|
会場:ガンホー本社
公式ページの「インフォメーション」をのぞくと、サービス開始から2006年1月ぐらいまで、同社体制変更のきっかけともなった各種不具合の対応に追われている感を色濃く残しているが、2月にはテストサーバー「ウクレレサーバー」の設置、オークションシステムの再開、バレンタインイベントの実施など、徐々にオンラインゲームとしての常態を取り戻しつつある。 3月に入ってからは、5年生の開放を含む大規模アップデートと20万ID達成を記念したキャンペーンを実施するなど、再び一般ユーザーへのアピールを強化し始めた。こうした華々しさは正式サービス開始以来のことで、やむなく続いていた守りの運営から、一転して攻めの運営にシフトチェンジした感もあり、今後の展開を期待させてくれる動きといえる。 ただ、同作はオンラインゲームとしてみた場合、まだまだ違和感を感じる部分も多い。これは、同作がアイテム課金モデルを採用していること、MMO+MOという変則的なゲームデザインを採用していること、そして学園を舞台にしていることなどに起因する違和感とも言い換えられる。 今回は、「ヨーグルティング」の制作とマーケーティングを担当するコンテンツ制作部第二制作課課長 鳥山主税氏と、第二マーケティング部第二企画課課長代理 古志野史嗣氏に、これまでの感想と、運営側の現状認識と、今後の展開について話を伺った。
■ これまでの「ヨーグルティング」、日韓でラインナップの違うスターアイテム
鳥山氏: βサービスを含めると去年9月から始めさせていただいておりますが、2005年はとにかく立ち上げに尽力しておりました。11月の正式サービス時にトラブルがあった関係で、11月から1月中旬までシステムの安定化を念頭に開発を行なっています。現状で言うとまだまだだなと。勝手に点数を付けるとすると、50点と言うところでしょうか。 編: 3月には20万IDも達成しました。これはどう評価していますか。 古志野氏: 思ったよりも遅かったですよね。20万IDというのは決して少ない数ではないと思いますが、「ヨーグルティング」という作品の魅力を考えれば2005年内に達成していてもおかしくなかったと思ってます。 編: 3月9日には5年生のアップデートも行なわれましたが、アップデートも順調なのでしょうか? 鳥山氏: そんなに遅くはなく、まずまず順調ですね。現在は韓国のアップデートから1カ月くらい遅れているんですけど、遅れた理由はオークションのテストを挟んだからなんです。4月の段階でほとんど追いつけると思います。4月の終わり、ゴールデンウィーク前には5年生向けの第2弾アップデートを予定しているんですけれども、そちらで3から4月の韓国でのアップデート内容が入る感じです。 編: 「ヨーグルティング」の課金モデルはアイテム課金制ですが、売り上げの傾向はいかがですか? 古志野氏: 一番びっくりしたのは、韓国と日本のユーザーでは求めるアイテムが全然違うことです。日本では経験値獲得率アップなどのステータスアップ系が人気なんですが、韓国ではこういったものがあまり好まれない傾向にあります。古参のユーザーが「自分たちがプレイしたこれまでの時間がないがしろにされたくない」という理由だそうです。 編: 経験値UPアイテムというのは、アイテム課金制のゲームにおいてはポピュラーな存在ですよね? それがNGですか? 鳥山氏: そういうアイテムを途中から取り入れると、後から来たユーザーにレベルで抜かされる可能性がある。そうすると早い段階から時間をかけてキャラクタを育ててきたユーザーに反感を買う恐れがあるということで慎重になっていまして、韓国では経験値獲得率アップアイテムは入れていません。ステータスアップ系は一切入れていませんね。セットアイテムもありません。 古志野氏: 韓国の課金アイテムは、名札などの機能拡張系と、制服などのアバター系です。
鳥山氏: アバター系は11月、12月と韓国は入れていなかったんですが、1月に多く入れたんです。ほぼ日本と同じラインナップにしたんですけど、アバター系は非常に人気が高かったようですね。 ■ スターアイテムは種類を拡充。アイテム製作も可能に
