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会場:Shanghai New International Expo Center
■ 上海に会場を移し新たに生まれ変わったChina Digital Entertainment Expo
今回会場となったのは上海中心部から黄浦江を挟んで東にあるShanghai New International Expo Center。2001年にオープンした新しい施設で、最寄りの龍陽路駅からは、上海中心部と浦東国際空港を繋ぐリニアモーターカーの発着所がある。Shanghai New International Expo Centerには6つのホールがあり、内2ホールを今回使用している。2ホールの広さは、東京ゲームショウとほぼ同程度か、わずかに狭いといったところだろうか。 さて、China Joyには、日本におけるCESAや台湾におけるTCAといった主催団体は存在せず、主催として名が挙がっているのは、ゲームをはじめとしたデジタルコンテンツへの許認可を与える中国人民共和国新聞出版総署を筆頭とした中国政府の各機関で、名目上は国家主催のゲームショウとなっている。実際には運営委員会のようなものが存在していて、他国のゲームショウと同じように運営を行なっているのだが、こうした箔付けは、中国のゲーム業界においてあらゆる分野で見られ、世界のゲームショウとは異質な印象を受ける。 実際の運営は、既存のゲームショウの運営ノウハウをそっくり受け継いでいる印象で、一通り会場を回ってみた感じでは東京ゲームショウなどのユーザー向けのゲームショウとほとんど変わらない。また、ゲームショウと同時にモバイル、カジュアルゲーム等のフォーラムや、メーカートップによるカンファレンス等も実施されているところなどは、E3を彷彿とさせる。 出展スタイルは、Taipei Game Showに近いお祭りステージになっており、クリエイターによるデモンストレーションや、試遊台による体験コーナーなどはほとんどなく、ステージイベントにほとんどのエネルギーが費やされている。向かい合わせが大手メーカー同士だと、イベント合戦でどんどんBGMのボリュームが大きくなるのもそっくりで、ティッシュを耳栓代わりに歩く来場者が目立つところも同じだ。
ただし、Taipei Game Showのように、通路をプラカードを掲げた宣伝行列が練り歩いたり、ステージから絶えずグッズを投げたりといったことはないため、来場者は多いものの、窮屈な感じは受けない。混雑を制御する制服姿の警備員の数も多く、Taipei Game Showのように何もかもがカオスといった雰囲気はない。とにかく桁外れにやかましいが、意外と整然としたショウといった印象である。
■ SHANDAが純国産ゲームコンソール“SHANDA STATION”を発表
出展タイトルは、韓国や台湾と同様に圧倒的にMMORPGが多く、ジャンルも純国産タイトルは「民族ゲーム」ばかりだった。民族ゲームというのは、いわゆる武侠モノ、中国歴史モノを指し、政府の奨励に値するゲームのことをいう。グラフィックスは3Dもあるが、まだまだ2Dが主流で、傾向としては格好いい武侠か、可愛い武侠かのほぼ2択。ファンタジーモノやジャパニメーションの影響を受けたタイトルなどは、日本、韓国、欧米に頼り切りの状態で、客観的に見て中国のクリエイターはまだまだクリエイティビティを存分に発揮できるとは言い難い環境にあるといえる。 ゲームショウ初日の話題をさらったのは、なんといっても中国最大手SHANDAが、国産のゲームコンソール“SHANDA STATION(SDS)”を発表したことだ。といっても今回のアナウンスは業界関係者向けで、中国大手メーカーを中心としたパートナーの告知に留まった。具体的なスペックやラインナップは非公開。 基本的なコンセプトとしては、2002年以降急成長を遂げたオンラインゲーム市場の成長の秘訣に着目した完全オンライン決済型のゲームコンソール。ゲームソフトはオフラインゲーム、オンラインゲームを問わずすべてダウンロードにて入手し、家庭のテレビに接続してゲームをプレイする。 弊誌でもたびたび触れてきているように、中国ではデジタルコンテンツビジネスは壊滅状態にある。パッケージ流通されるゲームソフトはすぐさまコピー品が出回り、携帯コンテンツに関してもSIMカードによる乗り換えで、コンテンツ料金の未払いが後を絶たない。そんな中、唯一、順調すぎるどころか、爆発的に成長し、高収益を挙げているのがオンラインゲーム市場である。 オンラインゲーム市場成功のカギである料金完全先払い、クライアントのコピーはむしろ推奨という取りっぱぐれのないシステムを、ブラックボックスのマシンに導入し、政府お墨付きのSHANDAが主導して、中国のメーカーを中心としたあらゆるデジタルコンテンツをオンライン配信していく、という構想である。 デジタルコンテンツは、映像、音楽などゲーム以外のコンテンツも含まれる。最終的にどこまでカバーされるのかはハードを見てみないことにはわからないが、コンテンツ部分に関するSDSの強みは、ライセンス問題を一掃できる可能性を秘めているところだ。中国ではあらゆるデジタルコンテンツをリリースするためには政府の許可が必要になるが、これは外資企業だけでなく、政府とのパイプのない中国の中小メーカーにとっても高いハードルとなっている。SDSではこれらをSHANDAの2ndパーティータイトルとして扱うことにより、このハードルが一気に低くなる可能性があるわけだ。 SDSのビジネスモデルは、中国ゲーム市場の鬼門であるコピー問題を逆手にとった中国企業らしいアプローチであり、まさに中国による中国人のためのゲーム機といった印象だ。
□China Digital Entertainment Expoのホームページ (2005年7月23日) [Reported by 中村聖司]
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