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★PCゲームレビュー★

RTSゲームの代表的タイトルの拡張キットが登場
戦士長よ、侵略者の手から先祖伝来の地を守れ!!

Age of Empires III
The WarChiefs日本語版

    • ジャンル:リアルタイムストラテジー
    • 開発元:Ensemble Studios
    • 運営元:マイクロソフト
    • 価格:5,800円(プレイには別途本編が必要)
    • 対応OS:Windows XP
    • サービス開始日:12月15日



 「Age of Empires」(以下、「AoE」)は、リアルタイムストラテジーゲームを代表するタイトルのひとつとして、世界中のゲームファンから確固たる支持を得ている人気フランチャイズだ。'97年12月に初代「Age of Empires」が発売されて以来、現在までに以下のタイトルを発売している。

「Age of Empires」
「Age of Empires: Rise of Rome」(拡張キット)
「Age of Empires II: Age of Kings」
「Age of Empires II: The Conquerors」(拡張キット)
「Age of Mythology」
「Age of Mythology: The Titans」(拡張キット)
「Age of Empires III」

 厳密に言うと「Age of Mythology」だけは系統が異なるが、同じ“Ageシリーズ”としてひとくくりにしている。開発はすべて米Ensemble Studiosが担当しており、現在はマイクロソフトの傘下スタジオとして、「AoE」シリーズ以外に人気FPSゲームの世界をRTSゲーム化した「Halo Wars」の開発も行なっている注目のスタジオだ。

 シリーズ最新作となる「Age of Empires III」(以下、「AoE III」)は、2006年の1月に発売された。従来のシリーズから大きくシステムを一新し、アメリカ新大陸を焦点にあてた欧米列強諸国の戦いにフォーカスし、ホームタウン(母国)と植民地という概念、様々な要素をカード化して戦略を構築するデッキシステムなど、意欲的な要素を盛り込んでいる。

 そして今回の「The Warcheifs」(以下、「WC」)は、ゲームの焦点をアメリカ新大陸への進出を狙う中世のヨーロッパ列強諸国から、アメリカにもともと住んでいた先住民族(いわゆるネイティブアメリカン)にフォーカスをあてたファン待望の拡張キットとなる。

 拡張キットというパッケージである都合上ゲームのプレイには「AoE III」本体が必要となる。内容的にも既存の「AoE III」プレーヤーを対象とした濃い内容になっているため、レビューも「AoE III」を前提とした内容になっていることを予めご了承いただきたい。また、「AoE III」未経験者もこのレビューを機に、「AoE III」に興味を持っていただけたら幸いである。

3文明の中ではもっとも近代化された銃を扱うイロコイ族 騎兵ユニットが多いスー族の強力なトマホーク
先住民族達の特徴的なホームタウン 侵略者を打ち破り真のアメリカ文明を維持できるか?


■ 先住民文明の導入により「AoE III」の魅力が一段とスケールアップ

 「AoE III」における先住民族の扱いは、単なる中立的な交易相手というマップ上の1リソースに過ぎなかった。今回の「WC」により、先住民族文明代表としてアステカ、スー、イロコイの3部族が新たに文明として設定され、新大陸の利権を狙う侵略者であるヨーロッパ諸国文明を相手に戦えるようになった。

 先住民族文明が既存のヨーロッパ文明と大きく異なる点は、まずファイアピットと呼ばれる施設を建設できるところだ。この施設は祈りを捧げる特殊な焚き火であり、一般ユニットがこの焚き火を囲んで踊ることで、様々な恩恵を自陣営にもたらす。

 例えば、祈りを捧げることで強力な歩兵ユニットを一定時間おきに生産したり、待機中のユニットの体力を自動的に回復したりと、何らかの軍事的効果を与えてくれる。祈る効果は踊りにまわっている一般ユニットの数に比例し、踊ってる間は経済活動をすることができない。経済活動とファイアピット活動はトレードオフの関係になっているため、格別に有利になるというわけではないという点に注意が必要だ。

