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スクウェア・エニックス、2008年3月期中間決算を発表
「『ドラゴンクエストIX』の発売日は決めていない。まだ粘っている」

11月19日 発表

壇上に立ち決算の説明を行なった和田洋一代表取締役社長
2008年3月期中間決算実績。和田氏は「奇しくも昨年同期と同じような数値構成となった」と説明
 株式会社スクウェア・エニックスは19日、2008年3月期中間決算を発表した。売上高は前年同期比4.9%減の722億7,100万円、営業利益は6.4%増の97億5,200万円、経常利益が1.0%減の93億300万円、中間純利益は32.5%増の43億9,700万円となっている。

 連結事業別セグメントの売上高を見ると、ゲーム事業は204億4,800万円、オンラインゲーム事業は54億1,300万円、モバイル・コンテンツ事業は35億8,900万円、AM等事業が345億2,000万円となっている。ゲーム事業は前年同期比で12億6,200万円増となっているが、オンラインゲーム事業は前年同期比22億6,500万円減となっている。

 説明会資料によれば上期発売のゲームソフト販売本数も明らかにされている。日本での販売本数を見ると、大きいところではPSP「クライシス コア・ファイナルファンタジーVII」が71万本、ニンテンドーDS「ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウィング」が53万本、Wii「ドラゴンクエストソード 仮面と女王と鏡の塔」が49万本、「いただきストリートDS」が41万本などとなっている。日本での合計は394万本。ちなみに通期事業計画では2008年3月期計画で日本国内は725万本を目標としている。

 決算説明会ではいつも通り和田洋一代表取締役社長が壇上に上がり、決算内容を説明。基本的には中期計画通り進めており大きく変化のないことを強調。そんな中で最も大きく時間を割いて説明したのが、キッズ系カードゲームの「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」。6月21日から先行稼働を開始し7月から正式稼働となっているが、非常に好調だという。和田氏はAM事業について「着実に黒字体質になりつつある」とし、中でも「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」については「(軌道に乗ったのが) 夏以降なので、スピーディに業績に寄与してくれた」と語った。

 同社によれば、7月末時点で約3,500台を設置。現在好調であることもあり、引き合いはあるというが、今後も劇的に台数を出荷していく予定はないという。注目すべきは1台あたりの平均インカム数で、1日約1万円となっているという。9月末現在のカード総出荷枚数は約3,170万枚。

 さらに説明会ではタイトー系列店でのデータも公開された。他のタイトル名は臥せられているが、インカムの1日平均値が挙げられ、その数値を見る限りは圧倒的な数値となっている。このデータは4月から9月までのもので、「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」の1日平均が1万円、他のタイトルの平均は2千円以下で、その差はまさに歴然だ。

 和田氏は、「11月に『第3章「闇の覇者 竜王」』を導入したが、それまでに比べ3倍くらいになり記録となった。一番最初の週より良かった」と現在も引き続き好調であることを強調。また、「いくら強力な『ドラゴンクエスト』のフランチャイズとはいえ、出せば売れるという甘いものではない。ゲームとして成立させるために、ドラゴンクエストのチームとタイトーのチームが、どうすればほかのゲームと手触りが違うのか真剣に取り組んだ。社内の好材料だ」とアピールした。

 これ以外にもタイトーのAM事業系は「着実に黒字体質になっている (和田氏)」という。和田氏は「既存店舗が赤字で体力がなければ新規店舗を出店しても食い合ってしまう。これまでのそういった経験からこれまでは意図的に出店せずにきたが、方針転換をする時期かなと思う」とし、今後は新規店舗を出店していく攻めに転ずる意向を示した。

今回、個別要素としては最も大きく時間を割いて説明されたのが「ドラゴンクエスト モンスターバトルロード」。1台あたりのインカムが非常に大きい。しかし今後も台数は多くは出していかないという タイトーの系列店舗でのキッズ系カードゲームの1日のインカム数。「バトルロード」が大きくトップとなっている タイトーの既存店の売上げ。和田氏によれば「何とかトップをキープしている。既存店の体力がないと店舗を増やしても仕方ないが、(黒字体質に改善されつつあるので) 新規店舗を出店する時期に来た」と攻めの姿勢で臨む意向を示した



■ 「『ホワイトエンジン』の開発は停滞していない」

 ゲームユーザーに直結する話題としては、説明会の後半を割いて行なわれた質疑応答でいくつか明らかになった。

 ひとつはニンテンドーDSの「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」の発売日について。同作の発売日は当初2007年とされていたが、8月27日に「2008年に変更」と発表された。この発表により、筆者自身今期中の発売を断念したものと受け取った。

 今回の説明会でこの質問に対して和田氏は「まだ最後の最後は決めてないんです。普通に考えたら今期じゃないんですけど、まだ粘っているという(笑)。でも、もしこぼれてもバックアップできるようにしておこうということです。ですが、本当に出すか出さないかはまだ決めていないです」と、まだ可能性がある点を示唆。

 とはいえ、その前に発売されると思われるニンテンドーDS用の「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」、「ドラゴンクエストVI 幻の大地」の発売日については「発売日を決めたらリリースを出します」と明言しなかった。

