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会場:Thunder Dome Studio
そんな中、「何が何でも公約を守る」と年内のサービスを目指して遮二無二頑張っている開発スタジオがいる。2005年の6月に発表され、すでに2度のサービス延期を経た、難産中の難産タイトル「北斗の拳ONLINE」を手がけているThunder Dome Studio(サンダードームスタジオ)である。 Thunder Dome Studioは、ガンホーが子会社のゲームアーツ内に設立した「北斗の拳ONLINE」専用の開発スタジオであり、同スタジオの責任者兼プロデューサーとして、ガンホーの名物マーケッターとして知られる小島幸博氏が就任している。小島氏が最初の仕事として行なったのが、ゲームオンの「天上碑」、フェイスの「ローズオンライン」、ケイブの「女神転生 IMAGINE」などなど、数々のオンラインゲームの開発運営に携わってきた谷川ハジメ氏をディレクターに迎えたことだ。
ふたりはゲームオン時代の同僚でもあり、極めて仲が良いことでも知られる。このオンラインゲーム業界では著名な2枚看板が揃ったことで「北斗の拳ONLINE」は、オンラインゲームとしてどのような進化を遂げたのか。弊誌では今年2月に独占インタビューを行なった経緯もあり、これまでの開発経緯から、正式サービス後の方向性まで責任を持って全部聞いてきた。 ■ 「北斗の拳ONLINE」発表から2年半、この間何があったのか!?
小島氏: 発表後にガンホーからゲームアーツに「北斗の拳ONLINE(以下、「北斗」)」の制作を委託して、ゲームアーツで開発が進行していました。それからしばらく経ったのですけどなかなか完成に近づかず、当初予定の2006年12月のサービスを延期しました。2007年の3月にクローズβテスト(CBT)を予定して募集をかけたのですが、カードバトル中心のゲームデザインに問題を感じ、森下社長やNSPさんと相談して一旦止めることになりました。当時ガンホー側の開発プロデューサーは堀さん(取締役開発本部長)で、僕は宣伝の担当を前回インタビューを受けた神崎君や山本君と一緒にやっていました。そこで私がプロデューサーとしてひきとりますというこということになり、本件を引き継ぎました。 私は「北斗」の開発/マーケティング双方のプロデューサーということで引き継いだわけですが、これからゲームをリファインしていく際に、職人がどうしても必要だということで、当時、ケイブさんで「真・女神転生IMAGINE(IMAGINE)」を手掛けていた谷川君に打診しました。そうして実際来て貰って、小島プロデューサー・谷川ディレクターという布陣で「北斗の拳ONLINE」をやることになったのが、今年の5月くらいです。 それからの期間は、結果的に我々が引き継いで、状況をよくするにはどうしたらよいかという部分を調整してきました。2007年3月にCBTの募集をかけておきながら、そのユーザーさんにプレイしていただくことができませんでしたので、まず何とか間に合わせることを第一目標としました。まだ若いバージョンなのですが、12月25日から1月1日までCBTを実施しよう、というのが現在までの流れです。 編: Thunder Dome Studio(サンダードームスタジオ)の設立はいつですか? 小島氏: 今年の6月です。従来の物理的に分散していた開発体制を見直し、一カ所に集めました。このオフィスは以前別のコンシューマタイトルを作っていたのですけれ ど、それがちょうど終わるということでしたので、この場所をお借りし、各地に分散していたスタッフの方々を集めて風通しを良くしたということです。 編: あえて新旧を付ければ、現在は「新・北斗」ということになりますが、設立が6月ということは、わずか半年で作ったということですか? 小島氏: はい。大部分がそうですね。 谷川氏: ただ、コンセプトの中核をなす部分というのは、必ずしも新しく生まれたものではなくて、旧バージョンのときから大事にしていた、原作の世界観を大事にするということです。そこから「旧・北斗」の「死闘システム」にもあった、1対1の対峙時間を中心に置いたコンセプトが生まれました。 それと、以前のバージョンで「生き様」システムとしていたものの幅を広げ、「生業」システムに昇華したわけですけれども、良いところはすべて継承してやっています。個々のスタッフも引き続き続投していますので、そういった意味でも、ノウハウと、それまで製作してきたリソースを最大限使っています。 小島氏: あとは、やはり継続開発のプロジェクトですので、使えるものは最大限使うということがポイントでした。グラフィックスの素材、キャラクタモデル、背景、そういうものを継続して生かしています。その中で最大の変更は、旧バージョンは自作のエンジンでしたけれども、難しい課題がいくつかあり、信頼性のあるものをということで、谷川君発案のもと「Big World」エンジンに乗せ変えることにしました。その試験版が来て、モデルを乗せ変えたときに、非常に綺麗に乗ったんですね。残りの期間とコストを考えたときに、これだったら期限内にサービスインできるんじゃないかという手応えを得ました。 編: スタッフは何人くらいいますか。 小島氏: ここはプログラマーと企画、あとグラフィックデザイナーの一部で24名、外部にグラフィッカーが7、8名おりますので、全部で30名強になります。 編: 正式発表が行なわれた10月1日以降、色々なプロモーションが始まりました。それを時系列で追っていくと、「小島さんらしさ」を感じます。旧「北斗」と比べると、新「北斗」はプロモーションの仕方からして違いますよね。全体のプロデューサーとしても、マーケティングのプロデュースもやられているんだなと。 小島氏: そうですか(笑)。全体は一応見てますね。 編: その一方で、開発プロデューサーとして、小島さんは何をやられているのか、また何をすべきと思っていますか。 小島氏: 僕はプロデューサーとして管理監督業務をやっています。まず、ガンホーがゲームアーツに出した仕事がきちんと遂行されているかどうかを見ることです。一方で、ゲームアーツから各社に仕事を振っている中で、そのキーマンも自分なので、それについても管理監督をしております。 大枠では、ガンホーがせっかく得たコンテンツですので、それをしっかりファイナライズするということが責務です。実務的には、まあ何でも屋ですね。制作について、ゲームのメインディレクションは谷川君に全部任せています。それ以外の、主な人員のアサインだったり、予算チェックなどが主な業務で、また版権元のNSP(ノース・スターズ・ピクチャーズ)さんとの連動が重要になっていますので、その部分を担当しています。 運良く、来年は「北斗の拳」生誕25周年になるんですね。2008年に出すというのは良いタイミングです。「北斗の拳」生誕25周年を記念するひとつのオンラインコンテンツとして、漫画や、映画、フィギュアなど色々なコンテンツと連携していきたいと考えているところです。 編: ゲームプロデューサーとしてゲームに関して「これだけは」というこだわりは何かありますか? 小島氏: ワガママはたまに言うんですよ(笑)。それは谷川君に対してではなくて、NSPさんに対してで、「女性キャラを出してもいいですか?」といった希望です。モンスターに関しても、「人型以外のものをどうしようか」という考えが実はありまして、世界観をどこまで使っていいですか、と言う話をしています。 谷川氏: 「北斗」の世界観のアイディアについては小島のほうが深いので、彼が発するアイディアから生まれているものというのは多数ありますよ。
■ 「女神転生IMAGINE」元ディレクター谷川氏の「北斗の拳ONLINE」リバイバルプランとは?