 先住民族文明で生産できる軍事ユニットも個性的だ。アステカ文明は歩兵が強く、スー文明は騎兵が充実している。イロコイ文明はヨーロッパ文明に似ておりマスケット銃など近代的な兵器を使いこなすことができる。3文明それぞれが特徴的な軍事ユニット体系を持っている。

 逆に弱点としては、この3文明はガードタワー、要塞などヨーロッパ文明では欠かせない防衛施設を作成できない。敵陣近くに拠点を築いたり防御する戦法はあまり向かない。タイトル名となっているウォーチーフ(戦士長)を先頭に攻めかける戦い方が求められるだろう。

 文明のリーダーとなるウォーチーフは大自然の力を使い、ヨーロッパ文明側の総督には持っていない特殊能力を備えている。たとえばマップ中に生息している野生生物を味方につけて自軍ユニットとして活用したり、ペットのジャガーを召喚して戦わせたり、文字通り一撃必殺のアビリティを持っていたりと、単独で軍事力を形成できる力を持つ。

 それではヨーロッパ文明勢力には何か変化があったかというと、傭兵を雇う概念が強化され、「先住民族大使館」と「酒場」の2つの新しい施設が建設できるようになった。そのうち前者は先住民族文明も建設可能だが、酒場はヨーロッパ勢専用の施設となる。

 「AoE III」では先住民族の集落に交易所を設けることで、先住民族の軍事ユニットを金で雇うことが可能だった。先住民族大使館は、交易所を設けている集落で生産できるユニットであれば、ここから直接雇い入れることが可能になる。低コストでユニットの数をそろえたい場合には非常に便利な存在だ。

 酒場は、もっと様々な民族の特徴的な軍事ユニットを傭兵として雇うために用意された施設だ。清国弓騎兵など「AoE III」では参戦していない文明のユニットも存在する。酒場をダンスホールにアップグレードすると日本の浪人も雇える。ただし1ユニット金400と非常にコストが高い。金の生産が容易なオランダなどには向いているかもしれない。

酒場はWCで新しく登場した施設だ ファイアピットで踊ると様々な恩恵が発生する
野生動物を味方につけ戦力にすることも可能だ ウォーチーフの特殊アビリティで野生の動物を仲間に

酒場で雇える浪人は高コストだがなかなかのスペックだ 酒場はアップグレードする事も可能
ジャガーを自在に呼び出してガードに使う事もできる かなりユニークな感じのする先住民族の軍勢


■ ブラック家の新たな歴史が語られるキャンペーンモード

 「WC」ではシングルプレイ用のキャンペーンが新たに1本追加されている。内容としては「AoE III」本編のキャンペーンを通じてアメリカ植民地の歴史と共に語られたブラック家の歴史の物語を補完するエピソードとなっている。プレーヤーは「AoE III」キャンペーンの主人公アメリア・ブラックの父ナタニエル・ブラック、アメリアの息子チェイトン・ブラックを操り、物語が展開される。

 キャンペーンはACT1、2の前後編15シナリオによって構成される。ネイティブアメリカンと共に戦ったブラック家の歴史を描いたシナリオは、スクリプトがなかなかよくできており「AoE III」ならではの表現力でプレーヤーを楽しませてくれる。ワシントンやカスター将軍など、アメリカ建国初期の偉人達と銃剣を交えることができ、開拓時代のアメリカが好きだというプレーヤーにはたまらないだろう。

 15にも及ぶ各シナリオは骨太で、1プレイあたりのプレイ時間は1時間程度は見ておく必要がある。「AoE」本編のキャンペーンに比べて難易度も若干高めな印象で、対コンピュータ戦だからといって油断していると、序盤のシナリオでも敵に自陣の奥深くまで攻め込まれて散々に負けてしまう。

