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会場:幕張メッセ
■ 「エミル・クロニクル・オンライン」、憑依やマリオネット、新システムの手応えは 編: 現在オープンβテスト中の「エミル・クロニクル・オンライン」(以下、「ECO」)の今後の展開を教えてください。
編: それは今回発表された新コミュニティーシステムや、背負い魔でしょうか。 森下氏: 背負い魔はどちらかというと要素的なものであって、もっと大きな斬新なシステムです。 編: 比較的興味があるのは、3つの世界、パラレルワールド構想ですが、現在1つ目の世界がまだ未完成なのに、3つ世界の実装はいつになるのでしょう? 森下氏: 時期についてはまだお知らせできる段階ではないですが、がんばっていますよ。世界観的な部分で、パラレルワールドも実際に制作を進めていますし、現在あるエミルの世界も広がっていきます。 編: キャッチフレーズに「ハートフル」というものがありますが、そういうような要素はまだ少し足りないのかなという気もしますね。 森下氏: ハートフルという言い方に関しては、3社で立てているコンセプトで、マリオネットや憑依システムが直接ハートフルな要素だという訳ではないかもしれません。 ちなみに「君が僕の盾になる、そして僕が……」これは私がつけたキャッチコピーなんです。自分自身が人のために何かをしてあげる、というコンセプトに関して、現在の憑依システムではまだユーザーさんも含めて、「これってどうなんだ?」という部分で細かな問題点がある。私達が予想もしなかった使い方もされているところがある。オープンβテストの期間というのは、憑依やマリオネットをユーザーさんがどう使うのか見ている段階です。例えば憑依している武器を拾ったけど、一言もしゃべらずずっとプレイを見られている、とか、レギュレーションをどうするかも考える必要があります。 今のところは、「とりあえず砂場があります、スコップを置きました。さあみなさんどう遊びますか?」という状態で、ゲームとして完成させていく……オンラインゲームに完成はありませんが、目指す方向性へ行くにはまだまだこれからという所なんです。オープンβテストのユーザーさんの反応の上で、レギュレーションをかけるか、かけてしまうとユーザーが全然遊べなくなってしまうとか、色々な要素を含めて方向性を明確にしていきます。ストーリー的な展開に関してはシナリオを少しずつ付加していこうと思っています。 編: ということは、まず機能が先なんでしょうか。 森下氏: 憑依システムとか、現在はまずシステムを先に立てていますね。憑依のシステムの遊ばれ方というのはストーリーと関係なくて、コミュニケーションのあり方や、パーティープレイとかも、ユーザーさんから「パーティーを組むメリットがあまり感じられない」など色々な話を出ています。実はユーザーさんからの要望が一番多いコンテンツなんですよ。 そういった意見を見ていくことでシステムを作って、シナリオを見せていこうと思うんです。システムがきちんとしないと、実はストーリーが見えてこない部分もあるんです。
■ オンラインゲームはシステムが土台。未だ見えない「ECO」のストーリーと世界
森下氏: 今回2次職の情報が公開されましたが、戦闘系だけではなく、生産系も含めて、レベル上げだけではなく、誰かに何かをしてあげる現在はまだ充分な意味合いにはなってないかもしれないけれども、ユーザー自体のコミュニケーションの上でハートフルなところを見せていこうと。ストーリーだけではなく、ゲームデザインやシステムの部分職業でもコンセプトとしてハートフルにしていきたいと思っています。 編: 現状だと、砂場にたとえますと、小さなスコップとか、大きなスコップとか、かわいいスコップとか、とりあえずスコップがたくさんあって、さらにそのスコップが追加されているような状態で、子供というのは砂場で蟻塚も見つけたいし、砂を掘ったら亀とかいると嬉しいと、そういうサプライズを期待していると思うんですが。 森下氏: ええ。そこでサプライズ的なものとして、例えばそれが新しいゲームシステムであるということですね。 編: 発表会では、そこが今回もまだ明らかにならなかったので、ひとつ残念だなと思いました。 森下氏: 今回はシアターとかを前もって言ってしまいましたからね。 編: 仮にシアターがTGSで初めて発表されたとしても、私の感想は変わりません。MMORPGといってもやはりRPGなので、ストーリーを楽しみたいし、予想外のファンタジー体験がしたい。 森下氏: ストーリー性に対しては今回SAGA1になりますし、これからどんどんふくらんでいきますよ。 