谷川氏: 「IMAGINE」は色々な意味での集大成としてやらせていただきましたが、諸事情により降板することになりましたので、ユーザーの方々には非常に申し訳ない気持ちがあります。今回は小島と「北斗の拳」を一緒に作っていくことになりまして、旧「北斗」のちょっと残念だったところ、難しいことに挑戦しすぎていたと思う部分を綺麗に整理しようと考えました。それから「IMAGINE」でも多少残念なところが自分の中でありましたので、そこも咀嚼しなおして、今度は「北斗」で思いっきりチャレンジしようという感じです。 編: 大きなチャレンジとしては、なんといっても「Big World」エンジンの採用が挙げられます。採用の理由は何ですか? 谷川氏: ゲームコンテンツを作るときに、その下支えになる部分の心配が取れないとダメなんですよね。もしかしたらコケるかもしれない、クラッシュするかもしれない、特にサーバーサイドが、と思ってやっていると、コンテンツそのものに注力できません。心がそっちに囚われてしまいますから。今回はそういった心配をできるだけ排除しようと考えまして、できる限り枯れていて、実績があるところを重視しました。また「北斗の拳」をやるにあたって、「BigWorld」はシームレスにマップローディングしますから、そういったところが非常に合ってるかなと判断して採用にいたりました。 編: 逆に言うと「北斗」をやると決まったときに、すでに「BigWorld」しかないな、という判断だったわけですか? 谷川氏: 実をいうともっと候補はありました。当然ガンホーですから、もっと関係の深い、言葉の通じるソリューションはいくつか考えられますよね(笑)。別の海外モノのエンジンを買って来るという選択肢も2、3あったのですけれども、先ほどお伝えした理由から「できるだけ枯れているもの」を使ったほうが心配がないということで、「BigWorld」の採用を決定しました。 編: 「枯れている」というのは実績があるということですか。 谷川氏: そうですね。長く使われていて、さほど新しいものではないかもしれないけれども、それでも自分達がゼロから作っていくことは到底できるものではないということです。そういったローレベルのところで不安を残さないように、ということが念頭にありました。 編: 「BigWorld」エンジン採用による変化というのは「劇画シェーダー」をはじめいくつかありますが、今回、物理はどうなるんですか? 谷川氏: 物理に関しては、「BigWorld」に含まれている物理演算ライブラリを使っています。 編: 例えば、仏像を破壊する、木を倒すといったこともできると? 谷川氏: 破壊に関しては特に使ってないですね。オブジェクトの落下に関しては物理演算を使っていますけれども、それ以上のことはしていないです。オブジェクトを破壊することはできますが、それは物理演算ではなく、あくまでもモデルアニメーションで実現しています。 編: また、リリースの中で「天候」をフィーチャーするという情報がありますが、具体的にどのような計画を考えていますか? 谷川氏: 天候はサーバーサイドでコントロールします。現実時間の何分の1かにゲーム時間を設定していまして、それに従って昼夜が移り変わります。天候制御も「BigWorld」の機能のひとつで、リアルタイムに世界が動いています。今雨の地域、晴れの地域、という制御にしたがって、各地域が影響を受けるようになっています。 編: ということはエリアチェンジはあるんですか? 谷川氏: ないですね。ゾーニングはなしです。リアルタイムに天候が移り変わっていきます。天候の種類は、雷雨、雨、曇り、晴れ、快晴ですね。 編: 天候の変化によってゲームプレイへの影響はあるのでしょうか。 谷川氏: ゲームプレイに変化をつける「予定」です(笑)。例えば雨ですと、体力の消耗が激しいとか、プレーヤーキャラクタの自然回復に影響を与える感じです。これはまだネタなんですけれども、雨が降ったらビニールシートを持って、雨を溜めて、水が取れる! みたいなことをやりたいなと思っています。 小島氏: CBTは、年内にCBTを間に合わせることを最優先していますので、全ての機能を贅沢に盛り込んでいるかというと、そうでもないですね。ただ、昼間にはいる女子供が夜になるといなくなる、そうすると反対に盗賊が出てくる、というのはテストしています。 編: 昼夜の違いでゲームプレイ的な変化はありますか。 谷川氏: 「IMAGINE」でもやったのですけれども、エネミーキャラクタのリスポーンレートに影響を与えたりだとか、出現地域が変わったりします。やはり夜には盗賊が増えたりですね。そういう形で使っています。 編: 夜だけ酒場が開くだとか? 谷川氏: それもやっています。販売品に影響を与えたりですとか、いわゆるゲーム内時間と現実時間の日にち・時刻に連動して、ゲームの内容が変わる、ということをやっています。 編: ゲーム内の1日は、実時間でどれくらいを想定していますか? 谷川氏: 1日は48分ですね。短くてサイクルが速いほうが変化が現れやすいからです。8時間とか6時間にしていくと、一般のプレーヤーの方にとって変化を感じ取れるスピードではなくなりますよね。そうすると面白くありませんので、比較的速めにあわせています。1時間程度のプレイでも変化が感じられるようにしました。
■ マウス一本で直感的に楽しめる新感覚バトルシステムの醍醐味とは!?
