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会場:幕張メッセ
北米市場では10月に発売が予定され、日本ではまだ「今冬」とぼかされているが、東京ゲームショウでの出展ではすでに日本語化が施されており、そう遠くないものと予想される。過去の例ではAoEシリーズは、実際今冬(11月、12月、1月)に固め打ちで発売されており、クリスマスには間に合いそうである。
今回は東京ゲームショウに合わせて来日したEnsemble Studios「Age of Empires III: The Warchief」エグゼクティブプロデューサーのPatrick Hudson氏に「The Warchief」で追加される新コンテンツの内容について話を伺ってみた。 ■ 南北アメリカ大陸からイロコイ、スー、アステカの3文明を追加
Hudson氏: 拡張パック「The Warchief」は20名のチームで1年前から開発作業が始まりました。アメリカ先住民をテーマとして選択したことについては、長い候補リストの中から3つから4つの文明に絞り、チームメンバーからの投票の結果、アメリカ先住民の文明がテーマとして決まりました。 その過程では、アメリカとメキシコの戦争やアジアの文明をテーマにしようといった検討もなされましたが、アメリカ先住民については、是非追求したいとチームリーダーが情熱を燃やしていました。3つの文明を新たに加えることにしたのですが、これでいくつかの狙いを達成しました。文明はそれぞれの見栄えが違うことを目指しました。文明ごとのプレイの方向性の違いにも注目しました。また、歴史の背景からも当時広大な土地を支配していた文明を選びたかったのです。 イロコイ族は、アメリカの北東部の広大な土地を支配していた民族です。彼らはヨーロッパの文明に近い存在で、イロコイ族はいち早く鉄や火薬、攻城兵器といったヨーロッパの兵器を導入しました。軍隊は騎兵と歩兵から構成されています。 次がスー族です。アメリカの西部から南西部に暮らしていた民族で、騎馬民族として優秀な騎兵隊を持っている遊牧民族です。初めから高い人口の上限が設けられており、遊牧民のため「家」を建てる必要がありません。これら2つの文明が米州に暮らした民族です。 今回南北アメリカ大陸を舞台についての文明をとりあげたかったので、インカ、マヤ、アステカ文明を検討しました。その中から選ばれたアステカ文明は馬を使わなかったため、歩兵中心の文明になっています。騎兵がいないかわりに歩兵の種類が豊富に揃っています。 ホームシティの概念はそのまま引き継がれており、先住民のイロコイ族やスー族には部族評議会が存在します。機能面ではヨーロッパのホームシティと同じです。アステカ族の方は見栄えはヨーロッパに近いものになっています。 新しい文明の中心的な存在となるのが新しいユニットのウォーチーフです。ヨーロッパのエクスプローラーよりも力があり、キャラクタサイズも大きめです。周りのユニットに比べてヒットポイントも高く、近隣の軍事ユニットの移動力やヒットポイントにアドバンテージをもたらします。また、ユニットを一撃で倒せる「イーグルアイ」を使うことができ、野生の動物に対しても働きかける力を持っています。宝を守っている熊や狼にも働きかけ、熊同士を戦わせるといったこともできます。スー族の騎馬民族ですのでウォーチーフも馬に乗っています。 「ファイヤピット」も新しい要素の1つです。町の人をファイヤピットに集めることによって経済や軍事上のメリットを受けることができます。多くの町の人がファイヤピットで回れば回るほどそうした恩恵をたくさん受けることができます。3つの文明のファイヤピットはそれぞれ同じような機能を持っていますが、アステカのみファイヤピットに祈祷師を持ってくることができます。祈祷師は町の人2人分の効力を発揮します。 一方既存のヨーロッパ文明の大きな特徴として、革命というコマンドが追加されます。アメリカ先住民にはなく、ヨーロッパの文明のみが発動できるコマンドです。帝国の時代に入る代わりに、勝利を収める最後の手段として発動させることができます。このコマンドを発動するといかなる経済活動も制限され、ホームシティで生産できるユニットの種類も限られてしまう代わりに、町の人をすべて「植民兵」という軍事ユニットに変えることができます。 革命を選択した場合、革命の指導者を選ぶことができます。今、フランスのホームシティで革命を選択しました。この革命の指導者としてサンテンダーを選ぶことによって同時に3つの鉄鋼製の船を得ることができます。