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会場:幕張メッセ
オンラインゲームパブリッシャーとしてのガンホーのおもしろさは、あたかもコンソールゲームのようにオンラインゲームのラインナップを充実させていくところで、世界広しといえども、このようなビジネスを展開するオンラインゲームパブリッシャーはガンホーぐらいではないかという気がする。 今回はそんな同社の舵取りを行なうガンホー代表取締役社長森下一喜氏に、今回発表された新作の開発構想や、同社の今後の戦略について話を伺ってみた。かなりのロングインタビューとなったため前編、後編にわけている。前編は、初日の発表会でゲームアーツの宮路洋一社長とジー・モードの宮路武社長が兄弟出演し、話題を集めた「GRANDIA ONLINE」について。後編では「エミル・クロニクル・オンライン」、「ヨーグルティング」、「ゲットアンプド」終了後のオンラインアクションゲーム分野について話を伺っている。
■ 森下社長お気に入りの「GRANDIA ONLINE」。なぜ「GRANDIA」を選んだか? 編集部(以下、編): まず「GRANDIA ONLINE」ですが、初日の発表会は久々に「森下、吠える」という感じで、勢いが感じられましたね。
編: ただ、エグゼクティブプロデューサーに就任したのは、意気込みを感じさせますよね。 森下氏: 現場自体のプロデュースと中のディレクションは現場に任せていますが、「GRANDIA ONLINE」のコンセプトを決めていった時には、最初は宮路さんと2人だけでディスカッションをしているんです。 最終的に宮路さんからプロデュースラインを決めて、現場からももっと良いアイデアももらって、コンセプト自体は最初からあまり崩れていないけれども、新しいアイデアや、コンシューマならではの意見などももらって、もっと良い形になっていってますよ。 編: 昨年、ゲームアーツとの提携が発表されましたが、あれは「GRANDIA ONLINE」ありきで、共同開発するための提携だったのでしょうか? 森下氏: やっぱり開発力強化が前提です。また、ガンホーが直接資本として開発スタジオに入れているのはゲームアーツだけですから、ゲームアーツと作る作品として考えたときに「GRANDIA ONLINE」にしようと至りました。 編: 尊敬する宮路さんと仕事ができて、という部分はわかるのですけど、なぜ「GRANDIA」なのかという所をもう少し教えてください。 森下氏: 「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」など、代表的なRPGというと数が限られてきますよね。その中で「GRANDIA」はRPGとしては、「冒険活劇」という明確なテーマを確立させていた。新しいテーマを扱ったこの作品が自分たちに一番合っているんじゃないかなと。 「GRANDIA」は、「ラグナロクオンライン」(以下、「RO」)と同じように、ファンタジー作品ではあるのだけれども、他の作品とは違った「本当の冒険ってどうなんだろう」というテーマを突き詰めた作品だと思うんですよ。 編: 森下さんの個人的な好みから言えば、この「GRANDIA ONLINE」がラインナップの中で一番好きなのかな、ということが発表会から伝わってきましたね。 森下氏: あくまで個人的な好みの話だけど、そうですね。本当は昨年のゲームショウでタイトル名も発表したかったんですけど、「GRANDIA III」があったから、「Codename:“GO”」として発表したのですが「予測はつくでしょう?」とは思いましたけどね。 編: 「RO」ならGravityらしいゲームであるし、「ECO」はヘッドロックらしいゲームであると思うのですが、今回初めて「森下イズム」を盛り込まれるのかなと、それってなんだろうとひとつ期待しているのですが。 森下氏: 宮路さんといつも言っているのですが、「同じようなMMORPGは作っちゃいかんよね」ということが根底にあって、日本のゲームらしさ、というところと、真の冒険という部分に挑戦したい。もう一回基礎に戻ってね、それはゲームアーツだけの話じゃなく、ガンホーとしても原点に戻って作っていこうと思っています。 それを作品に込めていくために、やっぱりドリームチームでやろうと。そのために宮路武さんも加わってもらって、武さんは初代「GRANDIA」の総監督でもあったわけだから、「GRANDIA」らしさってそもそも本当になんだろうね、というのを考えて、宮路さんなりにも、堀なりにも追求していったんですよ。