谷川氏: 僕ですね。はい(笑)。もうずっと昔から、入力デバイスを活用して遊ぶゲームを作りたかったんです。十何年前に体感モノの筐体が流行りましたけれども、その当時からやりたいなと思っていたんですね。パソコン向けの仕事をするようになってからは、「昔からアナログ操作のいいものが付いてるじゃないか、しかも標準装備で!」ということで、コントローラーに頼る前に、まずマウスを使って遊び倒す方法はないかなと考えていました。そこで図らずも、「北斗」の戦闘がもう一工夫が必要だねという話になりましたので、じゃあマウスを使って直感的に遊んだらどうかと提案したわけです。 編: 「IMAGINE」のときも、谷川さんが入ってからバトルシステムがずいぶん変わりましたよね。試行錯誤を繰り返して最終的に何とか軟着陸したという形でしたが、今回もそういったチャレンジをやってみようかというわけですか? 谷川氏: そうですね、戦闘がユーザー体験の中で長い時間を占めることは間違いありませんから、それなりに飽きが来ないように作らなくちゃいけない、ということはいつも考えています。また、「IMAGINE」のときよりプレイに対する敷居を下げたいとも思っています。「北斗」の場合は漫画の魅力で集まってくださる、ゲームに不慣れなお客さんも多いと思いますので、もうちょっと乱暴というか、ラフにプレイしてでも、画面にすぐ反応が現われて、楽しさが伝わってくるものがいい、と考えています。 編: マウス入力によるバトルのデザインコンセプトを教えてください。 谷川氏: 僕が旧「北斗」で良いなと思ったのは、画面の対決の構図なんですね。奥に敵が居て、自分が手前に居て、そこにぐっとカメラが寄ることで、息遣い、緊張感を感じられるという。それを生かすためには、モーションを多く見せたほうがいいと考えました。前はターン制で、どちらかというとスタンダードな家庭用RPGの作りでしたけども、そうではなく動きの中で偶然切り取られる画面が多いほうが良いですので、もっとダイナミックなものにしたいと考えました。動きの中で、自分の入力がすぐに画面に返ってくるゲーム、そういったことを一番強く意識してやっています。 編: 「北斗」におけるバトルとは何を行なう場だと考えていますか? 谷川氏: 自分の練習の成果を披露する場所です。簡単な入力なのに、人によって使う技も違えば、焦りで入力を失敗することもある。いわゆるプレーヤースキル、テクニックというものをゲームの中に盛り込んでいきたいと考えています。今回は、攻略法を知ってる人がトクをするというよりは、自分で納得いくプレイができるかどうか、みたいなところがメインですね。ある程度ダウン時間などゆとりを持って作っていまして、こなれている人なら間にもうひと技挟んでプレイする、そういう形で自分だけのプレイを目指していける作りにしています。 編: オンラインゲームのバトルは、AIとの対決だけではなく、PvPもひとつの楽しみだと思いますが、先ほどデモを見た限りでは、びっくりするほど大味でしたね(笑)。PvPのバランシングはどのように考えていますか? 谷川氏: 大味ですね(笑)。ですが、これがNGかというと、そうではないんですね。僕らはプレーヤーとしてはゲームに対してコアな方だと思いますので、もうちょっとデリケートな、シビアなものをと思ってしまうんですけれども、ライトな方は違うと思います。スタッフの中にもライトな楽しみ方をする人がいますけれど、皆良い顔をして楽しんでいるんです。色々な技を繰り出しあって、「面白いね、熱いね!」と言うんですね。それが「北斗」の魅力に引き付けられて来る人たちの考え方なんだと思っています。 編: 目標としては、格闘ゲームという線は最初から捨てているわけですか? 谷川氏: はい。格闘ゲームを目指しているわけではないです。 小島氏: ストイックに行ってしまうと、フレームを見切って、というような格闘ゲームの世界になってしまいます。ですがこれはマウスで操作するもので、周りに沢山人がいて、通信で動いているゲームです。「北斗の拳」原作連載時に10歳で今35歳という人たちが「『北斗の拳』か、ちょっとやってみようかな」と考えたときに、簡単にパンチが出る、すぐに必殺技が出る、くらいのノリが一番いいんじゃないかな、という思いがありました。 編: いろいろな流派、スキルのバリエーションがありますが、それらの整合性、バランシングについても、とりあえず横に置いておいてという感じですか? 谷川氏: まず、各流派の技に関しては、いわゆるダメージから、選択肢の数も含めてバランスを取ろうとしています。それから、南斗、北斗の流派と大道芸人のバランシングという点では、元々1軸に並んでいないと考えてください。 大道芸人は南斗・北斗とは全く逆方向の成長をします。いわゆる「モヒカン」も、逆方向の成長をします。成長すれば、奴らは弱くなります(笑)。いわゆる戦闘性能としてはどんどん弱くなるかわりに、芸をたくさん覚えられるようになって、いわゆるヤラレ役であれば、華麗にやられられるようになるとか、そういう遊び方になります。 編: なるほど。単純に強さを突き詰めるゲームではないんですね。 谷川氏: そうですね。パフォーマンスというか、いかに勝つかという部分では格闘ゲームに通じるところはあるのではないでしょうか。 編: それは「ニコニコ動画」のような、インターネットコミュニティへの波及効果を意識しているところもあるんでしょうか。 谷川氏: 意識しているというか、ゲームのほうがむしろインタラクションがあって、自己実現の仮想空間であるという考えがベースにあります。今に始まったことではなく、昔からそうです。時代の進化でようやくできるようになったことが色々とありますので、時代に即した分解能でできることを増やしていきたいなと。できることが多くちりばめられたゲームというのは、やはり面白いと思います。 編: ただひとつ気になるのは、以前取材した際、「全国大会をやりましょう」というお話がありました。この全国大会では、大道芸人や外道のユーザーは優勝をあきらめてくださいという理解でいいですか。 谷川氏: うーん、どうだろう(笑)。ユーザーの皆さんには複数のキャラクタを持ってもらいたいと思っていますが、大会のような人と競う場所だと、それなりにつきつめたキャラクタのほうが有利かもしれないですね。ただ、大道芸人が思わぬところで活躍するかもしれないというのは、まだわかりませんよ(笑)。 もしかしたら、直接対決するようなバトルではなくて、同じゴールに向かって攻略しましょう、というルールだとするじゃないですか。そうすると、トラップを仕掛けるような方法で、格闘キャラ以外の生業の持ち味が生きてくる可能性がありますね。まだそこらへんは正直まだ何も考えていないんですけど(笑)。 編: なるほど、どうしようもない見た目のゴロツキが全国1位になる可能性というのも残されているわけですね。 谷川氏: 結局、アクション性は高いですので、勝てる、負けるでいうと、ゴロツキが勝てる可能性もないわけではないかなと。うーん、やはり実質的には負けますかね、いや負けますね(笑)。というのも、逆に言うと、北斗神拳を極めた人は、外道に勝てないと極めてる意味がないですからね(笑)。 そこはじゃあ、カウンターになるものができないかというと、できないなりの生業を選んで、そういう自分がプレーヤー自身にとってかわいいはずですよね。そういうキャラクタの振る舞いをしたくて、ゴロツキや大道芸人を選んでいくはずなので、それはそれでいいんだと思います。最初にわからないと言っておいてなんですが、やはりガチンコ勝負では負けると思います(笑)。