古志野氏: 賛否両論です。このままでいいという意見もありますし、多少高くても買いきりにして欲しいという意見もあります。売れ筋アイテムに関しては日本ではステータスアップ系が人気で、ここが収益の柱になっていますね。 鳥山氏: 制服は収集することにこだわるユーザーさんが多いのも事実ですね。日本でも買い切りのアイテムに対して検討を始めています。それを単品で発売するかに関しては、今はまだ答えられません。というのも、制服に関する「製作システム」が実装される構想があるからなんです。ここでスターアイテムとして永遠に残ってしまう制服を出してしまうとシステムの関係性が難しくなってしまうんです。 編: つまり、制服の自作が可能になると? 古志野氏: まだ企画段階ですが、アイテムを生成するシステムも考えています。仮にそれが実装されたときに制服を買いきりにしてしまうと……、ということなんです。 編: そうなるとレンタル制というのは今後も維持されそうですね。 鳥山氏: そうですね、短期的な意味では現状維持されます。 古志野氏: 現在公式サイトでは月間売り上げのベスト10を紹介しているのですが、上位にくるのはセットアイテムなんです。次にステータスアップ系と名札などの機能拡張系が売れています。制服はその次です。これは他のアイテム課金制のMMORPGと同じような傾向ですね。 編: 現状では、商材のカテゴリそのものが凄く絞られている印象があるのですが。全く新しいカテゴリの商品を販売する予定はありますか。 古志野氏: 企画はあります(笑)。最初に開発元とスターアイテムの話をした時、制服と機能拡張系しかなかったんですね。実はステータスアップ系は、日本運営チームが考えて日本から提案した物なんです。別のカテゴリも実は色々考えていますよ。 鳥山氏: 簡単に言うと、「回復系」、「パーティー系」、「アクセサリー系」、「その他電話機能系」といったところを考えています。番外ではカプセル販売機での、いわゆる“ガチャガチャ”ですね。アイテム課金制のゲームではメジャーなものは用意したいと考えています。 編: 「ヨーグルティング」はアイテム課金制なのに、ちょっとお金を使いにくいイメージがあります。3日、7日、30日の期限のアイテムしかなくて、今日は日曜だから1日だけアイテムを買おう、というようなものがなくて、サラリーマンに厳しいゲームだなあと。 古志野氏: これまでは3日、7日の期限のアイテムだけだったんですが、実は今回30日期限のセットアイテムを新しく作ったんです。傾向を見ていると1カ月に7日のアイテムを4回買っているユーザーさんが結構いたんですね。手軽に遊べるというのをウリにしていたんですが、ユーザーさんのログイン率が結構高いんですよね。30日のセットアイテムの売り上げは良いですね。 編: ユーザーのアイテムの利用率はどうでしょうか。 古志野氏: 1回の購入単価は思ったより低いのですが、購入件数は多いです。経験値UPの入ったセットだけを買うユーザーさんや、制服の中にとにかくお気に入りがあってそれだけを毎月買っているというユーザーさんもいます。 鳥山氏: 飲茶部の制服に頭につけるシニョンキャップがあるんですが、これだけ欲しいとか、同好会で同じ格好をするために、決まって同じ日に売れたりしますね。妙な群集心理もあって周りの人が買っていると自分も欲しくなってしまうとか。 編: アイテム課金制のゲームだと、グループのリーダーがアイテムを買ってメンバーに配る、といったこともありますが、「ヨーグルティング」ではどうですか。 鳥山氏: ありますよ。同好会の中でレベル差があるとプレイしづらいのもありますから、あまり聞こえは良くないですがショップポイントをかけたパワーレベリングもあると聞いています。制服をマスターが買って配るというのもありますね。名札を同好会のメンバーで同じ色にしたいということでマスターが配ることもあります。 編: 「ヨーグルティング」は、他のゲームに比べて有料アイテムの新製品を導入するペースが緩やかですよね。今週は、今月は、というスピードではなく大規模アップデートに合わせて、というアイテム課金制のゲームらしからぬ感じですが。 古志野氏: 韓国、日本で企画は出ていますが、開発していくペースもあります。ただ現在のスピードにこだわりがあるわけではなく今後は変わっていく可能性もあります。キャンペーンのようにバババっと入れていくこともあるでしょうし、1カ月くらいみようということもあるでしょう。 鳥山氏: 現状で言うとバレンタインイベントでスキルポイントを1アップしたりとか、特殊効果のあるアイテムが登場しましたが、これはスターアイテムのテストだったんです。需要を見ると共にシステム的な可能性も検討したんです。既存のアイテムもスターアイテムへの流用を考えて実装している物もあります。 編: 現在2,000ショップポイントをプレゼントするキャンペーンを行なっていますが、これはどういった意図があるのですか? 古志野氏: 今までスターアイテムを買ったことのないユーザーさんに何かを買ってもらって、スターアイテムという物を知ってもらおうというのが第一にあります。もうひとつは、このボーナスの導入することで、今までプレイをしていなかった人にもゲームに興味を持ってもらおうと。