■ 街の中は「ウルティマオンライン」の日本的アプローチ、街の外は狩りではなく冒険 編: 開発のトップとして、「これはやりたい」というのはどこでしょうか。 森下氏: 一番やりたいのは人間賛歌だ、ということを武さんは言っています。その部分をコミュニティーでどう実現できるかという事で、実は様々な要素を入れているんですが……。 編: 具体的には? 森下氏: 例えば、冒険というところでいえば、普通のゲームにとって街の外に出るのってなんのリスクもないですよね。街を出なくても楽しくて、ゲームをやっているんだけど街から出たことありません、というプレーヤーがいてもいいと思うんです。街の中とフィールドという概念に全く違う楽しさを持たせています。街にいることと、外に出て開拓する楽しさですね。冒険をしていくにはリスクがあって、仲間を募ることが必要になります。 編: 街の楽しさというのは、例えば「ウルティマオンライン」(以下、UO)ならば、街でパンを焼いたりさまざな活動ができますが、そういったものですか? 森下氏: 実は私は「UO」はオンラインゲームとして一番良くできた作品だなと思っているんです。というのは、街の中で生活できましたから。そこの部分をいかに日本式にやるにはどうするの、というのは盛り込んでいます。冒険して外に出て行く人たちといかに関わるか、「誰かのためになにかをしてあげる」というところですね。 編: UOでは人の物を盗むシーフなど悪人を含めてこそのUOでしたが、「GRANDIA ONLINE」ではどうでしょうか? 森下氏: 「GRANDIA ONLINE」では特にそういった悪行を入れることは考えていません。しかしながら冒険にはすべてのリスクがあるわけです。今のMMORPGはフィールドに出て行くのは「狩り」をするためです。まず「狩り」の概念は捨てたいと思っています。 編: それは移動そのものにも楽しさがあるということでしょうか。 森下氏: 今回は移動という概念の中で、気候、天候、地形、冒険者の体調といった要素が関わっていきます。 編: 地形というのは、例えば湿地帯を移動すると移動速度が落ちるとか? 森下氏: それは当たり前ですよね。例えば実際に湿地帯を1km歩いたら、人間ってへとへとになりますよね? 編: 目的地に着くまでがひとつのアドベンチャーというわけですか。 森下氏: そうです。ただし、目的地自体もこのマップに街が書かれているからここに行こうというわけではなく、未開の地を歩いていくような感じです。 編: MMORPGで未開というのはナンセンスだという気もしますが。 森下氏: そう思われるでしょうが、テーマとしては「未開の地を歩む真の冒険」というものを扱っているんです。ランダムマップでもありません。 編: しかし、誰か見れば、その情報は広く共有されてしまう。 森下氏: その問題自体はどういう風にするかは、ひとつアイデアがあるんですよ。 編: ボスやモンスターがいなくても、冒険そのものがすごく歯ごたえのあるものになるのですか? 森下氏: 大変にしてしまうとサクサク感が失われてしまう部分がありますから、実はそこに工夫があるんですよ。だらだらになってしまうとプレーヤーが疲れてしまうので、サクサク感を入れられるようにしています。 編: 冒険をするごとにパーティーのメンバーは違うのでしょうか。 森下氏: そう思いますよ、その冒険ごとにね。冒険する仲間の選択が代わってくると思います。コミュニケーションという部分でも、人と協力する上で、人となんとかコミュニケーションを取るきっかけを相当入れ込んで作っています。今のゲームのように、「レベルいくつの人募集」というだけではなく、気軽にコミュニケーションがとれる要素をいくつも用意していて、最初は特にそこにこだわっていましたね。 編: 「GRANDIA」で出てきた、世界の果てはどうなっているのでしょうか? 