■ 北斗神拳伝承者から外道まで多種多様な“生業”について
谷川氏: どんどん増えていきますね。他には、料理人とか、秘孔療養士、治療士ですとか。北斗神拳で治療をする、トキみたいな感じですね。他、北斗に関しても、もうちょっとバリエーションを増やしたいと思っています。それから諸派というか、どちらの流派にも属さない格闘家たち。大きなところではそんな感じです。 編: 南斗、北斗以外にいろんな流派がありますよね。旧「北斗」ではいろんな流派を集めて巨大なRvRをやりたいという構想を伺いましたが、その構想はなくなったのですか? 谷川氏: RvRに関しては現在の構想は違いますね。流派に関しては、大きなくくりとして原作でも色濃く出てるものについては、それを前面に押し出すことになるでしょう。そこまで体系化されてないものについては、我々独自の解釈に基づいてひとつの生業として登場していくことになると思います。 編: 南斗、北斗に並ぶ流派はいくつか考えてらっしゃいますか。 谷川氏: そうですね、泰山流ですとか。 小島氏: 生業の話が出ましたので補足しますと、普通のMMORPGみたいに、北斗南斗が初期職業みたいになるかというと、全然そうではありません。最初は皆、ボロを着た「放浪者」から始まります。ある程度進んだらたとえば「北斗門下生」になり、そこからのキャリアパスがあって、「豪傑」みたいな生業になり、そこで「豪傑」なりの技を覚えます。「豪傑」から良い者になっていくと、また別のキャリアに進んでいくという、1軸ではないジョブチェンジをしていくんですね。 今回はCBTですので4職しか入っていないのですけれども、実はたくさんの職業を用意していまして、頑張って能力と術を覚えていくと、「施術師」という、病気を治す人になれたりと、様々な方向に広がっていきます。その際に、奥義として特定のスキルを残す、残さないを決めることができますので、大道芸を覚えつつ北斗に辿りつく、ということもできます。 編: 単なるジョブではないんですね。 谷川氏: ジョブでもありますし、レベルシステムをいくつかの軸に並べている感じです。生業と生業の結合というのは、ツリー型になっているわけではなく、網の目状になっています。必ずしも特定のルートではなく、構造としては本当にキャリアパスですね。ドロップアウトすれば別の方向で活路を見出せる、また後戻りもできるというふうになっています。 目標としては20、30種類あたりを目指していまして、その後もどんどん追加していきたいと思っています。キャラクタのモーションを大事にしていますので、ひとつひとつの生業の中で動きを伴って何かをできるという風に作りたいんですよ。 どうしてもそこに制作限界がありますので、モーションの制作進行度に従って、また実際にゲームプレイとしてできることに従って生業を追加していくことになります。例えば先ほど秘孔医療士のアイディアをお話ししましたが、実際には医療の内容が詰まっていかないとやってもしょうがないですので、ある程度プレイの幅が見定められた段階で導入していくようにしていきたいと思います。 編: 今回色々なスキルを見せていただきましたが、スキルの覚え方はどうなんでしょうか。 谷川氏: 経験値を得て、レベルが上がっていきます。そして、ある範囲に入ると技を習得する機会を得ます。そこまでに技を覚えるためのポイントを獲得していますので、それを充当してスキルを習得していきます。 編: スキルポイントはどのように獲得するのでしょうか。 谷川氏: 殴ったら手に入ります。バトルだけではなく、スキルを使うことによってポイントが溜まって行きます。大道芸人がボールをずっと回しているだけでも溜まって行きます。 編: ケンシロウが使うような大技も、スキルポイントで獲得するのでしょうか。 谷川氏: そうですね。 編: なるほど、その奥義の修得に関して、ストーリー性はゼロですか? 谷川氏: そもそも生業を転じていくというのが、ひとつのストーリーになります。転業していくためのクエストというのがありますし、ケンシロウの使う北斗神拳の技は、北斗神拳の生業に就かないと覚えられないわけです。そこに至る為には、それなりの努力と、ストーリーを経ないと到達できない、ということになります。 編: このゲームにおいて、いわゆる本筋みたいなものは何か想定していますか? 谷川氏: ヒーロー像としてのケンシロウ、ラオウというものに強くあこがれるファンの方は沢山いらっしゃると思います。なので、そこはしっかり力をいれて考えてはいますけれども、必ずしもその生き方が全てではないと思っています。名もなき無頼漢といった生き方もできるでしょうし、町の中で農耕具を作って静かに生きるというのもやりたいですね。僕自身が、オンラインRPGの中では、レベリングとかキャラ育成よりも、できることが多いことが大事だと思っていますので、そういう方向で作っていきたいと思います。
■ 「劇画シェーダー」をはじめとした「北斗」グラフィックスの今後の進化と大規模バトル構想について