今回はレベルが20まで上がった人に特典を用意していますが、これは始めてすぐにやめるのではなくて、ちょっと頑張ってもらいたいという意図もあります。プレーヤーをレベル20まで底上げをしたいんです。レベル20というと1年生から2年生に上がるあたりで、ストーリーに触れてきて、ゲームがちょうど面白くなってきます。ここまでうまくユーザーさんを誘導したいなというところですね。 ■ 5年生エピソードの次の展開は学園生活に重点を置いた“横の進化”へ
古志野氏: 必ずしも綺麗ではないですが、大枠で見ると高学年になるにつれユーザー数の少ないピラミッド型になっていますね。 鳥山氏: アップデートの実装スピードも関係してきますので、一部滞留してしまうレベルもあります。新しいエピソードが追加されていけば経験値も得られてスムースにレベルが上がっていきます。極端にバランスが悪いと言うことはないですね。 編: 現在5年生は全体の何%ぐらいいるのですか? 古志野氏: (しばらく計算をして)5%くらいですかね。 鳥山氏: そんなに多いかなあ(笑) 大体Powerが105以上が5年生の目安になります。 古志野氏: 母数をレベル2以上のキャラクタで計算するとそれぐらいだと思います。レベル1のキャラクタはほとんどプレイしていないキャラクタなので。 編: ちなみにPowerの上限はいくつなんですか。 鳥山氏: 259です。現在の最高レベルの人は122ですね。 編: 高いなあ(笑) 韓国のゲームはレベルが上がるにつれて、指数関数的にレベル上げが難しくなってきますが、そのあたりはどうですか? 鳥山氏: 「ヨーグルティング」は、エピソードがあることでレベル上げは割と楽になっていますね。新しいエピソードをプレイすることで他のゲームではありえないようなパーセントの経験値が入りますので。5年生のエピソードが入るまでは110レベルは難しかったのですが、現在はハイレベルユーザーさんはガンガンとレベルが上がりましたね。 編: 5年生が実装されたばかりですが、“縦の進化”は6年生で終わりになるのですか? 鳥山氏: 確かに学年は6年生まで用意されていますが、そこをどうするかを協議しています。ボリューム的にはストーリーは5年生で完結する事も可能です。6年生まで続けることも可能なのですが、ゲーム性とバランスの問題ですね。学年が上がると新武器も用意しなければならないと言うことで、バランス調整が難しくなってくるのです。 それで6年生のあり方というのをユーザーの行動も見つつ、開発元と考えています。次のアップデートは少し多めに要素が入る中規模のアップデートなのですが、あと2回、もしくは3回にわけて5年生のエピソードが入ります。 編: オークションでは機能として6年生まで用意されているので、6年生までは規定事項かと思っていましたが、実はそうではないのですか? 鳥山氏: アイテムなどは6年生までは作っているのですけど遊びのコンテンツをどうするかですね。 古志野氏: ストーリーの延長にするか、もしくは5年生でストーリーを終えて、全く違う展開を用意するかというところですね。 鳥山氏: これは将来的な話になりますが、現在、学校フィールドを活用しようという開発方針でやっています。フィールドでは「テクニカルスキル」のようなものを入れようという話もあります。その取得などを考えると、5年生まででストーリー、サイクルを止めておいて最終的な目標として6年生を据えるという選択肢もあるんじゃないかと。 編: テクニカルスキルとはどのようなものですか? 鳥山氏: エピソードの中で使うのは武器についているアクションスキルですが、学校のフィールドでは、キャラクタ自身に付くスキルを導入しようかと。たとえばHPが何%かアップしたりとか、部活やクラブ活動にちなんだスキルが付けられるかもしれない。例えば体育会系なら体力にちなんだスキルが得られたり、料理部なら製作スキルが上がったりとかそういった自分自身に付くものを入れようかなと。体力に関係するものなどはエピソードでも有効になりますから、必ずしもフィールドだけではないですけど。 古志野氏: 同好会の延長で部活というものができればと、せっかく部活があるならそれぞれの部に応じたものを広げてあげるとおもしろいかなという発想ですね。 編: 私が堀(取締役開発本部長)さんから「ヨーグルティング」の話を伺ったときに期待をしたのは、スターアイテムでサッカーボールを買ったら友達とサッカーができる。