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★PCゲームレビュー★

シリーズ初の「3D1枚マップ」で中国全土を再現
最大6人の一騎打ち、中国語ボイスなど新機軸も満載

三國志11

  • ジャンル:歴史シミュレーション
  • 開発/発売元:コーエー
  • 価格:11,340円(プレミアムボックス:13,440円)
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:発売中



  •  3月17日に発売されたコーエーの「三國志」シリーズ最新作「三國志11」。本作は中国全土をシームレスな1枚マップで表現した「3D1枚マップ」を採用した初の「三國志」だ。また、複数対複数の戦いが実現した一騎打ちのほか、より親しみやすいチュートリアルや、プレイ中武将から中国語のボイスサウンドが発せられるなど、コーエーの新しい取り組みが随所にみられる作品である。


    ■ 中国全土を1枚の3Dマップで表現し、部隊行動と都市開発をシームレスに一元化

    「三國志11」のメイン画面。ほとんどこの画面のみでゲームが展開していく
    1つの広大なマップに上に城塞・都市施設・戦略施設が配置されて、壮大な将棋をさしているような感覚だ
     「三國志11」では、「三國志Ⅹ」で採用された全武将からキャラクタを選択し、それぞれの立場からプレイする方式から、「三國志 Ⅸ」で採用された君主のみを選択し、天下統一を目指す方式に転換された。プレーヤーは10日ごとに回ってくるターンで行動力を消費して、都市開発から戦争まで同じ画面の中で天下統一に向けた行動をとっていくことになる。

     「三國志11」の都市内政はシンプルなつくりになっていて、「開発」で各種施設を作り、その施設の機能に応じて「徴兵」や「兵装開発」などのコマンドを実行できる。武将の能力による差は開発時間と生産量で、政治力の高い武将がまとめてひとつの施設開発に従事すると短期間に終わるようになっている。開発可能地域を埋めてしまえば、あとは軍備の生産だけなのでそれほど難しくはない。

     都市開発のポイントとなる施設が、「造幣」と「穀倉」だ。1マス以内に市場や農場を立てれば収入が1.5倍になるというもの。「造幣」の脇に3つ以上「市場」を建てることにより、4マスに4つ市場を建てるよりも収入がより大きくなる。都市によっては10マス程度しか開発可能地域がない所もあり、土地によって向き不向きもある。残念ながら、中国全土が1枚マップで表現されている分、城内の様子を眺めたり開発することはできない。

     軍事面では、「徴兵」や「訓練」に加えて高い重要度を占めているのが「兵装開発」である。何も兵装が無い状態を「剣兵」といい、攻撃力、防御力とも最弱である。そこで「鍛冶」で槍、戟、馬、弩などを開発し、剣兵に装備させることによって部隊の強化を図っていくわけである。

     各兵科は、槍→馬→戟→槍の順で3すくみ関係となっている。武将の適性兵装も見ながら部隊編成や兵装開発に繋げていきたい。また兵装とは別に、「工房」を建設することにより攻城兵器も開発することもできる。1ターンで1回しか施設を使うことができないので、急に兵力や兵装を整えたいときには武将を集めて施設を複数建設し、一気に作り上げるのがセオリーだ。

     そして勢力の個性ともいうべき能力を育てるのが「技巧」だ。プレーヤーはほとんどすべての行動に対して「技巧ポイント」を得ることができる。各兵装の強化や防衛力など各勢力が思い思いの能力を強化していくことによって、部隊がユニークなものとなる。初期は「気力」パラメータの上限を拡大する「熟練兵」や兵力の上限を3,000アップすることができる「軍制改革」などがある「錬兵」を軸に開発すると部隊を扱いやすい。

    【舌戦】
    在野の武将を登用する際は、舌戦を行なう。舌戦では独特のミニゲームで相手を調略する。例によって軍師の助言によって大よその成功率がわかる


    ■ 3対3の白熱する一騎打ち、圧倒的な兵数も智謀をもって乗り切れ!!

    最大6人が参加する一騎打ち。呂布を曹操以下3人が取り囲むが勝負の行方は果たして!?
    呂布と雑魚武将のように武力差の大きい武将間の一騎打ちの場合、出会い頭の1合で勝負が決まってしまうことがある
     戦闘シーンにおいて、過去のシリーズに比べて一番大きく違うのは、これまでは「士気」として表現されていた部隊の勢いを、「気力」に統一したことだ。戦闘では、この気力を消費して、計略や戦法といった特殊攻撃を繰り出していく。士気の低下を心配せずに済む一方で、気力の使い方が非常に重要になる。

     また武将特有の「特技」というシステムも追加された。1人に1つ持っているが、無い武将もいる。この「特技」は内政を有利にすすめるものから戦闘を有利にするものまで多岐にわかれている。

