モールラット」、さらには巨大化した昆虫が旅人を容赦なく襲う。また、出自不明の巨大な人型の怪物「スーパーミュータント」がかつての都市を占拠し、新しい時代の覇者は俺たちだと人類を狙っている。

 過酷な世界の中、人間もまたまともな存在ではいられない。政府も警察も、秩序もないこの世界では人が人を襲うのもありふれた出来事なのだ。旅人を襲いその死体を自ら住み家に誇らしげに飾る「レイダー」、犠牲者に爆弾つきの首輪をつけ服従させる奴隷商人、また、世界と隔絶し他者を拒絶することを選ぶ人々もいる。この悪意溢れる過酷な世界で、プレーヤーはどう生きていくかを問われることになる。

 前回のレビューでも書いたが、この過酷な世界を生き抜くことが本作の大きなテーマとなる。「Fallout 3」の序盤では多くのプレーヤーが、まずこの世界で生きていくためのルールを覚えることに必死になるだろう。この世界での生き方をマスターしたプレーヤーは、やがて世界観を楽しむようになり、キャラクタの育て方、そして中盤からはスタッフがこの世界に込めた様々なアイデアを見つけ出す面白さに夢中になるはずだ。メインストーリーも魅力的だが、「Fallout 3」の本当の楽しさは“この世界を旅すること”にあると思う。

 今回筆者はプレーヤーキャラクタにあえてエキセントリックな生き方を選択させた。本作には“カルマ”というパラメーターがあり、キャラクタが善行をつんでカルマを高めれば善人に、邪悪な行動を取ればカルマが下がり悪人になる。ゲームではプレーヤーに依頼をしてくるのは無力で善意の市民というシチュエーションが多いが、「Fallout 3」でもそういった人は多い。普通にプレイをしていれば善人になってしまうだろう。しかし、悪人からの悪事の依頼や、あからさまにカルマが下がる選択肢もふんだんに用意されている。今回はあえて悪の誘いに身をゆだねてみた。

 また、戦い方も凝ってみた。「Fallout 3」の世界では核戦争前の銃器が多く残っており、市民やレイダー、そしてスーパーミュータントも多くが銃で武装している。このため、普通にプレイすると銃器メインの戦いになる。スキルも銃器全般を扱うSmallGunを上げていくのが定番なのだが、今回はあえて素手で戦うUnarmedを上げてみた。

 キャラクタにはPerkと呼ばれる特殊能力が用意されていて、これを取得することでより特徴的なキャラクタに育てられる。中でもIron FistというPerkは取得することでUnarmedの威力を上げることができる。ここに注力した筆者のキャラクタはとげの生えたナックル「スパイクナックル」を使うことで、ライフル並の破壊力を持つパンチを繰り出すキャラクタになった。

 「Fallout 3」に登場するレイダーはトゲのついた革鎧でモヒカン頭というパンクファッションに身を包んでいる。核戦争後の世界ということで筆者の頭の中にあったのは「北斗の拳」であり、それならばと素手で戦う戦士を目指してみたのである(制作者の頭の中にあったのは映画「マッドマックス」だろうが)。Iron Fistで強化したスパイクナックルはグールやスーパーミュータントも粉々にする威力を発揮したが、絵的には敵を豪快に吹っ飛ばすアメコミヒーローのような感じになってしまった。

 素手の戦闘なため、離れてアサルトライフルを連射してくる敵や、ミニガンを連射してくる敵とは相性が悪かった。また天井に設置された砲台などには手の出しようがないため、サブウエポンとして遠距離用の攻撃スキルも中盤からは必要になってくるだろう。やはり漫画のようにすべて拳だけというわけにはいかなかった。

 Unarmedの武器は銃に比べると種類が少なく、入手できる場所も限られる。中盤からはスパイクナックルでは火力不足を感じた。「Fallout 3」ではクエストなどで設計図を入手し、部品を集めて作ることができる「自作武器」が用意されている。Unarmedでは最強とも言えるモンスター「デスクロー」の腕を使って作るデスクローガントレットがあり、これを使うことで高レベルの敵とも対等以上に戦うことができた。

 自作武器は炎を出す剣「シシケバブ」や通貨であるキャップを使う「ボトルキャップ地雷」などがあり、いずれも強力なものだ。シシケバブなど近接武器を使う場合Melee weaponを上げていくことになる。Perkにはクリティカルを上げるNinjaといったスキルも用意されている。敵の攻撃をかいくぐり接近しての戦いは前回の銃を使った戦いとは全く違う感触で、勝利は爽快だが、やはりちょっとキツイ。格闘や近接での戦いはどちらかというと“やりこみ要素”的な位置づけであると感じた。