バットとボールを買ったら野球ができるというような学園生活だったのですが、フィールドの活用というのはまさにこれの具現化ですよね。 鳥山氏: フィールド部分の活用については「ヨーグルティング」で今まで弱かった部分でした。システム上の問題でフィールドにはあまりアクション部分がなかったんです。開発元と話をして学校部分で使えるアクションとエピソードフィールドのアクションをわけて増やしていこうと考えています。将来的にはボールを蹴っ飛ばすようなアクションなど色々入れていければ面白いかなと思っています。 これは実はかなり開発の初期段階、去年の3月ぐらいに提案しているんですよ。ここについてはユーザーさんの間でどういった流行り方をするかわからないというところと、システムの構築が急務だったので棚上げされていた部分なんです。現在エピソードというシステムがほぼ固まったという段階で、次にできることというのが出てきたんですね。 編: 現在、教室や運動場がいわば「死にエリア」になっているわけで、フィールドにいるユーザーは、広場やオークションのある購買部に集中してしまってますが、それが教室や運動場に散らばっていくイメージですか。 鳥山氏: 場所的には調理室も、プールも、バスケットコートもありますのでそこに行ったときにアクションができる、というものを考えていますね。 古志野氏: 現在でもフィールド部分で自分なりに遊びを見つけているというユーザーさんはいらっしゃいます。ダンスを踊ったり、着ぐるみをみんなで着て集まったり。そういったユーザーさんを後押しするという意味で、先ほど鳥山が言ったスターアイテムの新しいカテゴリである「パーティー系」をうまく使っていければなと。 他にも我々が用意する以外でも新しい遊びを見つけてもらいたいなと。フィールド部分を活用してもらいたいというのが次のステップかなと思っていますね。割とストーリーに主軸をおいていたのが一段落してきたので、MO部分だけではなくて、MMO部分の楽しさの拡充というのが次の「ヨーグルティング」の必要な部分なのかなと考えています。 鳥山氏: 今年の前半部分は5年生の拡充ですので、まずそこから入ります。その後に今協議をしているところがMMO部分の拡充というものが入ってきます。 編: フィールドの拡充は現在のシステムでは無理ですよね、そうなるとシステムの拡充、いわば再開発をしなくてはならないと思うのですが、それも込みで考えているということでしょうか。 古志野氏: 韓国開発陣はやる気満々だよね? 鳥山氏: 夏あたりにはエピソードの区切りをつけて、それ以降はシステム開発とアップデート実施という目標があります。 編: 夏にそういったフィールド拡張システムを実装すると? 鳥山氏: 順次ですね。現在具現化できる範囲としては、フィールドの拡張の前に、製作関係のシステムが最初に入るようですね。やはり製作関係の要素は日本のユーザーさんにとって一番好きなところですし、仕掛けも作りやすいところではあります。開発元のアイデアもここは特に熱いんです。 編: ほうほう、例えば? 鳥山氏: 既存のゲームバランスを少し度外視した部分で出てきているアイデアとして、「回復剤」、「武器製作」、「制服製作」、「強化オプション」といった感じですね。 編: 強化オプションというのは何でしょう? 鳥山氏: 現在は、武器に攻撃力と属性を足すものがありますが、さらに制服やアクセサリにもキャラクタのステータスをアップさせる効果を付与できる、というのが強化オプションという考え方です。 古志野氏: スケジュール的には何とも言えないのですが、絶対これは日本のユーザーさんも喜ぶ要素ですし、開発元からも練り込まれたものが上がってきているんで、そう考えると確かに新システムの実装としては優先度は高いですね。 編: 生産要素に関しては、多少厳しいことを言えば、「これくらいはやってもらわないと」というレベルですよね? 古志野氏: そうですね、できることはまだまだいっぱいあります。 鳥山氏: その生産とかに関して、生産できるだけでなく、教養科目とか専攻科目とかそういった“学校っぽさ”も取り入れる予定です。 編: 「お勉強」ができるようになるのですか? 鳥山氏: 「ヨーグルティング」では設定として先生がいなくなっているんですけど、自主的に彼らが勉強する形になります。 編: 「ときめきメモリアル オンライン」では勉強部分をクイズ形式にしていますが、「ヨーグルティング」にもMO空間による立派な教室がありますよね。勉強の形はどのようになるのでしょう? 古志野氏: 「ヨーグルティング」の特色は“学園”ですので、勉強の部分は強く打ち出していきたいですよね。 鳥山氏: MO部分の活用方法はたくさんあると思います。たとえば、部活ごとでエピソードを作ってそこで貯めたポイントをMMO部分で科目の修得に使うという考え方もあります。最終的に修得する場所はMMOになると思います。それを自分で学ぶという形にしていきたいので、MO部分も活用していく可能性もあります。 編: 学んだ結果得られるものは具体的にどういったものがありますか。