 キャンペーンで少し気になった点としては、日本語のボイスオーバーとゲーム中の演出がうまくかみあっていない部分が時折見受けられたことだ。おそらくゲームのスクリプト上、仕方のない部分だと思うが、会話に妙な間があり、その影響からか声優の持つ演技力がゲーム中に活かしきれていない個所も散見された。「AoE III」本編のキャンペーンよりも完成度が高く、ローカライズ部分のクオリティも高いだけにこの点が少し残念だ。

新しく追加されたキャンペーンを堪能しよう 主人公の一人、ナタニエル・ブラック
RTSの中では優れた演出力を誇る。この表現力は大きな魅力のひとつだ ストーリーはインゲームでシームレスに展開されていく


■ ゲームをより楽しくする新ルールとマルチプレイモード

 「AoE III」では、よりゲームをエキサイティングにするために、細かい部分でいくつか新仕様が追加されている。

 まずヨーロッパ文明の勢力は「帝国の時代」になった時点でリソースが1,000以上あれば革命をおこす事が可能になる。革命とはすべての一般ユニットを軍事ユニットに変え、その代わり町の中心で一般ユニットの生産が一切行なえなくなる。これは生産をすべて放棄して敵勢力にいちかばちかの最終戦争を仕掛けるための要素だ。

 次に新しい勝利の方法として「交易の独占」が追加された。もしプレーヤーがマップ中にある交易所の半分以上を保有している場合、独占を発動させることができる。一定時間交易所の独占を守り通すことができれば、その時点でプレーヤーの勝利が決定するというモードだ。この勝利方法が追加されたことでプレーヤーは新しい戦略を練る必要が出てきた。

 どちらの追加要素もオンライン対戦での使用を想定していると思われるが、「AoE III」の対戦で帝国の時代まで「長々と」対戦する機会は個人的にはあまり遭遇したことがない。従って、マルチプレイでは革命を使えるチャンス自体がないのではないかと思う。その一方で交易所の独占は対戦にスリル感をもたらす面白いルールだ。特にマップが広い場合独占を維持するのはなかなか骨が折れる仕事になるだろう。

 なお、「WC」では、「AoE III」本編と同じように、Ensemble Online(以下、ESO)を通じて無料でオンライン対戦が楽しめる。オンラインマッチング機能とチャット機能、ラダー機能など必要な機能を一通り持っているサービスで、パッケージを購入すれば無料で世界中のユーザーと対戦を手軽に楽しむことができる。

 「WC」をインストールした状態で試しにESOにアクセスしてみたところ、まだ日本語版の発売前ということもあって、ほとんど海外ユーザーで占められていた。シングルプレイとオンライン対戦ではホームシティとデッキは別個になっていて、シングルプレイで上げた経験地やレベルはESOでは適用されない。

 さっそく何度か「WC」での対戦を試みてみたが、ほとんどのユーザーは先住民族文明を使用していなかった。これは「AoE III」の時から育てあげてきた自分のホームタウンのレベルと構築したデッキを今更放棄する気にはなれないからだろうと思われる。

 せっかく新しい文明が追加されたのであれば、そちらでプレイをしてみるのも悪くないと思うが、ランキングがかかった勝負では、変えるに変えられないという雰囲気を感じた。プレーヤーもせっかく育て上げているものを止めたくないし、他のホームタウンのレベルを上げなおしている間にランキングを下げたくないという意図があるのかもしれない。

 ランキングには関係ない対戦の場合は先住民族文明を使っているプレーヤーも散見された。この点ESOという独自のマッチングサービスを運営していながら、ESOに日夜集うユーザーの思考とEnsemble Stuidiosのデザイナーが目指す方向性が必ずしも一致していないことを示している。日本語版が出たところで、先住民族でのプレイが増えてくるかというと微妙というのが率直な感想だ。

新しく追加されたキャンペーンを堪能しよう 主人公の一人、ナタニエル・ブラック
マルチプレイでは先住民族文明を使っている人は、あまり見かけない ESOではすでにユーザーマップなども豊富に出回っている


