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★PS3 / Xbox 360ゲームレビュー★

過酷な“来るべき世界”で君はどう生きるか?
人類の未来に想いを馳せる良質のSFRPG

「Fallout 3」

  • ジャンル:SFRPG
  • 開発元:Bethesda Softworks
  • 発売元:ゼニマックス・アジア
  • プラットフォーム:PS3 / Xbox 360
  • レーティング:CERO:Z (18歳以上のみ対象)
  • 価格:7,980円
  • 発売日:Xbox 360版:12月4日、PS3版:2009年1月15日



 ゼニマックス・アジア株式会社は「Fallout 3」のXbox 360版を12月4日に、PS3版を2009年1月15日に発売する。「Fallout 3」は2077年に起きた核戦争で文明が破壊され、それから200年後、2277年の世界を描くRPGである。本稿では本日先行発売されたXbox 360版をベースに、レビューをしていきたい。

 「Fallout」シリーズはこれまで米Interplayから発売されていたが、今作は「オブリビオン」を手がけたスタッフが制作している。ゲームシステムはオブリビオンを進化させたものになっている。プレーヤーは3Dグラフィックスで描き出された、アメリカの首都ワシントンD.Cをモデルにした広大な地域を旅することになる。

 核戦争から200年、放射能は未だ世界全体を覆い、新たな人類の脅威も生まれる中、人々は争うことをやめない。しかしそれでも、人々は生き続けている。人類はどんな方向に進化していくか、その世界で人間はどう変わっていくのか? 「Fallout 3」は小説やドラマ、映画などいくつものSF作品で描かれたテーマやシチュエーションを積極的に取り込み独自の未来世界を描き出している。

 優れたSF作品は提示された架空の世界に想いをはせ、いつしかその仮想の世界のルールに従って考えていく、世界に人を没入させる力を持っている。この「Fallout 3」もプレーヤーを世界に引き込む作品であり、さらにプレーヤーの決断が世界に変化をもたらすというインタラクティブ性を持っている。「この世界でどう生きるのか」本作はその問いを投げかけ続ける。重いテーマではあるが、多くの人に体験してもらいたい作品である。


■ 核シェルターという“子宮”から出た主人公が直面する文明崩壊後の世界

本作ではワシントンD.Cをモデルにした地帯が舞台となる。観光写真でおなじみの風景も無惨に破壊されている
プレーヤーキャラクタは人種や性別、外見を自由に設定できる。戦前の服をまとうなどアバター要素も用意されている
Vault 101での適性テストには管理社会への忠誠心を試すものだ。制作者はここにブラックユーモアと、皮肉を込めていると感じた
 「Fallout 3」はプレビュー、海外版レビューなど、本誌で積極的に取り上げている作品である。本稿はレビューとしてプレイの感触を中心にお伝えしたい。できるだけネタバレは避けるつもりだが、作品世界の要素を紹介するため、「一切前知識無しでプレイしたい!」という方は注意していただきたい。

 「Fallout 3」の主人公は、2077年核戦争が起きた直後に閉鎖され、完全に外界との接触を断った核シェルター「Vault 101」の住人として生を受ける。Vault 101での生活はチュートリアルになっていて、ここでゲームシステムの基本を学ぶのだが、監督官の住人への強い締め付け、狭い社会など閉鎖された空間での生活が断片的に描かれる。

 主人公が左手につけている携帯型コンピューター「Pip-Boy」が中古の再生品だったり、誕生会でロボットがケーキをぐちゃぐちゃにしてしまったりと、Vault 101の技術が完全ではないことがわかる。

 また、幼なじみのブッチは不良で同じ世代の男の子は彼の子分のようになっていて、主人公や監督官の娘アマタは孤立している。老人は住人が減っていることを嘆いているところなど、就職適性試験の結果が試験官の裁量で変えられたりとルールが形骸化している描写もあり、様々な点で管理された社会の“限界”を感じられる。

