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Cyberathlete Professional Leagueレポート その3 |
会場:GAYLORD TEXAN RESORT & CONVENTION CENTER
米国ダラスのGAYLORD TEXAN RESORT & CONVENTION CENTERにて開催されていた、コンピューターゲームの世界大会「Cyberathlete Extreme Wolrd Championship」も全5日間の日程を終了し、その幕を閉じた。本稿では「Counter-Strike」トーナメント最終日の模様を中心にお伝えしていこう。
■ 順当な勝利か番狂わせか、本格的に盛り上がるトーナメント後半戦
ここでSKについて簡単に紹介しておきたい。SKは正式名をSchroet Kommandoというスウェーデンのプロクランで、ここ数年世界中で開催されたCSの大会で優勝をもぎ取ってきた実績を持つ。名のある大会だけを拾ってみても、WCG2003優勝、CPL2003Summer優勝、CPL2003Winter優勝、WCG2004スウェーデン代表と、圧倒的な成績を残している。また、完全にプロとしてゲームだけで生活している数少ないクランのひとつで、そのあまりの強さゆえに、どの大会へ出ても応援と言うよりはブーイングに近い声援を受けたりする。
こうしたことから「どうせ今回もSKが勝つんでしょ」という雰囲気が漂っていた会場だが、初戦のForsaken(シードランク#32位)で13-8、2回戦目のTSG(シードランク#10位)で13-7、3回戦目のg3X(シードランク#9位)で13-7、勝者リーグ準決勝のTitans(シードランク#5位)で再延長戦までもつれ込んで19-17と、いつもだったら相手にこれほどのラウンドを取らせずに勝利しているはずなに今回のトーナメントでは珍しく苦戦している。そして、勝者リーグ決勝の対EYE戦でSKは9-13で負けてしまった。
この敗戦をきっかけに会場の盛り上がりは一気にヒートアップ。そして、今回のCPL 2004 Summerのキーポイントであるもう1つの試合、敗者リーグ決勝SK対Rivalを多くの人々が固唾を呑んで見守った。対戦相手であるRivalは米国のチームで、日本代表である4DNと一緒にブートキャンプを行なった。ちなみにRivalのPh33R(フィアー)選手は、4DNのXrayN選手が米国にいたころの友人ということで4DNともっとも仲のよい海外強豪チームだ。
地元米国の代表として決勝を戦うRivalと、そのあまりの強さゆえ疎まれているSK。会場の雰囲気は圧倒的にRival支持で、SKにとってはかなりきついアウェイ的な雰囲気が会場には満ちていた。そして、その前にEYEに負けを喫してショックを隠しきれないSK。1st Halfは8-4と試合は終始テロリスト側のRivalペースで進んだ。
普通ならば1st Halfで8本取られた時点で試合はほぼ決まったといっていいのだが、SKはここでずるずる終わらない。陣営がかわっての2nd Halfの第1ラウンド(ピストル)、マップの地下通路よりBポイントへと突入したSKはC4(爆弾)の設置にいち早く成功した。仲間が倒されSKのMohamed(SpawN)選手は1人、しかし孤軍奮闘して爆破時間ぎりぎりまで粘りそのままC4の爆発にこぎ着けた。こうなると試合展開の流れはぐっとSKが引き戻し……と書きたいところだがSKの様子がやはりおかしい。
試合はすすみ、Rivalは4ラウンドを立て続けにとって12-7と後1ラウンド取れば決勝進出というところまで、SKを追い込んだ。会場の誰もがSKはもう負けた、そう思ったはずだった。しかし、常勝軍団SKは伊達ではなかった。流れを変えたのは2nd Half第9ラウンドだ。第8ラウンド、SKは装備を整えてAポイントを全員で攻め、スタンダードな勝ちを収めた。
そして、第9ラウンド。Rivalは先ほどの第3ラウンドで成功したピストルラッシュを再び実行した。しかし、SKは今度は逆に飛び込んでくる敵を立て続けに倒し、ほぼ無傷で勝ちを収めた。考えてみればここで流れが変わったのだ。そこから後の10-12ラウンド、SKの強さはがらりと変わった。1人も倒されずに、完璧にRivalを倒し寄せ付けなかったのだ。ニュースやほかのe-Spots大会で見たSKの姿がそこにはあった。終わってみれば2nd Halfは4-8でSKは大逆転。延長戦へと突入した。