森下氏: 「GRANDIA ONLINE」は「GRANDIA」で世界の果てが発見される前の話です。基本的に物語に出てくる「創世記」という神話の時代があるんですが、じつは「GRANDIA」にはたくさんの謎があるんですよ。ファンの中には「GRANDIA」のリテイクを希望している人が多いんですよ。その謎をシナリオ的なところで盛り込んでいこうとしています。 編: マップはエリアチェンジ型でしょうか。 森下氏: うーん、エリアはすべてシームレスでつながっていますが、エリアチェンジになるかどうか、技術的な部分はまだお答えできませんね。モンスター自体もただ湧かしているわけではなく、意志を持って変化するものがいます。 モンスター自身も移動します。モンスターが凶暴になったり、気候や天候、そして冒険者のパラメーターによって変化させますよ。 編: では、まずはこのエリアの雑魚を倒してレベルを上げて……、という決まりきった展開にはならないと。 森下氏: ならないです。 編: しかし、緊迫した冒険ばかりじゃ疲れますよね。冒険の先には何があるのでしょうか。 森下氏: 冒険の先には街があります。街と言うより……最初は何もないかもしれない。基本的にはすべてが変化していく、リアルタイムに何かが変化していくのです。 編: その変化には、ユーザーの意志も反映されるのですか。 森下氏: ユーザーの意志も、反映されたらいいですよね、と。今はそこまでしか言えません。まだお知らせできないことがたくさんあるので、「GRANDIA ONLINE」はこれから少しずつ見せていきます。今言った要素も、ぎりぎりまで見せないかもしれないですね。 編: 基本的なゲーム展開としては、街にいるプレーヤーがパーティーを組み、冒険をして新たな街を見つける。そこで別れと出会いがあり、そしてまた次の冒険へと、この繰り返しになるということでしょうか。 森下氏: 基本的にはそうですね。もちろんちゃんとストーリーやシナリオは用意されていますし、クエスト的なものもあります。
■ ストーリー、コミュニケーション要素、本作ならではのオリジナルシステムとは? 編: ストーリーの展開はどうなるのでしょうか。普通のRPGと違いMMORPGはひとりひとりが主人公なので、システム的な問題がありますよね。ストーリーをリアルに体験できるMMORPGというと、「ファイナルファンタジーXI」等がありますが、FFXIのような少し特殊なアプローチをしていくのでしょうか。
編: MMORPGでストーリーをプレーヤーに体験させる場合は、プライベートエリアを使いますよね。 森下氏: プライベートエリアもありますよ。今回は戦闘に「GRANDIA」からのIPバトルを、もちろん当時そのままではなく……当時の戦闘はかなりもどかしいものがあったので(笑)、ホワイトボードに書いて議論したりしたんですよ。もどかしい感がない新しいIPバトルを今詰めています。 編: バトルシステムはエンカウント式になるのでしょうか。 森下氏: リアルタイムにしようと思います。エンカウントはもどかしいじゃないですか。基本的にはリアルタイムです。第3者からは闘っている姿は見えます……ああ、これ以上は言えません。言いそうになってしまいました。 編: オンラインで、リアルタイムによるIPバトルというのはどういったものになるか気になりますね。 森下氏: リアルタイムというのは新情報ですよ。パーティーによる戦闘には、モンスターごとに戦略性を持った戦い方が必要になって、敵が来たからみんなで殴るのではないですね。 編: 戦闘中のコミュニケーションはどういったものになるのでしょうか。 森下氏: 基本的には戦闘前に事前に打ち合わせをすることが必要となります。ひとりでも戦うことができないわけではないですよ。 編: では、「GRANDIA」ファンにアピールできるオンラインならではの要素というのはどんなものがあるでしょうか? 森下氏: 最大の部分がコミュニケーションですね。コミュニケーションの楽しさというのは、今までのGRANDIAのファンが体験していない部分で、ここに強くこだわって作っています。