 この管理され、閉じた生活は主人公が19歳の時突如終わりを告げる。父親が前ぶれもなくいきなりVault 101を脱走、秩序を乱されたことに怒り暴走する監督官は主人公を拘束しようとする。主人公はアマタの助けでVault 101を脱走する。

 こうして主人公は核戦争後200年が経過した世界に突如放り出される。いままで見たことのない太陽はじりじりと肌を焼くし、右も左もわからない。水は完全に放射能に汚染されており、さらに毛のないカピバラのようなネズミのミュータント「モールラット」や巨大サソリ、巨大なハエなどが襲いかかってくる。プレーヤーはこの歩くだけでも危険な世界で生きて行かなくてはならない。

 チュートリアルであるVault 101から出ると、後はプレーヤーが自由に進むことができる世界が広がっている。しかし、武器といえば弾の少ない銃とバットか警棒くらい。防具はセキュリティガードから奪えばアーマーが手にはいるがそれだけでは心許ない。歩いているだけでモンスターに襲われ体力はぼろぼろ、体力を回復できる薬「スティムパック」はあまりに数が少ない。

 プレーヤーを誘導する指針としてはコンパスがあり、初期のクエストで最初の街「メガトン」に行くことができる。このメガトンは元々はVault 101に入ろうとして拒否された人々が作った街だという。街は廃材を寄せ集めて作られていて街の中心には巨大な不発弾があり、何人かはそれを神のようにあがめている。

 プレーヤーはこの街か街の前の行商人から「キャップ」がこの世界の通貨であることを知らされる。キャップとは戦前人気の清涼飲料水「ヌカコーラ」のキャップである。自販機や、廃棄された地下鉄のゴミ箱などをあさると手にはいるが、弾薬やスティムパックを買うのにはキャップが何十枚も必要であり、とても足りない。クエストをこなしたり、襲いかかってくる無法者達「レイダー」から奪わなくてはものを買うこともできないのだ。

 しかも手には入るものもすべてすべて保存状態の悪いぼろぼろのものだ。他の商人に頼んで修理したり、自分の修理スキルを上げ2つの銃から使える部品を外して1個の銃を作る、といった方法で維持していくしかない。レイダーから奪ったり、廃墟から取ってきたたばこや廃棄部品も立派な資源だ。

 主人公はガラクタをキャップに変え、武器や鎧を現地調達しながら、この世界をさまようことになる。プレーヤーの大きな目的として提示されているのは、父親の行方を探すということだ。父はどうしてVault 101を出たのか。父の足跡を追うプレーヤーの前に徐々にこの世界は姿を現わしていく……。

閉塞感のあるVault 101の生活。ただ、チュートリアル要素が強くスケールが小さめで、もう少し核シェルターの生活感が味わいたかったところだ
シェルターから出た主人公はメガトンにたどり着く。ここで主人公はこの世界の住人達の厳しい生き方を目の当たりにする。主人公には帰ることができる家もない。放浪者としてこの世界で生きて行かなくてはいけないのだ
問答無用で襲いかかってくるレイダー。この時代の人間のポピュラーな「生き方」ともいえる 動物に荷物を運ばせ世界を巡る商人。常に護衛を連れている プレーヤーは修理スキルがあれば2つのものを1つにして品質を向上させられる


■ モヒカン姿の無法者やミュータント、危険溢れる未来世界で生き残るすべを学びとれ!