最終的なスコアを見てみれば22-19、実に約2試合分のラウンドを消費して決着と相成った。そういう意味ではこの試合、今回のCPLにおけるベストバウトと言っても過言ではない。そして、Rivalはヨーロッパ勢が有利といわれる「Counter-Strike」の世界に「米国を忘れるな!」と明確な一石を投じたといえるだろう。
■ そしてCPL決勝。スウェーデン同士の決戦に
ステージ上に決勝専用のバトルフィールドが設置された。選手達の前にみえるプラズマテレビは一人一人の画面を別途映してくれる |
今回の決勝戦はde_infernoというMapで行なわれ、テロリスト(攻め側)と特殊部隊側(守備側)を決めるコイントスに勝利したSKはカウンターテロリストからのスタートを選択した。「Counter-Strike」においてこの陣営選択では一般的には攻め側で最初にポイントを稼ぎ、精神的に優位に立ちたいという点からテロリストを選ぶケースが多いが、カウンターテロリストからのスタートを選択したのは守りに自信があるSKならではの判断だろう。そして、試合は始まった。
BYOCエリアもスポンサーエリアも、ガランガランになり多くの人々が決勝を見ようとメインステージ前に集まる。ちなみにHLTVと呼ばれるオンライン放送プログラムでは数千人が決勝を観戦していた |
笑みを浮かべつつ試合の準備練習を行うEYEの選手たち。決勝だというのに余裕すら感じる姿だ | 試合中のSKの様子。ステージ上は暗すぎて写真が若干ぶれているが、その真剣さは感じ取っていただけると思う |
一人残った仲間の動向を覗き込み見守る選手達。死んだ選手は声援を送ることすら許されれず、非常に歯がゆそうだった | 試合が始まれば、その顔からは笑みが消え真剣そのものになる。その集中力の高さは、カメラが横についても視界に入っていないかのような反応からもうかがえる |
序盤のリードがある為、SKは今の1Roundを取られてもまだ次のRoundの装備を買う余裕があったが、2Round続けて取られてしまうと今の勢いを止めてしまう。この第5ラウンドは両チームにとって前半戦で最も重要なRoundだったと言えるだろう。第4ラウンドとは逆側のAポイントに攻め込んだEYEだが、SKの配置を読み切っているかのごとく背後を取り、2名の撃破に成功した。その後は1人の囮を残し、再びBポイントに攻め込むという大胆な戦術を展開、C4ボムの爆破に見事成功する。通常ならば、1回ポイントを制圧したら防備を固めるのだが、ここであえて攻めに出たEYEは見事SKの虚をついた。
ここで試合の流れを取り戻したEYEは7-5というスコアで1st Halfを終了。「守りのSK」としては守備側でポイントを稼がれたのは非常に苦しい。今回の大会も含め、幾度となく苦しい場面からも逆転する試合を見せてきたSKだが、彼らを間近でみた筆者にはSKが勝てるとはとうてい感じられなかった。得意とする守備側でポイントを取られ、おまけにその相手は一度負けているEYE。SK側のプレーヤー席は2nd Halfの時点ですでに「負けたー」的な空気が漂っていた。予想通り、SKは後半の第1ラウンドを奪われた後、自分たちのお株を奪うようなEYEの守備の堅さに何もできないまま第5ラウンドまではストレートで取られ、終わってみればトータルスコア13-5の大差でEYEが初優勝を飾った。
SKに勝利し、Counter-Strike最強クランの称号を手にした瞬間のEYEの選手たち。立ち上がって抱き合い勝利を分かち合う | 敗北後、喜ぶEYEを尻目に敗因の検討を始めるSKの選手たち。敗戦を糧とするかのように、淡々と勝利のためへの積み重ねを行う姿はこれぞアスリートといってもいいだけの貫禄を感じさせる |
■ 王者SKの一枚上手をいったEYEの強さを徹底検証
EYEが多用していた高等テクニック“ブースティング”。自分の上に乗せた状態で下から押し上げ一人では登る事ができない場所へ仲間を移動させるテクニックだ |
まず注目したいのはSKのお株を奪うような守りの堅さだ。個人個人の撃ち合い技術の高さもさる事ながら、味方のカバーリングや、配置の着き方、そしてラウンドごとの敵の攻撃に対するシフトチェンジの素早さといった点が、SKと同等またはそれ以上に見事な物だった。そして、SKに対して2度続けて勝利する事ができた部分については、研究の高さとしか言いようがないだろう。
同じスウェーデンのチームという事もあり、過去に何度も直接対戦した試合経験と、SKの試合デモファイル(後で再生可能なビデオのようなもの)などからSKの戦術や、守りの配置などを徹底的に検証し、いくつもの対策を用意してきた事が今回の試合の中からうかがう事ができる。その部分を決勝戦の試合を例にとっていくつか検証してみる事にしよう。
