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会場:Shanghai New International Expo Center
入場料:30元(約480円)
■ 中国メーカーが新規タイトルを続々出展、海外勢は日本の“参考出品”が目立つ
ゲームファンの目当ては、コンパニオンが配布するオリジナルグッズ。といっても、せいぜいミニフィギュアやシール、缶バッジなどだが、人気のメーカーではブースをぐるりと一周するほどの長い行列ができる。即売どころか、ゲームの販売自体が許されない中国では、これが数少ないゲームファンの楽しみのひとつとなっている。 これは、日本のように試遊台でみっちりプレイするという文化や、欧米のようにプライベートシアターの文化、あるいは韓国のように15分刻みでステージイベントをし続ける文化、はたまた台湾のように即売会でレアグッズを大量に放出する文化がない、中国独自の文化といえるかもしれない。日本人の目から見ると、待ってる時間がもったいないように思えるが、彼らは実に楽しそうであり、ゲーム文化の担い手として実に若々しさを感じさせる。 さて、今年出展していたメーカーは、中国最大手のSHANDAを筆頭に、THE9、NETEASE、9YOUなど、中国大手が勢揃いしていた。それぞれ米国や韓国、そして日本といった海外メーカーのライセンスタイトルをひっさげ、大音声でゲームファンにアピール。相変わらず試遊台は最小限で、ステージイベントがメインだが、会場全体を包むエネルギッシュな雰囲気、生き馬の目を抜くようなゲームファンの慌ただしさなど、来場者のパワーは間違いなく世界随一だ。 今年、目新しい出展タイトルとしては、「Dungeons & Dragons Online」(SHANDA)、「Hellgate London」(THE9)、「完美世界」(完美時空)など、相変わらずMMORPGが主流。「Audition」(9YOU)、「Super Dancer Online」(9YOU)、「Extreme Soccer」(9YOU)など、新手のカジュアルゲームも続々進出してきている。やはり、コンテンツでは韓国勢が圧倒している。 なお、純中国産のゲームコンソールも誕生している。昨年のChinaJoyで紹介した「SHANDA STATION」のコードネームで発表された「EZ Station」だ。Windows XPベースのオンラインコンソールで、ゲーム、音楽、映像、テキストといったコンテンツはダウンロードで取得し、DVDの再生機能も持つ。そのほか、EZ pod、EZ Cube、EZ miniなどがある。任天堂のwiiのように、無線リモコンでゲームをプレイするのが最大の特徴。ただし、ゲームコンテンツはSHANDAのカジュアルゲームに限られ、プレイするためにはハードを購入する必要があるため、売れ行きは厳しい状況だという。価格は458元(EZ pod)より。 海外勢に目を移すと、昨年と比較して明らかに勢いを失っていたのが、オンラインゲーム大国の韓国、台湾勢で、韓国メーカーはWebzenとWemadeのみで、台湾に至っては出展無しという惨憺たる状況。といっても、韓国産、台湾産のMMORPGは、前述したように中国メーカーに組み込まれる形で出展されており、ゲームがなくなったわけではない。しかし、NCsoft、ガマニア、Softstarといった大手メーカーが姿を消してしまっているのは事実で、一抹の寂しさがある。当然、関連タイトルの出展もない。こうした実情は、海外メーカーが中国でゲームビジネスを展開することの難しさを実感させる。 今回、韓国、台湾勢に変わって勢いを感じさせたのが日本勢で、SCE Asia、世嘉(セガ)、コナミ、スクウェア・エニックスと大手が続々出展を果たしていた。もっとも、こちらも外資系企業としてハード、ソフト両面の販売を法律で縛られており、もっぱらブランド向上を目的とした参考出品が多い。
中国での参考出品というのは、いわゆるプロトタイプのニュアンスではなく、「法律で売れないけど、将来規制緩和されるかもしれないから、とりあえず出展しておく」という一種の先行投資になっている。しかし、規制が緩和されてから動いたのでは、物理的、政治的、ビジネス的に間に合わない。規制が緩和されないから手を引く韓国、台湾勢と、規制緩和を見越して先手を打つ日本勢。動き方にハッキリ明暗が分かれた格好だ。先行投資が無駄にならないよう規制が緩和されるのを祈るばかりだ。
■ SCE AsiaはPS3を参考出展、発売時期は「政府次第」
ユーザーの人気は凄まじく、巨大なブースを一巡りするほどの行列ができた。待ち時間は優に1時間以上で、純粋にゲーム映像を目的に中国のゲームファンが行列を作るのはきわめて珍しい。それだけコンテンツにパワーがある証拠である。プレイステーション 3が日米欧に合わせて発売されれば、上海で激増している富裕層を中心に、多くの売り上げが期待できそうである。しかし、話はそううまくいかない。 SCE Asiaの中国展開は、北京に駐在員事務所を設置し、本格展開へ向けて準備継続中という段階にある。PS3の中国展開に関しては、先述した規制などの問題もあり、発売の目処がたっていない状況だ。 SCEの進出を阻んでいるのが、「44号文書」と呼ばれるコンピュータゲームの展開を極端に制限する法律の存在である。特に海外ゲーム機の輸入販売に関しては、全面禁止としており、これが解禁されない限り、SCEはコンソールを売ることができない。しかし、SCE Asiaの担当者や他のメーカーの中国担当者も、中国進出のハードルは「44号文書だけではない」と口を揃える。 SCE Asia側も工場をアジアに設置するなどして値下げしているが、流通も法律で縛られ自社展開できない。ここでも余分な経費が発生するため、その差を埋めるまでには至らない。コンシューマゲーム市場に関しては、生産国である日本を中心とした海外勢が絶対に勝てない構図ができあがっている。 そして最大のネックが検閲である。中国ではコンソールゲームは事前の検閲が義務づけられており、戻ってくるまでに2、3カ月を要する。中国文化に絡む要素に関しては、特に規制が厳しく、乱用はもちろん、わずかな遊びも許されない。また、検閲を待つ間、並行輸入品が数万本という単位で入ってきて、検閲を乗り越え、中文化を終え、出荷を待つ頃には、中国のコンソールゲームファンに遊び尽くされてしまっているというわけだ。 方やPCプラットフォームで展開されるオンラインゲームは、PCというプラットフォームは“ゲーム機ではない”ため、コンソール機に比べれば遙かに規制が温い。中国でPCプラットフォームが爆発的に伸びている理由は、コンソールが発売できないという負の側面も決して無視できない。2000年に44号文書が出なかったら中国ゲーム市場は、現在とはかなり異なる風景になっていたに違いない。
SCE Asiaの担当者も年内に規制が緩和されるかもしれないという噂があることを口にしたが、ひとつ緩和された程度ではどうにもならないため、「まだまだ数年単位で時間がかかるだろう」という冷静な観測を示した。ゲーム市場も、他産業と同様にアジア市場の重要性が年々高まりつつある、中国のゲームを取り巻く法規制がどう変わるかが、世界規模で成長を維持できるか否かが左右される。中国ゲーム市場の動向を今後も注意深く見守っていきたい。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2006年7月19日) [Reported by 中村聖司]
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