周りに敵がいなければベッドで寝られる。ロッカーを勝手に使ったり廃墟を自分の家にしてしまうこともできる
屈強なスーパーミュータント。言葉はたどたどしいが、重火器を使うなど知能は高い。性別はないようだ。彼らがどこから来たのか謎である
変わり果ててしまった人間であるグール。長い寿命を持つ彼らはどこかにひっそりと隠れ住んでいる
 本作をプレイしてまず最初に強く意識したのが「サバイバル感」だ。全く知識もないまま放り出される世界、さまよっているだけで弾丸も体力も瞬く間に減っていく。スティムパックは高価で、他に体力を回復させる食べ物や水はほとんどが放射能に汚染されている。体に蓄積される放射能を除去するためにもキャップは必要で、寝ることで体力を全回復させることができるが、ホテルのベッドは常用はとてもできないほど高価だ。安価な寝床をいかに見つけられるかも考えなくてはならない。

 体力回復もままならず、武器も不安で、それでも襲いかかる敵を撃退しなくてはならない。筆者はただ生きるため、前に進むために廃墟でものをあさり、行商人に売りつけてキャップを得た。寝床はクエストの途中で遭遇した“殺人現場”となった空き家である。例え隣に死体が転がっていようとも、ここなら誰にも見つからず安全に寝て体力を回復することができるのだ。

 Vault 101から出たばかりの筆者のキャラクタはまさに極限状態だった。この不安定な立場こそがこの世界の“旅人”の宿命なのだろう。行商人や街にいる商人達の品物も工場から安定供給されるものは1つもない、それどころかこの世界全体が過去の資産を消費するだけの世界である。しかしそれでもこの世界の人達は生きている。

 最初はこのキツイ状況に驚かされたが、ゲームを進めていくことで徐々にこの世界の生き方、歩き方がわかっていった。キャラクタのレベルもスキルも上がり、資産も増えた。かさばる安いものではなく、高くて貴重なアイテムを行商人に売るコツもつかんだし、敵がいる廃墟で、血が染みついたマットレスに寝転がり体力を回復させる図太さも得た。あるクエストで家を得て、そこに武器やガラクタをため込むこともできるようになった。

 こう書くと、「このゲームは自分には難しすぎるかも?」と感じた人もいるかもしれないが、住宅地でものをあさったり、敵の装備を重量一杯までもって売りに行くなどすれば誰でも生きていけるコツはつかめるだろう。戦闘のバランスがシビアだ、と感じる人には難易度をEASYもしくはVERY EASYにしてもいいだろう。後述のカルマが下がってしまうが、人の見ていないところでものを盗んで知らん顔で売る、というのも意外と儲かる。ゲーム的にはそれほどシビアではないが、本作の「飢餓感」まみれの世界では、それに負けないタフな生き方が必要になるということなのだ。

 さて、世界を歩いていくことで、世界そのもののルールも学んでいくことができる。粗末な鎧や武器を使い旅人を襲うレイダーは、捕らえた人間をバラバラに切り刻むのが好きなようで、アジトには無惨な死体をつるしている。また、人間の数倍の体躯と黄色い皮膚を持つ「スーパーミュータント」と呼ばれる者達がいて、彼らはレイダー以上に脅威だ。

 世界の各地には数少ないまともな人間達の居留地があって、これらの脅威に立ち向かい生のための戦いを繰り広げている。この他にも、外見はゾンビそのものだが理性を持ち、人目を避けて生活している「グール」という種族もいる。彼らは人間の数倍の寿命を持ち、核戦争直後の記憶も持つ者もいるという。

 またこの世界には「奴隷制」があって、奴隷商人とすれ違うこともある。奴隷商人達は旅人にちょっかいを出してきたりはしないが、奴隷を運ぶ姿はプレーヤーの心に何らかの感情を生み出さずにはいられないだろう。

 「Fallout 3」ではプレーヤーは世界を旅することで、生き方のルールを覚え、世界の仕組みを学んでいく。筆者は父親を捜すメインクエスト以上に世界を旅する感覚と、世界観そのものに魅了された。単純な“敵NPC”と化してしまっているレイダーでさえ、「この世界での生き方を決断した人の姿」なのである。グールは放射能を浴びて“変わってしまった”れっきとした人間だ。スーパーミュータントの正体はわからないが、この世界では様々な「明日の人類の姿」が描かれている。