谷川氏: おおむね、ソフトウェアレベルでいうと完成レベルになっていると思っています。もっと品質を上げていくということになると、素材、デザインレベルの作業をもうちょっと上げていかなくちゃなりません。今回そこは、それほど強くは望んでいないです。むしろモデルの頂点数が少ないのを逆手にとってと言いますか、ロースペックでも遊べるようにできますので、そちらのアドバンテージを生かしていきたいと思います。 編: 特徴的なのはバトルの派手なエフェクトですけれども、中でも擬音が面白かったですよね。あれは何種類くらいあるんでしょうか。 谷川氏: 今だと十数種類だと思いますね。ただ組み合わせで使いますので、実際の数はもっと多くなります。 編: 擬音は原作漫画からそのままテクスチャ化して使ったりしているんですか。 谷川氏: 正確に言うと目コピーですね(笑)。漫画をトレースしているわけではないです。バリエーションに関しては、原作漫画でいい擬音があれば盛り込んでいきます。 小島氏: 劇画の世界を表現する噴き出しの延長になっていますからね。噴き出しでしゃべるならエフェクトも文字にしてみたら面白かったという感じですかね。これからも増えていくと思います。 編: 一番気に入っている擬音は何ですか。 谷川氏: やっぱり「ドドドドドド」が良いと思いますよ(笑)。出し方としては、本当は墨で書かれた描き文字が良かったと思うんですよ。ですが、「墨はちょっと映えないですね」とスタッフに言われて却下になりまして、今の赤い表現になっています。 編: バトルの将来的な構想を伺いたいのですが、MMOとしてやはりパーティを組みたい、大規模PvPをやりたい、RvRをやりたいといったニーズが出てくると思うんですが、そのあたりはどのように対応されるおつもりですか。 谷川氏: PvPで大規模ということになると、今の形ではなかなか難しいと思います。1対1の戦闘になりますが、徒党(パーティ)は組めます。それから軍団(ギルド)を組むこともできますので、軍団同士が仲良くなったり、離反したり等々を繰り返し、やがては大規模な戦闘もやりたいとは思っています。 編: 3人パーティーを組んでも、3対3という風にはならないのですか? 谷川氏: なりません。1対1が3つできる形です。襲い掛かる前に示しあわせをして、それぞれ飛び掛る、という感じになります。 編: そこのシステムを今後改良する予定はありますか。 谷川氏: 基本的にはありません。大規模戦闘も結局のところは、それぞれの役割を分解していけば、必ずしも複数対複数であることが生きてくるシチュエーションばかりではないと思います。ですので、ゲームコンセプトの段階で1対1にフォーカスした以上、今度は複数を追います、というのは相容れないゲームコンセプトなんですね。どっちかを捨てないと成立しません。両方を追うと多分中途半端なゲームになってしまうと思います。 編: 新しい「北斗の拳ONLINE」を見ていると、まさに刹那的な楽しさの集合体というイメージがありますが、悪漢に囲まれて、北斗神拳でなぎ倒すようなゲームプレイもやってみたいですが。 谷川氏: その実現は考えています。フィールドマップはスケーラブルで、シームレスなマップになっていますけれども、別の空間を用意して、そこではスタートとエンドポイントを用意して、いわゆるアクションアドベンチャーライクな物を作ろうと思っています。そういったシチュエーション限定をしていくことで、プレーヤーのヒロイズムを感じさせるゲームが作れるかなと考えています。あと、フィールドボスは異なったゲームルールにしていますので、1体の強大なボスに対して多数のプレーヤーが協力して立ち向かう、というのは実現します。 小島氏: ここで整理しますと(笑)、徒党(パーティ)は5人まで組めます。5対5で戦えます。チャンバラでは1人ずつかかっていきますよね。「北斗」もそうで、戦いが続いて目減りしていけば、最後は1対1になっていくわけです。軍団は100人まで組むことができます。そこでワーッと戦うのですけど、それも1対1の集合体ということになります。 また複数の戦闘に関しては、ボス戦を用意します。たとえば、大きなラオウがドーンと出て、それに対してパーティーメンバー全員で攻撃を仕掛けていくシチュエーションを用意します。「北斗」という世界観の範囲ではそういうデザインでしか切り抜けられないので、僕の中ではそういう形で整理をつけました。それ以外は、1対1を繰り返して、強ければ全員倒せるし、弱ければ次々に倒されてしまうと言う感じに収束するだろうと考えています。
■ 「北斗の拳ONLINE」の全体像。βテスト後に大規模な再開発を実施
小島氏: これは良いところでも悪いところでもあると思いますが、本作は「北斗の拳」以上のものでも、以下でもないんですね。でっかいドラゴンが出てくるわけじゃない。それをゲームとしてどう昇華するかというのが、ひとつのテーマです。基本的には「北斗の拳」ファンの方にまず遊んでいただきたいと思いますので、期待される世界観を表現するにはどうしたらいいかを考えて、主流のMMORPGの文脈から、少し変化球を入れて再現しています。 「北斗」のユーザーにはもうひとつの年齢層があるそうですね。スロットから入った20歳代の年齢層です。彼らはまだオンラインゲームをやっていないのかもしれません。彼らが「北斗の拳ONLINE」をやってみよう、となったときに、既存のPvP中心のMMORPGのようなハードコアなものではなく、デスペナルティを気にせずに気軽に殴り合いができるゲームです。 生業についても、スタートから色々なところにいけるよ、というのが基本なんですね。最初の旧「北斗」では、いきなり軍閥を選んでどこかに所属するというやり方だったのですが、己の生き様を自分で見つけていきなさいという「北斗」の世界にはマッチしないものでした。それで「放浪者」から始まる、自由なキャリアパスということにしたんですね。 料理人として人々から感謝されるというのもあれば、拳法家として悪い奴をやっつけてくれる人もいるわけです。やられる方はもうリアクション芸人で、いろいろと華麗なやられかたをできるという。そういうものを多数用意して、自己実現の場を提供することが基本です。RVRみたいなものに関しては、その後、お客さんの意見を聞きながら、ゲームシステムとして成立するものを用意したいと考えています。 編: 日本のRPGファンってどういう遊び方をするかというと、要するに全部やりたいんですよね。多分この「北斗」だと、一筆書きのように全部の生業を試す遊び方が多くなると思いますが、そこでゲームが終わるのかというとそうではないと思うんですよね。人気のあるMMOというのは、必ず、楽しいルーティンワークが存在すると思うんです。本作ではそれは何になるのでしょうか。 小島氏: それが「北斗の拳」としかいいようがないですよね(笑)。我々が今構想しているのは、ラオウ編までのキャラクタや世界観を、どのようにゲームに反映させていくか。ゲーム自体は原作「北斗の拳」のアナザーワールドになります。その中で原作キャラクタや世界観などを自由に使って、シナリオもオリジナルのものを作っていく形になります。ラオウ編以降はまだ検討中なのですけれども、そこまでの表現の中で、一緒に何を提供できるかを模索しています。 今回のCBTに関しては、本当にお客様との約束を優先した結果です。少しでもいいから触って、喧嘩祭りをしてくださいと。それから第2次CBTがあって、そのあと、正式サービスに移行します。その間、やや時間がかかりますので、今回は我々から提供することでお客さんから色々な意見を頂いて進めていくという思いはあります。 