     特技と戦法や計略の組み合わせは強力で、たとえば曹操の特技「虚実」は自分より知力の低い部隊に仕掛けた計略をすべて成功させることができる。計略有効範囲を広げる特技「鬼謀」をもつ郭嘉や、部隊計略の消費気力を1にする特技「百出」をもつジュンユウと同一の部隊を構成することによって強力な計略部隊となる。「撹乱」の後、「火矢」を放てばみるみる部隊は崩壊していくだろう。また混乱している部隊に攻撃しても反撃が0のため、兵力の差を計略で補うことも容易だ。無理な兵力の増強よりも計略の得意な武将や計略に関する特技を多く持つ武将を集めることに主眼を置いた展開となる。

     戦闘の華である一騎打ちも複数対複数の交代制のバトルに進化している。戦闘の際、一騎打ちを仕掛けるかどうかかを選択。次にプレーヤーの部隊にいる武将から戦う武将を選択する。敵部隊の大将が応じると一騎打ちとなる。最初に一合交えた後、防御重視、闘志重視といったコマンドから方針を決定。ストップしない限りその方針のまま斬り合いを続ける。武将の体力が減ってくると、同じ部隊に相性のいい武将がいる場合、援護にかけつけてくれる。こうして最大3対3で武将が交代で一騎打ちを繰り広げることになるのだ。同時に戦うのは一人づつで、いずれか一人の体力が0になったら戦闘終了となる。バランスよくローテーションを考えて敵将達を追い詰めたい。

     以上が「三國志11」の簡単なゲーム概要となるが、何点かプレイしている際に気づいたことがあったので述べておきたい。ひとつには初期の人材管理が大変なことだ。というのは、本作では武将同士の相性が武将登用にかなり影響されるため、忠誠度が100を切った途端、次々に相性のいい武将を介して引き抜けて(引き抜かれて)しまうということだ。さらに城や関の太守を引き抜くことで、施設が自勢力のものになるばかりか、その城に所属している一般武将まで丸ごと自勢力になってしまうのである。

     このため、都市から使える数少ない計略のひとつに、他勢力の城の太守に独立をそそのかすというものがあるのだが、独立させるより自勢力に配下ごと引き込んでしまうほうがいいに決まっているので、実質的に使い道のない計略となってしまっている。また、AI特有の「弱さ」が目立つ部分があり、初級、上級の難易度に関わらず攻城戦や防衛戦で敵部隊同士がうまく連携して戦えないといった事もあった。

    【特技】
    武将の持つユニークな特技の数々。呂布は「陸戦でZOCを無視」というゲームデザインを破壊するようなすさまじい特技を持っている。様々なコンセプトで攻略方法を編み出してほしい

    【一騎打ち】
    一騎打ちでは各方針を決定後、戦いは自動となる。闘志の溜まる頃合を見て必殺技を発動しよう。「暗器」、「偽退却」は所有アイテムがある場合に繰り出せる

    【火計】
    設置した罠「火球」が発動し敵部隊が炎に包まれる。戦法がクリティカルとなった場合は武将の横顔がカットインする


    ■ ユニークなチュートリアルと豊富な用語辞典

    「わーかった!もうわーかった」「よし、これで内政の達人だ。」などと軽口をたたきながら悪戦苦闘する劉備のダメっぷりがおもしろおかしく描写されている
     「三國志」シリーズの魅力は、内政や戦闘だけではない。ここからは「三國志11」に用意されている、いわばお楽しみの部分を紹介したい。

     まず、本作で採用されたチュートリアルは、実に出来が優れている。わがままで駄々をこねる劉備を、諸葛亮や徐庶などの軍師達がサポートしていくという形でチュートリアルは展開され、各チュートリアルはそれなりに時間をかけてミッションをクリアするようになっている。

     たとえば「技巧の効用」のチュートリアルでは、「技巧ポイント」の説明と効率よくポイントを稼ぐ方法がレクチャーされた後、実際に劉備軍を動かしてポイントをためていくことになる。「国力向上の基本」から「成都攻城戦」まで、すべてのチュートリアルをクリアすると「いにしえ武将」なる中国の歴史上のよく知られている20の伝説的武将が、ゲーム中の武将として使用できるようになる。三国時代の人物ではないが「項羽と劉邦」の項籍、劉邦、「国姓爺合戦」の鄭成功のような日本でも良く知られている武将や名士などが登場する。

     また、豊富な語句辞典も面白い。「三國志」にまつわるエピソードや歴史語句が関連する武将イラストとともに盛り込まれ、当時の中国の世界をより深く知るには大変良質なコンテンツとなっている。内容の説明の多寡など充実度については改善の余地は残るものの、少しでも本作に関連する項目があれば拾っていくというスタンスは評価したい。