 Vault 101から出てきた主人公は浦島太郎のような、「過去世界の住人」である。それは突然この世界を目の前に広げられたプレーヤーとほとんど同じ立場だ。「Fallout 3」はプレーヤーの決断が世界そのものに変化を及ぼしていく。この「来るべき世界」はプレーヤーの心に何かを問いかけるパワーを持っている。「こんな世界で、俺はどう生きていくのだろうか」この問いを心の中で繰り返しながらプレイできる作品に出会えたのは、非常にうれしく、楽しかった。この感触を多くのプレーヤーに味わってもらいたいと思う。

レイダーに占拠されてしまったスーパーマーケット。奥につるされているのは人間の死体だ スーパーミュータントは非常に強力な存在だが、頭を撃ち抜くことで大ダメージを与えられる 首に爆弾を仕掛けられた奴隷。奴隷商人を敵に回しても彼女を助けるべきか?
凶暴なヤオ・グアイだがアニマルフレンドという特性を身につけていれば味方に 巨大な甲殻類の怪物ミレルーク。顔が弱点だ 知能をなくしてしまったフェラル・グール。彼らはグールとは異なる存在だ
体力を回復させるスティムパックはトイレの救急箱に入っていることが多い 地下鉄は瓦礫で寸断されてしまった都市の通路となる場合も。フェラル・グールには要注意だ 放射能をまき散らすフェラル・グールの進化体「光りし者」。彼らもまた知能はない


■ 的確な判断を求められる戦闘システム、生きていくために必要なスキルとは?

射撃武器を持ってV.A.T.S.を使うことで部位攻撃が可能になる。利き腕を撃つなど状況に合わせた戦い方をすることで有利に
3人称視点でもプレイ可能。先日の体験会ではこの視点でプレイする人が多かった
クエストでは様々な選択肢が出る。1つ1つの決断がこの世界での生き方に関わってくる
プラズマライフルは敵を粘液に変えてしまう威力を持っている
 「Fallout 3」は見た目からFPSと判断されそうだが、RPGである。FPSの感覚で敵を狙い、撃っても、その効果は厳密なものではなく安定したダメージを与えられない感じだ。本作ではFPSがうまくても生き残れない。戦闘ではアクション性よりも、戦略性が重要視されているのだ。その戦略の鍵となるのがV.A.T.S.(Vault-Tec Assisted Targeting System)である。

 V.A.T.S.を使うことで時間は一時停止し、AP(アクションポイント)が続く限り攻撃を指定することができる。人型ならば頭を狙うことで大ダメージを与えられる。グレネードを投げつけようとする時に手の中で爆発させたり、近接武器で攻撃しようとする敵には足を撃ち、移動速度を下げて距離を置いた戦い方をする、といった戦法も有効だ。

 複数の敵に囲まれたときなどはAPを使い切っても戦闘が継続する場合が多い。このときは遮蔽物に隠れたり、後ろに下がるなどFPS的なアクションの腕が必要となる。きついときにはAPを増やす「ジェット」といった薬を服用するのも良いだろう。ゲームではPip-Boyを呼び出せばいつでも状況を一時停止できる。また、敵への命中率は距離や姿勢で大きく変わる。あえて敵の攻撃をかいくぐり接近したり、武器を構えて顔をさらした瞬間を狙ったりと、あわてずに戦うことを心がけたい。

 本作はレベル制のゲームであり、クエストをクリアしたり、戦闘することで経験値を得て、プレーヤーは成長していく。プレーヤーキャラクタはSPECIALと呼ばれるパラメーターと、スキルそして1レベルごとに取得できるPerksと呼ばれる特別な能力を持っている。パラメーターはスキルの成功率にも関係してくる。また高レベルのPerksはパラメーターが6以上(基本値は5)ないと習得できないものもある。このためPerksでパラメーターを1つ増やす、という“準備”も必要だ。