町の人も植民兵に変えられました。これまでフランスの植民地の国旗であったのが、革命の国旗に変わりました。ホームシティからはガトリングガン、植民兵、鉄鋼船、フォートワゴンの4つしか出すことができなくなります。 「The Warchief」からの新しい特徴として、交易の独占があります。交易圏のほとんどを独占した際にタイマーがスタートして5分間が過ぎます。そのタイマーが終わるまで大半を支配し続ければその時点で勝利となります。プレーヤーが防衛的なスタンスでホームシティに留まり、そこを強化していくという戦略をとっていた場合は、交易の独占を目指すというのも勝利への1つの良策になります。 ヨーロッパ文明限定の施設としては酒場ができました。ここで傭兵を雇うことができます。例えば浪人とニンジャです。「Age of Empires III」のトレーラームービーの中で走っていたのがこのニンジャです。どこで登場するのかと言われ続けてきましたが、ここでやっとお見せできました。 ニンジャは「忍び足」の能力を持っており、忍び足モードで姿を隠すことによって、敵の陣地の後ろ側にまったく気づかれずに移動させることができるのです。こうして敵の後方の大砲を破壊することができます。ただ、攻撃すると姿が見えてしまうので、味方の速やかな援護がなければやられてしまいます(笑)。
もう1つ、ペタードも面白いユニットです。建物に大ダメージを与える自爆ユニットです。アステカ族の武士階級はニンジャのように忍び足モードが使えるユニットになります。コヨーテランナーというユニットで、馬がいない代わりに高速で移動することができるのがコヨーテランナーになります。こうした歩兵は非常に早く走ることができるので、騎兵隊に近い速度で移動することができます。 ■ シングルプレイキャンペーンはブラックファミリーの続編となる15本のシナリオを実装
編: アメリカの教科書に出てくるような内容ですね。 Hudson氏: そうですね。いずれもアメリカの当時の歴史的出来事に着目したシナリオです。ただ、文字通り歴史の再現というわけではありませんし、第一に私たちはゲームメーカーです。史実に忠実にやりたいとは思っていますが、それが第一の目標ではありません。ただ、よく親から聞く話では、お子さんがゲームを楽しんだ後に歴史について深い興味をもつようになることもあるそうです。 編: こうした歴史的事象を再現するにあたってどのような調査を行なったのですか? Hudson氏: チームで多くの本や映画を鑑賞して、それぞれの民族の専門家にヒアリングを行ないました。その後、専門家にアートワークをすべて見てもらって、使っている武器や建物が忠実に再現されているかチェックしてもらいました。 編: その中でも特異な存在である浪人やニンジャというのはどういった経緯から登場させたのでしょうか? Hudson氏: 単にかっこいいからです(笑)。ヨーロッパ文明が傭兵として傭うことができます。史実に忠実ではないですが、かっこいいものを選ぼうというコンセプトです。他にはカウボーイであったり、満州の騎馬民族であったり、さまざまな要素を追加しています。 編: 傭える傭兵は、ランダムで決まるのでしょうか? Hudson氏: 違います。時代がどの時代かによっても雇用できる傭兵の種類が違います。ヨーロッパの文明間で共通のものもあれば固有のものもあります。フランスの酒場では時代に合わせて4つのユニットを作ることができるのですが、そのうちの2つがカウボーイをベースにしたものとパイレーツです。 編: 酒場というのは特定の文明が立てられるものなのでしょうか。それとも最初から建っているものなのでしょうか。 Hudson氏: ヨーロッパの文明で、ゲームの途中で建てる必要があります。2つ目の時代から建設が可能になります。時代によって雇える傭兵の種類が増えていきます。 編: シングルプレイキャンペーンでは、今回追加される3つの先住民族はどういった形でシナリオに関わっているのでしょうか? Hudson氏: シングルキャンペーンは常に「AoE」シリーズで特に力を入れて開発している部分です。我々が調査を行った結果、ユーザーの90%から95%ほどがシングルキャンペーンをプレイしていますので、ストーリーにも注目が集まる中、我々も手を加えながら開発しています。 ブラックファミリーは絶えずアメリカ先住民との関わりを持ちます。前提としては単純で、英国などのヨーロッパでは、アメリカ先住民同士の関係を利用してどちらを味方につけるかといったことを選んでいくわけです。その過程で、「カスター将軍の最期」や「レッドクラウド酋長の戦争」などの歴史的な出来事を見ることができます。 