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★PS2ゲームレビュー★

他のゲームにはない高純度の充足感
「ワンダと巨像」



巨像を倒す順番は固定。一体ずつ挑戦していく
 精緻に作り込まれた独自の世界観がプレーヤーを魅了した「ICO」の発売から約4年。「ICO」の制作スタッフが新たに手がけたアクションアドベンチャー「ワンダと巨像」が遂に発売された。すでに紹介記事でお伝えした通り、このゲームは詩的でありつつもリアルな情景を描き出すグラフィック、巧みな演出力で巨像と人というダイナミックなバトルに真実味を持たせた良質の冒険アクションゲームに仕上がっている。

 この「ワンダと巨像」の目的は巨像を探し、倒すこと。ゲーム全体の尺の大半を巨像との戦闘が占めるという、バトルをメインとしたシンプルなゲーム内容だ。昨今のゲームにしては珍しく、オープニング後は会話やシナリオデモを極限までカット。クライマックスまでストーリーを全く動かさないという特殊なシナリオ構成になっている。この“ストーリーを説明し過ぎない”ということが、ユーザーの想像の余地を残すことにつながっている。また、そのおかげで、純粋にゲームそのものを楽しめるという人もいるだろう。

 何のヒントもなく、マスターアップ版をプレイした筆者のクリアタイムは15時間17分19秒(ちなみに、筆者はアクションもパズルもジャンル的には自信はない)。このプレイ時間の8割は巨像との格闘に費やした時間であった。もし、読者の皆さんが「ワンダと巨像」を遊ぶときには、十分な時間を取ってプレイしたほうがいい。筆者は次の巨像の造形を見たいがために連戦したが、通常は1日1~2体のペースで撃破するぐらいのペースがもっともベターなのではないだろうか?

【STORY】
少女が横たわる古の祠。ドルミンという天の声から破壊すべき巨像を指示される
 青年の名はワンダ。愛馬の名はアグロという。遺骸となった少女を乗せ、青年と愛馬は旅の目的地に向かっていた。人里離れた、道なき道。危険な崖の道、森の湖畔、時折降る雨の中、夜を徹して、彼らは旅を続けた。古えの地を歩き、やがてたどり着いた祠。そこには玉座の間があり、中央には大きな祭壇があった。

 ワンダは、布で包まれた少女の亡骸を祭壇に寝かし、かつて聞いた蘇生術の言い伝えを思い起こす。魂を失った少女を前に、ワンダは誓いをたてる。突如、雷鳴と共に聞こえてくる天からの声。その声がワンダに説いた。少女を助けたければ、この地に棲むすべての巨像たちと戦い、そして倒さねばならないことを。

■ 愛馬アグロと幻想世界を駆け抜ける

掴まれるオブジェクトを探すことが巨像攻略の第一歩になる。掴まる操作は複雑だが、避けて通れない道だ
 基本操作はフィールド、巨像戦で共通。アナログスティックで移動、方向キーで装備切り替え、△ボタンでジャンプ、○ボタンでアクション、×ボタンで馬の操作、□ボタンで攻撃、R1ボタンで掴まる、となる。アクションゲームの要となるキーレスポンスは良好。ワンダのジャンプ、よろめき、攻撃といったアクションパターンも実に人間らしい動きになっている。動きにリアリティがあるおかげで、遊んでみると、ワンダの一挙一動に見入ってしまうだろう。

 また、R1ボタンで“掴まる”。このボタンを押すと、近接したオブジェクトに掴まることができる。壁や巨像の体をよじ登るとき、巨像の体の一部にしがみ付くときなどに使い、このゲームにおいては非常に重要なアクションとなっている。Rボタンを押し続けることで掴まった状態を保つことが可能。握力の残量を示す「腕力メーター」が残っている限り、この体勢を維持できるのだ。

 掴まる要素は今作の面白さの1つだが、反面、ゲーム初心者のネックになりかねない要素でもある。特にどこが掴まれるオブジェクトなのかを判別できるようになるまでが1つの鬼門ともいえるだろう。実際、ゲーム開始直後にツタに掴まるよう指示されるのだが、筆者も最初はなかなか掴まるポイントを見つけることができなかった。また、掴まってから△ボタンを一度押すとジャンプ準備体勢に入り、再度△ボタンでジャンプ発動というジャンプアクションもあるので覚えておきたい。どちらも慣れの問題でクリアできる問題ではあるが、この掴まり関係の操作でつまづくか否かが、今作がその人に合うかどうかの試金石の1つとなるだろう。