鳥山氏: それは、部活システムのあり方や、生産システムの内容にもよります。ただ、単に水泳をやるためにこのエピソード、というのはリソースの無駄遣いだと僕は考えています。部活のコミュニケーションに必要な物が手に入ったりとか、そういう複合的なものを考えています。 ■ 「部活」など様々なアプローチを行なう新たなコミュニケーションシステム
鳥山氏: 現在、同好会のあり方を考え直しています。「ヨーグルティング」のコミュニケーションは、同好会といういきなり中規模のものから始まっているんです。本来は小規模のものから中規模、大規模と発展させていかなくてはいけないのですが、「ヨーグルティング」では同好会というものしかなくてこの中規模のものに入りづらい。 開発段階では、エピソードの途中参加をなくして待機室での小規模コミュニティーを考えていたのですが、意外と待機室でのコミュニケーションが難しかった。ですから、小規模なコミュニティというのを改めて練り直しているところです。そこから同好会につなげ、更に上位の大規模なものに行こうかなと。部活や科目というものの名称も考えています。コミュニケーションの機能として繋げるか、独立したものにするかも検討している段階です。 編: 大規模なものというと、学年ごとといった考え方ですか。 鳥山氏: それもありだと思います。 編: 現在、同好会はツテがない難しい印象があります。しかし、現実だと新入生に対して、いくらでも接触の機会が設けられていますし、部活の先輩が勧誘しに来たりするじゃないですか。「ヨーグルティング」ではそういう部分がゼロなのでとてももったいないなと。 鳥山氏: たとえば「部活」という名称で大規模コミュニティーを作った場合、「部室」という空間があっても良い。部活を紹介する何かがあって、部室には自由に訪問できる。そういう機能があればコミュニケーションがとてもスムーズになるでしょうね。 編: たとえば、裁縫部は部室で部員と話しながら縫い物をするようなイメージですか。それは現在のシステムでもできるのではないですか? 鳥山氏: システム的にそこがコミュニケーションの場として成り立つかという検討をしています。しかし、運営チームでは現状のチャットシステムの改善と俗に言う「下校病(オンラインなのに友達や同好会リストに反映されない状態)」の改善から入っていきたいと考えています。これについては上半期でなんとしてでも。 特に下校病に関しては開発元と何度も打ち合わせをしています。原因に関しては「ヨーグルティング」のコミュニケーションを司るサーバーのちょっとした不具合だろうと考えていますが。原因がサーバー側なのか、クライアント側なのかを調査をしているところです。再現が難しく、時間は掛かっていますが、目処は大体ついているのでそれを絞り込んでテストをしていければと。 古志野氏: 話を聞いていると、鳥山はまるで開発元みたいでしょう? パブリッシャーの枠を超えているんですよね(笑)。常に韓国と一緒に一緒にどういう方向に行くかを協議しているんです。今出た話も日本側からの提案なんですよ。ここが実は「ヨーグルティング」の強みなのかなと。日本のサービスを見た上で「こういった要素が必要なんだ」と話し合える環境にありますので。 編: なるほど。鳥山さんの意見がある一方で、開発元が目指している方向性というのはどういったものなのでしょうか? 鳥山氏: 開発元はやはり縦方向の方向性が非常に強いですね。横方向の学校フィールドの活用のアイデアなどは乏しいと言わざるを得ない。エピソードに関しては全面的に開発側の企画で、それ以外の所に関して提案をしているので、自然とエピソードが終わった瞬間に、僕らの意見がガガッと実現できるかなと。 編: Powerの上限を見ても、このまま10年生まで行くのかなという勢いですよね? 鳥山氏: このまま縦に伸びても、下の方を見たら足下に何もなかったとか。そういう可能性もあると思いますので。そこはやはり区切りをつけて開発をしていかないといけませんよね。 