今回のキャンペーンはAct.1とAct.2で構成されています。Act.1の主人公は「AoE III」のAct.3の主人公だったアメリア・ブラックの父親のナタニエル・ブラックです。彼の母親はイロコイ族の女性です。最初のオープニングはイロコイ族の中で育てられたナタニエルが戦いに行くところから始まります。 Act.2はアメリアの息子のチェートン・ブラックが主人公です。チェートンの父、つまりアメリアの配偶者はスー族です。イギリスから始まったモーガン・ブラックの一族がアメリカ先住民族と交わりながら、西洋人でもなくアメリカ先住民族に属すことができない葛藤を描いています。 編: 元々「AoE III」では、先住民族はNPCという形で一種のリソースとして登場していました。この扱いはどうなるのでしょうか。 Hudson氏: それは変わりません。また、アメリカの文明を選んだからといって先住民族との交渉が有利になることはありません。なお、「The Warchief」では本編には登場しなかった新たな先住民族もいくつか加わっています。それらと同盟関係を結ぶことができます。
■ 新文明はファイヤピットとウォーチーフの活用法がカギ
Hudson氏: それが新しい文明をプレイする上で戦略的な決断になると思います。ファイヤピットを作らなければならないというわけではなく、ゲームを進める上でファイヤピットを1度も作らないこともありえます。畑仕事をするよりも価値があるかどうかというのはプレーヤーの判断です。ゲームで何をしようとするかによって違ってくるかと思います。 たとえば、リフトダンスをすることによって、経験値をより多く獲得することができます。効果的に使うことで、ホームシティからより多く物資の提供を得られるくらいの恩恵を受けることができます。また、ウォーチーフを戦闘で積極的に使っているのであれば、ヒットポイントを増やしたり、強化したりすることができます。ウォーチーフが倒されてしまった場合はファイアピットで復活させることもできます。 そのほかにも、防衛用の戦士を生み出すこともできます。もし防衛的な戦略をとっている場合にはファイヤピットでそうしたユニットを作ることができます。我々のスタジオでも人によっては毎回ゲームの中で25名の町の人を集めてファイヤピットを常時活用する人もいれば、まったく使わない人もいます。 編: これは初代「Age of Empires」における民族の象徴のようなものなのでしょうか? Hudson氏: 民族の象徴はむしろ交易の独占に近いものがあります。タイマーがスタートして一定時間維持できれば勝利できますが、交易の独占も同じような仕組みです。ファイヤピットで踊り続けられたからといってそれで勝利が確定するわけではありません。ファイヤピットの狙いの1つとして、ヨーロッパの文明にはない要素を戦略の中に取り入れられるようにというのが狙いでした。 編: ウォーチーフやファイヤピットなど、先住民族はかなりユニークな能力を備えていますが、既存の文明とのゲームバランスはどうなるのでしょうか。 Hudson氏: これらの新要素は先住民の特殊な能力としてユニークで強力なものとして考えたものです。火薬や大砲や戦艦といった先住民が持っていなかった要素に対してウォーチーフやファイヤピットでまかなおうとしたのです。それぞれの対抗策も設けています。ウォーチーフは非常に力があるわけですが、これに対抗しヨーロッパ文明でもスパイという他のユニットからは発見されないユニットを設けました。 編: マルチプレイを前提としたすべての文明との間でゲームバランスを取っているということでしょうか。 Hudson氏: はい。4人のスタッフがバランステスターとして、それをずっと検証しています。 編: 新しい民族の特徴をもう少し詳しく教えてもらいたいのですが、イロコイ族はヨーロッパに近くて火薬とガンパワーに優れているということですが、本家本元であるヨーロッパ文明に比べて、どの辺りにアドバンテージがあるのでしょうか。 Hudson氏: ヨーロッパより火薬やガンパワーのテクノロジーが優れているというわけではなく、違ったスタイルでプレイができることを目的に設計されています。たとえば軽い大砲や要塞破壊を得意とするRam(破城槌)を生産できます。他の先住民族に比べて、要塞を破壊するユニットに長けています。 編: 今までヨーロッパの文明をプレイしてきたユーザーにとっては、比較的遊びやすい文明といえそうですね。 Hudson氏: はい。私自身にとってもそうでした。私がプレイするときにもイロコイ族を選びました。 