     また、「三国志年表」は語句辞典とリンクしており、各勢力ごとの年表として魏呉蜀それぞれの歴史を追うことができる。政治、軍事、重要人物の生没によってわけられる年表はそれぞれの立場における事件のあり方を感じる上でとても明快だ。中国史に興味を持つきっかけになるかもしれない。

     ゲームの内容としては全国統一を目指す「三國志」シリーズの原点に立ち返った作品と定義づけられそうだが、グラフィックの美しさや最新の制作技術ばかりに目がいきがちなところ、こうした細かい点でも作品を充実させていこうとするコーエーの姿勢は大きく評価したいところだ。

    【年表、語句辞典】
    年表とリンクした語句辞典。イラストと操作の明快さは学習参考書顔負けといったところ。「三国志」ファンにはたまらない機能だ


    ■ 中国語のボイスサウンドと年齢で変わるキャラクタイラスト

    一部の有名武将は歳を取るとグラフィックスが変化する。画面は趙雲
    「正史」にのみ登場する呂布の娘という設定の武将“呂玲綺”。正史武将は、主要武将が寿命でいなくなる後半に数多く登場する
     キャラクタの魅力も倍増している。本作をプレイしてほぼ最初にはっと気づくことが、武将のボイスである。部隊行動で命令を与えるとその部隊の大将が中国語でしゃべるのだ。武将達の声は、一騎打ちの際にも聞くことができる。一騎打ちのチュートリアルでは孫尚香が登場するのだが、このボイスがたまらない。イラストからしていかにも萌えキャラという感じなのだが、予想外の野太い声で「エイヤー」と言われたときにはびっくりした。

     ちなみに新キャラ作成の際にはこの声のトーンも選ぶことができる。また、口調も選ぶことができるのがユニークだ。パターンは、「丁寧」、「慇懃」、「豪放」……ときてなぜか「張飛」というものまである。新キャラの能力設定では、年齢に合わせて最大能力のピークを設定できるようになっている。一生を通して能力が変わらないという選択もできるが、こうした年齢に対する能力の概念がでてきたのは興味深い。キャラクタの数は少ないが年をとってから登場するシナリオでは武将イラストがおじいちゃんになっている場合もある(残念ながら、おばあちゃんにはならないようだ)。さらには性格や夢ばかりでなく漢室(漢の皇帝)に対する扱いについても選ぶことができる。

     こうした「三國志11」のゲームのもつ枠組みを列挙しているうちに感じることは、中国語圏の人々に対する厚い配慮だ。中国統一を目指していくゲーム設定、中国語のボイス、充実した辞典、文字のローカライズさえクリアすれば我々がプレイするよりも中国語圏のユーザーはより一層楽しめるに違いない。商品としてはパッケージゲームの販売が弱い中国本土向けというより、販売先としては以前からコーエーが事業展開している台湾市場を意識した作品といえる。

     おりしもコーエーは、アジア展開への傾注の度合いを増しつつある。日本の歴史をゲーム化した作品を積極的に売り込む傍ら、中国語圏でもコアなファンを掴んでいる「三國志」シリーズをおろそかにしないところは懐の深さを感じさせる。さて、新年度の始まりを告げ、新しい環境に慌ただしく臨む諸兄も多いかと思うが、腰を落ち着けてゆったりと天下の大計を案じてみてはいかがだろうか。

    【新規武将】
    新武将作成画面。龍のマークをクリックするとゲーム中はなされる中国語ボイスを再生することができる

    (C)2006 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.


    【三國志11】
    • CPU:Pentium 3 1GHz以上(Pentium 4 1.7GHz以上推奨)
    • メモリ:256MB以上(512GB以上推奨)
    • HDD:2GB以上の空き容量(5GB以上推奨)
    • ビデオメモリ:32MB以上(64MB以上を推奨)


    □コーエーのホームページ
    http://www.gamecity.ne.jp/
    □「三國志11」の公式ページ
    http://www.gamecity.ne.jp/sangokushi/11/
    □関連情報
    【2月13日】コーエー、WIN「三國志11」3月17日発売決定!
    特典を同梱したプレミアムBOXも同時発売
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060213/sanxi.htm
    【1月27日】コーエー、「三國志11」の最新情報を公開
    敵を翻弄する「戦法」、個性を強める「技巧」システムを搭載
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060127/saxi.htm
    【2005年12月27日】コーエー、3D 1枚マップを採用したシリーズ最新作
    WIN「三國志11」2006年春発売決定
    http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051226/san.htm

    (2006年4月6日)

    [Reported by 三浦尋一]



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