編: やはりガンホーさんとしても、「北斗」を1日や2日で「ああ、楽しかった」と終わられてしまうのではなくて、1年でも2年でもずっと遊んでほしいなという思いはあるんですね。 谷川氏: それは当然です。「全体像が見えない」という事については、正直な話、まだ作りきれてないだけです。遊ぶ要素がまだ少ないということです。それは、言い訳になってしまいますが、まだあまり長い開発期間を掛けられていないからです。今後100時間でも1,000時間でも遊べるゲームにしていこうと思っています。 基本的には、小ネタをふんだんにちりばめたゲームでいいと思っています。ひとつひとつはそんなに重厚でなくとも、ひとつのキャラクタをやり続けるよりは、色々な役割のキャラクタを複数作って楽しむ、どちらかというとそういう方向でいいと思います。本当にネタをやりつくすゲームにはなると思いますよ。 編: 分かりやすい例だと、勢力間抗争、RvRのような形で収束させるのもひとつの考え方だと思いますが、その方向はとりたくないという方針なのでしょうか。 谷川氏: 個人的にはRvRにさほど魅力を感じていないんですよね。成立させるためには、それ相応の人数バランスが必要ですが、それを実現しているゲームはあまりないと思っています。それに、我々の手の中にゲームバランスがなく、どちらかというとユーザーの側に面白さのバランスがあって、僕が以前担当していたゲームでは、ユーザーさんが勢力を自ら移動して全体のバランスを取り合っているという状況がありました。本来の世界の中の設定だとか、今まで組んできた仲間よりも、大規模戦を楽しむということをテーマに工夫をしているんですよね。 それを考えると、RVRをライトユーザー向けに提供することは難しいと思います。それよりは、個人が等身大で自分のやりたい役割、キャラクタというものを選択できるほうが良いと思います。大道芸をやってみるでもいいですし、ごろつきをやってみるでもいい。サッとやれて、なんとなく楽しくて、それが忘れられないから再度世界に入るという方向に行くといいなと思っています。 編: 中長期的に見ると、バトル以外の要素が気になります。料理人のようなものづくりの部分。それから、カードバトルなどの遊びの部分。ユーザーさんが何かを創造して、勝手に遊んで、どんどん楽しんでくれるようなバトル以外のコンテンツは何を考えていますか? 谷川氏: 最終的には多種多様にとは思いますけれども、あとは本当に妄想レベルになっちゃいますので(笑)。 編: 例えば、生きるために食料が必要なら料理人の存在は非常に重要ですよね、それから広い大地の移動はどうするのか、などゲームデザインに直結した部分で気になるところは多々ありますよね。 谷川氏: 移動に関しては高速移動手段として、皆様待望のバイク、バギーなどを用意しています。そのパーツを差し替えたり、塗装したりといったことはもちろん、ものづくりのひとつとして考えています。 編: 鉄くずからバイクを作ってしまうようなメカニックのような生業も登場すると? 谷川氏: はい。武器、防具、工業製品などは作れます。武器にしても弓とかボウガンもありますから、バリエーション豊かにやりたいと思っています。ただ、単にコンバインボックスの中に材料を入れてボタンを押すゲームは、僕はもういいと思っていますので、それはやらないつもりです。 編: そうすると開発に時間がかかりそうですね。 谷川氏: そうですね(笑)。丁半博打で、コンバインボックスにAパーツBパーツを入れてボタンを押すと確率判定・以上終了というゲームは、もうやっても意味がないと思っているので。だから開発に時間かかると思います。マウスでチコチコやることになるのではないかと思います(笑)。例えば、フライパンをマウスで動かして、置いとくと加熱が進むんですが、揺らすと調節できるような(笑)。そういうふうにすると思います。 編: あとはオンラインゲームとして大事な機能として、コミュニケーション機能があります。噴き出しによるチャットがユニークですが、それ以外にどのような機能を考えていますか? 谷川氏: ひととおり基本機能は入れています。フレンドリスト、ギルドでのチャットなどは当然あります。それ以外には、先ほどちょうどできたばっかりなんですけれど、噴き出しにダイスを表示できるようにしたんですよ。まぁ、チンチロリンですよね(笑)。サイコロを振るモーションを出して、噴き出しに3つのサイコロを出すだけ、特に何の判定もしていないんですけれども、そういった小ネタを仕込むことで、コミュニケーションが広がればいいなと。 編: 吹き出しは縦書きですよね。アスキーアートはどうやるんでしょうか? 谷川氏: スペース技を使ってください。スペースで間を空けて改行させることで調整すれば再現できます(笑)。 小島氏: 新しいのを噴き出しの中で表現するには、ちょっと研究していただかないといけませんね。下のウィンドウにあるチャットログでしたらきちんと出るのですけれど。 編: 吹き出し以外に「北斗」ならではコミュニケーション機能はありますか? 谷川氏: 必殺技を優先していますので、まだ入っていません。今後はモーションを使った表現に力を入れていこうと思っています。 編: 大道芸がやっているような動きとは違うものでしょうか。 谷川氏: ああいうイロモノだけではなくて、戦闘中に指すようなアクションなど、そういう派生をやっていきたいですね。日本人は文字によるコミュニケーションが多彩なのですけれども、モーションでサインを送ったりできると楽しいですよね。 編: キャラクタ同士のインタラクションができると面白いなと思いますけれども。例えば抱える、ですとか。 谷川氏: なるほど。案は色々あります。壁を上がるために、肩車をするですとか(笑)。先ほどもいいましたけれども、2人でビニールシートの端と端を持って雨水を集めるですとか、人と人がセットになって何かをやることについて、案はいっぱいあります。
■ アイテム課金は、便利アイテム、アバターに加え、「北斗」独自のものを検討