編: 次にスー族ですが、騎馬民族らしさというのはどのように表現しているのでしょうか。 Hudson氏: 騎馬民族ということで、騎兵部隊の種類が多く、家の建設を必要としません。人口の上限もはじめから200に設定されています。機動力を活かし、攻撃を早期から掛けたいという速攻好きのユーザーに好まれる文明だと思います。 編: 騎兵の生産コストが安いといったメリットがあるのでしょうか。 Hudson氏: はい。騎兵部隊に対する強化の負担も軽くなっています。 編: 次にアステカ族ですが、インカやマヤといった他の文明も存在する中であえてアステカを選んだ理由は何でしょうか。 Hudson氏: アステカの場合には非常にユニークな武士階級がありましたし、豊富な歩兵部隊を持っていました。また、見栄えが大変カラフルだったのです。ジャガーの皮を背中につけているのがジャガーウォリアーです。コヨーテを乗せたエリート戦士などもいます。 編: アステカではウォーチーフがジャガーを従えているようですが、これは常に連れているものなのですか? Hudson氏: 常にというわけではありません。ウォーチーフの動物を仲間にする能力を使っています。ヨーロッパ文明は、宝を守る動物は殺して奪うことしかできないのですが、ウォーチーフは仲間にしてスムーズに宝を得ることができます。
■ 既存ヨーロッパ文明は、革命システムを搭載
Hudson氏: 革命を使うシーンとして大きくわけて2つ考えられると思います。1つは他文明が帝国の時代に入ろうとして非常に大きな軍隊を持てるようになったというシチュエーションです。革命を起こして町の人たちを殖民兵にし、最後の手段として相手からの守りを固めるために戦うというやり方です。もう1つは、窮地に立たされている相手方に最後の一押しを加えるためにこのコマンドを発動させることがあると思います。 編: 革命を起こした後、また戻すことはできるのでしょうか。 Hudson氏: 一旦選択すると戻ることはできません。ですから、タイミングを誤ると経済活動を継続できず、負けてしまいます。正しいタイミングを見極め、発動には慣れと工夫が必要でしょう。 編: 革命は経済力と引き替えに軍事力を飛躍的に高めるシステムというわけですね。 Hudson氏: そうです。町の人をいかなる経済活動に従事させることもできなくなりますし、今後経済活動自体も行なうことはできなくなります。これはヨーロッパ史の視点から考えて導入したことでもあるわけです。ヨーロッパからアメリカ大陸にやってきて、そこで革命を起こして、さらには本国でも革命を起こしたという例は現にあるわけです。 編: 革命指導者の能力はどのような設定になっていますか? Hudson氏: リーダーを選択することによって、いくつかの強力なユニットを出してくれます。先ほどの選択では革命の指導者から鉄鋼の戦艦が送られました。革命の最初の際に送られるものは何かを選ぶために革命の指導者を選ぶわけですが、活躍するのはその場だけです。指導者というと誤解を与えやすいのですが、ウォーチーフのように革命の指導者がリーダーユニットとして登場するわけではないのです。 編: つまり、「Age of Mythology」のゴッドのような象徴的な存在ですね。 Hudson氏: そのとおりです。 編: 気が早い話かもしれませんが、「Age of Empires IV」について聞かせてください。どういったゲームになるのでしょうか。 Hudson氏: それは私たちもわかりません(笑)。まだ作業も何も開始していません。 編: それでは「Age of Empires III」のビジネスはまだ続くということでしょうか? Hudson氏: 拡張パックはありますが、フランチャイズなどそれ以外のものに関して何か手を付けているわけではありません。 編: ひょっとしてアドオン第2弾を計画していたりするのでしょうか? Hudson氏: 我々は2つの拡張パックを今まで出したことはありません。仮にあったとしてもまだ発表できる段階ではありません。チームは先週の金曜日に作業が終わったばかりで、彼らは休暇を取っています(笑)。 編: その辺は来年のGDCあたりで見えてくるといったところでしょうか。 Hudson氏: どうなるかわかりませんが、ひょっとすると出てくるかもしれませんね(笑)。
□Ensemble Studiosのホームページ (2006年9月27日) [Reported by 中村聖司]
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