 ちなみに、自作武器の設計図は1つにつき3枚用意されている。同じ設計図を複数手に入れると作成できる武器の性能が上がる。そしてRepairのスキルを上げることでより強力な武器を作ることができる。ちなみに、すべての武器や防具には、世界にひとつしかない通常品より高性能のユニークアイテムが用意されており、こういった武器を集めてみるのも楽しい。

 今回セカンドプレイをしてみて感じたことはプレイの「道のり」が前回とは全く違う、ということだった。前回筆者はクリアするのに50時間以上かかったこともあり、もう世界を充分に歩いた気になっていたが、2回目のプレイでも知らない場所に出たり、前回すぐ見つかった場所が見つからなかったりした。

 効率よくメインクエストは進められたが、サブクエストに取り残しがあったり、まったく違うクエストもいくつもこなした。正直、プレイする前に予想していた以上に“違った”プレイ風景になり、あらためてこの作品の懐の深さと、“偶然”の面白さを感じることができた。

デスクローガントレットはかなり凶悪な外見だ。どっちが悪役だかわからない絵柄だ ゲーム内で最強クラスの攻撃力を持つデスクロー。武器を作るためにはこいつを倒さなくてはならない こちらはパワーフィスト。ピストンの力で爆発的な威力を発揮する
女性キャラクタを使うことで着せ替えも楽しかった。正直戦闘には使えないが、ゲームの幅を広げてくれる要素だ
今回、遠距離の敵や、複数の敵を相手にする場合を考えBig Gunのスキルも上げてみた。重火器は弾薬が少ないため、ここぞというときに使うと効果的だと感じた
ボブルヘッドや設計図、特別な飲み物ヌカコーラ・クァンタムなどやりこみ要素も楽しい

■ ターゲットを捕獲して明日の糧を得る。邪悪なロールプレイで生きる!

カルマを下げていくとステータスが悪になっていく。正直中立に保つのが一番難しいかもしれない
今回は自宅を得るクエストには挑戦せず、施設を勝手に使うという方法でゲームを進めてみた。ロッカーに入れたアイテムも消えず、自宅代わりにきちんと使うことができた
奴隷商人の依頼を受ける。カルマを下げるのに都合の良い依頼主だった
Vault 101への再訪。選択次第では、住人全体をプレーヤーキャラクタと同じ放浪者の境遇にさせることもできる
 「Fallout 3」で悪の道をひた走る、というのはただひたすら出会うキャラクタを殺せばいい、といった単純なものではない。もちろんそういった方向でのゲームの進行も可能だが、街の人を1人攻撃するだけで街中の住民すべてから襲われるようになってしまう。もちろんクエストや施設利用にも影響が出てくるため、ゲーム的にも難しくなっている。

 殺人以外のカルマを下げる方法は、スリを働いたり、他人のものを盗むという方法があるが、もっとも効果が高いのはクエストだ。「Fallout 3」のクエストはいくつかの“解法”が用意されている。結果は同じでも、そこに至る過程がいくつか用意されている場合もあって面白い。今回はその中でカルマが下がる方法を積極的に選んでみた。

 最初の街メガトンでは酒場のマスターが父親の行方を知っており、彼から父親の行方を聞き出すことになるが、彼は欲深い男で金(キャップ)を要求してくる。このときにすぐに金を払わないと逃げた娼婦から金を徴収しなくてはならなくなる。娼婦を殺して金を奪うことも、彼女を生かしてマスターには「殺した」ということもできるが、この選択肢を出す前に聞き出す方法も用意されている。酒場で端末をハッキングし、マスターが知っている情報を盗み取ってしまうのだ。一番マスターを出し抜く方法といえる。

 このように「ターゲットを殺してものを盗んでこい」という依頼があった場合、殺す、殺さないの2択だけでなく、スリをして目的のものを盗む、説得をする、という選択もあり得る。クエストによっては依頼主が得るはずだったアイテムを横取りする、ということすら可能なのだ。クエストの前にセーブして、全く違う展開を楽しむというのも遊び方のひとつだろう。

 今回のプレイでは、「悪人プレイ」を目指すことを決めたものの、序盤ではどうすればカルマが悪い方向に行くかがわからず焦ってしまった。人の家で隠れてものを盗みまくる、というのはいかにも「作業的」でつまらない。悩んでいるところで見つけたのが奴隷商人達の街パラダイス・フォールズだ。ここで奴隷狩りに協力することでカルマを大きく下げることができた。