ゲームシステム、ゲームデザインは原点回帰を意識しながら挑戦していきますが、コミュニケーションという部分は今までのコンシューマーにはない部分なので、そこがいかに楽しいかをアピールしたいです。 編: 「GRANDIA」のファンが望んでいるのはおそらくロールプレイ的なコミュニケーションですよね。一種の和風ファンタジー的な。ところがオンラインゲームとなると「馬鹿」と発言するプレーヤーを止めることができない。こういった場合に、ロールプレイングゲームならではのコミュニケーションのクオリティーを維持するためにどうするのですか? 森下氏: そこに関してはどうにもならない部分もあり、ネガティブな発言を止めることはできません。ただ、ゲームデザイン的にそこは工夫できると思ってますよ。ただ、オンラインゲームである以上いやな思いをする人は出てきてしまうかもしれません、そこは究極の課題だと思っています。 編: 森下さん的には、プレーヤー達が子供にかえって、「よーし、みんな冒険に行くぞ!」といった世界を予想しているのですか。 森下氏: 「GRANDIA」の主人公達は子供でしたが、ムービーで流れていた冒険者の男女はもう少し大人でしたよね。基本的にはロールプレイも楽しんで欲しいし、成熟したコミュニケーションもとって欲しいのですが、アジア人とも欧米人ともコミュニケーションのアプローチは違いますよね。 編: 森下さんの考える日本人らしいコミュニケーションはどういったものでしょうか。 森下氏: 日本人って奥ゆかしいと思います。パーティー文化がないのかなぁと。 編: そう考えると、ロールプレイ的な要素が必要となる「GRANDIA」の食事シーンのようなコミュニケーションには工夫が必要ですよね。 森下氏: そこにはとてもこだわっていますが、今はホントに言えません、勘弁してください(笑)。「GRANDIA」ファンの人たち、そしてオンラインゲームファンの人たち、国産RPGが好きな人たちに受け入れられる作品を作っていきます。
■ 初代「GRANDIA」の少し前の時代。展開するストーリー、前作のキャラクタは? 編: 初代「GRANDIA」に出てきた登場人物は、「GRANDIA ONLINE」にも出てくるのでしょうか? 世界観を同じにしてあると言うことを大きくアピールしていますよね。
編: そうなると、プレーヤー達は「GRANDIA」の主人公であるジャスティン達のように海を越えなくてはいけないのでしょうか? 森下氏: それも言えません。では最大のヒントを言います。このロゴにヒントが隠されています、以上です! 編: ゲームアーツ作品にはムービーシーンの最初に壁画を出して物語を匂わせるといった演出がよくありますが、そういった仕掛けでしょうか。 森下氏: 実はもう1エッジを加えています。オンラインならではの1エッジです。ロゴにいろんな意味でオンラインゲームである意味があります。 編: 今回の発表会での注目は、なんといっても堀さんが作ったというアニメーション、そしてフルボイス。こうしたアニメシーンはたくさん入るのでしょうか? 森下氏: 「GRANDIA」でもアニメシーンは入っていたので声優さんも起用して豪華なものを作ろうと思っていますが、今はまずゲーム部分の制作ですね。 編: それはオープニングムービーだけではなく、ゲームを進めていく内にカットインされるようなシーンもでしょうか。 森下氏: 入れたいね、という話はしています。ボリュームは未定ですが、日本ならではのアニメーションにしたいねと。3Dのムービーシーンではなく、「GRANDIA」のようなものをね、と。 編: ちなみにゲームエンジンは「GRANDIA III」のものを使っているのですか? 森下氏: ゲームエンジンはゲームアーツのオリジナルです。20年以上、「GRANDIA」シリーズにも使用され、アップデートされてきたエンジンの最新版です。巧みの職人芸を味わって欲しいなと思っています。
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2005年9月20日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
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