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アジアオンラインゲームカンファレンス2005レポート

コーエー松原健二氏が日本の対アジア戦略を講演
中国市場の凄まじい実態とその対抗策とは!?

会期:2月28日~3月1日

会場:工学院大学

 ブロードバンド推進協議会が主催する「アジアオンラインゲームカンファレンス2005(AOGC2005)」。会場となっている工学院大学では、昨日に引き続き、2日目のセッションが行なわれている。本稿では、株式会社コーエー執行役員の松原健二氏による特別講演の模様をお伝えする。

株式会社コーエー執行役員の松原健二氏。有料セッションだったにもかかわらず、席は超満員だった
名実ともにグローバルなMMORPGとして「World of Warcraft」を紹介。目の付け所としては新しい
 松原健二氏は、「信長の野望 Online」のプロデューサーを皮切りに、現在では執行役員として、コーエーのオンラインゲームの全タイトルを統括する同社オンラインゲーム事業の舵取り役として知られる。今回の特別講演では、「Japan発Onlineゲームを成功させる戦略」と題し、主に中国をターゲットに、オンラインゲームをアジア展開させる際の基本戦略について語った。

 コーエーのオンラインゲームといえば、2月15日にはシンガポールの合弁会社を設立、「三國志 Online」の開発に着手したことを正式発表し、2月23日には「大航海時代 Online」のプレオープンサービスを開始、さらに講演の翌日である3月2日には、「信長の野望 Online 飛龍の章」の大規模アップデートが予定されている。

 客観的に見てこの講演に出られるようなゆとりはないはずだが、さすがに松原氏も超人ではなかったようで、当日は風邪をひいて少し声をからしていた。自身の告白に寄れば、プレオープンサービス直後に、スイッチの故障という単純なハードウェアトラブルで徹夜を余儀なくされ、一晩完徹した結果、風邪をひいてしまったのだという。

 さて、講演では、まず現状把握として、アジア圏(中国、台湾)で現在主流のMMORPGの紹介からスタート。示されたデータは、実際のユーザー数ではなく、ユーザーによる人気投票によるものだったが、2005年1月時点という最新のデータを用いていた。

 中国と韓国で1位を記録していたのは「World of Warcraft」。すでにリリースされ人気を集めている韓国はともかく、中国までが注目していたのは意外な事実。「World of Warcraft」は、すでに米国、オーストラリア、ニュージーランド、欧州、そして韓国で正式サービスがスタートしており、欧米オセアニアのユーザー数はパッケージベースで110万本以上、クライアントフリーの韓国でもすでに同時接続25万人を突破。松原氏は、同作がいまワールドワイドレベルでもっとも支持されているMMORPGであると同時に、ゲーム先進国である日米欧発のMMORPGが、初めてアジアで支持された例だと紹介した。

 次に日本に話を転じ、日本発のMMORPGは、アジアではほとんど浸透していない実態を報告。サンプルとして、日本発のMMORPGの数少ない成功事例のひとつであるスクウェア・エニックスの「クロスゲート」を取り上げ、中国台湾での累計会員数である1,600万という数字を取り上げ、その上で、同社のオンラインゲームの売り上げにおけるアジア圏の割合と比較し、日本に比べて、人数と売り上げの間に大きなギャップがあるという結論を導き出した。第3者から見て、会員数が1,600万という数字自体がそもそもの立脚点としておかしいが、松原氏はそういう枝葉末節にはこだわらず、話を一気に中国オンラインゲーム市場の実態に持っていった。

 松原氏は疑問を呈しつつ中国のオンラインゲーム人口を2億5,400万人(全人口の18%)と報告。アジアのオンラインゲーム市場を≒ゲーム市場と判定し、アジア全体(日本を除く)の市場規模を1,000億円程度と評価。北米(7,000億)や日本(4,000億)に比べ、まだまだ未熟であることを強調した。

 ここからがおもしろいのだが、先ほど「オンラインゲーム市場≒ゲーム市場」という判定を下しておきながら、松原氏は、中国のゲームビジネスの内訳は、パッケージゲーム7割、オンラインゲーム3割であると驚愕の見解を示した。その7割分の売り上げはどこに消えたのかというと、「ほとんど払っていない。中国のゲーム市場というのは、海外のゲームを無料でやること、極端にいうとそういうことです」と中国ゲーム市場の巨大な“膿”をバッサリ断罪した。