 パラダイス・フォールズでのクエストはターゲットのリストと「メスメトロン」という武器、そして爆弾突きの首輪を渡される。このメスメトロンでターゲットを撃つと相手は一定時間意識が朦朧となってしまう。この時に爆弾つきの首輪をつけることで奴隷にできるというわけだ。ターゲット以外にも、襲ってきたレイダーも奴隷にすることができる。メインクエストなどでどうしてもカルマが上昇することがあるが、奴隷を捕まえることで悪へ戻れた。今回筆者が見つけた、“効率の良い悪への道”というところだろうか。

 「Fallout 3」では悪人になってもいきなり街の人から攻撃されることはない。しかし、街の住人から露骨に警戒感をもたれたり、奴隷商人がこちらを恐れたりするという変化はある。選択肢にも邪悪な言い回しが増えていると感じた。ゲーム内ではギャラクシーニュースラジオという放送局が、プレーヤーキャラクタの行動をニュースで流すのだが、悪人の道を走っていると公共の電波を使ってプレーヤーの行動をけなしまくる。前回は善人プレイで、背中がかゆくなりそうな持ち上げ方をされていたので、そのギャップが面白かった。

 「Fallout 3」ではプレーヤーは重大な選択を迫られることが多い。この世界では様々な事件、対立が起こっているが、その最終的な決断はプレーヤーの意志にかかっている、というのはシングルプレイのRPGならではといえるかもしれない。ギリギリの緊張状態に主人公が直面し、プレーヤーの決断で決定的な状況になるのだ。

 出てきたVault 101も例外ではない。プレーヤーと父親が出てしまったVault 101はいまや緊張状態にある。秩序を保つための監督官が暴走、警備員による締め付けを強くし、住人達は抵抗しようとしている。不良のブッチのような、ただ反抗をしようとする者もいれば、監督官のアマダのように平和的解決を目指す者も、監督官のようにただひたすら現状維持を願う者もいる。

 ここでプレーヤーは何をするか。選択肢の中には「換気システムを止めて住人すべてを強制的に外に出させる」というものすらある。主人公の行動で確かに世界が変わっていく、その選択の重さを感じられる作品となっている。答えは複数ある。セーブとロードを繰り返し最善の道を模索するのも、1つの決断でゲームを進行させるのも自由だ。今回の筆者のように、「安易に人を殺すのではなく、しかし最悪の状況を模索する」という邪悪なプレイももちろんありである。

 日本語版「Fallout 3」でゲームファンの間で最も批判を浴びているのが、最初の街メガトンを自らの手で破壊する、というゲームの中でも最悪の評価を下される選択をすることができないことである。核爆弾を自らの手で起爆させる、というのがCESAの審査に引っかかってしまったため、というのが理由だが、2度目のプレイでゲーム全体像を俯瞰して考えると、やはりこの決定は間違いであり、非常に残念だと言わざるを得ない。

 この変更は、圧倒的な自由度を誇る「Fallout 3」の本来のゲーム性を不必要にゆがめ、最も単純に悪の道に走る方法がなくなってしまった。なによりも、“核戦争の恐怖を自らの手で再び起こしてしまうという罪の十字架をプレーヤーに背負わせる”という制作者の意図がごっそり削られているのは批判は免れないだろう。

 被爆国という世界に類を見ない事情は考慮できるが、映画や小説で扱われている普遍的なエッセンスが、ゲームだけなぜ“自粛”しなくてはいけないのか、審査を下したCESAはもっとユーザーの声に耳を傾けて欲しい。残念ながら、ゲームという娯楽は未だに短絡的なこじつけで悪役にされ、批判されるという現状がある。理不尽な自主規制もそういった状況が生み出しているという一面があると思う。我々メディアもこういった状況を改善していくため努力していかなくてはいけないと強く感じた。

意識が朦朧となっているターゲットに爆弾突きの首輪をつける 端末をハッキング。酒場のマスターを出し抜く方法だ カルマを下げる選択肢は暴力的な方法が多いが、より邪悪な方法を模索するのも面白い
悪人になると周りのキャラクタの評価が変わる。奴隷商人の街パラダイス・フォールズでは、ファン(?)からプレゼントをもらうことも
NPCからの提案にどう応えるかでカルマは変動する。ゲーム中盤からは悪人退治の賞金稼ぎから狙われることも


