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会場:Shanghai New International Expo Center
入場料:30元(約480円)
オンラインゲームパブリッシャー大手ともなると、累計登録者数が1億人を突破することもざらで、同時接続者数はアベレージで100万人を突破するというもの凄いことになっている。中国の場合はこの手の数字は、あまり参考にならないことが多いが、ShandaはNASDAQ上場企業である。2006年5月にナスダックに提出された四半期レポートから、同社の規模を見てみよう。 まず、課金ユーザー数は247万人、平均の同時接続者数が135万人、月額あたりの平均顧客単価は約30元(約480円)と、日本に比べると薄利多売の傾向が見受けられる。売り上げ的には、黒字は維持しているものの、MMORPG、カジュアルゲーム、その他事業などが軒並み30%強の売り上げ低下となっており、苦戦が報告されている。 売り上げ低下の理由として「BNB」のユーザー数の低迷や、現在開発中のゲームコンソール「EZ」シリーズのための投資を挙げている。戦国時代を迎えた中国ゲーム市場の先駆者として、まさに今が正念場といった状況である。 今回はChinaJoyの開催期間を利用して、Shanda本社を訪問し、中国オンラインゲーム運営の現状を視察した。中国全土で2,000人のスタッフを擁するShandaは、常時100万人超のユーザーに向けてサービスを行なっているが、そのオペレーションはどのようになっているのか、中国初のオンラインゲームコンソールとはどのようなものなのか。短い時間での慌ただしい取材となったが、出来る限り詳しくご紹介していきたい。
■ ハイテクパーク張江高科技園区の一等地に本社を構えるShanda
駅から降りると、飲食店が建ち並び、そこを抜けると四車線道路がまっすぐ南へ延び、左右に理路整然とオフィスビルが建ち並んでいる。きわめて人工的なビジネス街だ。ちなみに張江高科技園区は、Shanda以外に、最大のライバルではTHE9の本社や、今年から中国市場へ本格参入するElectronic Artsの中国子会社などもある。張江高科技園区は、現在、発展途上の段階にあり、今後もゲームメーカーの移転、新規設立等がある見込みだ。 Shanda本社は駅から歩いて3分程度のところにあり、2つのビルで構成されている。駅から見て手前の4階建てのビルに本社機能が集中しており、ここには社員用とユーザー用のふたつの入り口が設けられている。入り口には警備員が常駐し、ロビースペースには、同社が取り扱うグッズがずらりと陳列され、その手前には同社のゲームコンソール「EZ STATION」のデモ機が配置されている。
社内は、ChinaJoy開催中ということもあってスタッフの多くは出払っており、閑散としていた。ちなみにビルの中央部分は広い中庭になっており、精勤や団結、新たなチャレンジ、サービス向上などを啓蒙するスローガンが垂れ幕として掲げられており、このあたりは非常に中国的な感じである。
■ 広々とした社内、コールセンターは上海だけで300人体制
中国全土にオンラインゲームを提供しているShandaは、上海以外に、北京、南京、成都の3カ所に、同等規模のコールセンターを設置し、東は上海から西は崑崙まで中国全土をカバーしている。上海では3交代制で300名のスタッフがいる。中国ではアルバイトは勤労意欲を阻害するとして奨励されていないため、すべて正社員だという。 ちなみに中国では、地域ごとにIDCと契約する必要があり、新規メーカーの場合、サービス開始で即全国展開ということにはならない。たとえば、上海からだと北京、成都、崑崙と一カ所ずつIDC業者と契約していく必要があり、これも大手の強みになっている。 次に通されたのはテクニカルサポートセンター。ここは全面撮影禁止ということでお見せすることができないのが残念だが、日本でいうところのオペレーション部と技術部がセットになったような部署で、広間の壁には30インチクラスの液晶モニタが6枚張られ、5分刻みで各コンテンツの同時接続者数、アクセス状況、中国各地域のIDCとの接続状況などが映し出され、それを20人弱のスタッフがチェックしている。異常発生時には、部屋の見やすい位置にある電光掲示板に映し出される仕組みだ。その奥にはいわゆる技術部があり、故障したPCやモニタはここに持ち込まれる。部屋の奥にはいかにも'90年代製と思われる故障したCRTモニタが山積みされており、このあたりも中国的である。 続いて訪れたのは、カスタマーセンター。待合室と相談室の二部屋に分かれており、ChinaJoy期間中にもかかわらず20名を超えるユーザーが訪れていた。待合室には「EZ Pod」のデモ機が置かれており、Shanda製品の販売も行なっている。
そしてユニークなのがテスト部。自社タイトルのデバッグ業務も兼ねていると言うが、主業務は他のゲームをプレイしてその良さ、悪さをレポートすることだという。思わず笑ってしまったのが会議室。部屋の奥に会議室が2つ並んでおり、片方は円卓があり、片方にはPCが並んでいて、円卓側からマジックミラーを通して、テストプレイの反応を観察できるようになっている。ここにはユーザーを呼ぶこともあるというからおもしろい。
■ 中国初の純国産ゲームコンソール「EZ」シリーズを初体験!!