 実態報告として、先週中国に出張した役員の報告を例に、日本で2月24日に発売した「真・三國無双4」の海賊版がすでに2月25日には存在し、5元(75円)で売られていたという凄まじい実態を苦笑いしながら紹介。「『真・三國無双4』が75円ですよ?(笑)」と、我ながら信じられないという体で、中国はまだパッケージゲームビジネスは難しいということを報告した。

「大航海時代 Online」におけるチャレンジは、新たなゲーム性の提案。携帯電話との連携といった新たな可能性も模索しているという
βテスト期間からプレオープンまでの登録アカウントの推移も紹介。さまざまな運営ノウハウが蓄積できたという
 以上までが実は前振りで、「オンラインゲームが果たした大きなステップというのは、中国でゲームがビジネスとして成立するようになってきたことだ」とユニークな見解を明らかにした。こうした変化により、中国にゲームに関して、開発、運営、営業を行なう「本来あるべき」会社が育ってきたのだという。

 ここで松原氏は、日本企業がアジア市場へ展開するにあたって、2段階にわけた展開プロセスを紹介した。松原氏によれば、中国オンラインゲーム市場はとにかく販売管理費のウェイトが高い、つまり粗利が低いため、まずは現地のパブリッシャーとパートナー契約を交わし、現地のノウハウを学びつつ、低コストの流通チャネルの開拓や効率の高いプロモーション手法を編み出すことに力を入れることが得策だという。

 具体的なケースとして松原氏は、中華圏で主流になっているプリペイドカードは、日本に比べて極めて流通コストの高い決済手段であることを強調。日本では10%内外である中間マージンが、プリペイドカードだと30%近くはねられるというといった実態をディテール豊かに報告した。

 第2段階として、子会社による現地開発、運営となるが、まさにその段階に入りつつあるスクウェア・エニックス(2月28日を中国子会社設立を発表)については、「スクエニさんには先にいかれちゃったなあ、もう第2段階に突入しているなあ」と真情を吐露。「我々も負けていられないのですが、今までの売り上げなどは進んでいることを認めざるを得ない」とコメントした。

 そうしたアジアの状況を踏まえた上で、今後のオンラインゲームは「グローバルをターゲットにしたゲームデザイン」であるべきだと説明。具体的には、企業ブランド、ゲームデザイン、パートナーシップといった要素に気を配りつつ日本独自のコンテンツを提供していくべきだという。

 そのサンプルとして自社タイトルである「信長の野望 Online」と「大航海時代 Online」、「真・三國無双 BB」の3タイトルを紹介。中でも「大航海時代 Online」は、従来の「人と争うゲーム」ではなく「人と楽しむゲーム」という新しい提案をしている作品だと紹介。

 アイテム入手やボスの撃破といった結果を求めるプレイスタイルから、プロセスそのものを楽しみに変え、人に先んじる要素をできるだけ減らし、交易、冒険、発見といった戦闘以外の楽しみ方を充実させたという。「大航海時代 Online」のアジア展開についてはまだ不透明な部分が多いが、この新しい提案がアジアのユーザーに受けいられるかどうか楽しみなところである。

自社3タイトルの映像を紹介。新作情報として目新しいネタは何もなかったが、このあとにさらに「三國志 Online」も控えていることを考えると、コーエーのオンラインゲーム戦略はまだまだ拡大路線を続けていきそうだという実感を持った

□ブロードバンド推進協議会のホームページ
http://www.bbassociation.org/
□「AOGC 2005」のページ
http://www.bbassociation.org/AOGC2005/
□関連情報
【2月28日】BBA、アジアオンラインゲームカンファレンス2005を開催
RMT論、教育研究、実態報告など注目の講演が目白押し
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050228/aogc.htm
【2月28日】ブロードバンド推進協議会、「AOGC2005」開催
和田洋一スクウェア・エニックス社長が語る「ネットワークゲームビジネス」とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050228/bba.htm

(2005年3月1日)

[Reported by 中村聖司]


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