■ 「AoE III」ファンに限定した拡張キットながら内容は充実

 本作は既存のゲームを拡張するための追加パッケージとしては十分なボリューム感を持っている。どちらかというとシングルプレイ用のキャンペーンに大きな比重が置かれており、このパッケージを導入することで大規模にルールが改変されるというようなことは無い。ゲームプレイ的に大きな変化がないという点では、既存の「AoE III」ファンのために制作された拡張キットと言えるだろう。

 もし、「Battle for Middle Earth II」のような演出力の高いシングルキャンペーンをプレイしたいのであれば、「WC」の充実したシナリオとやりごたえのあるゲームプレイにきっと満足することができるだろう。

 一方、マルチプレイメインで、かつヨーロッパ文明しか使わない、というユーザーに対しても、先述したように革命、酒場といった新要素のほか、いくつかの文明に新しいユニットが追加されているため、対先住民族文明以外にも新しい戦略を練りなおす必要がある。

 たとえば、英国文明に追加された自爆特攻ユニット「ペタード」は非常に使い方が難しいが、うまく敵の陣地に突入させることができれば大打撃を与えることができる。対戦で効果的に使いたいユニークなユニットだ。

 気になる点としては、先住民族をメインモチーフにしている本作だが、残念ながら細部のデザインはかなり適当な印象で、日本人から見ても、各先住民族文明の建物は西洋ナイズされていて、アメリカ先住民族の住居としての雰囲気がうまく再現できてないと感じてしまう。

 中でもファイアピットが唯一近代文明とは一線を画する施設という感じで、後のゲーム展開はほとんど変わらない。時代が進んでしまうともう西洋の文明とほとんど変わらなくなってくる。これは独特の文明を持つアメリカ先住民族軍VSヨーロッパ侵略軍という図式を描いたにしてはチープだ。

 登場する軍事ユニットはどれも独特で動きも性能も非常にユニークだが、我々日本人にとって先住民族は縁遠い存在であるため、イメージ的に今ひとつピンとこないだけでなく、どこまでが史実に即した内容で、どこからが架空の設定なのかの区別がつきにくい。たとえば、アステカ文明の民族が鉄道を使って交易したり、クマをお供に敵のマスケット銃兵に突撃する戦闘シーンなどはまさにファンタジーで、この点はもう少しこだわっても良かったのではないかと思う。

 本作「WC」ではそのような「ファンタジー的要素」も多分に含んだ独特の世界観を取り入れたことで「AoE III」の目指すアメリカ新大陸での戦いをより深く楽しめるパッケージと言えるだろう。

侵略軍との戦いにはついつい力が入る 先住民族の各施設には追加機能がそれぞれある
ファイアピットの祈りにより出現する強力なユニットもある 人と野生動物で構成された軍勢はとてもユニークだ

西洋の侵略軍から祖先の地を守ろう 文明の進化スタイルも西洋文明とは異なる
レベルをあげて先住民族文明の最強デッキを構築しよう 西洋文明にもいくつか新ユニットが追加されている

Copyright (C) 2006 Microsoft Corporation. All rights reserved.


【Age of Empires III: The WarChiefs】
  • CPU:Pentium 4 2.4GHz以上
  • HDD:1.5GB以上
  • メモリ:512MB以上を推奨
  • ビデオメモリ:64MB以上(128MB以上を推奨)


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「Age of Empires III 日本語版」のページ
http://www.microsoft.com/japan/games/age3/default.asp
□「Age of Empires III: The Warchiefs 日本語版」のページ
http://www.microsoft.com/japan/games/age3x/default.mspx
□関連情報
【11月1日】マイクロソフト、「AoE III」の拡張パックが登場
WIN「Age of Empires III: The WarChiefs 日本語版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061101/aoe.htm
【9月27日】Ensemble Studios、「Age of Empires III: The Warchief」特別インタビュー
新しい3文明、ファイヤピット、革命など新要素盛りだくさん
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060927/tgs_aoe3.htm
【1月19日】PCゲームレビュー「Age of Empires III 日本語版」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060127/aoe.htm

(2006年12月13日)

[Reported by GameDude]



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