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★PS2ゲームレビュー★
この「ワンダと巨像」の目的は巨像を探し、倒すこと。ゲーム全体の尺の大半を巨像との戦闘が占めるという、バトルをメインとしたシンプルなゲーム内容だ。昨今のゲームにしては珍しく、オープニング後は会話やシナリオデモを極限までカット。クライマックスまでストーリーを全く動かさないという特殊なシナリオ構成になっている。この“ストーリーを説明し過ぎない”ということが、ユーザーの想像の余地を残すことにつながっている。また、そのおかげで、純粋にゲームそのものを楽しめるという人もいるだろう。 何のヒントもなく、マスターアップ版をプレイした筆者のクリアタイムは15時間17分19秒(ちなみに、筆者はアクションもパズルもジャンル的には自信はない)。このプレイ時間の8割は巨像との格闘に費やした時間であった。もし、読者の皆さんが「ワンダと巨像」を遊ぶときには、十分な時間を取ってプレイしたほうがいい。筆者は次の巨像の造形を見たいがために連戦したが、通常は1日1~2体のペースで撃破するぐらいのペースがもっともベターなのではないだろうか?
■ 愛馬アグロと幻想世界を駆け抜ける
また、R1ボタンで“掴まる”。このボタンを押すと、近接したオブジェクトに掴まることができる。壁や巨像の体をよじ登るとき、巨像の体の一部にしがみ付くときなどに使い、このゲームにおいては非常に重要なアクションとなっている。Rボタンを押し続けることで掴まった状態を保つことが可能。握力の残量を示す「腕力メーター」が残っている限り、この体勢を維持できるのだ。 掴まる要素は今作の面白さの1つだが、反面、ゲーム初心者のネックになりかねない要素でもある。特にどこが掴まれるオブジェクトなのかを判別できるようになるまでが1つの鬼門ともいえるだろう。実際、ゲーム開始直後にツタに掴まるよう指示されるのだが、筆者も最初はなかなか掴まるポイントを見つけることができなかった。また、掴まってから△ボタンを一度押すとジャンプ準備体勢に入り、再度△ボタンでジャンプ発動というジャンプアクションもあるので覚えておきたい。どちらも慣れの問題でクリアできる問題ではあるが、この掴まり関係の操作でつまづくか否かが、今作がその人に合うかどうかの試金石の1つとなるだろう。
×ボタンの馬操作は、ワンダの愛馬アグロをコントロールする。真横に密着して△ボタンを押して騎乗、×ボタンを押すことで発進、再度×を押すことで加速できる。
アグロから降りた状態で×ボタンを押すと、近くにアグロを呼び寄せることができる。巨像との戦いの最中でも、アグロが立ち入れるフィールドであればアグロを呼ぶ事が可能。特定の巨像では、アグロに騎乗しながら戦うこともある。そうなると、アグロをしっかり扱えるようになっておく必要が感じられるだろう。 さて、巨像の探索方法だが、紹介記事の通り、剣を装備し、○ボタンを押し続けることで剣をかざし、太陽の光を頼りにする。ワンダが巨像が居る方向に向けば、光はシューティングゲームのレーザーのように一直線に伸びる。方向が異なる場合は光は放射状にばらける。剣をかざした状態で、ワンダを360度回転させれば巨像の場所は一目瞭然だ。
ちなみに、巨像は始めからフィールド上を徘徊しているわけではない。巨像が位置するポイントに近づくと、巨像が目覚めるデモシーンが入り戦闘に突入するという流れになっている。偶然、光が指し示していない巨像の居場所に到達しても、その巨像は目覚めることはない。規定の順番通りに倒すしかないのだ。 ■ 敗北は「心が折れた時」、巨像攻略はじっくり挑戦できるパズル
フィールドでは流れないBGMも、ここぞとばかりに場面展開にマッチした曲が流れる。特に巨像出現時の不安を煽るようなBGMから、巨像に組み付きプレーヤーが優位に立った時に勇壮なBGM(この勇壮なサウンドは絶対に魂が揺さぶられる、何パターンかはあるが必聴)に切り替わるサウンド演出は見事。ビジュアルしかり、サウンドしかり、「何度振り落とされてもまた戦いたい」とプレーヤーに思わせる演出と効果の数々は、さすがの一言に尽きる。