■ 人類の進化や、宇宙人まで取り込む世界観。溢れんばかりのアイデアを堪能しよう

墜落したUFOとリトルグレイ型宇宙人の死体。世界観が大きく揺さぶられるオブジェクトだ
通常のミュータントの数倍はある世界最強のモンスター“ベヒモス”を、こちらも世界最強の小型核兵器“ヌカランチャー”で攻撃!
この世界では枯れ果ててしまったはずの樹木が生えている場所。ここを探し求める人々もいる
ゲーム中盤からは強力なアーマーに身を包んだエンクレイヴを名乗る集団も立ちはだかってくる。ラジオのエデン大統領もエンクレイブを名乗るが……
 「Fallout 3」は様々なアイデアの詰め込まれた作品といえる。「核戦争後の荒廃した未来世界」という刺激的なキーワードの元、SF作品に限らず様々な作品のオマージュやリスペクトといえる要素が盛り込まれている。

 革鎧に身を包んだレイダー、巨大サソリ、放射能によってゾンビのような体になったが人間の心を持ち続け200年もの寿命を獲得したグール、過酷な世界で生きていく人類、といった基本要素からもそれは感じられる。一方でレーザーライフルで撃たれると粘塊になってしまったり、廃棄されている車がすべて原子力駆動だったり、インスタント乾燥食品などの“小ネタ”にもスタッフのこだわりが見れて面白い。

 滅んでしまった2077年の世界は1950年代のSFのセンスで作られている。エアカーや弾丸型の高速鉄道、インスタント食品のパッケージなど我々の未来の世界でありながら'50年代のアメリカ風で、はっきりと古くさいのだ。この世界で流れるラジオがかける音楽も古き良きアメリカのセンスで世界に独特の味を加えている。

 警備ロボットの1つは1950年代のSF作品「禁断の惑星」に登場する「ロビー」を彷彿とさせる古典的なものだ。また知識が得られる本もそのころのペーパーバックを思わせるデザインだ。こういったセンスは一昨年発売された「BIOSHOCK」にも通じるところがある。余談ではあるが、現在日本でも公開されている「地球が静止する日」は1950年代のSF映画の代表的な作品のリメイクである。同じような時期に製作されているというのは興味深い。

 「Fallout 3」の世界に戻ろう。ゲームを進めることでプレーヤーは核シェルターであるVaultには、実は別の意味が持たされていることを知ることになる。シェルターを作ったVault Tec社はこの閉鎖空間を実験場として様々な「人類の未来」を模索していたのだ。

 Vaultはプレーヤーキャラクタの故郷である101だけでなく、ワシントンDCの地域でも複数ある。プレーヤーはそこを訪れることで住人に施された実験を目の当たりにすることになる。住人を映画「マトリックス」を思わせる仮想世界に移行させ、そこで生活を営ませる所もあれば、1人の人間をクローン化させて閉鎖社会を作っているところもある。この他にもVaultごとに様々な“テーマ”がある。

 「Fallout 3」ではVaultに限らず様々な場所で独自のテーマがある。小さな家族が「共和国」を名乗り他者を排除している地域もあれば、隔絶した場所で、この世界ではなくなったはずの森が茂っている所もある。暴走気味のアイデアとしては、昆虫とロボットのコスプレをした人物が、ヒーローショウのような対立を繰り広げている場所もある(アメリカにヒーローショウがあるのかはわからないが)。

 さらに凄まじいのは、UFOが墜落している場所すらあるのだ。円盤形の乗り物は完全に壊れており、破壊されたコクピットの近くにはリトルグレイ型の宇宙人の死体がある。ただそれだけで、クエストに発展するわけでもないのだが、スタッフの遊び心として楽しいオブジェクトである。

 繰り返すが、父を追うメインシナリオをたどるだけが「Fallout 3」の楽しみ方ではない。むしろ世界の隅々を探索し、スタッフがこの世界に詰め込んだアイデアを目にすることが本作の本当の楽しみ方と筆者は思っている。「Fallout 3」ではプレーヤーが利用可能な乗り物は存在しない。広大な世界をすべて自分の足で歩くことになるが、「Fallout 3」では歩けば歩いただけ“驚異”との出会いが待っている。

 なお、メインストーリーは特にラストには不満がある。これだけの自由度とあらん限りのアイデアを詰め込んでいる作品なのに、終盤のストーリーが実質的に一本道なのである。このラストを根底から覆してしまうような展開も用意してもらいたかったと感じた。ちなみに、開発元のBethesda Softworksは、「Fallout 3」のダウンロードコンテンツの概要を発表し、その中でエンディングを変更も示唆している。どのような形になるのか楽しみに待ちたい。