編: とりあえず上半期までは開発元のアップデートがメインで、下半期はガンホーのアイデアが主体となっていくと? 鳥山氏: 大体9月の東京ゲームショウの段階と、11月の1周年記念のタイミングがシステム的に大規模のアップデートが入れやすいので、そこで何らかのアクションが行なわれる予定です。 古志野氏: 結構バージョンアップしていくと思いますよ。特にフィールド部分の拡充は、いろんな構想がありますから。 鳥山氏: 僕らとしては色々と開発提案はしているんですけど、ユーザーさんに選択肢を与える開発を心がけているんです。「ヨーグルティング」のキャッチフレーズは「みんな今日どうする?」というものですが、これを決めるときに社長をはじめとした会社の主要スタッフと集まって考えていました。
学校っていうのは放課後友達に声をかけて、コンビニに行く?、ファミレスに行く?、「私は今日は部活があるから」というような会話ができるところだ、ということでこのキャッチフレーズになりました。そのコンセプトは現在でも変わっていません。やはり今後はそういった要素が重要になってくるだろうと考えています。 ■ 今後も積極的に行なわれるオンラインイベント、「予習」が必要となるテストも
古志野氏: 「ヨーグルティング」はMMOの部分のフィールドがそれほど広くないのでキャストイベントがやりやすいんですね。これからのキャストイベントの計画も定期的に立ててあるんですよ。その辺は特に見せやすい部分なので力を入れてやっていきたいです。 鳥山氏: ペースとしては毎月1回というのを基準に考えています。3月のホワイトデーイベントはやりましたし、4月は新入生を対象にしたミニゲームの実施を学校フィールドでやりたいと思っています。それと2月にオークションが復活しましたので、オークションを使ったイベントも考えています。 編: キャストイベントというのはその場所に行かないとわからないですが、参加者はどのくらいなのでしょうか? 鳥山氏: 大体イベントの開催時間の接続者数の何%かという計算をしていますが、50%までいけば上出来という感じですが、大体30~40%を見込んで数字を立てています。 編: ホワイトデーって学校とは直接関係がないですよね。運動会や文化祭や期末試験のような学校ならでは、「ヨーグルティング」だからこそできるイベントも無数にある。私は運動会のような、学校的な全員参加イベントに期待してしまうんですけれども。 古志野氏: 実際の行事に即したイベントなども当然考えています。ただ、ホワイトデーも学校生活としては重要ですよね!!(笑) 季節ものと学校行事はうまく織り交ぜていかないともったいないかなと思っています。 編: その他にはどのようなイベントを考えていますか。 鳥山氏: ちょっと頭を使っていただこうかなと(笑)。本当はセンター試験をやっている1月にやりたかったのですが、システムの関係でできなかったんです。これから期末試験や中間試験のタイミングでやりたいイベントがあります。イベント担当者が問題を作るのを見ましたが、僕でも50%しか答えられませんでした。 古志野氏: 俺は2割しかわからなかった(笑)。 編: それはGM(学級委員)が問題を出してプレーヤーが答えるという形なのですか? 古志野氏: そういうこともできますし、問題をプラカードで表示させたり、エピソードで部屋にはいるのにパスワードを設定できるので、答えをパスワードにして正解したら部屋に入れるとかそういうこともできますね。 鳥山氏: 僕としては、「予習」なんかもさせたいですね。“この中からも出るかもしれない”、とか。予習、暗記、みたいなね(笑)。 編: テストに正解すると何が得られるのでしょう。 鳥山氏: 色々ですけど、ホワイトデーの時はダンスものとか、一番良いアイテムが武器でしたね。制服を入れることも可能ですし、季節によっても変えられます。スターアイテムも可能ですね。例えば1日券とか。 編: 勉強というと文化系の匂いですが、体育会系のイベントもやっていただきたいですね。
鳥山氏: グランド10周とかでしょうか(笑)。実はそういう部分も考えています。グランド10周すればアイテムがもらえるとかではなく、学校フィールドでも色々楽しみをということで開発と意見が一致しているのは、「学校生活」に焦点を当てようというのがあります。何をしていても学校生活の一つだと言うことで、例えばチャットをしていても何らかのポイントがたまるとか、何か報酬を与えてあげようかなと。 ■ アクションに対する報酬。レベル上げだけでない楽しさを提供
