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制作発表以来、熱い注目を浴びている本作だが、今年の3月のテスト予定が延期になり、大きくモデルチェンジしての再登場となる。原作漫画の知名度のみならず、「暴力が支配する世紀末世界を生き抜く人々」というこれまでにない題材を扱う本作はMMORPGファンもサービス開始を待ち望んでいる。 今回、テストに先がけてガンホー社内で体験会が開催された。12月25日のクローズドβテストではどのような体験ができるか、本作の要素を紹介したい。
■ 時はまさに世紀末、暴力が支配するこの世界でどう生きるか、モヒカンから萌えキャラまで作成可能
週刊少年ジャンプに'83年から連載が始まった原作では一子相伝の暗殺拳「北斗神拳」を使う“ケンシロウ”が主人公となり、世紀末救世主としての彼の戦いが描かれる。北斗神拳は人体にある“秘孔”と呼ばれる急所をつくことで、人体を破裂させたり強化することのできる秘術で、伝承者自身も修行により人間の限界を超えた身体能力を持つ。 朽ち果てたビルや折れ曲がった高速道路など現代社会の崩壊を描く背景、その中で悪逆非道を行なう悪漢……。ケンシロウはその悪者達を徹底的にたたきのめしていく。「お前はもう死んでいる」とケンシロウにいわれた悪役は、「何をいってやがる」と嘲笑し、次の瞬間体が倍以上ふくらみ、苦悶の表情と共に破裂する。これまでなかったバイオレンスな描写が話題を集め大ヒットとなり、アニメ化を経て現代でも映画をはじめ様々なメディアに登場する人気作品となった。 「北斗の拳ONLINE」は原作をベースにした世界で「いかに生き抜くか」をテーマにしたサバイバルアクションRPGである。「北斗の拳」は北斗と対をなす拳法「南斗聖拳」を始めとして様々な拳法の使い手が登場する。プレーヤー達は様々な技を持つ人間としてこの世界を訪れる。本作ではNPCと戦うだけでなくPvPも可能となっており、プレーヤー達とも戦いながら、「自分なりの生き残り方」を探していくことになる。 ただ悪漢を倒すケンシロウの活躍が「北斗の拳」の楽しさではない。原作ではタガのはずれた悪事を楽しそうに行なう悪役、弱者を踏みつけにして、邪悪な笑みを浮かべる彼等達の行動も詳細に描写されている。だからこそ、彼等悪役達がむごたらしく倒される爽快感が際立つ。 MMORPGとなる「北斗の拳ONLINE」では、プレーヤー達全てが品行方正の正義の味方の行動を求めないだろう。強者に媚び、弱者に横暴になる、「外道」としてのプレイや、細々と生き抜くような村人達のような悲しい生き方も、戦いに関係ない風来坊の生活もしてみたい。他のオンラインゲームでは体験できない、殺伐とした世界で生き抜く面白さこそ「北斗の拳ONLINE」で求められる要素だ。 キャラクタメイキングの説明をしていこう。「北斗の拳ONLINE」ではプレーヤーキャラクタは原作を思わせる劇画調のシェーダーによってキャラクタが描画されている。体型や顔の形は数パターンから選ぶことになるが、身長や頭の大きさなどはスケーラブルに変えることができる。原作では成人男性を片手で握りつぶすような大きさの大男がたくさん登場したが、男性は標準が2メートル、女性は180センチメートルとなっており、大きい。それぞれ最大で20センチメートル増減できる。 体型は太めを選びスライダーを調節すればかなりの太めのキャラクタにもできる。美男美女だけでなく、怪物のように醜い顔や、モヒカンの髪型も用意してある。ユニークなのが目の大きな「萌えキャラ風」の顔も用意されているところ。体の小さな美少女キャラクタにむごたらしくPKされる、という状況も生まれそうだ。 キャラクタ作成時には「二つ名」がつけられるのも大きな特徴だ。「炎の~」、「衝撃の~」といったかっこいいものも可能だがセンスが問われることになるだろう。MMORPGでの名前に関して筆者はプレーヤーのセンスにいつも驚かされる。二つ名という要素にどのようにセンスを発揮するか、非常に楽しみだ。 キャラクタは完成時に「北斗門下生」、「南斗門下生」、「ごろつき」、「大道芸人」の4つの生業(なりわい:クラス)からランダムで決定される。今回のクローズドβテスト時にはこのクラスの変更はできないため注意が必要だ。キャラクタは2人まで作ることができ、もう一人作って流派を選ぶのも良いかもしれない。キャラクタを削除した場合は24時間の削除期間を経なければそのキャラクタスロットは使用できない。