 いずれにしても、本作において、メインクエストの終結を示すエンディングは、単なる節目に過ぎない、ということは強調しておきたい。メインストーリーはとりあえずゲームの終わりを見ておきたい、という人のための要素だ。「Fallout 3」には何十時間消費しても味わいきれない広大な世界が用意されている。この世界で生きていく楽しさを多くの人に体験して欲しい。

 メガトンを破壊する要素の削除、PS3版の発売の遅れといった残念な状況はあったものの、フルローカライズという形で日本語版を発売したゼニマックス・アジアには感謝したい。これだけのボリュームを、世界観にきちんとあったローカライズで楽しむことができるのはやはり何にも増して嬉しいことだ。

 声優達の演技も素晴らしい。本作では複数のキャラクタを同じ人が演じているが、短い台詞の中にきちんとキャラクタ性と世界観が感じられる。ゲームでは異なる政治思想のラジオ番組があり、これがプレイ中のBGMとなる。エデン大統領を名乗るエンクレイブの放送は、信頼感と力強さの中に、胡散臭さと邪悪さが混じっている。スリードックは親しげで軽い雰囲気だが、ユーモアの中に権力への対抗心や人間に対する愛情を感じさせる。背景を知ることでそれぞれが人間の未来を真剣に想っていることが感じられたりと、とても味わい深くなっている。

 PS3版の登場で本作をプレイすることができるようになったユーザーが多くなったことは素直に喜びたい。この世界を歩き、ローカライズもスタッフも含めた開発者全員のこの作品へ込めた熱意を是非感じて欲しい。

ヌカコーラの工場では、ロボットもイメージカラーで塗られているのが面白い 博物館で見ることができるプラネタリウム 巨大ゴキブリを多数従えている非常に嫌な敵ローチキング
Vault 112では住人は仮想空間で生活している。ここの仮想世界はホームドラマのような平和な世界だ。理想社会として描かれている世界も、1950年代の匂いがする
Vault Tec本社。どんな秘密が隠されているのだろうか あるVaultでは全く同じ顔をした人間が襲いかかってくる こちらはモヒカン頭のレイダー化した住人。会話ができれば話が聞けるのだが……
修理屋としても優秀なモイラ。無茶な依頼をしてくるが憎めない女の子だ ロボットを引きつれた商人。フィールドでは様々な人物が行き来している ラジオで活躍を聞くことができる冒険野郎ダッシュウッド。正直こんな老人だというのは驚きだ
小さな家族が国を名乗るデイブ共和国 蟻とロボットのコスプレをしている人物が対決している。コミカルな見た目の割にはシビアな選択を迫られるクエストだ モヒカン頭の科学者。この世界では無茶な人体実験を繰り返すマッドサイエンティストも多い
何の気なしに動かしたシステムで、衛星からの攻撃が発動してしまった レイダーの住み家で発見したぬいぐるみ。女レイダーの趣味だったのだろうか 相棒となるNPCも登場する。正直頼りになるとは言えないが、彼らと歩むのは楽しい

Fallout 3 (C)2008 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Bethesda Softworks, Bethesda Game Studios, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Fallout, Prepare for the Future and related logos are trademarks or registered trademarks of Bethesda Softworks LLC in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.

□ベセスダ・ソフトワークス/ゼニマックス・アジアのホームページ
http://www.bethsoft.com/jpn/
□「Fallout 3」のページ
http://www.bethsoft.com/jpn/fallout3/
□関連情報
【1月7日】ゼニマックス・アジア、PS3「Fallout 3」
発売日に新宿で試遊イベントを開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081204/fallout3.htm
【2008年12月4日】PS3 / Xbox 360ゲームレビュー「Fallout 3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081204/fallout3.htm
【2008年11月10日】Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」
「Fallout 3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081118/kaigai32.htm
【2008年11月10日】マイクロソフト、「Fallout 3」プレス・ユーザー向け体験会を開催
メディアとユーザーに製品版を初披露、核シェルター「Vault101」の生活シーンを中心にプレビュー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081110/fallout3.htm
【2008年10月9日】PS3 / Xbox 360「Fallout 3」プレビュー
コマンド感覚で戦えるシステムと、未来世界が魅力のRPG
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081009/fallout.htm
【2008年7月20日】2008年の最高傑作RPGとなるか!? 「Fallout 3」プレビュー
Todd Howard氏「世界で生き残るために、あなたは何を失う覚悟があるのか?」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080720/e3_bethe.htm
【2008年4月24日】ゼニマックス・アジア、新作タイトル発表会を開催
今年の目玉はポスト「オブリビオン」の大本命「FALLOUT 3」!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080424/bethesda.htm

(2009年1月14日)

[Reported by 勝田哲也]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.