 このほかでは、決算資料内の「コンテンツ廃棄損」が8億7,600万円計上されていることについて「まるごと (1作品お蔵入りになった) もあれば、部品の部分もある」と説明。「一部報道に『ホワイトエンジンの開発が停滞しているかのように書かれたものがあったが?』」との質問には、「『ホワイトエンジン』の開発は止まっていません」とキッパリと否定。「エンジンの開発自体もあるが、それを使う側もいる。共有のエンジンとして開発されているので、使う側もまだ馴れていない。そういった意味では社内で不安感もある」としながらも、「しかし、共有エンジンの開発は止まるというものではない。完全に自前のエンジンということで、社内の体質改善なども含めた風土を変えるというところからやっている。そういった意味では産みの苦しみもある」と語った。

 質問の中にはカプコンの「モンスターハンター」やアクティビジョンの「ギターヒーロー」等を挙げ、「スクウェア・エニックスとして新しいフランチャイズが出にくくなっているのではないか?」といった指摘があった。これについて「社内異動などを行ない色々とやっているが、結果としては出てきていない。とはいえ色々とやってはいる」とし、Wii用ソフト「ドラゴンクエストソード 仮面と女王と鏡の塔」のコントローラーの使い方がユーザーにどのように受け止められているのか、また、日米でどのようにとらえ方が変わるのかといったゲームのシステムに直結するところからはじまり、「Wii Ware」への早期参加、ネットワークゲーム関連では「『ファイナルファンタジー XI』ばかり話題に上がるが、他のタイトルについても他社と運営許諾を結んでリリースして裾野を広めている」と説明。さらに、「DS Styleなどもコツコツとやっているし、カジュアルな『ょすみん。DS』もこのあいだ出した。細かいところでやっている」と続けた。ただ、確かに「ファイナルファンタジー」といった大作に成長しそうなフランチャイズはリリースされておらず、その点については「『ラスト レムナント』が控えている」としながらも、「なにが化けるか見えていないが、やってはいる」とするに留まった。

 そんな新しいフランチャイズの開発の産みの苦しみを味わっている一方で、「ファイナルファンタジー」のフランチャイズに陰りが出ているのではないかといった質問も和田氏にぶつけられた。これは前述の発売ソフトの販売本数一覧の中には「ファイナルファンタジー」の名を冠していながら「それほど本数が伸びていないのではないか」とする点を根拠としている。

 この点について和田氏は「『ファイナルファンタジー』のブランド力は落ちてはいない。リメイクしたものなどもあるので、今回はこういった数値になったと思う。新しいナンバリングタイトルには新作としてリソースは投入して鮮度を保っている。また、古いタイトルもむやみに新しい要素を追加するのではなく、昔遊んだ人にも安心して楽しんでもらえるようにする」と答え、「『ファイナルファンタジー』は全て一緒に見られるが、それぞれナンバリングタイトルでストーリーも違う。それぞれ楽しんでもらっている」と続けた。

 また、発表会資料では各プラットフォームの比率もグラフ化して示された。そのグラフによると前年通期に比べニンテンドーDSとPSP用ソフトが増えており、和田氏はそれを認めた上で「据置型の現世代機 (プレイステーション 3、Xbox 360、Wii) 用の本格派のソフトがまだ出てきていない。そういったソフトを出していかなければならないというのが課題」とし、「リソースで言えば、据置型のソフトの開発に大人数を張り付かせている。それが出るまで携帯機用ソフトで収益を上げなければならず、そうなると携帯機用ソフトのラインが多くなる」とその背景を説明した。ちなみに各プラットフォームに対する印象は「変わっていない (和田氏)」という。

 最後に、関連する話題としてお伝えしておくと、同社には出版部がありコミックスなどで大ヒットを飛ばしているが、もちろん攻略本なども多数出版している。この攻略本に関する質問も出された。

 現在はインターネットが発達しており、Wikiなどのシステムを使用し、ソフトの発売当日に攻略法がユーザーの手によって手軽に広められる。となると攻略本の出版が落ち込みそうなものだが、和田氏によれば「売上げはあまり落ちてない」という。この理由について「タイトルによって違うんですが」と前置きをしながら「位置付けが変わってきた。昔は、攻略本と言えば“早解き”という意味合いだったが、ファンブックとしての意味づけが大きくなってきた。マニアックな情報や絵素材などを中核として構成されている。価値の源泉が変わってきている」と語った。そういった意味では時代が変わってきていると言うことだろう。

上期にリリースされたタイトルの販売本数。大きいところでは「クライシス コア・ファイナルファンタジーVII」が71万本、「ドラゴンクエストソード 仮面と女王と鏡の塔」が49万本などとなっている 昨年通期に比べ当中期はニンテンドーDSとPSPが圧倒的に多い。和田氏は「据え置き型機での収益アップが望まれる」とコメント。しかし次世代機での大作が来年度にずれ込むため、まだ当分こういった状況は続きそうだ


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□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/
□「平成20年3月期 中間決算短信」のリリース(PDF形式)
http://www.square-enix.com/jp/ir/j/data/financial/download/20071119_60.pdf
http://www.square-enix.com/jp/ir/j/explanatory/download/20071119_61.pdf (決算説明会資料)
□関連情報
【5月23日】スクウェア・エニックス、2007年3月期決算説明会を開催
「ドラクエIX」の開発は順調、今後は海外事業+AM事業の拡大
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070523/sqex.htm
【1月31日】スクウェア・エニックス、2007年3月期第3四半期決算説明会開催
タイトーの不採算部門に対する対策を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070131/sqex.htm
【2006年5月24日】スクウェア・エニックス、2006年3月期決算説明会を開催
「『FABULA NOVA CRYSTALLIS』ではさらにゲームが発売される可能性がある」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060524/sqex.htm

(2007年11月19日)

[Reported by 船津稔]



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