「EZ」シリーズは、Shandaが新しい事業の核として開発したオンラインゲームコンソールだ。事業のコアとなるのはDVDプレーヤースタイルの「EZ STATION」だが、このほかにもその省スペース版「EZ CUBE」、既存PCにジョイントして利用する「EZ Pod」、モバイル版「EZ mini」などがある。現在発売しているのは「EZ Pod」のみで、USB接続のリモコン受光部とリモコン、ゲームポータル「EZ Center」が同梱されて価格は458元(約7,300円)。 「EZ STATION」の中身は完全にWindowsPCで、Intel 848チップセットに、Celeron2.53GHz、モバイル版Radeon9600、80GBハードディスク、16倍速のDVDドライブといった構成。わかりやすくいうと、DVDプレーヤーに普及帯のノートPCをぶち込んだようなものだと考えるとわかりやすい。OSはWindows XP Professionalで、その上にゲームポータルソフトであるEZ Centerをインストールして利用することになる。価格は6,850元(約11万円)。普及帯の据え置き型PCとして考えるとまずまずだが、ゲーム機としてはさすがに高い。中国市場の反応が鈍いのも頷ける。 インターフェイスは専用のリモコンのみとなる。縦位置で持ってEZ Centerをブラウジングし、横向きにするとゲーム用無線コントローラとして使える仕組み。リモコンとしては必要十分な機能を備えているが、ゲームコントローラとしてはボタンが多すぎて、誤操作の懸念がある。マウス機能も備えているため、リビングPC的な使い方も可能だが、基本的にはEZ Centerで提供されるコンテンツのみをプレイすることになる。 EZ Centerは、Xbox 360におけるXbox Liveのようなゲームポータルとなる。ただし、仲間を見つけて即対戦といったインターフェイスではなく、ゲーム、音楽、映像、教育といったカテゴリから階層を下って、コンテンツにアクセスする手順を踏む必要がある。このあたりはあたかもホテルにあるテレビとリモコンを用いた映像エンターテインメントサービスのようだ。 ゲームコンテンツは、Shandaが提供する「Crazy Kart」などのカジュアルオンラインゲームや、カメラを利用してプレイする体感ゲーム、ひとり用のカジュアルゲーム、そして「奇々怪々」(タイトー)、「サンダーフォックス」(タイトー)ほか無数の“レトロゲーム”がプレイできる。これらのコンテンツはすべてEZ Centerを通じてダウンロードして手に入れることができる。
ビジネスモデルは、基本的にコンテンツダウンロードに対する課金となるが、現時点ではテストサービス中であり、最終的にどうなるのかは不明確である。現時点では不調が伝えられるゲームコンソール事業だが、今後どうなるのか。来年には明確な結果が見えてきそうだ。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2006年7月31日) [Reported by 中村聖司]
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