巨像にしがみつく際に重要なのが「腕力メーター」。このメーターは剣をかざしたり、巨像の体に掴まっている状態が続くと減少し、平常時には次第に回復して満タンに戻る。ワンダを振り落とそうと巨像が暴れたときは、「腕力メーター」が残っていればRボタンを押し続けることでしがみ付き、耐えることが可能。いわば保険となる「腕力メーター」を残しつつ進むのがコツだ。 弱点を剣で突かれた巨像は痛がり、ワンダを振り落とそうと巨体を大きく揺らす。落とされまいとしがみついていると、腕力ゲージはどんどん減っていってしまう。腕力ゲージが尽きるのを覚悟で弱点を狙い続けるか、一旦安全位置で仕切りなおしを図りつつ小刻みに攻めるか、腕力ゲージの絡んだ剣攻撃の攻防がスリリングで面白い。 巨像戦で1つ残念なのは、巨像とのバトルを迫力ある絵にするため、カメラワークがあらぬ方向に振られるポイントが数箇所あったこと。特に、巨像に乗った状態で剣をかざすと、極端なズームがかかり、ワンダの体が隠れてしまうほど画面が見づらくなることがある。L2のカメラリセットや右スティックでカメラを動かしているうちにさらに混乱し、いつの間にか巨像から落下……というのは、腕前で負ける以前の問題で、少々納得がいかなかった。 巨像戦闘時の臨場感と興奮度は素晴らしい。だが、その難度はアクションスキルと同時にパズル要素を解く知恵が求められるハードな物で、相応の手応えがある。プレーヤーにとって脅威となるのは巨像の攻撃だけではなく、巨像の体に隠された弱点へ近づくためのルートを探すこと。 このルート攻略はパズル要素が強く、例えば「巨像を誘導し地形を使ってよろめかせた後、巨像が起き上がる前に弱点を射抜き巨像を転ばせ、起き上がる前によじ登る」といった具合。そして、実際にこのルート通りに進むのも高いアクションスキルが要求される。ひとえに弱点へのルート探しが難易度を跳ね上げているのだが、それだけに弱点に到達できた時は無常の達成感が得られるのが嬉しい。
ちなみに、このゲームではワンダの耐久力が高く、巨像の攻撃や高所からの落下でも、大ダメージを受けることはなかなかないだろう。その上、何もしないとワンダの体力は自然に回復する。このワンダの頑強さの恩恵で、アクションが苦手なプレーヤーもゲームオーバー→リトライのストレスに悩まされることは少ないと思う。 同時にワンダの頑強さのせいで、対巨像戦は何時間でも粘ることができる。“心が折れた時が敗北”と見出しに書いたが、それは何時間も双方が倒れない長期戦に陥ったときのこと。筆者は特定の巨像で弱点へのルートが見つからず詰まり、数時間粘った挙句、心が折れて電源を切った時が数回あった。その最中は真剣に「シューティングのボスのように一定時間で自爆してくれ」と思った。このゲームを楽しむには巨像と対決できるだけの時間、そして長期戦に耐えうるタフな精神力が必要だと痛感した。 ただ、救いがないわけではない。一定時間巨像と戦っていると、ほんの数行だけヒントメッセージが出現する。また、祠で次に戦う巨像が示された時のメッセージにも重要なヒントが隠されていることがある。どちらのヒントも天からの声という形で自然に享受される。些細なことだが、「ワンダと巨像」の世界観を守るための徹底した配慮に感心した次第だ。
「ワンダと巨像」は「ICO」を体験していなくても問題なく遊べるが、「ICO」をプレイしていれば2つのゲームのリンクを想像するという楽しみが見つかる。「ICO PlayStation 2 the Best」が発売されているので、未体験の方はこの折にぜひ触れていただきたい。 筆者が「ワンダと巨像」をクリアしたとき、神秘的な世界観のせいだろうか、他のゲームにはない高純度の充足感を感じた。その一因は、最後まで溜めに溜められたエンドムービーの影響もあるかもしれない。だが、それ以上に没入感の高い物語を自分だけの力で読み解いたという誇りが心の片隅に刻まれたのだ。
それに関連して、最後に馬鹿げた提案を1つ。「ワンダと巨像」に関しては、クリアするまで攻略本や攻略サイトを見るのは止めてはどうだろうか? そうすることで、「ワンダの巨像」のワンプレイが、一生に一度しかできない宝物になることだろう。クリア後の「ワンダと巨像」の広告のキャッチにもこうある「あきらめない。それがボクにできる唯一のこと。」と。心が折れても、挑戦し続ければ必ず勝てるはずだ。
□プレイステーションのページ (2005年10月28日) [Reported by 福田柵太郎]
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