編: それで今回発表された要素というのが、「上級者向けダンジョン」と「PvP要素」で、バトル色の強いMMOという印象があります。これは想定通りの展開ですか? 森下氏: 世界観の厚みという部分では現在の世界はすごく小さく感じられるものになってしまっているので、この作品が持つ世界観の広がりが皆さんに伝わらないのかなと。そう思う部分もあったので、あえて前回の発表会でパラレルワールドの世界に触れたんです。現在ある世界はここですが、もともと世界は3つの世界が偶然つながってしまって、という話をユーザーさんにしないといけないなと思って、あえてTGS前に発表したんです。 編: 現在受けられるクエストは、例えば何を何個もってこいとか、どうしてそれが必要なのかまったく必然性がないですよね。このあたりは、まだ未完成なのか、あえてまだ見せてところもある? 森下氏: あえて見せない部分もありますよ。例えばゴミ箱はなんのためにあるのかな、とか。エコロジーそのものは、「エミル・クロニクル・オンライン」というタイトルが決まったときに、「ECO」が略称になって、それならばということでエコロジーになっていったんです。ただ、ゴミ箱そのものはエコロジーというだけの意味ではありませんよ。これにもちゃんと意味があります。 皆さんから要望のあるストーリーはこれからどんどん見せていきたいと思いますが、運営側としてはまずきちんとシステムを構築したいというのがあるんですよ。まずはシステムがコミュニティーの中でちゃんと機能するか試すのが先だと思うんですよね。まずストーリーよりも、ゲームシステムをこちらの方からは提案しています。ストーリーや世界観も今どんどん作っていますが、まずはキモであるシステムを、と思っているんです。 憑依システムやマリオネットシステムは、ログアウトした後もキャラクタがゲーム世界に残って世界に生きているというシステムだけど、ユーザーは本当にこちらが意外に思う使い方もするので。 編: 現在、アイテムを壊さないようにするためだけにログアウトする人に憑依してもらう、といったプレイをしている人もいて、人を利用する、というようなちょっと殺伐とした雰囲気も出てしまっています。 森下氏: そういった殺伐ぶりにどうレギュレーションをかけるか、ということですよね。面白みをなくしてしまうレギュレーションはかけられない。オンラインゲームはやはりシステムが土台なんですよ。その上にゲームデザインやシナリオが乗っかっていく。その土台となるシステムがしっかりしていなくては、ストーリーがいくら良くても崩壊してしまうんです。 「GRANDIA ONLINE」でもシステムがきちんとしていなければ、長期的なビジネスは成立しない。販売して、クリアして楽しかったねという世界ではないので、システムがコアとしてできてなければいけないと思います。
■ これからの「ヨーグルティング」、課金システムはどうなるのか? 編: 「ヨーグルティング」は何も知らない状態で始めても、クエストやエピソードをクリアしていくことで、NPCとの結びつきが生まれ、学校の状態が少しずつ分かってきて、結果としてゲーム世界における自分の立ち位置が明確になっていて、すごく楽しい。ゲームとしての完成度が高いですね。
編: 興味深かったのは、日本と韓国ではやはり学校観に違いがあって、その違いによる一種の違和感が異空間を演出していますね。この違和感が楽しさになっているところがある。 森下氏: 完全な日本の学園ものになると「ちょっと違うな」と思うけど、異世界だからと思う部分はありますね。日本を舞台にしていたら、余計変な違和感を感じてしまったかもしれません。MOという概念を持つ作品は、ガンホーとしては初めてのタイトルなんです。サクサク感や戦う感じとか、うちとしてはやって良かったなと思っています。 編: ガンホーは「ヨーグルティング」に結構大きな資金を投入していますが、それがゲームにどう反映されているのでしょうか。 森下氏: それだけ日本に注力して欲しいということと、まずは日本でしっかり成功させたいという思いもあります。 編: 日本が提案したイスに座れるという要素は、細かいネタですけど良いですね。 森下氏: 学校だからね。イスに座って朝礼とか。学生というのはみんながたどってきた道だから、サークルとか部活とかは誰もが知っている要素で、もっともっと細かい要望をNeoWizさんには聞いてもらっています。日本で成功するために、何でも言ってくれともいわれています。 編: ユーザーのコミュニティを見ていると、部活動なんかあるとピッタリはまりそうなね(笑)。 森下氏: 運動部でグラウンドを走ったり(笑)。「ラグナロクオンライン」でもありましたが、学校ならばもっとね。