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★PS2ゲームレビュー★
「魔界戦記ディスガイア」や「ファントムブレイブ」のヒットで、シミュレーションRPG界でその存在をアピールした日本一ソフトウェア。その日本一ソフトウェアが放つ待望の新作はこれまでとは一気に路線を変えたアドベンチャーゲーム。それもホラーと聞けば、シミュレーションを期待していたユーザーの誰もが、そのゲーム性に興味を持ったと思う。逆もまた然り。シミュレーションを期待していたのだからアドベンチャーには興味がない、といった方々も含め、本稿では日本一ソフトウェアの高い水準にある開発力と「流行り神 警視庁怪異事件ファイル(以下、「流行り神」)」ならではの面白さについて述べていこうと思う。
■ 「これは友達の友達から聞いた話なんだけど……」 恐らくは学生の頃、友達の友達から聞いた話、として色々な「噂」を聞いたことがあると思う。少なくとも筆者はこういった類の話を頻繁に聞いた記憶がある。「トイレの花子さん」や「首無しライダー」などがそれにあたるのだが、これらは総じて「都市伝説」と呼ばれている。「流行り神」ではこの「都市伝説」が題材となっており、誰もが聞いたことがあるような眉唾物の噂話が独特のゲームシステムによって展開されるのだ。
また、ホラーの好き嫌いに関わらず、誰もが一度は聞いたことがある話が題材になっているという点で、物語に入りやすく感情移入もしやすいところには好感が持てる。
■ 単なるテキストアドベンチャーとは一線を画す、練りこまれたゲームシステム ホラーというジャンルの中でもメジャーな題材を中心に扱っていることは前述の通りだが、ゲームシステムも導入のしやすさに手助けをしている。テキストを読み進めていき、出現する選択肢によって物語が分岐していく、という点では一般的なアドベンチャーゲームとなんら変わりはない。 しかし、「流行り神」では作業感を感じさせないように、さらにはアドベンチャーゲームとして考える面白さを表現すべく、様々なシステムが練りこまれているのだ。 中でも最も重要なのが「セルフ・クエスチョン」と呼ばれるシステム。これはそれまでに集めた情報を整理して今後の方針を決めたり、犯人の動機や正体を推理するときに現れるモードのことで、選択肢に答えていくことで最終的な結論を導き出すものだ。これは必ずしも正解のルートを選択しなければならないわけではない。また、選択肢によっては話が分岐し、まったく違った展開になることもある。 「セルフ・クエスチョン」は比較的多めに用意されており、ストーリーがある程度展開すると「セルフ・クエスチョン」モードに入り、推理の元、今後の方針を決めていくわけだ。「セルフ・クエスチョン」自体は非常にわかりやすく、大抵は3~4個の問答で方針が決定される。方針決定となる結論にたどり着いた際は選択肢の横に「結論」と表示されるので、戸惑うこともなく安心してプレイできるだろう。 話が拡大する前に定期的にまとめてくれる「セルフ・クエスチョン」の存在はアドベンチャー初心者にはかなりの手助けとなるはず。また、本作の分岐は大別すると「科学ルート」と「オカルトルート」に分かれており、主人公である自分が「セルフ・クエスチョン」でどのように考えるかによって物語が分岐する場合がほとんどだ。
以上から、「セルフ・クエスチョン」が本作に与えている影響は大きく、シナリオタイプのアドベンチャー特有といえる物語の肥大化が緩和されながら、同じく問題となる選択肢による分岐ルートの困惑、といった問題が解決されているように感じた。
また、本作ではアドベンチャーゲームではおなじみの「評価システム」が搭載されている。これに大きく影響を及ぼすのが「推理ロジック」と呼ばれるシステム。 「推理ロジック」とはゲーム中に登場する人物の年齢、関係等の情報を整理することができ、事件解決後に主人公(=プレーヤー)が考える事件の真相を論理的、つまりロジックによりまとめるためのモード。「推理ロジック」では物語の中で事件の関係者や重要な証拠が緑色の文字で表現され、これが「キーワード」として登録される。この「キーワード」を使って「推理ロジック」を完成させるわけだ。
もちろん、「推理ロジック」を完成させるまでの経緯も評価の重要なポイントになるのだが、おおむねは「推理ロジック」の完成度によって評価は決まってくるので、選択肢をひとつ間違えただけでやり直しになる、といったことにはならずアドベンチャー初心者にも配慮が行き届いたシステムだと感じた。
ゲームの内容や評価に直結するものではないが、「データベース」と呼ばれるシステムにも注目してほしい。これはゲーム中に都市伝説や専門的な知識が登場したときに「F・O・A・F」と呼ばれるデータベースに登録されていく。登録された単語はメインメニューの「データベース」を選べばいつでも閲覧することができる。
オカルト好きなユーザーならば、物語に関係のない話であっても興味がそそられることもあると思うが、そういったユーザーにはたまらないオマケ要素だといえるだろう。物語に関係のないと記述したが、シナリオを進めていくことで「データベース」の完成度によって新しいシナリオが追加されることもあるので、積極的に「データベース」を完成させる必要がある。
■ 「セルフ・クエスチョン」によってまとめられたゲーム展開が生むテンポの良さ これらのシステムがうまくかみ合い、実際にプレイするとそのテンポの良さに驚かされる。一般的なアドベンチャーにありがちな、ダラダラと意味のない文章を読まされる展開は少なく、その類は「データベース」によってまとめられる。また、シナリオ内における分岐の仕方も「セルフ・クエスチョン」によりわかりやすく、ストレスがたまる要因が極力排除されている仕様だと感じた。 気になる点を挙げるならば、あまりにテンポ良くシナリオが展開されるため、実際のプレイ時間はアドベンチャーゲームとしてはかなり短くなっていることだろう。シナリオをクリアするたびに感じる達成感、という視点ではボリューム十分だと言えるのだが、プレイ時間そのものの少なさは否めない。 しかしながら、意味のない問答やテキストを読まされるよりは、実際のプレイ時間が少ない「流行り神」の仕様に個人的には賛同したい。「ディスガイア」や「ファントムブレイブ」然り、見た目はオーソドックスなつくりでも実際にプレイすると日本一ソフトウェアならでは、といえるオリジナリティー溢れる要素が盛り込まれており、それが見事にエッセンスとしてゲームの面白さを引き出していた。その流れをジャンルは違うものの本作でも感じ取れたのは嬉しい限りだ。
ともあれ、意味のない文章を読み飛ばす作業に気だるさを感じているアドベンチャーファンにはもちろんのこと、「ディスガイア」や「ファントムブレイブ」からの日本一ファンにも是非遊んでいただきたい1本だ。「流行り神」をプレイし新たな魅力を体験することで、きっと今まで以上に日本一ファンになるだろう。かくいう、筆者もその1人なのはいうまでもない。 (C)2004 NIPPON ICHI SOFTWARE INC.
□日本一ソフトウェアのホームページ (2004年9月15日) [Reported by 林 智加良]
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