小島氏: 基本的なことはまずやります。3種類の物を考えていまして、ひとつはいわゆる便利アイテム的なもの。これは我々が今まで研究してきましたので、本作のバトルに合うもので、いくつか考えています。例えば経験値アップのようなものもあるでしょうし、身に着けるだけで強くなるものなどもあるでしょうね。 もうひとつはアバターです。いわゆるキャスティングキャラクタ、ジャギですとか、ラオウとか、顔は同じになりませんけど、そういう衣装になりたいというユーザーの方のニーズに応えます。世紀末ファッションがどこまでいけるかわかりませんけれども、「ECO(エミル・クロニクル・オンライン)」で培ったような衣装のやりかたもあると思いますので、超特大のモヒカンとか、そういったネタモノは用意したいです。 3つ目は、「北斗の拳ONLINE」ならではの注力したいテーマがあります。それが先ほど仰っていた、ずっと長く遊んでいく為には、というところに繋がるものです。 編: ほうほう、以前、森下さんが、「アイテムだけではなくコンテンツも有料にしていいんじゃないか」という話をしていたんですね。これを仮に「北斗」に当てはめるとすると、エピソード的なものを有料で提供するということでしょうか。 谷川氏: 3分の1当たりといったところです(笑)。エピソード単体では勝負になりませんし、継続性・リピート制がありませんので、それだけでは満足は得られないと思っています。ですので合わせ技一本の施策を考えています。 具体的な内容についてはまだお話しする段階ではないのですが、いずれにしても、プレイをするエンドユーザーが納得して対価を支払うことが大事だと思っています。このゲームの場合は特に原作キャラクタの衣装が非常に強い。オリジナル色のあるものとは違って、皆さんに愛されるアイテム商品になるのはいわゆるアバター商品だと思っています。 編: 今回エンジンがしっかりしていますし、アバターに関してやろうと思えば随分贅沢なこともできそうですよね。 谷川氏: わかりやすいのは素材感を強くすることです。やはり、皮、金属などの質感を強く出したシェーダーをつけて、わかりやすい表現になると思いますね。 編: アバターアイテムの防具としての性能はどのように考えていますか? 谷川氏: 性能と見た目を一致させてしまうと、見た目に惹かれて買った人が、泣く泣くそれをあきらめて性能の良いものに行きたくなりますよね。それはあまり好ましいと思っていませんので、ゲーム中の工夫と、アバター以外のアイテムの工夫で、性能と見た目を関連付け、自由にカスタマイズできる方向に持っていこうと思っています。 編: 韓国のMMOでは、近年ではいわゆる装備意識とオシャレの意識というのは全然別物になっていますよね。オシャレを買うと装備の上に上書きするような構造になっています。そういう考えは取りたくないということですか。 谷川氏: そうですね。装備に関して、ひと手間を掛けてほしいです。そうすれば愛着もわき、それに対して投資もできるという考えになると思います。ですので、見た目と性能を完全に分ける、というのは語弊がありますね。一方、シチュエーションを多く作っていくつもりではありますので、町ではこの服、シンと謁見するときはこの服、といった使い分けも楽しいと思います。 編: アバターに関しては、最初は男だらけのMMOという感じでしたけれども、最近は女性キャラクタも追加されています。これによっていきなり工程が倍になりましたよね。 谷川氏: ホントにそうですよ(笑)。 小島氏: デキは女性キャラのほうがいいですからね。 編: 女性キャラクタについてですけれども、原作には女性ってあまり出ませんが、どのように設定していったのですか? 小島氏: 女の蛮族みたいなものもいれば、原作でいうとマミヤみたいな感じのもあると。 谷川氏: マミヤの印象が一番強いかもしれないですね。原作ラオウ編の最後のほうには、いわゆる宮廷の中で暮らす女性というのが居たりしますけれど、ちょっと冒険には似つかわしくないかもしれません。ですから、プレーヤーの等身大のイメージでいうと、マミヤに近いのかなと思います。 編: アイテム課金制のMMORPGで、女性キャラのアバターに関して、スクール水着だとか、学生服だとか、世界観を完全に無視した衣装を入れることがユーザーに対するサービスだという歪んだ風潮があると思います。個人的な見解として、私はまったく認めてないのですけれども、この点、「北斗」ではどうなんでしょうか? 小島氏: 「北斗」ではやりたくないと思っています。 谷川氏: 僕らは原作者の気持ちをまず第一にしなくちゃいけませんし、それを大事だと思っているユーザーの気持ちも尊重しなくちゃいけませんので、それは無いと思いますよ。というか、やっぱり「北斗」でスク水は有り得ないですよ(笑)。 編: 逆に「北斗」の女性キャラクタということで、実装してみたいアバターは何かありますか? 谷川氏: 数は多くないでしょうが、ややドレッシーなものが原作にもありますので、そういうものもやってみたいと思います。何で最初から無いのかというと、大変なんですよね、足を上げて格闘すると(笑)。どんだけボーン入れるのって話になりますんで(笑)。ですので、正直そこは今避けてるところがありますね。 ドレッシーなものに関して今後入れていくとすれば、シチュエーションを限定する方法が考えられるかもしれません。でも「町の中だけで着られるアイテムです」とか、しんどいじゃないですか(笑)。だからちょっと難しいと思いますね。 編: 女性キャラクタでも、外道的な生き方は可能なんでしょうか。 小島氏: 可能です。そういった意味は男女差は全くありませんし、性能差もありません。 編: そうすると、「北斗」の世界観が崩れてしまうほど女性キャラが増えるのではないですか? 谷川氏: そうかもしれませんが、「北斗」の場合は、女性キャラクタと同じくらい、チョイ悪役(笑)の男キャラの人気が高いですので、ちょうどいいバランスになるんじゃないかなと思います。きっと、複数キャラクタを持つことになると思います。そんな確信があります。 編: キャラクタスロット数はいくつになるんですか。 谷川氏: クローズドβサービスでは2キャラまでですけど、それ以降はもっと増やせるようになります。有料サービスになる予定です。 編: 外道というのはゲームシステムのもとに平等な存在だということですが、ところが、彼らには惨たらしくやられるという妙な希望があって、そのためにはケンシロウのような英雄が必要だと思うんです。たとえば、有料でプレイすると、ケンシロウクラスの英雄キャラクタをプレイできるというものはないんですか? 谷川氏: 現状では考えてないですね。みんな平等ですね。 小島氏: 極めて行くと、やられ方が激しくなったり、やられ願望が満足されるスキル、特技が増えていく感じになりますね。手がよりヘンな方向に曲がったりとか(笑)。 編: 負ければ負けるほど経験値がたまっていくと? 谷川氏: そうですね。負けるほどにより簡単に負けられるようになっていきます(笑)。よりバリエーションのあるやられかたができるようになります。
■ 「北斗の拳ONLINE」は“トンデモ系”MMORPG。今後のサービススケジュールについて