鳥山氏: 色々な人です。ユーザー同士や、学級委員やNPCでもいい。他にもオークションをやったり強化をやったり、ユーザーが行なったすべての行動に関して何らかのシステム的なリアクションがあるというのを考えています。 編: それはどういったポリシーに基づくものなのですか? 鳥山氏: 韓国からオンラインゲームは基本的に画一的なレベル上げ作業ですが、「ヨーグルティング」の作風を考えた時に必ずしも強さを求めるゲームではない。しかし、現在はただひたすらエピソードをやるだけで、そうしないとレベルも上がらないしストーリーも進まない。ここにちょっと疑問を感じていまして、それを根底から覆すことになってしまいますが、システム的に別の方向からでもレベルが上がるとかお金が入るとか、アイテムがもらえるとかそういったシステムを取り入れてみようと。 編: ゲームで移動したりチャットするのは、その先にある楽しさを得るためであって、それそのものはあくまでプロセスですよね。チャットで報酬が手に入るならば「あああ」というようなセリフを連呼しているだけでも良くなってしまいませんか? 古志野氏: もちろんこれは構想段階なので、これからそういったことは考えていきます。ログインしたらポイントが入るからログインを繰り返す、というのは求めていませんし。うまく練り込んでいけ今までにない楽しさをもたらすことができると思っているんです。 鳥山氏: バランスを考えないで導入してしまうとゲームの根本が覆ってしまいますからあくまで補助的な役割、というのは揺るがないと思うんですね。ただ、それがコミュニケーションの補助になったりとか、レベル上げの補助になったりとか、そういうところで考えています。 編: 韓国の開発チームは縦の進化をずっと考えていて、日本の運営チームは横の進化を考えている。それが融合したときはどんな姿が見えてくるのでしょうか。 古志野氏: 良い意味で、今の「ヨーグルティング」とは全然違うゲームになるのではないかと思いますね(笑) 鳥山氏: 2006年もオンラインゲームがいっぱい出ると思いますけど、縦方向をひたすら突き詰めても差別化はできないと思います。何かしら差別化、区別をする時に「ヨーグルティング」は特徴を出しやすい。キャラクタが可愛かったり、“学園”という特異なテーマを持っているからです。そしてレベル上げ作業だけがMMO、ゲーム性じゃないよねというところに落ち着いたんですね。これがすべて実現すると、毎日が楽しい学校生活が色々表現できるのではないかなあという気はします。 編: 「ヨーグルティング」をプレイしてて学校臭さをあまり感じないのは何故かというのを考えていたんですが、物理的な時間の軸がないからではないかというのを思ったりもしたんです。12時になったから食堂にいこう、みたいな時間によるきっかけが生まれない。 鳥山氏: 今も一応昼夜の概念はあるのですが、実はさらに登校時間や下校時間というのも設定されていました。開発段階では夜にしか現われないNPCなどもいたのですが、バランス面を考えて実装を見送っていたんです。これをシステム的にもっとうまくできれば1日の中での時間の概念というものも導入していく予定です。
古志野氏: キャラクタを作るときに自分の生年月日や血液型を入力しますよね、潜在的に用意されているこれも活用できるかと、これも一種の時間軸ですよね。 ■ キャラクタ性に重点を置いた新しいメディア展開
鳥山氏: ストーリーの区切りが夏にかけてありますので、3カ月スパンくらいで波が来ます。6月、9月、12月といった感じですが、この段階で「ヨーグルティング」が目に見えて成長するようなアップデートを考えています。それはゲーム性だけではなくて、キャラクタ性や、メディア展開といったものも加わってきます。 編: キャラクタ性というのは、NPC達を更に活用するということですか? 鳥山氏: 色々な考え方があるのですが、「ヨーグルティング」ではEVP(Endless Vacation Phenomenon :無限放学現象)を巡るストーリーに関わってくるNPCが50人くらいいるのですが、本筋のエピソードで語られるのはあくまでEVPの原因を探るものだけなんですね。 それ以外のサブストーリー的なものはエピソードでは現状では拾いきれないんです。そういった部分をたとえばWebでの展開とか、誌面の展開とか、そういったものでフォローができるかなという事を考えています。 今メールマガジンで「アンナの部屋」というのをやっているのですが、ここではゲーム内で語られないキャラクタ達の私生活やモンスターの特徴、ソソの生態とか色々なテーマでやったのですけれども、そういった世界観を深める部分で注力しているという感じです。