まずは前半戦の鍵を握った第5ラウンド目の戦術について。EYEは、この試合で「肩車の様に自分の上に仲間を乗せ、通常1人では登る事ができない場所へ仲間を移動させる」“ブースティング”という高等テクニックを多用していた。そして、このテクニックを使用し、Aポイントを攻め込む際に使用する建物内の狭い階段の上で待ち伏せしていたSKのfisker選手の背後を取り、あっさりと1人目の撃破に成功した。
ブースティングを使い、階段の上部分で待ち伏せしていたSKのfisker選手の背後に回り込んだHyper選手 | どんな強い選手といえども背後を取られてしまっては為す術はない。相手の配置を読んだ上での見事な戦術だ |
僅か数ドットの隙間を狙うIsKall選手。銃の照準が立ち状態の頭部の位置より遙かに低い位置にある事に注目 |
「Counter-Strike」は、弾をヒットさせる場所によってダメージが異なり、頭部にヒットさせる(俗にいうヘッドショット)とダメージが最も大きい仕様になっている。当然の事ながら相手を待ち伏せする際などは、相手が覗いてくるであろう位置の頭部の辺りに照準を置いておくのがセオリーなのだが、この時IsKall選手は通常より低い位置に照準を合わせていた。
その状態を見て不思議に思っていた直後、驚くべき展開となった。テロリスト側だったSKの先頭の位置にいたSpawN選手が通路の先を覗こうとした際に、なんと「しゃがんだ状態」で顔を出したのである。このしゃがんだ状態の頭部の位置がまさにIsKall選手が照準を合わせていた位置で、初弾を見事にヒットさせ、更には、瀕死の状態となり慌てて相手の視界から逃がれようとするSpawN選手を、壁を貫通させて弾をヒットさせる「壁抜き」というテクニックで仕留めている。狙って行なったのであれば相手のクセを熟知していたとしか言いようがない場面だった。
初弾をヒットさせた後、位置を調整し相手が逃げた方向へ壁越しに弾を撃ち続けるIsKall選手 | 弾丸は壁を貫通し、その先にいたSpawn選手を見事に捉えた。長年の経験によって研ぎ澄まされた感覚が成せる高等技術だ |
SKの敗北そしてEYEという確かな実力を持った新王者の誕生、ワールドツアーの発表と衝撃的な事柄が多かった今回のCPLも幕を閉じた。次回、冬のCPLは12月の15日~19日の日程で行なわれる。SKが雪辱を果たすのか、EYEが防衛を果たすのか、はてさて米国代表のRivalがCPLチャンピオンの座を米国にもたらすのか、これから半年の間、各チームの動向から目が離せなくなりそうだ。
□CPL2004Summerのホームページ(日本語)
http://www.acegamer.net/cpl/2004summer/
□CPL2004Summerのホームページ(英語)
http://www.thecpl.com/league/
□関連情報
【8月3日】Cyberathlete Professional Leagueレポート その2
日本代表として世界にその名を記憶させた4DN
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040803/cpl_02.htm
【8月2日】Cyberathlete Professional League開幕
ゲームをとことん楽しむ“ヘビーゲーマー”達の祭典
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040802/cpl2004.htm
【6月29日】CPL2004 夏季大会日本予選観戦レポート
優勝はチーム力と個人技能の両輪を磨き上げた4DN
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040629/cplsum.htm
【6月25日】短期集中連載:CPL 2004 夏季大会の楽しみかた
CPLの概要とCSの観戦方法、マップの見所などを一気に紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040625/cplpre.htm
(2004年8月4日)
[Reported by tyokuta&Crize@ukeru.net]
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