小島氏: “トンデモ系”ですね(笑)。 谷川氏: 当然、“バカゲー”の部分を内包しています。 編: ケンシロウの面影を追い求めてマジメにプレイするユーザーがいる一方で、それをゲラゲラ笑いながら冷やかして、さらにコテンパンに負けて2度楽しいと(笑)、そういう世界ですよね。 谷川氏: ひとつのキャラクタに注力しないというか、そういう方向性があるならばそっちもやってみようかとなると思いますので、こういうデザインになっています。 小島氏: まだ再現できていないのですけれども、爆死の仕方とかについても、倫理の問題がありますから、血が出ないとかですね、色々と研究中なんですよ。膨れ方とかですね(笑)。 編: CEROレーティングでいうと、いくつくらいのゲームになるんでしょうか。 小島氏: 12歳以上ですね。そのラインに抑えたいです。したがって、原作よりは柔らかい表現になります。女の子が輪切りになるのはちょっと問題でしょうということで、NSPさんとも協議をしています。美しく耽美的にやられるとか、蝶が舞うとか、そういう演出で乗り越えていこうと思っています。 さきほどのお笑いの部分についても、原作が全部シュールかというと、途中ちょっとギャグが入っているというバランスですよね。「あべし」、「ひでぶ」とかがそうなんですけれども、そういった笑いの要素が絶妙なバランスであるからこそシリアスが成立しているわけです。そういうノリは残していきたいと考えています。 編: 12月25日からCBTがスタートしますが、何が実装されますか? 谷川氏: エネミーキャラクタとの戦闘、それからプレーヤー同士の戦闘、クエスト、世界の探索ですね。もちろんパーティを組んだり、ギルドを組んだり、その他小ネタは諸々あります。 編: ハイライトは何でしょう? 谷川氏: ボス戦でしょうね。実装エリアはサザンクロスのみになります。他のエリアはCBT2以降に予定しています。 編: CBTの目的は? 谷川氏: 最大の目的は、長らくお待たせしているファンの皆様のために、実際にプレイしていただく場を提供させていただくということです。 小島氏: 2007年にCBTをやるということをお約束しましたので、その実現です。3月に応募していただいた方々は全員当選にさせていただきます。現時点では本当の意味でβ段階の出来ですけど、ファンの皆様にゲームの方向性や今後の可能性を感じて貰いたいと思います。 編: キャスティングキャラクタが何名か登場するようですが、彼らと戦うこともできるのでしょうか。 小島氏: できます。タイマンでも、ボス戦もありますので、そこで是非戦ってください。 編: スキルはどれくらい実装されますか。 谷川氏: 4種類の生業ごとに10種類です。全部で40種類強になります。 編: CBT後の予定については? 小島氏: しばらくはユーザー参加型のWebコンテンツなどを提供させていただき、要望、人気投票、入れたい技などのご意見を収集したいと思っています。「オレ的世紀末」を募集していきます。情報も少しずつ開示して、暖かくなるころに第2次のβテストを実施します。その頃には相当、僕らが触ってもらいたかったレベルのバージョンをお出しできることになると思います。 編: 逆に言うと、CBT後に、再開発の時間をたっぷりとっているわけですね。 小島氏: 継続開発の時間をたっぷりとっています(笑)。 谷川氏: 「たっぷり」とまではいきませんが、やっぱり時間を使わないと量も質も確保できません。まずはCBTでお見せして、方向性が間違っていないかということを確認できればいいなと思っています。もちろん多種多様なデータを分析して、そっちから生かしていくということもやります。 編: 正式サービスはいつ頃を想定していますか? 谷川氏: 正式サービスに関しては、βテストからの流れで考えなくちゃならないことだと思いますけれども、最速だと本当に早いタイミングになることも有り得ると思っています。しかし、やはり安心して遊んでもらうことが第一です。漫画原作ですので、あまりゲームコアでない方も沢山いらっしゃると思うんですよ。その方たちに対しては、MMOにこなれた人たちならなんでもないようなことでも大きな障害になりますし、それでは正式サービスが難しいですからね。きっちり作りこんでからにしたいと思います。 編: 旧「北斗」では、映画とのタイアップといった話もありました。今回はどういったマーケティング上の施策を考えていますか。 小島氏: 25周年ということですので、ありとあらゆる商材が出てくるんですね。映画もまだ第5章が残っていますので、その間に色んなものをリンクして突っ込んでいく感じになります。それはいわゆるガンホー式なのか、小島式なのかわかりませんけれども(笑)、フックは全部かけている最中です。 今回は北斗の世界に入ってもらって、会話をしてもらって、殴りあうというゲームになっています。実はまだダンジョンなど他のフィーチャーが出ていないんですね。ボス戦もまだ実験段階です。次の段階ではそういうものをトライして、どういう反応があるかを見たいです。最後、「北斗」にはドラマがありますから、そこの部分をどう突き詰めていくかというのが来年のテーマです。それを全て突き詰めたものが正式サービスに繋がっていきます。 編: CBTを迎えるにあたって、ユーザーさんに向けてメッセージをお願いします。 小島氏: すいません、大変お待たせしております。1年前にちょうど「遅れます」というお詫びを出させていただいたのですけれども、私自身が責任を持って作り上げるという風に決めましたので、谷川君と組んでしっかりやっていきます。 思えば「ECO」の正式サービスから丸2年経っているわけですが、それからガンホーで正式サービスになっている国産RPGタイトルはないんですね。国産RPG第2号といまさら言っても、「だから何なんだ」ということもあるんですけれども、ガンホーとしては、「ECO」の次の国産RPGタイトルとして恥ずかしくないように、きちんと作っていきたいなと思っています。ですので、「北斗の拳」ファンの皆さんも、25周年を「北斗の拳ONLINE」の中で一緒に楽しんでください。 谷川氏: CBT版をやっとお届けできるということで、まだまだ充実度は十分でないかもしれないですけれども、スタッフ一同、気合を入れて、渾身、命を削りながら頑張っております。少しでも、「このゲームは化けるかもね」と感じていただければ一番嬉しいです。「北斗」も25周年を迎えますので、引き続き一緒に追っかけていってもらえたらなあ、という思いです。
編: ありがとうございました。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2007年12月12日) [Reported by 中村聖司]
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