それぞれのキャラクタには様々な奥義(スキル)が用意されている。北斗、南斗はおなじみの技が多く、ごろつきは「空手キック」や「ヘッドバット」など格闘技のポピュラーな技から「超いてぇよ~」といった悪役の技、「時速200キロのパンチ」などが用意されている。ユニークなのが大道芸人だ。実用的な技はほんの少しで、「火吹き」や「ジャグリングボール」といったパフォーマンス系の技が充実している。これらは相手にダメージを与えず演技を見せつける「屈辱技」となる。インタビューで触れられた「華麗なるやられ役」の要素は今回まだ実装されていないようなので、ユニークなプレイをしたければ大道芸人がおすすめだろう。
■ マウスでコマンド入力し、奥義を決めろ! 独自性の強いアクション戦闘システム
戦闘は1vs1の戦いになる。操作方法は特殊でマウスのホイールで前後に移動し、ZキーでパンチXキーでキックCキーでガードを行なう。キーを押すだけでは技は発動せず、パンチを出すならばZキーを押しながらマウスの左ボタンを押したまま→(上下斜めを含む左右6方向)にドラッグ後に離すことで繰り出すことができる。攻撃はリズミカルに繰り出すことで連続で繰り出せる、Zキーを押しっぱなしでマウスを右、右という感じでドラッグするとそれに合わせてキャラクタが技を繰り出す。右、右斜め上、右左斜め下と当てるポイントを変えたり、途中からXキーに押すキーを変えてキックにスイッチしたりすることも可能だ。 数発敵に攻撃を当てると「ドゴッ!」という書き文字と共に敵が吹っ飛び、倒れる。起きあがった敵はふらふらになっている。この時が奥義を炸裂させるチャンスだ。奥義はパンチを押しながらマウスを奥義ごとにある規定方向にドラッグ、というようにコマンドが決められている。奥義の入力が成功することで技が発動し、キャラクタの強力な攻撃に敵は大ダメージを食らう。技のモーション、効果は原作を本作なりにアレンジしており決まると大きな爽快感が得られる。 北斗門下生は奥義炸裂後も敵が生きていれば、ここからさらに「秘孔モード」に移行する。ふらふらになっている敵の体の一部が輝き、ここをうまくクリックすることで敵のHPゲージがいくら残っていても1撃で倒せる。他の流派にはない大きなアドバンテージだが、秘孔の出現箇所はランダムなのでなかなか難しい。残り体力が大きいほど秘孔モードのチャンスは短くなるという。 クローズドβテストのバージョンでは敵は自分から移動せず一定のパンチを繰り出すのみだ。ホイールボタンで素早くキャラクタを動かし、マウスをぐいっとドラッグしてパンチを繰り出す。リズミカルにドラッグすることで連続で攻撃が当たり、敵が吹っ飛ぶ。最初は焦って奥義コマンドをうまく入れられないが、コツをつかむと技が繰り出せるようになる。 奥義ポイントは一部の奥義や攻撃を成功させることによって貯めることができる。バトル時に攻撃や防御、奥義などを成功させると「強」、「謀」、「術」、「能」4つのステータスのどれかの経験値を獲得することができ、その方向性によって奥義の習得が可能になる。奥義を体得するには、奥義ポイントを消費する。戦い方と、奥義ポイントの使い方で自分だけのキャラクタとなっていく(クローズドβテストでは実装されないが、戦い方で生業が変化する場合もあるという)。 強力な奥義はコマンドが複雑だが、練習を積むことで出せるようになる。技のコマンドは現在のところ多くが「秘密」となっている。12月25日には一部のコマンドが下記公式サイトで公開される。これらのコマンドは技の「基本」となるもので、ここからアレンジ、発展させることで各技のコマンドになるという。テストプレーヤーは是非公式ページの情報を参考にして試行錯誤を繰り返し、解析してもらいたい。 マウスでコマンドを入力する独自の戦闘スタイルは最初戸惑いがあったが、繰り返すことでどんどん楽しく、のめり込んでしまった。うまくコマンドを入れることができるか、という緊張感は通常技でも感じられ、相手をダウンさせた時頂点に達する。NPC相手ならじっくり練習も繰り返せる。格闘ゲームほどシビアさはなく、うまくコマンドが決まり技を繰り出すことができると「どうだ!」という気持ちになる。 PvPの時はまず敵をダウンさせるという駆け引きが重要な要素となりそうだ。NPCの場合は敵が出す技の隙をつき、こちらの攻撃を当てることでレベルが高い敵すらも倒すことができたが、プレーヤー同士の場合は離れても敵がつめてきたらタイミングが取れない。ここではガードが重要になるが、ガードもまた上、真ん中、下と種類があり、敵の攻撃をどう先読みできるかが鍵となりそうだ。
戦闘システムの駆け引きに関するシステムはまだ練り込む必要も感じられたが、このユニークな入力システムは面白いし、新しい可能性を秘めていると強く感じた。うまいプレーヤーは的確に秘孔を決め、道を究めようとする大道芸人プレーヤーはふらふらになっている敵プレーヤーの前で玉乗りをして見せ挑発するだろう。まずクローズドβテストでどのような光景が繰り広げられ、ユーザーから提案がなされた上で、このシステムがどう進化していくのか、興味を持って見守りたい。