 スキルはゲームの進行に大きく関わってくる。「スモールガン」は拳銃からアサルトライフル、ショットガンなど携行火器の多くに関わってくるスキルでこれと「リペア」を上げていけば戦闘で困ることはないだろう。また、「スピーチ」も上げておくとかなり有利なスキルだ。このほか鍵穴を開ける「ロックピック」、コンピュータをハックするための「サイエンス」が冒険で重宝するスキルといえる。

 偏ったスキル構成だとゲームはかなり難しくなるだろう。最初は実用重視で習得していくのが良いと感じた。ゲーム中盤からはミニガンやミサイルランチャーなどの“ビッグガン”を使うスキルや、プラズマライフルなどの“エネルギーウエポン”も手にはいるようになる。素手格闘での特殊なPerksや、設計図を得ることで作れる強力な近接武器なども存在する。プレイの仕方にもよるが戦闘のウェイトは大きい。どんな戦い方をしていくかも考えて行かなくてはならない。

 Perksの中には非常にユニークな要素がある。自身をサイボーグ化し耐性を上げるものや、取得することで夜の間だけ力を増すもの、動物を味方にする能力まである。この世界の北側には犬のミュータントのような「ヤオ・グアイ」という生き物が多数棲息していて、動物を味方にする能力はフィールド探索に有効だった。

 能力値やスキルの他に、本作には「カルマ」というパラメーターがある。クエストには必ずいくつかの解法が用意されていて、カルマを変化させる選択肢も用意されている。カルマは上がれば善人となっていき、下がると悪人となる。その違いはNPCの反応に露骨に現われて、クエストの進行にも関わってくる。今回のプレイではカルマを上昇させる選択肢を選び続け、善人のプレイとなった。さすがにこれだけ悲惨な世界に住んでいる人々をさらに不幸にする選択肢は選びづらかったというのが正直なところだ。

 クエストは力に訴えるもの、スピーチで有利に運ぶもの、そこから発生するクエストをクリアするものなどいくつもの選択がある。関係者をその手にかけ続ける、というのもできるかもしれない。今回筆者は、スピーチの成功率を上げるためにカリスマを一時的に上げるウィスキー(スコッチやワインも同じ効果)を使ったり、光学迷彩のステルスボーイを使って、アイテムをスリ取るといった方法も使ったりした。会話の前でセーブしうまくいかなかったらロードというのも定番の“裏技”だろう。

 レビューにあたり悪人プレイも試してみたのだが、ただ単にターゲットを殺すだけではカルマは下がらない感じだ。住人同士が不和になったり決定的な不幸になるにはどうするかを考えなくてはいけないと感じた。ちょっと心理的にもしんどそうではあるが、きちんとその選択肢が用意されている自由度の高さは評価したい。クリアしてから、全く違う選択、そして人生を試してみる、というのも楽しそうだ。

体力管理や移動、クエスト確認などPip-Boyは多彩な機能を持っている。使用中は戦闘中でも状況が一時停止するのがありがたい
ヘアピンの角度で鍵を開けるロックピック。成功すると鍵が開き経験値もゲットできる 訓練を受けることでパワーアーマーをまとうことが可能に ファイアーアントは触覚を破壊することで同士討ちをはじめる
モンスターの部位破壊の表現はかなり徹底的だ。リアルさよりもいかにバラバラにするかに熱を入れている印象だ 設計図と部品を手に入れることで作成できる近接武器シシケバブ。敵を燃やしてしまう力がある 光学迷彩のステルスボーイを使うとスニーキングとスリの確率が大幅に上がる


■ 繰り返し問いかけられる「人類の明日」。プレーヤーは何を考え、何をしていくのか

村人に力を貸してスーパーミュータントを撃退する
ヌカコーラマニアの女性。ノリノリである
Brotherhoodから追い出されたというアウトキャスト。敵に襲われたとき彼らの偵察隊がいると手助けしてくれる
 核戦争から200年後の世界でも、人々は争いをやめてはいない。世界は対立に満ちている。ラジオをつけると「エンクレイヴ」と名乗る自称大統領の男が力強く、しかしながらいささかうさんくさく国家への忠誠を繰り返し要求している。