本筋を楽しんでもらうためにサブストーリーも充実させていきます。 編: そうした動きはメディア展開として繋がっているのでしょうか。 古志野氏: それもまた色々な見せ方ができると思うんですよ。「ヨーグルティング」のゲームの中では表現できるものは限られていますが、裏設定では凄く練り込まれた設定が考えられていたり、それをどうやって見せていくかは何らかのメディアを使っていくというやり方が好ましいのかなと。紙媒体もありますし、音を使った展開もありまえますよね。 編: メディア展開というと、過去にガンホーさんでは「ラグナロクオンライン」でアニメーション展開がありました、この他にもラジオやストリーミング放送と色々やりましたが、そういった展開ですか。 古志野氏: もちろん構想としてはあります。そう簡単にできるものではないですけどね。 編: まずは何からやっていくのでしょうか? 鳥山氏: まずは昨年からやっているナビゲーター施策からですね。今年も東放学園さんに色々ご協力いただける方向で話を進めているんです。ということで“声”を使った施策は割と早い方向でお見せできるかなと。 編: 声を使うというのは具体的にどのようにでしょうか、ゲーム内で導入するのでしょうか。 古志野氏: それはまだ先の話ですね。今はまだ構想段階なのですが「アンナの部屋」は対談形式になっているのでこれに声を当ててWebや何かしらのメディアを使って公開するとかも面白いかなと。 鳥山氏: ガンホーでもネットを使っていろいろと展開していますので、その中で配信するのも可能ですね。 古志野氏: せっかく学級委員で登場する彼らの実際の声が聞けるという、ゲーム内、ゲーム外の展開をミックスさせることでユーザーさんの間で盛り上がっていただきたいなと。 編: それが6月という感じですか? 鳥山氏: できることから順次やっていくので、もしかしたら6月にならない段階でできるかもしれないですね。スケジュールは未定です。昨年末から学生さんは卒業公演や、卒業、という時期なので活動としてはお休みしているんです。そこの体制を更に固め直して人員増強などを考えています。 編: なるほど、まずはメインストーリーの拡充といったところですよね。 鳥山氏: 結構メディア展開とかもゲームのアップデートと同時並行して進めていますので、先ほど申し上げた波に合わせてガッガッガと置いていければなと。 編: いろんなアイデア、企画が出てきましたが、どれがどの順番でくるのでしょうか。 古志野氏: 難しいですよね。色々な物が同時進行しているので。鳥山はゲームを面白くしていく、僕は「ヨーグルティング」を広めていきます。広めていく手段として今までとは違うチャネルを使っていきたいです。たとえば夏くらいを目処にゲームセンターを利用した施策も考えています。 あとは音楽や出版といったジャンルでの企画も進行しています。多角的に「ヨーグルティング」を盛り上げていければいいですね。そうしている内にゲームもアップデートされていって更に新しい展開も可能になって大ヒットという形にしていきたいですね(笑)。 編: 今回はフィールド部分の拡充や、コミュニティ機能、生産要素など、さまざまなアップデート計画が提示されましたが、これらは大体年内に見えて来るという理解で良いでしょうか。 鳥山氏: はい。大体僕がお話しした開発計画やメディア展開は2006年内を目処にした構想ですので、12月までの間に形にしたいと考えています。 編: わかりました。最後にユーザーさんへのメッセージを。 鳥山氏: 「ヨーグルティング」はキャラクタ性が凄く特徴的なのでユーザーさんのご意見を反映しながら開発を進めていきたいと考えています。たとえば「NPCの火蓮が好き!!」とか、そういったものを強く持っていただきたいなと思います。さらにそれが近いうちにいろんな形になって実現できるというか、ご意見が反映される機会があると思いますので、是非是非お楽しみに。
古志野氏: 今年はいろんなチャネル、いろんなメディアを使って「ヨーグルティング」を前面に押し出していきます。やっぱりユーザーさんが絡んでくる施策、一緒に考えられるような施策が一番盛り上がるんですね。ですから今年もそういったものをどんどん出していきますので、一緒に「ヨーグルティング」を作っていきましょう。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2006年3月17日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|