■ 原作の世界を「歩く」楽しさ。暴力と欲望の中に希望がある陰惨すぎない世紀末世界
村の周りは廃墟が広がっている。今回実装されたマップは1枚の広大なもので、様々な場所に原作でおなじみの建物、NPCが登場する。序盤のクエストは見ることができたものの、どのようなストーリーが展開するかはまだ秘密だ。レベル上げをせずいきなり色々な場所を歩いてみる、というプレイも楽しいかもしれない。 本作ではどんな高いところから落ちてもダメージは受けず、スペースキーを押すことで身長の2倍くらいの高さまで飛び上がることができる。足場さえあればビルの屋上などに行くことも可能だ。本作は移動したい地点を左クリックするというオーソドックスな移動システムを採用しているが、Wキーで前進、Sキーで後退、AキーとDキーで左右を向くというキー操作にも対応している。足場の小さいところを移動する場合などはキー操作で細かく移動する方法が有効だ。 プレーヤーキャラクタには「空腹度」というパラメーターがあり、空腹ゲージは0になっても餓死はせず、NPCを倒すと入手できる食べ物を使ってこのゲージを上げることができる。ゲージが上がることでキャラクタの能力が増加するなどの効果がある。NPCが落とす食べ物の中には「得体の知れない肉」といった不気味なものもあるが、食べることで力が増す。世紀末に生きる人々は、細かいことなど気にしていられない、というところだろう。この他、現在は実装されていないが「乗り物」というパラメーターも確認できた。フィールドにもバイクや車が配置されていた。 フィールドは原作ファンにはおなじみの場所、キャラクタが登場する。ハート様やスペードなどの「四天王」と手下、“神をも欺く男”ジャッカル、バットの養母、“種籾の老人”などなど、彼等がプレーヤー達とどう絡んでくるか楽しみだ。フィールドもまた凝っており、コロッセウムのような外見の獄舎「ピレニィ・プリズン」や閉ざされた巨大な扉のある「GODLANDの入口」なども確認できた。 巨大なガスタンクや、折れた道路、廃棄された列車など崩壊した文明を象徴するオブジェクトもたくさんある。また、「ミスミの村」では楽しげに外を走り回る子供や、黙々と畑を耕す人を見ることもできる。彼等は夜になると姿を消すという。「北斗の拳ONLINE」の1日の長さは48分、深夜にしか現われない悪役がいるなど、時間の仕掛けを活かしたギミックも期待できそうだ。 「北斗の拳ONLINE」はフィールドのセンスも良く、重要なキャラクタは気合いを入れて再現されているのが伝わる、デザイナー達の原作への「愛」を強く感じる作品だと感じた。ゲームでも「ジャッカルといえば、『俺の右腕はここにある』の人ですよね?」、「この種籾を!」といった原作のネタで盛り上がりそうだ。「岩山両斬波」など原作に出てきた技を自ら繰り出す爽快感など、原作ファンなら一層楽しめる作品だと感じた。 一方で、現代社会が崩壊した世界、そして道行く人々に難癖をつけ殴りかかり身ぐるみをはいでいくような「外道」達が闊歩する世界を旅するという設定は原作を越えた可能性を感じた。現実では人間の「負」の部分がむき出しになり目を背けずにはいられない醜悪な状況になってしまいかねないが、いかにも「やられ役」の悪役や、殺伐とした世界ながらも希望を捨てない村人がいるゲームの中の“世紀末”の世界は、原作の陰惨すぎない雰囲気をきちんと再現した上で、「君ならどう生きるか?」という問いを投げかけてくれる。
何よりも、この世界はプレーヤーに「夢と冒険」のファンタジー世界とは違った行動をとらせそうだ。繰り返すがこの世界でのプレーヤーの行動に期待している。世紀末世界というフィールドを与えられたプレーヤーはどのような道を歩き、何を見出すのか。道は拓かれたたばかりである。提示された世界にプレーヤーがどのような反応を示し、改良点や新しい要素を望み、スタッフがどのように受け止めていくか。「北斗の拳ONLINE」はどのようなゲームになるのか、本当に楽しみだ。
(C)1983 Buronson & Tetsuo Hara/NSP Approved No.EO-116
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2007年12月25日) [Reported by 勝田哲也]
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