 世界の東側で聞けるようになる「ギャラクシーニュースラジオ」はノリの良いディスクジョッキー「スリードック」がエンクレイヴのラジオに皮肉を効かせつつ、ニュースを伝える。ギャラクシーニュースラジオはプレーヤーのクエストの結果をみんなに伝えるという側面も持っていて、善人プレイの場合ちょっと照れてしまうほど褒められた。悪人としてプレイした場合、どんなこと言われるかを考えると少し怖い。

 スリードックを支援しているのは「Brotherhood」という組織だ。彼らはパワーアシスト機能を持ち、重装備でも普段と変わらぬ動きができるパワーアーマーや、光弾を発射するレーザーライフルなど200年前の技術を保ち続ける謎の武装組織だ。Brotherhoodの一部はより直接的にレイダーやスーパーミュータントを倒す自警団として「アウトキャスト」を名乗り、一定地域を見回り続けている。

 リベットシティという空母をそのまま街にした場所もある。メガトン以上に多くの人が住む街で、ここでは過去の遺物を保存する「博物館」を見ることができる。政治機能のあった地域には本物の博物館が廃墟として残っていて、そこでは200年前の過去の遺物が眠っている。その地域にはなぜかスーパーミュータントが集まって多くの場所を占拠している。彼らは知能がそう高そうにも見えないが、何か意図があるのだろうか。

 過去の遺物の収集という要素ではヌカコーラマニアの女性がいるのが面白い。彼女の家を訪ねるとヌカコーラの歴史を語る「ヌカコーラ・ツアー」を見ることができる。家にある看板や自動販売機の前で彼女がポーズを取って、うれしそうにただしゃべるだけのツアーだが、とても楽しい。彼女は戦争直前に発売されたヌカコーラの特別バージョン「ヌカコーラ・クァンタム」の収集をプレーヤーに依頼してくる。クァンタムはなんと放射性のアイソトープ入りで闇の中でも光り、飲むと放射能の影響を受ける。これが独特の味を生み出しているというのだが……。

 「Fallout 3」の世界は、父親の行動が引き金になるメインストーリーの他にも様々なサブクエストが盛り込まれている。遺物の収集や人質の救出、暗殺や奴隷の捕獲など様々なものがある。開拓民の村を襲ってくるスーパーミュータントから守る、といった西部劇のようなシチュエーションも用意されていて、楽しい。

 今回は善人プレイを心がけ、ヒーローとしてのロールプレイをしたため、暗殺ミッションなどは最初は躊躇した。しかし前述したとおり「Fallout 3」のクエストの解法は1つではない。必ずしもターゲットを倒すことだけが正解ではないのだ。しかし、結果として意外な結末が待っていたりと、善意が徒になることもある。もちろんクエストを受ける前の状態をロードしても良いとも思うが、結果を受け入れ、心に刻んでその場を後にする、というのも1つのプレイスタイルだろう。

 「Fallout 3」ではPip-Boyでクエストを選択しておくことで、次にどこへ行けばいいか表示することができる。このためメインクエストだけを淡々と進めていくこともできるが、それだけではこの世界を堪能したとはいえない。メインクエストのみならそれほどレベルを上げずにもクリア可能だが、じっくりと世界を見て回って欲しいと思う。

 かつて人の住んでいた街に地雷をばらまきたった1人で街を守っている男、火を噴く奇怪な巨大蟻、レイダー達の街、地下施設で自分の研究に没頭しているグール……開発者はかつてインタビューで「核シェルターであるVaultは1つだけではない」と語っていた、もしあるとするならばその世界はどのように200年前の世界や技術を“保存”しているのだろうか。故郷であるVault 101のその後も気になるところである。