企画してどんどん入れていきたいと思ってますし、古志野と鳥山がNeoWizに話を聞いてもらって、一緒に作っている感じがすごくよく出ていると思いますよ。日本というマーケットを主軸に置いていたので、パブリッシャーとデベロッパーという関係でとても良い関係ができています。 編: 「ヨーグルティング」は完成度が高く感じられて、有料化のタイミングは「ECO」より早いのかなと見ています。 森下氏: 完成度は韓国でβテストを重ねていたので高いです。有料化はそんなに遅くはないと思いますよ。タイミングは内部的には決まっています。アップデートのタイミングや、ユーザーのモチベーションが上がっていくときですね。さっきの話で言えば、全容的なストーリーが明らかになるとか、何かサプライズがある段階ですかね。 「ヨーグルティング」も課金開始はゲーム自体のサプライズに合わせるというところがあります。「ラグナロクオンライン」の時の有料化には2次職、マップの追加に合わせているんです。本当は少し遅れそうだったんですが、何とか合わせたんです。開発状況によっては遅れることも前倒しすることもある。 うちとしては月ベースでアクティブな課金件数というのが出るわけです。過去3年間ですべてトラックレコードができています。ボトムになってくるのが第1クォーターから第2クォーターまでで、なぜかというと、色々と人が忙しい時期だからなんです。試験勉強があったり、入社したばかりだとか、引っ越ししたりとか、そこから夏休み、TGS、年末商戦という時期で上がっていくわけです。タイミング的な意味から言えば、年内には課金をしたいと思っています。 編: そうなるとホリデーシーズンですか? 森下氏: 時期的な問題とアップデートの問題ですね。毎回微調整が入るんですよ。 編: 4年生向けアップデートがひとつ大きなタイミングになりそうですよね。課金した人はサンタ帽かぶれますよ、みたいな。 森下氏: うん、そういう見方もあるでしょうね。 編: ビジネスモデルはどうなるのでしょうか? 森下氏: 今のところアイテム課金を考えています。韓国ではアイテム課金でやっているので基本的には変える方針はないのですが、一応、定額制のプランも含めた形で協議をしている最中なんです。 まだサービスをするのが韓国に続き2国目だから変えていける可能性もあります。他の国ではこういう課金形式になってしまっていて、課金形態に合わせたアップデート、戦略しかとれなくなってしまうという状況ではなくて、まだ融通がききます。 アイテム課金は、定額制とはビジネスモデルがまた違ってきて、「商品棚の世界」になる。いかにお客さんに恒常的に課金してもらえるかという計画が必要になってくる。我々が考えている有料課金化後の世界にマッチしているかを含めて協議しています。 編: 定額制、アイテム課金制というくくりで見ますと、ガンホーさんはアイテム課金ベースのゲームは少し苦戦しているのかな、という印象も受けますね。 森下氏: 「TANTRA」は見込みより良いですよ。ただ1つだけ言えるのは、「ラグナロクオンライン」などの定額制のタイトルに比べて戦略の打ち方が全然違うんですよ。「TANTRA」の課金のデータには、いろいろ勉強になる情報が多いです。 だからアイテム課金をするのであれば、それに合わせた戦略性を持って開発の部分も含めたアイテム課金の計画をちゃんとしないといけないとしないと、この月は売り上げが伸びたけど今月は悪いよね、収益の逓増型(少しずつ増える)モデルを構築していく必要がある。極端な話、新アイテムがまったく売れなかったらどうするのか。そういったことに対して考えなくてはいけないですね。 編: 話を伺っていると、まだ森下さんの中では、アイテム課金か定額制かで揺れている部分があるようですね。 森下氏: まだ決断していません。現場の方で最終的に有料化のプランを協議していって、ジャッジをする、それからですね。 編: アイテム課金制のゲームでは、「パンヤ」が盛況です。本質的な部分で衝突もありそうですが。 森下氏: 「パンヤ」はアイテムの追加の仕方とか、カジュアルなマーケットの上で商材のそろえ方とかうまいと思いますよ。ただ、RPGとは違って、スポーツですから、商材が作りやすい部分はあるんだろうなと思います。「ヨーグルティング」は韓国ではアイテム課金制ですが、「学園もの」という中で協議をしています。 編: ごく個人的な意見を言えば、私は定額制が好みです。記者だから時間がないので、1,000円のアイテムを買っても、1カ月の間にそれを「愛でる時間」が、学生さんたちとかに比べて圧倒的に少ない。「もったいない」という気分が、プレイにためらいを産んでいるとすれば、それはゲームビジネス的に、MMORPGのメインストリームにはなりえないのではないかと思いますね。 