 ×ボタンの馬操作は、ワンダの愛馬アグロをコントロールする。真横に密着して△ボタンを押して騎乗、×ボタンを押すことで発進、再度×を押すことで加速できる。

気品ある毛並みが美しいアグロ。草原を疾走するシーンに「ネバーエンディング・ストーリー」という映画の1シーンを思い出した アグロの動きは実際の馬の挙動に近いぶん、急には止まれないし、トップスピードに到達するまで時間がかかるなど不便な面も見え隠れする。だが、その動きにいつしか“可愛いやつだ”と思える愛嬌がある


 アグロから降りた状態で×ボタンを押すと、近くにアグロを呼び寄せることができる。巨像との戦いの最中でも、アグロが立ち入れるフィールドであればアグロを呼ぶ事が可能。特定の巨像では、アグロに騎乗しながら戦うこともある。そうなると、アグロをしっかり扱えるようになっておく必要が感じられるだろう。

 さて、巨像の探索方法だが、紹介記事の通り、剣を装備し、○ボタンを押し続けることで剣をかざし、太陽の光を頼りにする。ワンダが巨像が居る方向に向けば、光はシューティングゲームのレーザーのように一直線に伸びる。方向が異なる場合は光は放射状にばらける。剣をかざした状態で、ワンダを360度回転させれば巨像の場所は一目瞭然だ。

光で巨像を探すシステムで1つ難を挙げれば、剣の光は巨像との直線距離を示すため、迂回ルートをナビゲートしてくれないことがキツい。単純にマップにボスの居場所を書き込んでくれてもよかったとは思うが……これも統一された世界観構築のためには仕方のないことなのだろう


 ちなみに、巨像は始めからフィールド上を徘徊しているわけではない。巨像が位置するポイントに近づくと、巨像が目覚めるデモシーンが入り戦闘に突入するという流れになっている。偶然、光が指し示していない巨像の居場所に到達しても、その巨像は目覚めることはない。規定の順番通りに倒すしかないのだ。

■ 敗北は「心が折れた時」、巨像攻略はじっくり挑戦できるパズル

 ワンダの前に立ちはだかる幾多の巨像。大きく見上げるようなカメラアングル、そしてデュアルショックによる振動など、その大きさの表現には非常に力が入っている。巨像が巨体を揺らすだけで、カメラは上下に大きくブレ、ワンダはよろめき、コントローラーは強く振動する。このような巨像の質量感が伝わる演出が随所に盛り込まれている。古いゲームの例えになるが、筆者が「ゼビウス」の巨大要塞アンドアジェネシスと遭遇した時に感じた巨大感を思い起こさせるものがあった。

 フィールドでは流れないBGMも、ここぞとばかりに場面展開にマッチした曲が流れる。特に巨像出現時の不安を煽るようなBGMから、巨像に組み付きプレーヤーが優位に立った時に勇壮なBGM(この勇壮なサウンドは絶対に魂が揺さぶられる、何パターンかはあるが必聴)に切り替わるサウンド演出は見事。ビジュアルしかり、サウンドしかり、「何度振り落とされてもまた戦いたい」とプレーヤーに思わせる演出と効果の数々は、さすがの一言に尽きる。

巨像は人型ばかりではなく、獣のような形状を持つタイプなどバリエーションが豊富。細かく創り込まれた巨像を拝むために、先に進みたい、と思う人も多いはずだ


【対巨像戦の流れ】
 巨像の弱点へ剣を突き刺すこと以外では、巨像を倒すことは不可能。そのため、すべての巨像が以下のような流れとなる。ただ、巨像ごとに弱点へ向かうための謎が存在するので、決して単調な工程にはならない。

○ボタンを押し続けて剣をかざし巨像に光を当てることで、弱点である部位に紋章が浮き出る 巨像の体の体毛や足場などにしがみつき、弱点を目指す。このルート探しがもっとも難しい 弱点にしがみつき、□ボタンで剣を突き刺す。以上が、全てのボスに共通する攻撃パターンだ

 巨像にしがみつく際に重要なのが「腕力メーター」。このメーターは剣をかざしたり、巨像の体に掴まっている状態が続くと減少し、平常時には次第に回復して満タンに戻る。ワンダを振り落とそうと巨像が暴れたときは、「腕力メーター」が残っていればRボタンを押し続けることでしがみ付き、耐えることが可能。いわば保険となる「腕力メーター」を残しつつ進むのがコツだ。

 弱点を剣で突かれた巨像は痛がり、ワンダを振り落とそうと巨体を大きく揺らす。落とされまいとしがみついていると、腕力ゲージはどんどん減っていってしまう。腕力ゲージが尽きるのを覚悟で弱点を狙い続けるか、一旦安全位置で仕切りなおしを図りつつ小刻みに攻めるか、腕力ゲージの絡んだ剣攻撃の攻防がスリリングで面白い。