 「Fallout 3」は“来るべき未来”をテーマにした様々なストーリーが盛り込まれた作品である。多くのエピソードは独立していて、その1つ1つのピースがパッチワークのように全体を構成している。様々なエピソードを体験する中で「人類の明日」へ想いをはせる。

 開発チームは「オブリビオン」という作品で、ファンタジー世界を旅する楽しさをファンに提供したが、「Fallout 3」の舞台はスーパーマーケットや住宅、博物館など“生前”の姿をプレーヤーに思い起こさせるものになっている。いまではすべてが廃墟になりすべてを無に帰そうとしている。その感覚が独特の哀しさをプレーヤーにもたらしている。

 しかし、それでも例え過ちを繰り返し続けても、人類は生き続けている。「Fallout 3」で描かれるのは過酷な世界でも“前進”をやめない人々の姿だ。例えそれが間違っている答えであっても人は自ら信じるもののために前に進み続ける。プレーヤーはそんな人達と世界を生きていく中で、何を信じ、何をなしていくのだろうか。

ゲームとして用意された結末は存在するが、それ以上に自分の中で生まれた“問い”を大事にして欲しいと思う。仮想の世界・設定を使って「人間の姿」を問うことがSFというジャンルの面白いところだ。「Fallout 3」は間違いなく“問い”をプレーヤーに投げかける良質のSF作品である。

子供を護衛するクエストも 敵のいるところには人質が囚われている場合もある 空母を街としているリベットシティ
左はリベットシティの中の博物館。中央と右は廃墟となった博物館のものだ。Vault 101をモデルにしたアトラクションがあり、懐かしさを感じさせる
NPCは独自のAIで動いている。掃除をしたり、挨拶をしたり、生活感を感じさせる カルマが善だと突然支援を受けることも Vault Boyの人形は見つけることでスキルを上げることができる。コレクションして自宅に飾ることも可能だ
メインクエストでは父を追うことになる。父の目的は何なのだろうか 巨大なスーパーミュータント・ベヒモスとBrotherhoodの戦い 狂ったロボットに襲われることも
この世界は廃墟に溢れている。ここに人間が帰ってくる日は来るのだろうか メガトンのモイラは旅行者のガイドブックを作るために無理な注文をしてくる レイダーがたむろしている場所を発見。戦いを挑むか、逃げるか
地下鉄で隠れ住むヴァンス。何故彼らは他の人々と接触を断っているのか アイスクリームを持った巨大な人形。あの建物は何なのだろう 最新装備に身を包んだエンクレイヴを名乗る兵隊達。ラジオの大統領との関係は!?

Fallout 3 (C)2008 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Bethesda Softworks, Bethesda Game Studios, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. Fallout, Prepare for the Future and related logos are trademarks or registered trademarks of Bethesda Softworks LLC in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.

□ベセスダ・ソフトワークスのホームページ
http://www.bethsoft.com/jpn/index.html
□「Fallout 3」のページ
http://www.bethsoft.com/jpn/Fallout 3/index.html
□東京ゲームショウ2008のホームページ
http://tgs.cesa.or.jp/
□関連情報
【11月10日】Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」
「Fallout 3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081118/kaigai32.htm
【11月10日】マイクロソフト、「Fallout 3」プレス・ユーザー向け体験会を開催
メディアとユーザーに製品版を初披露、核シェルター「Vault101」の生活シーンを中心にプレビュー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081110/fallout3.htm
【10月9日】PS3 / Xbox 360「Fallout 3」プレビュー
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【7月20日】2008年の最高傑作RPGとなるか!? 「Fallout 3」プレビュー
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【4月24日】ゼニマックス・アジア、新作タイトル発表会を開催
今年の目玉はポスト「オブリビオン」の大本命「FALLOUT 3」!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080424/bethesda.htm

(2008年12月4日)

[Reported by 勝田哲也]



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