森下氏: MMORPGというくくりでいえば、いわゆるファンタジーの世界観を前面に出していくのか、非常に狭いクローズドな世界でやっていくのかで変わっていくと思うんですよね。正直、ビジネス的な観点から言うと、定額制が一番安定するんですよ。一番逓増型のモデルなんです。 編: しかし利益率はアイテム課金の方が断然高い。 森下氏: 顧客単価は高いから、例えばニッチマーケットを狙った場合はアイテム課金の方が良い。しかしながら大作になればなるほど定額制という概念が出てくる。大作になるほど定額指向が強くなっていきます。ただ、定額かアイテム課金かだけではなくて、もっともっと色々な課金方式もありだと思うんですよ。たとえば部分課金とかね。正式サービス開始までに色々考えていくつもりです。
■ ガンホーとジー・モードによる新たなカジュアルゲームへの挑戦 編: 「ゲッドアンプド」のサービスが終了しますが、この理由を教えてください。
ただし、ポートフォーリオ(投資先の組み合わせ)をやっていく中で、我々はカジュアルゲームが、ゲームマーケットにおいてマイノリティーなのかというと決してそうではないと思っています。我々としても戦略的に新会社を設立して、カジュアルミニゲームも含めた方向性も展開していくわけですから、その中で今後のポートフォリオや、コンテンツな戦略的な部分での判断です。経済合理性と戦略性の判断において両者で話した上、決定いたしました。今後また組んでやることもあるかもしれません。同じ業界内にいるわけですから。 編: 今回の発表は、「ラグナロクオンライン」が始まり、オンラインカジュアルゲームがスタートして、「A3」、「TANTRA」、そして今や新しいタイトルを手がけるようになり、ガンホーさんのビジネスが多方面に拡散していく中で、いつの間にかオンラインアクションゲーム(OAG)市場は縮まっているのかな、という印象を受けました。今後OAG市場に対してどういった働きかけをしていくつもりですか? 森下氏: もっと強化していきますよ。ジーモードさんと一緒に新会社を設立しますしね。しかし、確かにパワーバランスではRPGの方に力が入っているとは言えるでしょう。今後は、ジー・モードさんと資本提携を含めて共同会社を設立し、そこで一気にカジュアルなマーケットを構築していくんです。 編: プラットフォームは携帯がメインですか? 森下氏: 携帯だけではありません。PC向けにも提供していきます。今回のポータルはPCのポータルであって、携帯自体も次の世代においては色々な展開が出てくるので、PCと携帯の連動もありますよね。 新会社はジョイントベンチャーですから、ポータルがあって、ガンホーがあって、ジー・モードがあるお互いがつながる部分で、「GRANDIA ONLINE」の携帯コンテンツといった展開など、お互いがシナジーを持って、お互いがビジネスとしてやっていける。そういう意味では、OAG市場をもう一度再構築していきたいというところです。 編: 現在実力は未知数ですが、カジュアルゲームのポータルといえば、Gravityさんの「Stylia」がありますが、ライセンスする可能性はありますか? 森下氏: ノーコメントです。 編: では、どう評価していますか? ある意味ガンホーさんの戦略と被るところもある。 森下氏: 確かに概念的には同じ概念ではありますが、後は技術的な部分とアイデアの部分なので、いかに日本の皆さんに受け入れられるいいコンテンツが出せるかと言うところだと思います。 今は正直「Stylia」に関しては何も考えていないので、良いコンテンツがあって協業できるならば良いね、といったレベルです。協力関係はどんどん強化できればいいけど、これからの展開に関しては何も言える状態ではありません。 編: 最後にガンホータイトルをプレイしているユーザーに向けてのメッセージをお願いします。 森下氏: 新タイトル、大作タイトルも含めて、他にも未だ明らかにしていない「Rondo(コードネーム)」というタイトルもありますけど、日本ならでは、ガンホーならではのタイトルを、テーマパークのように色々楽しめるようにそろえていきます。 新たな展開としては、ジー・モードさんとの共同事業も着々と進めています。こちらではライトユーザーに楽しんでもらえるような作品を作っていきます。ご期待ください。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2005年9月20日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
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