 巨像戦で1つ残念なのは、巨像とのバトルを迫力ある絵にするため、カメラワークがあらぬ方向に振られるポイントが数箇所あったこと。特に、巨像に乗った状態で剣をかざすと、極端なズームがかかり、ワンダの体が隠れてしまうほど画面が見づらくなることがある。L2のカメラリセットや右スティックでカメラを動かしているうちにさらに混乱し、いつの間にか巨像から落下……というのは、腕前で負ける以前の問題で、少々納得がいかなかった。

 巨像戦闘時の臨場感と興奮度は素晴らしい。だが、その難度はアクションスキルと同時にパズル要素を解く知恵が求められるハードな物で、相応の手応えがある。プレーヤーにとって脅威となるのは巨像の攻撃だけではなく、巨像の体に隠された弱点へ近づくためのルートを探すこと。

 このルート攻略はパズル要素が強く、例えば「巨像を誘導し地形を使ってよろめかせた後、巨像が起き上がる前に弱点を射抜き巨像を転ばせ、起き上がる前によじ登る」といった具合。そして、実際にこのルート通りに進むのも高いアクションスキルが要求される。ひとえに弱点へのルート探しが難易度を跳ね上げているのだが、それだけに弱点に到達できた時は無常の達成感が得られるのが嬉しい。

剣を装備していないと弱点は消えてしまうが、剣を装備して近づくことで再び浮き出る。光を何度も当てる必要はない
 攻撃武器は剣と弓矢の2種類。剣は前述した通り、巨像の弱点探知機と攻撃の役割を果たす。光は巨像を透過し、背中や掌など正面から見えない弱点なども探しだせるので、大雑把に当てるだけでも発見できる。発見と同時にコントローラーが振動するのもわかりやすい。

弓を絞る時間は短いので、連射が可能。矢の数は無制限だ。
 弓矢はダメージ源ではなく、パズルを解く方法として活用する。巨像に矢を射ることで怒らせ、ポイントまで誘導したり、一定の部位を狙い、巨像の体勢を崩すといったところが主な活用法だ。

 ちなみに、このゲームではワンダの耐久力が高く、巨像の攻撃や高所からの落下でも、大ダメージを受けることはなかなかないだろう。その上、何もしないとワンダの体力は自然に回復する。このワンダの頑強さの恩恵で、アクションが苦手なプレーヤーもゲームオーバー→リトライのストレスに悩まされることは少ないと思う。

 同時にワンダの頑強さのせいで、対巨像戦は何時間でも粘ることができる。“心が折れた時が敗北”と見出しに書いたが、それは何時間も双方が倒れない長期戦に陥ったときのこと。筆者は特定の巨像で弱点へのルートが見つからず詰まり、数時間粘った挙句、心が折れて電源を切った時が数回あった。その最中は真剣に「シューティングのボスのように一定時間で自爆してくれ」と思った。このゲームを楽しむには巨像と対決できるだけの時間、そして長期戦に耐えうるタフな精神力が必要だと痛感した。

 ただ、救いがないわけではない。一定時間巨像と戦っていると、ほんの数行だけヒントメッセージが出現する。また、祠で次に戦う巨像が示された時のメッセージにも重要なヒントが隠されていることがある。どちらのヒントも天からの声という形で自然に享受される。些細なことだが、「ワンダと巨像」の世界観を守るための徹底した配慮に感心した次第だ。


 「ワンダと巨像」は「ICO」を体験していなくても問題なく遊べるが、「ICO」をプレイしていれば2つのゲームのリンクを想像するという楽しみが見つかる。「ICO PlayStation 2 the Best」が発売されているので、未体験の方はこの折にぜひ触れていただきたい。

 筆者が「ワンダと巨像」をクリアしたとき、神秘的な世界観のせいだろうか、他のゲームにはない高純度の充足感を感じた。その一因は、最後まで溜めに溜められたエンドムービーの影響もあるかもしれない。だが、それ以上に没入感の高い物語を自分だけの力で読み解いたという誇りが心の片隅に刻まれたのだ。

 それに関連して、最後に馬鹿げた提案を1つ。「ワンダと巨像」に関しては、クリアするまで攻略本や攻略サイトを見るのは止めてはどうだろうか? そうすることで、「ワンダの巨像」のワンプレイが、一生に一度しかできない宝物になることだろう。クリア後の「ワンダと巨像」の広告のキャッチにもこうある「あきらめない。それがボクにできる唯一のこと。」と。心が折れても、挑戦し続ければ必ず勝てるはずだ。

(C)Sony Computer Entertainment Inc.

□プレイステーションのページ
http://www.playstation.jp/
□製品情報
http://www.playstation.jp/scej/title/wander/
□関連情報
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(2005年10月28日)

[Reported by 福田柵太郎]



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